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手繰り寄せた奇跡の夜【本編最終章】

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そして、あろうことか桐嶋先生の体をひょいと肩に担ぎ上げた。

呆気にとられる高嶺くんと私。

「と、冬馬!?何するのよ、下ろして!!」

肩の上で暴れまくる桐嶋先生に、びくともしないダンナさん。

「…うるさい。新婚フーフの邪魔してんじゃねーよ。機嫌直ったんならさっさと部屋戻ってヤるぞ」

「ちょ……っ!二人の前で何てこと言うのよ!?」

「初めて裁判仕事で大負けしたからって、昨日こっち着いてからずーーーーっとメソクソして『気分じゃない』とか言って散々拒否りやがって。これ以上焦らすなら今ココで始めるぞ」

ひっ!!
ご主人…あんな綺麗な顔して何てことを!!?

これにはさすがの桐嶋先生も抵抗するのを止めると、肩に担がれたまま、「じゃ…そういうことだから」と、恥ずかしそうに私達に向かってひらひらと手を振りながら消えて行った。

「…桐嶋先生、司法修習のとき世話になった先生の娘さんで。本人はいいんだけど、あのダンナがな。桐嶋先生のこと溺愛しすぎて色々とヤバいんだよ」

「…び、びっくりしたね。色々と」

「な。まさかこんなところで会うなんて。人生って何があるか分からないもんだな」

本当に。
人生って、何が起きるか分からない。

色んな誤解から、ただの穴だと思い込んで、
「好き」という一言さえ言えずに逃げ出してしまったのに。

今、こうして、夫婦になって、南の島で一緒に笑い合っているなんて。

一人ぼっちだった私に居場所をくれたこと。
私のことを諦めずに探し続け、奇跡を起こしてくれたこと。

出会いからこれまでの全てが、夜空の幾千の星となって輝けば、愛と感謝が心に収まりきれないほど溢れ、自然に私の方から高嶺くんに口づけていた。

「…はっ?お前っ!自分が人に見られるとか言っておいて!!」

怒られるとは思っていなかったので、急に我に返り、恥ずかしくなる。

「ご、ごめん!何か感極まっちゃって!」

「…いや、いい。むしろそれでいい」

火照りまくる顔を両手で隠していると、ふわりと体が浮く感覚。
驚いて顔から手を離すと、私の体は抱き上げられていた。

「これから、いつでもどこでも静花からキスできようになるくらい、俺に愛されてるって自信つけさせてやるから」

やっと慣れてきたとはいえ、ドアップのキメ顔に、また頬が熱くなる。

今夜ハネムーンはその前哨戦ってとこかな。俺たちも部屋戻るぞ」

私を抱いたまま力強く歩き始めた様は、多分ほぼさっきの桐嶋夫妻と同じで。

「お…お手柔らかにーーーっ」

私は誰もいないビーチに向かってひらひらと手を振った。

Hard to say
The End
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