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Unknown Visitor
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「え?あんた、あの夏目グループの人間なのか!?」
いつの間にか戻って来ていた漣が、驚いて湿布の入った袋を落とした。
「一応な。そんでもって、今日から姉ちゃんの彼氏だ」
「はぁ!?僕がいない間に何があったんだよ!?」
「な、何もないわよ!大体私はまだ─」
取り乱しまくる私たち姉弟に構わず、夏目さんは続けた。
「姉ちゃんのことは俺が守る。だから、弟は家に帰って、安心して受験勉強に専念しろ」
「「え?」」
「不審者がウロついてるんだろう?」
「「何で知って!?」」
「さっき弟が言ってただろう?『不審者の仲間』って」
漣と二人して顔を見合わせる。
部屋に飛び込んできた時の漣は逆上していて、かなりまくしたてていたのに。
夏目さん、大事な言葉は聞き逃していなかったらしい。
たまに忘れそうになるけれど、仕事はできる人なんだった。
感心する私を他所に、漣は警戒心を剥き出しにして言った。
「ご心配なく。数十分前まで他人同然だったあなたなんかに大事な姉は任せられませんから。今日は予定どおり俺が姉の側にいます!」
「あ、そう。まあ、俺は凛が安全ならどっちでもいいけど?凛はどうしたい?」
「わ、私!?」
しょうもない言い争いが始まるかと思いきや、突然話を振られて面食らう。
「そう。凛が決めろよ。いつ現れるかも分からない不審者のために可愛い弟の貴重な勉強時間を削らせるか。安全な環境に身を置いて、一刻も早く弟を勉強に専念させてやるか」
そうだ─
ただでさえ仕送りを止めて心配かけ、こんなところまで来させて。
そもそもあのマト●ックス男が、不審者だったのかどうかも分からないのに。
弟の大事な時間を、これ以上無駄にさせるなんて、姉失格だ。
「─漣は帰って」
「凛ちゃん!?」
「漣はもう学校始まってるし、不審者が捕まるまでここにいるってわけにはいかないでしょう?」
「でも─!」
漣は執拗に食い下がって一歩も譲らない。
もう、根負けしそう。
そう思ったとき─
「凛」
名前を呼ばれ振り返ると、夏目さんが私の顎を徐に持ち上げ、キスで唇を塞いだ。
「あ゛ーーーーっ!?凛ちゃんに何するんだ!!?」
全くもって漣の言うとおり。
しかも舌入って来そうだったし。
いきなり何するんだ、この人は。
「凛がいつまでも温いこと言ってるから分からせてやろうと思って」
「何をだよ!!?」
「弟もさっき言ってたけど、俺たち付き合いたてなんだぞ?凛が俺を選んだってことはそういうことなんだよ」
「そういうことってどういうことだよ!?」
漣が吠えている間に、チラリと夏目さんから『話を合わせろ』と言うように目配せをされた。
「俺とイチャイチャしたいってことだよ」
おっ、弟の前で何てことを…!
でも、強情な連を説得するには、確かにこれが一番効果的かもしれない。
「な、凛?」
仕方なく頷くと、夏目さんは勝ち誇った顔で漣に止めを刺しにかかった。
「そんなことも分からないで、医学部受かるのか?ほら、さっさと帰って勉強しろ」
夏目さんの辛辣な言葉に、漣は『凛ちゃんのバカ!不潔ーっ!!』と叫びながら、半泣きで家を飛び出して行った。
いつの間にか戻って来ていた漣が、驚いて湿布の入った袋を落とした。
「一応な。そんでもって、今日から姉ちゃんの彼氏だ」
「はぁ!?僕がいない間に何があったんだよ!?」
「な、何もないわよ!大体私はまだ─」
取り乱しまくる私たち姉弟に構わず、夏目さんは続けた。
「姉ちゃんのことは俺が守る。だから、弟は家に帰って、安心して受験勉強に専念しろ」
「「え?」」
「不審者がウロついてるんだろう?」
「「何で知って!?」」
「さっき弟が言ってただろう?『不審者の仲間』って」
漣と二人して顔を見合わせる。
部屋に飛び込んできた時の漣は逆上していて、かなりまくしたてていたのに。
夏目さん、大事な言葉は聞き逃していなかったらしい。
たまに忘れそうになるけれど、仕事はできる人なんだった。
感心する私を他所に、漣は警戒心を剥き出しにして言った。
「ご心配なく。数十分前まで他人同然だったあなたなんかに大事な姉は任せられませんから。今日は予定どおり俺が姉の側にいます!」
「あ、そう。まあ、俺は凛が安全ならどっちでもいいけど?凛はどうしたい?」
「わ、私!?」
しょうもない言い争いが始まるかと思いきや、突然話を振られて面食らう。
「そう。凛が決めろよ。いつ現れるかも分からない不審者のために可愛い弟の貴重な勉強時間を削らせるか。安全な環境に身を置いて、一刻も早く弟を勉強に専念させてやるか」
そうだ─
ただでさえ仕送りを止めて心配かけ、こんなところまで来させて。
そもそもあのマト●ックス男が、不審者だったのかどうかも分からないのに。
弟の大事な時間を、これ以上無駄にさせるなんて、姉失格だ。
「─漣は帰って」
「凛ちゃん!?」
「漣はもう学校始まってるし、不審者が捕まるまでここにいるってわけにはいかないでしょう?」
「でも─!」
漣は執拗に食い下がって一歩も譲らない。
もう、根負けしそう。
そう思ったとき─
「凛」
名前を呼ばれ振り返ると、夏目さんが私の顎を徐に持ち上げ、キスで唇を塞いだ。
「あ゛ーーーーっ!?凛ちゃんに何するんだ!!?」
全くもって漣の言うとおり。
しかも舌入って来そうだったし。
いきなり何するんだ、この人は。
「凛がいつまでも温いこと言ってるから分からせてやろうと思って」
「何をだよ!!?」
「弟もさっき言ってたけど、俺たち付き合いたてなんだぞ?凛が俺を選んだってことはそういうことなんだよ」
「そういうことってどういうことだよ!?」
漣が吠えている間に、チラリと夏目さんから『話を合わせろ』と言うように目配せをされた。
「俺とイチャイチャしたいってことだよ」
おっ、弟の前で何てことを…!
でも、強情な連を説得するには、確かにこれが一番効果的かもしれない。
「な、凛?」
仕方なく頷くと、夏目さんは勝ち誇った顔で漣に止めを刺しにかかった。
「そんなことも分からないで、医学部受かるのか?ほら、さっさと帰って勉強しろ」
夏目さんの辛辣な言葉に、漣は『凛ちゃんのバカ!不潔ーっ!!』と叫びながら、半泣きで家を飛び出して行った。
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