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しおりを挟む「いえっ、違っ…!」
「隠さなくったっていいのよ?副島さんが蓮見さんのこと狙ってるのは、みんな薄々気づいてるから」
みんなって誰ですか!?
と突っ込む隙も与えてもらえない。
「金曜の夜は月イチのミーティングだったんでしょ?そこで副島さんから想いを伝えられて、蓮見さんもそれに応えたんじゃないの!?」
目をランランとさせた末村さんにズイッと距離を詰められたとき、応接室からドンッという不穏な音と一緒に酷く禍々しい気配がー
―したような気がしたけど…気のせいか。
「そ、そんなことしてませんって!来客中なんですから、変なこと言うの止めてください。ほら、仕事しましょう、仕事」
一応声を落として言いながら、私はさっさと自分の席に着いたけれど、末村さんの方は出社して来る人に『今日蓮見さんいつもよりキラキラしてない?』と意味深なことを吹いて回っている。
お陰でお昼を回る頃には、私と副島さんが付き合い始めたというデマが事務所全体にすっかり広がってしまっていた。
「ねえ、蓮見さん。副島さんと婚約したって本当なの?」
昼休憩と同時に、ちょっとした黒山の人だかりができてしまった。
しかも、尾鰭どころか背鰭までついて「交際」から「婚約」にステップアップしてるし!
副島さんのためにも、きちんと否定しなくては。
「副島さんとはお付き合いすらしてません!そもそも、私、婚約者がいるんです」
一斉に、顔を見合わせる同僚の皆さんが、代わる代わる私に自白させようと優しく語りかけてくる。
「そんな…嘘までついて隠さなくてもいいのよ?」
「蓮見さん…残業も休日出勤も誰より率先してやってくれてて…全く恋人がいる素振りなんて見せてなかったじゃないですか?」
確かに、晴臣のことを考えないようにするために仕事に没頭していたけれど。
「これには色々事情があって…!」
「確かに副島さんは女子社員の憧れではありますけど、結婚しちゃうからって、蓮見さんに嫌がらせしたりなんてしませんから♡」
ダメだ。
全然信じてもらえない。
そして、最後のコは笑顔がめちゃめちゃ怖い!!
写真の一つでも見せれば納得してもらえるかもと閃いたけど、よく考えたら私のスマホには晴臣の写真なんて一枚も入っていない。
どうしたらいいのー!?
と、頭を抱えていると、ずっと閉じたままだった応接室のドアが開き、私を含め一同が口を噤んでそちらに向いた。
そして、副島さんに続いて退出してきた人物が私を指差して、口を開いた。
「実は、彼女が僕の婚約者なんです」
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