【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星

文字の大きさ
123 / 173

16-7

しおりを挟む
一頻り思いの丈を吐き出してスッキリしたのか、遼平くんは深いため息を残して告解室に続き、礼拝堂から出て行った。

私も誰かに見つかる前に、一刻も早くここから離れなければ。
分かってはいるけどれど、足に力が入らない。

この場で聞いたこと全てが、あまりに衝撃的過ぎて。
私の中の価値観を全てひっくり返されたような。

いや、でもー
今回のことは、少し冷静になって考えてみれば、なにも驚くことなんてないのかもしれない。

遼平くんにとっての唯一無二は永美ちゃんで。
優しくて、脆いところがあることも分かっていた。
そこも含めて好きだった。

そして、晴臣にとっての唯一無二、いや、それ以上の存在が私だった。
本当に優しいのは晴臣だ。
優しくて、誰よりも強い。
だから、全部背負わせてしまった。
きっと、晴臣が連日朝早くから日付が変わるまで仕事漬けなのは、私を避けているんじゃなくて、光城にeternoとの契約を維持させるため。

私は私が欲しかったものをとっくに手にしていたのに。

今頃になってそのことに気付くなんて。

「私って、本当バカ…」

思わず口からこぼれた瞬間だった。

「そこに誰かいるの!?」

鋭い声が礼拝堂に響き渡った。

ついこの間まで毎日聞いていた、真由先輩の声だった。

しまったと思った時にはもう遅い。
逃げようにも、これ以上どこにも逃げ場なんてなかった。

真由先輩のヒールの音があっという間に間近に迫り、小部屋のドアが勢いよく開けられた。

「蓮見ちゃん!?どうしてあなたがここに…?まさか、今の話…!!?」

この狼狽え様、真由先輩も遼平くんの話をどこかで聞いていたのだろうか。

でも、そんなことは私にはもうどうでも良かった。

「…はい、聞いてました」

「何てこと…!!でも…でも、椎名くんに言ったりしないわよね?蓮見ちゃんが全てを知って傷付いたと知れば、椎名くんのこれまでの苦労が全部水の泡になるのよ?」

さも晴臣のことを理解しているかのような口調で私を丸め込もうとする真由先輩を、キッパリ「いいえ」と言って拒絶する。

「遼平くんが利用したのが私だけならまだ良かったんです。でも、晴臣まで利用したことは許せません。今もきっと、一番晴臣に負担がかかってる。ちゃんと全部話して、晴臣をeternoから解放します。それに…そうしないと私は…私も晴臣も…遼平くんも、前に進めないから」

ゆっくりと、諭すように伝える間、真由先輩は徐々に顔色を失い、床に崩れ落ちた。

「短い間でしたが、真由先輩にはお世話になりました。さようなら」

真由先輩の横をすり抜け、礼拝堂を立ち去った。

さすがにここでの挙式はない…というより、晴臣との結婚自体なくなるかもしれない。
そんなことを考えながら、今日の見学会の予約をキャンセルして、帰途につく。

駅へと続く国道沿いの歩道を一人歩いていると。

「蓮見ちゃん!待って!!」

さっき別れたはずの真由先輩に呼び止められた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

龍の腕に咲く華

沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。 そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。 彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。 恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。 支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。 一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。 偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。

俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る

ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。 義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。 そこではじめてを経験する。 まゆは三十六年間、男性経験がなかった。 実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。 深海まゆ、一夜を共にした女性だった。 それからまゆの身が危険にさらされる。 「まゆ、お前は俺が守る」 偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。 祐志はまゆを守り切れるのか。 そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。 借金の取り立てをする工藤組若頭。 「俺の女になれ」 工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。 そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。 そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。 果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

処理中です...