27 / 74
17-1話 遠藤もも 「洞窟のダメンズ3」
しおりを挟む
視点変わります。ももちゃんこと遠藤もも
ほか今話登場人物(ニックネーム)
小暮元太(ゲンタ)
沼田睦美(むっちゃん)
土田清正(ダメンズ3)
魚住将吾(ダメンズ3)
茂木あつし(ダメンズ3)
山田卓司(タク)
花森千香(花ちゃん)
ヴァゼルケビナード(ヴァゼル師匠)
根岸光平(コウ)
ジャムザウール(ジャムさん、ジャムパパ)
有馬和樹(キング)
-・-・-・-・-・-・-・-・ー
「もも、ダメンズ3と連絡取れる?」
ヴァゼル忍者クラブで、早朝練習をしている時だった。女子の一人から声をかけられる。
「モシモシ!」
耳を手を当てた。あたしのスキル「遠隔通話」だ。でも何も聞こえない。相手が気づいてないというより「圏外」っぽい。
「あいつら、多分あそこで寝てるわ。あたし起こしてくる」
「ダメンズ3」とは、本人たちが自虐的にそう呼んでいる。目論見が外れて、スキルがまったく役に立たないからだ。この世界でスキルが役に立たないというのは、かなり気の毒。
せっかくの異世界。魔法が使えないので、スキルぐらいは使いたい。
この世界に来たばかりのころは、魔法とか使えるかも! とわくわくしたが、だめみたい。頭良い人グループが言うには、地球の人間と、ここの生物はタイプが違うっぽい。
剣を鞘に戻し、腰に差した。広場をあとにする。
広場の隅で素振りをしている大男を見つけた。小暮元太だ。手にしているのは……石斧? 木の棒に石をくくりつけている。おお、そんな武器に行き着いたのね。
あの街への買い出しは、けっきょく中止になった。
敵のゴーレムに勝つと、ローブの老人はあっという間に逃げ出した。残されたのは荷車が一台。それを引いていた馬が二頭。それを捨てていくのは、もったいない。
馬ごと荷馬車を連れて帰ることにした。それ以降、街への買い出しは見送り。また見つかったらやっかいだ。
「ももちゃん?」
呼ばれて振り向いた。
呼んだのは「むっちゃん」こと沼田睦美だった。
「洞窟?」
「そう、ダメンズ3、またあそこで寝てるわ」
「じゃあ、私も。そろそろランプ切れてるはずだから」
ランプとは、むっちゃんが光らす石だ。洞窟なので四六時中ランプがないと見えない。
洞窟は、この「隠れ里」を囲う山の中腹にあった。かなり深い洞窟で、前の住人が使っていた形跡もある。
食料が自給自足でいけるのが、この洞窟のお陰が大きい。岩塩が取れるからだ。
むっちゃんと話しながら、洞窟に向かう。
話題は、部屋に置く「むっちゃんランプ」に何が似合うか? 女子に人気なのは花や葉っぱ。二つほど置いておくと、いい雰囲気の部屋になる。
「男子で人気なのって、何?」
「んー、ただの石が多いけど、一部で人気なのは、動物の頭蓋骨」
「うげっ。男の子の趣味って永遠の謎だわ」
「あれ? ももちゃんは理解ありそうな気がした」
むむ、プロレス好きがバレたので、あたしは男性っぽいと思われているのか。
そんな話をしていると、洞窟の入り口に着いた。むっちゃんが入り口すぐの石にさわる。
「ピカール!」
ちょうど台座のような岩の上に置かれた石が光る。
明るくなった洞窟を進み、点々と置かれたランプ代わりの石を灯していった。
洞窟の最深部で、三人が寝ていた。一番近くの土田清正くんを起こす。
「土田くん、起きて!」
「んあ?」と間抜けな声を上げて、土田くんが起きた。
土田くんのスキルは、酵母菌を見るための顕微鏡になる目。
