36 / 52
3
第36話 絶望
しおりを挟む
このままだとエミーさんが殺されてしまう……。
何とかしないと。
何かしないといけない。
何ができるだろうか?
と思って、はたと気づいた。
僕に何か……できるのか?
この場で僕にできることが……あるのだろうか?
そう気づいて愕然とした。
僕にできることは、何もない……。
僕は転生者だ。
転生者は何かすごい力を持っていて、とにかくどんな状況になっても動じなくて、無双しまくって、問題が起こっても全部簡単に解決できるし、戦闘になればなおさらだ——そんなふうに思っていたし、そうあるものだと思っていた。
転生前にあの女神様たちと話していたときも、そういう感じの流れだったし、僕にもピンチになると発動するような特殊能力が付与されているものだと思っていた。
思って……いた。
勝手にそう思っていた。
そう。僕が勝手に思いこんでいた——だけだったのだろうか?
今この瞬間、目の前でエミーさんが殺されようとしている。
このままだと、この世界で、はじめて会って、はじめて親しくなった二人のうちの一人を、目の前で失ってしまう。
それを僕はただ黙って見ていることしかできないのか?
リーシアさんもたった一人で向かっていった。集団でいるらしいやつらのところに行った。彼女も無事で帰ってくるという保証はない。
もしかしたら、僕は二人とも失ってしまうかもしれないのだ。
何もできずに……。
何もせずに……。
「う……、あぁぁぁっ!」
石ころをつかんで投げた。
別にそれであの男を倒せるとは思ってない。けれど、何かせずにはいられない。僕が石を投げるせいで、もしかしたら近くのおかみさんや村の人たちを危険にさらしてしまうかもしれない。
けれど何かせずにはいられなかった。
何かしないではいられなかった。
「くそっ……! くそ……!」
手近の石ころがなくなったら、そのへんに散乱していた木切れとか、レンガとか、そういうものを手当たりしだいに投げた。
投げつけた。
なんとかしたかった。
けれど、なんにもならない——
「おらっ、これもくらいな!」
するとおかみさんも適当につかんだモノを思いっきり投げつけはじめた。足が痛いはずなのに、それでもやつにむかって、投げつけてくれる。
「〈ファイヤ〉!」
点灯師さんの小さな火が飛んでいく。
続いてそばの人たちも、いろんなモノを投げつけはじめた。
男にむかってバラバラとモノが飛んでいき、そのいくつかが当たる。
けれど男は僕らのほうを一度ちらっと見ただけで、エミーさんへの注意をはずさない。
ダメか……。
そして敵の刃が、今にも放たれようとしていた。
あれが放たれると、終わりだ。
もう手立てはないのか。
そのとき——
「ふぁ、〈ファイヤー……ボール〉!」
道の反対側から、小さな声があがった。
何とかしないと。
何かしないといけない。
何ができるだろうか?
と思って、はたと気づいた。
僕に何か……できるのか?
この場で僕にできることが……あるのだろうか?
そう気づいて愕然とした。
僕にできることは、何もない……。
僕は転生者だ。
転生者は何かすごい力を持っていて、とにかくどんな状況になっても動じなくて、無双しまくって、問題が起こっても全部簡単に解決できるし、戦闘になればなおさらだ——そんなふうに思っていたし、そうあるものだと思っていた。
転生前にあの女神様たちと話していたときも、そういう感じの流れだったし、僕にもピンチになると発動するような特殊能力が付与されているものだと思っていた。
思って……いた。
勝手にそう思っていた。
そう。僕が勝手に思いこんでいた——だけだったのだろうか?
今この瞬間、目の前でエミーさんが殺されようとしている。
このままだと、この世界で、はじめて会って、はじめて親しくなった二人のうちの一人を、目の前で失ってしまう。
それを僕はただ黙って見ていることしかできないのか?
リーシアさんもたった一人で向かっていった。集団でいるらしいやつらのところに行った。彼女も無事で帰ってくるという保証はない。
もしかしたら、僕は二人とも失ってしまうかもしれないのだ。
何もできずに……。
何もせずに……。
「う……、あぁぁぁっ!」
石ころをつかんで投げた。
別にそれであの男を倒せるとは思ってない。けれど、何かせずにはいられない。僕が石を投げるせいで、もしかしたら近くのおかみさんや村の人たちを危険にさらしてしまうかもしれない。
けれど何かせずにはいられなかった。
何かしないではいられなかった。
「くそっ……! くそ……!」
手近の石ころがなくなったら、そのへんに散乱していた木切れとか、レンガとか、そういうものを手当たりしだいに投げた。
投げつけた。
なんとかしたかった。
けれど、なんにもならない——
「おらっ、これもくらいな!」
するとおかみさんも適当につかんだモノを思いっきり投げつけはじめた。足が痛いはずなのに、それでもやつにむかって、投げつけてくれる。
「〈ファイヤ〉!」
点灯師さんの小さな火が飛んでいく。
続いてそばの人たちも、いろんなモノを投げつけはじめた。
男にむかってバラバラとモノが飛んでいき、そのいくつかが当たる。
けれど男は僕らのほうを一度ちらっと見ただけで、エミーさんへの注意をはずさない。
ダメか……。
そして敵の刃が、今にも放たれようとしていた。
あれが放たれると、終わりだ。
もう手立てはないのか。
そのとき——
「ふぁ、〈ファイヤー……ボール〉!」
道の反対側から、小さな声があがった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる