惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

文字の大きさ
31 / 52
3

第31話 反撃

しおりを挟む
 昨日アストたちがクリファムの村へとたどってきた道。切り立った崖の中腹あたり。うねうねとつづく道を、数人で構成された小集団パーティが歩を進めていた。

「あーあ。ボクらがつくころには何も残ってないんじゃないかなー」
 腕に小さな盾をつけた小柄な少女が「お宝……お宝」とつぶやいている。

「しょうがないんじゃない? 小さなところだし。でも意外だったね。ひそかに古代竜の骨を隠匿いんとくしてて、それを悪事に転用しようとしている悪徳の村。こんなところがあったなんて」
 弓持ちの少女が言葉をかえした。面立ちが盾の少女とよく似ている。

「ま、俺たちのメインは都市攻略だからな。ここはついでみたいなもんさ」
 槍の穂先だけを手にして、それをクルクルともてあそんでいた細身の男が、気の抜けた様子でつぶやいた。そしてつけくわえて、

「先発隊まで出す必要あったんかね? あんな小っせえところだ。てきとうにワーッて行って、ワーッてやりゃあよかったんじゃね? リーダー?」

「……」
 リーダーと呼ばれた、黒い鎧で大剣を背負っている男は沈黙したままだ。

「油断は禁物ですよ? 軽くみていると足元をすくわれるかもしれません」
 かわりに大剣男のすぐそばを歩いている女性がこたえた。僧侶のローブに身を包んでいる。

「そうはいってもなー……」
 と盾持ちの少女はなおも不満顔。

「正直いうと、私もちょっと、うずうず……」
 弓持ちの少女もやや不満顔。

「ま、久々だしな。腕がなるってもんよ」
 槍男も血気盛んな表情をみせていた。

「みなさん、落ち着いて……」
 僧侶がなだめていたが——
「あら? 反応が……ロスト?」

「どうしたの?」
 盾持ちの問いに、僧侶が答える。
「門にむかった二人が……。んー?」

索敵さくてき
 大剣持ちの指示に、僧侶が目を閉じた。

「ッ! 一体接近! これは……谷を……移動!?」

「どういうこと? ここすっごい高さだよ? 飛んできてるってこと?」
 と前に出た弓持ちが谷底をのぞきこみながら、
「何も見えないけど……」
 とつぶやいていると、

「戦闘陣形。前方展開」
「「「了解」」」

 大剣持ちの指示の声に、他のメンバーが陣形を整えようとした刹那——
 崖下からふわっと浮きあがるように人影があらわれ、彼らの道を塞いだ。

 女獣人である。
 そして彼女は間髪入れず、集団にむかって突き進んでいく。
 まず狙いをつけたのは、いちばん手近にいた弓持ちだ。

「な!? こいつ!」
 弓持ちは不意をつかれ、矢をつがえるひまもない。

 一瞬で間合いをつめた獣人の強烈な拳が炸裂——

 ガギィッ! と鈍い音が響いた。

 盾持ちの少女があいだに入り、獣人の攻撃を防いでいる。だが、

「げっ。こわれた!?」
 盾が粉々にはじける。

 続いて獣人の二の拳。

「やばっ!?」
 青ざめる盾持ちの顔に獣人の一撃が——

「なろーッ! せいッ」
 瞬間、滑りこんだ槍持ちが低い姿勢から、そので一気に切りあげてきた。

 槍の切っ先が獣人のあごを削ぎ切ろうかというギリギリのところで、獣人は身をひるがえして後方に跳躍ちょうやく。一度距離をとり、間合いをはかる。
 そして獣人が態勢をととのえたとき、集団パーティ側も陣形を整備し終えていた。

 しばしの睨みあい。

「お嬢、大丈夫か?」
 槍持ちの問いかけに、

「サンキュ、助かった。……けど何こいつ? ボクの盾を一発で壊すなんて」
 盾持ちはこたえながら、腕に魔力をこめる。すると、構える彼女の腕に第二の盾があらわれた。一見してさきほどの盾よりも質が高いとわかる。

 獣人は鋭い目つきで攻めどころを探っているが、相手は戦闘に慣れた手練てだれの様子、なかなかスキを見せない。

 一度両者の動きが止まった。


  ◇


 しばらく、じり……とした時間がすぎていった。
 お互いがお互いを、じっ……と観察する。相手の呼吸、気迫、身構え、視線の動き——その一挙手一投足を情報源に、相手の力量を割り出していく。

 その時間は、実際にはほんの数秒程度のものだったが、その場にいるものにとっては、ずいぶんと長く感じられた。

 永遠にも思える、刹那の時間。

 その圧縮された密度の高い時間の中で、獣人リーシアは集団の構成を分析していた。

(盾、弓、槍、僧侶。……おそらくあの大剣持ちがリーダー格とみました。ならば、アタマを最優先で潰す!)

「……オートヒール」
「はい。〈オートヒール〉!」
 大剣持ちの指示に、僧侶がパーティ全体に自動回復をかけた。

 ——ジャリッ!
 リーシアの足裏で砂利が砕ける。足を踏みしめ、気迫に満ち、もう一度攻め込む気配がありありとしている。
 そして彼女の足が大地を蹴ったところで、

「よっしゃ、いつもどおりいくよ!」
 前に出ていた盾持ちが構え、ポーズをとって、
「はい、〈目線くださーいLook at me〉!」

 するとリーシアの注意が否応にも盾持ちに惹きつけられていく。

(これは……意識を操作された!?)

 同時に周囲への注意が散漫になった。見えてはいるのだが、視界の外側がぼやけた感じになる。
 彼女が見ているのは、盾持ちだけ。
 いや、盾持ちの持っている盾だけ。
 それだけ見えて、ほかには何も見えない。

「よし、きいてる! きかないヤバいヤツじゃなくてよかった!」

「いくよ! 〈我が矢よ、雨と降りそそげ〉!」
 弓持ちが矢を一本、空にむけて放った。それは見る間に幾本の矢になり、雨となってリーシアに降りそそぐ。

 ……ガリッ!
 すると肉を噛み切る音がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...