土田酒造の跡取りであった土田くんは、この異世界でも酒を造ろうと目論んだらしい。
悲しいかな、麦はあっても米がない。味噌と醤油も酵母で作るが、豆もない。酒はどうでもいいけど、豆はぜひとも手に入れて、味噌と醤油は作って欲しいな。
「なんだ、ももかよ」
気だるそうに起きてきたのは、魚住将吾くん。
魚住くんは、もっと悲惨だ。釣り竿がなくても釣れるというスキルらしい。けど、この付近に海もなければ池もない。
この里の入り口に川はあったが、清流すぎるのか、魚はいないようだった。
「おうおう、なんでい! もう朝かい?」
「茂木くん、江戸弁ぶらないでいいから」
茂木あつしくんは、悲惨というより切ない。
茂木くんの父親は大工だ。小さい時から、自分も大工になると決めてたらしい。
そうなると、この異世界での物作りは自分の役目だと思った。付けたスキルは「糸ノコギリ」だ。
ところが、この「隠れ里」があったお陰で、家を作る必要はない。
みんなの役に立とうと頭をひねった結果、今のとこ、無用のスキルとなってしまった。
「もう、三人とも、あたしの通話が届かないんだから、自分で起きてよね!」
ダメンズ3は岩塩の発掘を買って出たのだが、化石がたまに出るらしい。昼は岩塩を発掘して、夜は化石掘りにハマっている。
まったく、男子の趣味って、わからんわ。
「もも、遠藤ももよ」
地面からとつぜん、女の霊が出てきた!
「うううわぁぁぁぁ!」
五人ともが腰を抜かした。
「あっ、おどかしてすまぬ。わらわじゃ」
よく見ると、菩提樹の精霊さんだ。
「もう、精霊さん! ここ洞窟よ。雰囲気ありすぎ!」
「すまぬ。ちとまずいことになった。わらわの元まで急ぎ、駆けつけられまいか?」
何がまずいのか? でも精霊さんが言うのだから、かなりまずい!
ほか今話登場人物(ニックネーム)
小暮元太(ゲンタ)
沼田睦美(むっちゃん)
土田清正(ダメンズ3)
魚住将吾(ダメンズ3)
茂木あつし(ダメンズ3)
山田卓司(タク)
花森千香(花ちゃん)
ヴァゼルケビナード(ヴァゼル師匠)
根岸光平(コウ)
ジャムザウール(ジャムさん、ジャムパパ)
有馬和樹(キング)
-・-・-・-・-・-・-・-・ー
「もも、ダメンズ3と連絡取れる?」
ヴァゼル忍者クラブで、早朝練習をしている時だった。女子の一人から声をかけられる。
「モシモシ!」
耳を手を当てた。あたしのスキル「遠隔通話」だ。でも何も聞こえない。相手が気づいてないというより「圏外」っぽい。
「あいつら、多分あそこで寝てるわ。あたし起こしてくる」
「ダメンズ3」とは、本人たちが自虐的にそう呼んでいる。目論見が外れて、スキルがまったく役に立たないからだ。この世界でスキルが役に立たないというのは、かなり気の毒。
せっかくの異世界。魔法が使えないので、スキルぐらいは使いたい。
この世界に来たばかりのころは、魔法とか使えるかも! とわくわくしたが、だめみたい。頭良い人グループが言うには、地球の人間と、ここの生物はタイプが違うっぽい。
剣を鞘に戻し、腰に差した。広場をあとにする。
広場の隅で素振りをしている大男を見つけた。小暮元太だ。手にしているのは……石斧? 木の棒に石をくくりつけている。おお、そんな武器に行き着いたのね。
あの街への買い出しは、けっきょく中止になった。
敵のゴーレムに勝つと、ローブの老人はあっという間に逃げ出した。残されたのは荷車が一台。それを引いていた馬が二頭。それを捨てていくのは、もったいない。
馬ごと荷馬車を連れて帰ることにした。それ以降、街への買い出しは見送り。また見つかったらやっかいだ。
