3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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17-1話 遠藤もも 「洞窟のダメンズ3」

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視点変わります。ももちゃんこと遠藤もも
ほか今話登場人物(ニックネーム)
小暮元太(ゲンタ)
沼田睦美(むっちゃん)
土田清正(ダメンズ3)
魚住将吾(ダメンズ3)
茂木あつし(ダメンズ3)
山田卓司(タク)
花森千香(花ちゃん)
ヴァゼルケビナード(ヴァゼル師匠)
根岸光平(コウ)
ジャムザウール(ジャムさん、ジャムパパ)
有馬和樹(キング)

-・-・-・-・-・-・-・-・ー




「もも、ダメンズ3と連絡取れる?」

 ヴァゼル忍者クラブで、早朝練習をしている時だった。女子の一人から声をかけられる。

「モシモシ!」

 耳を手を当てた。あたしのスキル「遠隔通話」だ。でも何も聞こえない。相手が気づいてないというより「圏外」っぽい。

「あいつら、多分あそこで寝てるわ。あたし起こしてくる」

「ダメンズ3」とは、本人たちが自虐的にそう呼んでいる。目論見が外れて、スキルがまったく役に立たないからだ。この世界でスキルが役に立たないというのは、かなり気の毒。

 せっかくの異世界。魔法が使えないので、スキルぐらいは使いたい。

 この世界に来たばかりのころは、魔法とか使えるかも! とわくわくしたが、だめみたい。頭良い人グループが言うには、地球の人間と、ここの生物はタイプが違うっぽい。

 剣を鞘に戻し、腰に差した。広場をあとにする。

 広場の隅で素振りをしている大男を見つけた。小暮元太だ。手にしているのは……石斧? 木の棒に石をくくりつけている。おお、そんな武器に行き着いたのね。

 あの街への買い出しは、けっきょく中止になった。

 敵のゴーレムに勝つと、ローブの老人はあっという間に逃げ出した。残されたのは荷車が一台。それを引いていた馬が二頭。それを捨てていくのは、もったいない。

 馬ごと荷馬車を連れて帰ることにした。それ以降、街への買い出しは見送り。また見つかったらやっかいだ。

「ももちゃん?」

 呼ばれて振り向いた。

 呼んだのは「むっちゃん」こと沼田睦美だった。

「洞窟?」
「そう、ダメンズ3、またあそこで寝てるわ」
「じゃあ、私も。そろそろランプ切れてるはずだから」

 ランプとは、むっちゃんが光らす石だ。洞窟なので四六時中ランプがないと見えない。

 洞窟は、この「隠れ里」を囲う山の中腹にあった。かなり深い洞窟で、前の住人が使っていた形跡もある。

 食料が自給自足でいけるのが、この洞窟のお陰が大きい。岩塩が取れるからだ。

 むっちゃんと話しながら、洞窟に向かう。

 話題は、部屋に置く「むっちゃんランプ」に何が似合うか? 女子に人気なのは花や葉っぱ。二つほど置いておくと、いい雰囲気の部屋になる。

「男子で人気なのって、何?」
「んー、ただの石が多いけど、一部で人気なのは、動物の頭蓋骨」
「うげっ。男の子の趣味って永遠の謎だわ」
「あれ? ももちゃんは理解ありそうな気がした」

 むむ、プロレス好きがバレたので、あたしは男性っぽいと思われているのか。

 そんな話をしていると、洞窟の入り口に着いた。むっちゃんが入り口すぐの石にさわる。

「ピカール!」

 ちょうど台座のような岩の上に置かれた石が光る。

 明るくなった洞窟を進み、点々と置かれたランプ代わりの石を灯していった。

 洞窟の最深部で、三人が寝ていた。一番近くの土田清正くんを起こす。

「土田くん、起きて!」

「んあ?」と間抜けな声を上げて、土田くんが起きた。

 土田くんのスキルは、酵母菌を見るための顕微鏡になる目。

 土田酒造の跡取りであった土田くんは、この異世界でも酒を造ろうと目論んだらしい。

 悲しいかな、麦はあっても米がない。味噌と醤油も酵母で作るが、豆もない。酒はどうでもいいけど、豆はぜひとも手に入れて、味噌と醤油は作って欲しいな。

「なんだ、ももかよ」

 気だるそうに起きてきたのは、魚住将吾くん。

 魚住くんは、もっと悲惨だ。釣り竿がなくても釣れるというスキルらしい。けど、この付近に海もなければ池もない。

 この里の入り口に川はあったが、清流すぎるのか、魚はいないようだった。

「おうおう、なんでい! もう朝かい?」
「茂木くん、江戸弁ぶらないでいいから」

 茂木あつしくんは、悲惨というより切ない。

 茂木くんの父親は大工だ。小さい時から、自分も大工になると決めてたらしい。

 そうなると、この異世界での物作りは自分の役目だと思った。付けたスキルは「糸ノコギリ」だ。

 ところが、この「隠れ里」があったお陰で、家を作る必要はない。

 みんなの役に立とうと頭をひねった結果、今のとこ、無用のスキルとなってしまった。

「もう、三人とも、あたしの通話が届かないんだから、自分で起きてよね!」

 ダメンズ3は岩塩の発掘を買って出たのだが、化石がたまに出るらしい。昼は岩塩を発掘して、夜は化石掘りにハマっている。

 まったく、男子の趣味って、わからんわ。

「もも、遠藤ももよ」

 地面からとつぜん、女の霊が出てきた!

「うううわぁぁぁぁ!」

 五人ともが腰を抜かした。

「あっ、おどかしてすまぬ。わらわじゃ」

 よく見ると、菩提樹の精霊さんだ。

「もう、精霊さん! ここ洞窟よ。雰囲気ありすぎ!」
「すまぬ。ちとまずいことになった。わらわの元まで急ぎ、駆けつけられまいか?」

 何がまずいのか? でも精霊さんが言うのだから、かなりまずい!
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