惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

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第39話 妖精(1)

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 目の前で繰り広げられる生死をかけた戦い。

 だが戦局は一方的だ。
 思うさまに蹂躙じゅうりんしているのは、この村を襲っている侵略者の男。
 彼に対して僕らはなすすべもない。

 けれど今、一人の少女が自らの命を削って、いや投げうって、一矢いっしむくいようとしていた。

 そんな緊迫した状況の中で、なんともまのぬけたしゃべり方をするものがいる。
 それも僕のすぐそばで。
 というか耳元で。
 ほとんど僕の耳にむかってささやきかけているんじゃないか、というくらい近くで。

 声の質も変わった感じだった。もちろんしゃべっているのは、おかみさんじゃないし、村の人たちでもない。急にこの場にふってわいたような場違いさ。
 ぎょっとして横を見ると——

 妖精がいた。

 前髪のくりんとした、ちょっと風変わりな髪型に、大きな瞳の整った顔立ち。
 服は——花を摘んで、シベなんかをとっぱらって、それをひっくり返してスカートにした感じ。上も花びらを体に巻きつけたような——そんなのを着ている。
 足はむき出しで裸足。

 そして背中から生えているらしい透き通った大きな羽根。
 けれどバタつかせてるという雰囲気でもなく、僕の肩先あたりで、ふわっと浮いて、今決死の覚悟で詠唱をつむいでいるアシュリンちゃんの方を見ている。

 何度見直しても、その姿は妖精さんだった。

 ちなみに僕の前世、一つの惑星だったときにも妖精さんはいた。だから、姿が似ているから妖精さんだと思ったわけだけど。けれど、全く同一の存在という感じでもない……。それにどうして今この瞬間に現れたんだろ、と思っていると、

「あらあら。いいのかしら? あの子、七人乙女セブン・シスターズの一人なのに。一人でも欠けちゃったら大変なのにねえ?」

 セブン……シスターズ?
 はじめて聞く言葉にとまどいつつも、ジーッと妖精さんを見ていると、彼女? 彼? は僕の視線に気づいたのか、ひょいとこっちを見た。

 視線がかちあった。

「「…………」」
 しばし沈黙。

「ん? ん~?」
 と妖精さんは、けげんな様子だ。

「ん~~?」
 妖精さんの目が不審者を見る目つきだ。
 不審者である僕をしげしげと見つめながら、浮いたままの妖精さんが左右に動く。
 するともちろん僕の視線も追随ついずいして動く。
 妖精さんはそれを確認すると、

「もしかしてあなた……、あたしが見えてる……?」
 僕はコクコクとうなずく。

「まーじなの!? あたしたちが見える子っていつぶりかしらっ」
 と、おおげさに驚かれた。そして、

「あら、あなた……(くんくん)」
 と僕のにおいをかぐ妖精さん。

「あ、やっぱり……そうね。あなた?」
 僕?

「向こうの森でさ、ずいぶんいい匂いがしたから、それをたどってきたんだけど……」
 におい……?

「そしたら急にドンパチはじまっちゃうじゃない? もぉ流れがぐっちゃぐちゃになっちゃって、しっちゃかめっちゃか」
 くんくん、とまたかいできた。

「ふーん。あなたなのね。よかった。見つけたわ!」

 におい……うん? 僕のにおい? 体臭!? 昨日の場所からたどれるほどにおってる? え、僕そんなにくさい!? 
 いやいや、それはさすがに常識的に考えてもないと思う。そんなににおっていたら、獣人のリーシアさんはたぶん鼻がきくから鼻がもげてたはずだし、エミーさんや村の人たちも顔をしかめると思うし。
 それにしても……さっきこの妖精さんが言ってた七人乙女ってなんのことだろ……?

 いやいやっ! 今はそういう場合じゃなくて! 
 今はアシュリンちゃんだ!

 視線を戻すと——よかった。まだ彼女は魔法を撃っていない。
 でもやっぱりこのままじゃ行きつく先は同じだ。
 焦る。
 けれど祈ることしかできない。

「アシュリンちゃん……死なないでくれよ……」

「あの子を助けたいなら助ければいいんじゃないの?」
 さも簡単なことのように妖精さんが言う。それができれば苦労はしない!

「んー? もしかしてあなたわかってない? あなたがやればできるでしょ?」
 僕がやれば……できる? 

「何を?」
 思わず聞いてしまっていた。
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