「ももちゃん?」
呼ばれて振り向いた。
呼んだのは「むっちゃん」こと沼田睦美だった。
「洞窟?」
「そう、ダメンズ3、またあそこで寝てるわ」
「じゃあ、私も。そろそろランプ切れてるはずだから」
ランプとは、むっちゃんが光らす石だ。洞窟なので四六時中ランプがないと見えない。
洞窟は、この「隠れ里」を囲う山の中腹にあった。かなり深い洞窟で、前の住人が使っていた形跡もある。
食料が自給自足でいけるのが、この洞窟のお陰が大きい。岩塩が取れるからだ。
むっちゃんと話しながら、洞窟に向かう。
話題は、部屋に置く「むっちゃんランプ」に何が似合うか? 女子に人気なのは花や葉っぱ。二つほど置いておくと、いい雰囲気の部屋になる。
「男子で人気なのって、何?」
「んー、ただの石が多いけど、一部で人気なのは、動物の頭蓋骨」
「うげっ。男の子の趣味って永遠の謎だわ」
「あれ? ももちゃんは理解ありそうな気がした」
むむ、プロレス好きがバレたので、あたしは男性っぽいと思われているのか。
そんな話をしていると、洞窟の入り口に着いた。むっちゃんが入り口すぐの石にさわる。
「ピカール!」
ちょうど台座のような岩の上に置かれた石が光る。
明るくなった洞窟を進み、点々と置かれたランプ代わりの石を灯していった。
洞窟の最深部で、三人が寝ていた。一番近くの土田清正くんを起こす。
「土田くん、起きて!」
「んあ?」と間抜けな声を上げて、土田くんが起きた。
土田くんのスキルは、酵母菌を見るための顕微鏡になる目。
土田酒造の跡取りであった土田くんは、この異世界でも酒を造ろうと目論んだらしい。
悲しいかな、麦はあっても米がない。味噌と醤油も酵母で作るが、豆もない。酒はどうでもいいけど、豆はぜひとも手に入れて、味噌と醤油は作って欲しいな。
「なんだ、ももかよ」
気だるそうに起きてきたのは、魚住将吾くん。
魚住くんは、もっと悲惨だ。釣り竿がなくても釣れるというスキルらしい。けど、この付近に海もなければ池もない。
この里の入り口に川はあったが、清流すぎるのか、魚はいないようだった。
「おうおう、なんでい! もう朝かい?」
「茂木くん、江戸弁ぶらないでいいから」
茂木あつしくんは、悲惨というより切ない。
茂木くんの父親は大工だ。小さい時から、自分も大工になると決めてたらしい。
そうなると、この異世界での物作りは自分の役目だと思った。付けたスキルは「糸ノコギリ」だ。
ところが、この「隠れ里」があったお陰で、家を作る必要はない。
みんなの役に立とうと頭をひねった結果、今のとこ、無用のスキルとなってしまった。
「もう、三人とも、あたしの通話が届かないんだから、自分で起きてよね!」
ダメンズ3は岩塩の発掘を買って出たのだが、化石がたまに出るらしい。昼は岩塩を発掘して、夜は化石掘りにハマっている。
まったく、男子の趣味って、わからんわ。
「もも、遠藤ももよ」
地面からとつぜん、女の霊が出てきた!
「うううわぁぁぁぁ!」
五人ともが腰を抜かした。
「あっ、おどかしてすまぬ。わらわじゃ」
よく見ると、菩提樹の精霊さんだ。
「もう、精霊さん! ここ洞窟よ。雰囲気ありすぎ!」
「すまぬ。ちとまずいことになった。わらわの元まで急ぎ、駆けつけられまいか?」
何がまずいのか? でも精霊さんが言うのだから、かなりまずい!
11
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる