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初恋の追憶(仁希Side)
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これまで俺の周りにいたのは、
手入れの行き届いた肌、髪、爪。流行りのブランドの服やバッグを身につけた、華やかで上品な見た目の、苦労とは無縁そうな令嬢ばかり。
天使に関する唯一の手がかりが『政治家の孫娘』だったから、それなりの家柄だと踏んで確認の対象を選んできたのだから当然と言えば当然だ。
だが、彼女たちの、幼い頃からの生活水準を保つ為、玉の輿に乗ろうと必死で俺を誉めそやすだけの中身のない会話には辟易していた。
でも、凛は─
ほとんど化粧っ気もなく、ノーブランドの服を着倒し、弟の学費の為に本業の他にアルバイトまでしている苦労人。
直向きに働く姿がいじらしい。
俺に対して媚びるどころか、ズケズケと言いたいこと言って来るところが面白い。
─そして何より、揶揄うとムキになるのが可愛いくて仕方ない。
そう感じる自分に初めて気付いたときは、酷く狼狽えた。
嘘だ。
バカな。
そんなはずあるわけない。
凛は天使とは全然違うのに。
でも、どれだけ心の中で否定しても、凛と同じ空気を吸うだけで、澱み切った自分が浄化されていくようで。
凛に出会ってから約三年。
初めて見た涙が、やっと俺の気持ちを決定的なものに変えた。
もういいだろうか。
天使は俺を恨んではいないだろうか。
許してくれるだろうか。
葛藤する俺をダメ押しするのもやっぱり凛で─
「顔しか分からない男引きずっててもしょうがないですし」
その言葉で、俺は長年の思いをようやく手放すことができたのだ。
憧れと罪悪感とでがんじがらめになっていた心と体は、一度動き出すと止まらなかった。
他の誰かに奪られる前に。
元カレの気が変わらないうちに。
一秒でも早く俺のものにしなくては。
焦りすぎた結果、二度も凛に逃げられたけれど。
最初のときはよりによって、天使の話を振られて。
あのときはかなり動揺した。
天使のことは、家族の他には、一部のしつこく言い寄ってくる女を諦めさせるときにしか話していなかったから。
今思えば、現場の噂で聞いたと言っていたから、確かめた女の中に、同業の社長の娘でもいたのかもしれない。
結果的に、凛が知っていたのは好都合だった。
自分でも驚くほど自然に初恋の思い出として凛に伝えられた。
全てを語らなかったのは未練からじゃない。
カッコ悪すぎて凛に嫌われたくて、言えなかっただけ。
凛の背中を確かめなかったのは、もうその必要がなかったから。
─こうやって、少しずつ天使のことも思い出さなくなるのだろう。
頭の片隅でそんなことを考えながら、初めてこの手に抱いた恋人の甘い香りに溺れていった。
手入れの行き届いた肌、髪、爪。流行りのブランドの服やバッグを身につけた、華やかで上品な見た目の、苦労とは無縁そうな令嬢ばかり。
天使に関する唯一の手がかりが『政治家の孫娘』だったから、それなりの家柄だと踏んで確認の対象を選んできたのだから当然と言えば当然だ。
だが、彼女たちの、幼い頃からの生活水準を保つ為、玉の輿に乗ろうと必死で俺を誉めそやすだけの中身のない会話には辟易していた。
でも、凛は─
ほとんど化粧っ気もなく、ノーブランドの服を着倒し、弟の学費の為に本業の他にアルバイトまでしている苦労人。
直向きに働く姿がいじらしい。
俺に対して媚びるどころか、ズケズケと言いたいこと言って来るところが面白い。
─そして何より、揶揄うとムキになるのが可愛いくて仕方ない。
そう感じる自分に初めて気付いたときは、酷く狼狽えた。
嘘だ。
バカな。
そんなはずあるわけない。
凛は天使とは全然違うのに。
でも、どれだけ心の中で否定しても、凛と同じ空気を吸うだけで、澱み切った自分が浄化されていくようで。
凛に出会ってから約三年。
初めて見た涙が、やっと俺の気持ちを決定的なものに変えた。
もういいだろうか。
天使は俺を恨んではいないだろうか。
許してくれるだろうか。
葛藤する俺をダメ押しするのもやっぱり凛で─
「顔しか分からない男引きずっててもしょうがないですし」
その言葉で、俺は長年の思いをようやく手放すことができたのだ。
憧れと罪悪感とでがんじがらめになっていた心と体は、一度動き出すと止まらなかった。
他の誰かに奪られる前に。
元カレの気が変わらないうちに。
一秒でも早く俺のものにしなくては。
焦りすぎた結果、二度も凛に逃げられたけれど。
最初のときはよりによって、天使の話を振られて。
あのときはかなり動揺した。
天使のことは、家族の他には、一部のしつこく言い寄ってくる女を諦めさせるときにしか話していなかったから。
今思えば、現場の噂で聞いたと言っていたから、確かめた女の中に、同業の社長の娘でもいたのかもしれない。
結果的に、凛が知っていたのは好都合だった。
自分でも驚くほど自然に初恋の思い出として凛に伝えられた。
全てを語らなかったのは未練からじゃない。
カッコ悪すぎて凛に嫌われたくて、言えなかっただけ。
凛の背中を確かめなかったのは、もうその必要がなかったから。
─こうやって、少しずつ天使のことも思い出さなくなるのだろう。
頭の片隅でそんなことを考えながら、初めてこの手に抱いた恋人の甘い香りに溺れていった。
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