悪役令嬢はお断りです

あみにあ

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第三章

疑惑の調査 (其の一)

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ガブリエル伯爵はそれなりの大物。
私の家が公爵、爵位は下になるが、伯爵の中でも影響力が強い。
彼の父は重鎮貴族の一員だし、力も権力もお金もある。
私自身公爵家を名乗れるかは怪しいが、そんな大物相手に、周りを巻き込まない方が良いのはわかっている。
彼に眼をつけられたら、貴族生命にかかわってくるだろうから。

証拠を見つけられるまで、一人で調べようと思っていたのだが……宿舎を出る時にエドウィンに見つかってしまった。
どこへ行くのかと詮索され、必死で誤魔化してはいたんだけれど、ついてくるの一点張り。
仕方がないので、エドウィンを街へ連れて行くことになった。
私の調べている詳細については話さないようにして、なるべく関わらないよう気を付けなきゃね。
彼は貴族ではないけれど、保証人はピーター。
ピーターに迷惑を掛けるわけにはいかない。

街へやってくると、とりあえずブラブラ街道を進んで行く。
本当はすぐにでもガブリエルの屋敷近くに行きたかったんだけれど……。
チラッと隣を歩くエドウィンをみると、バッチリ目が合った。

「ねぇ、主様どこへ行くの?」

「うーん、とりあえず街を散策しよう」

エドウィンはコクリと深く頷くと、ピッタリを肩をくっつける。
歩きにくいが……言っても無駄なことは知っていた。

「ところでエドウィン、気になっていたんだけれど、人間になるには私に触れなければいけないのよね?戻るときも同じ?」

「うん、主様に触れて人間になれば、また主様に触れないと獣に戻れない。一応主様に触れなくても人間っぽい姿にはなれる。それだと耳や尻尾、鼻が残って人間もどきだけれでも。でもその時は自分の意思で獣に戻れる」

「色々な制約があるのね」

「うんうん、そうだ、主様の意思で俺を変えることも出来るよ」

「どういう意味?」

「主様が俺に触れて、獣に戻れと思えば獣に戻る。逆も同じ。俺の意思よりも主様の意思が優先されるんだ。俺たちは魂で繋がっている。主様は俺の体をすきなように出来るんだよ」

「ちょっ、言い方ッッ。はぁ……まぁ色々と出来るのか。主ってなかなかすごいね」

そんな他愛のない話をしながら歩いていると、ふと緊張した面持ちの少年が路地裏から大通りを覗き込んでいるのが目に映った。
ブロンドの短髪に、淡いサファイアの瞳。
可愛らしい顔立ちだが、服はボロボロで裸足だ。
少年はソワソワしていていて、ずっと周りを気にしている。
あの男の子……どうしたのかな?

立ち止まり男の子をじっと見つめると、大通りにやってきた貴族用の馬車が大通りに現れた。
男の子は深く息を吸い込んだかと思うと、その馬車へ近づいて行く。
震える手をポケットを忍ばせ、物陰に隠れながら馬車の裏側へ回った刹那、ポケットからキラリと光るナイフが現れた。
ちょっと、何をするつもりなの!?

「あっ、主様!?」

エドウィンの声に振り返ることなく、私は慌てて馬車へ向かって走ると、馬車の扉が開いた。
現れたのはガブリエル伯爵。
馬車を確認すると、彼の紋章が描かれていた。
彼がどうしてここ?
ここは貴族街から離れた場所で、平民たちが暮らす場所だ。
貴族はあまりこの場所を訪れないのに……。

っと今はそんなことよりも。
じっと少年へ視線を向けると、ガブリエル伯爵を鋭い目つきで睨みつけていた。
平民の少年が貴族に対してナイフを向けたとなれば、理由がどうあれただじゃすまない。
今にも飛び掛かりそうな少年の姿に焦りながらも、私は何とか馬車裏へ回り込むと、少年を捕まえた。

「なっ、離せ!!!」

暴れる少年を暴れ馬を落ち着かせるかの如く宥める。
エドウィンが追いかけてくると、私は少年を彼に預けた。

「どうどう、落ち着いて、エドウィン彼を裏路地へ連れて行って。怪我をさせないでね」

「まかせろ」

私は衣服を整えニッコリ笑みを浮かべると、馬車裏から顔をだし、ガブリエルに向かって敬礼を見せた。

「お騒がせして申し訳ございません、ガブリエル伯爵殿」

「何かあったのかい?君は確か……有名なリリー殿だね?その少年は?」

「いいえ、何でもありません。ところでこんな場所に貴族の方が来るなんて珍しいですね」

「あぁ、ここのお茶が気に入っているんだよ」

ガブリエルは茶専門店との看板を指さすと、ニッコリと笑みを深めた。

「そうでしたか、では失礼します」

私はそそくさとその場を去ると、裏路地へ入り少年の元へ向かったのだった。
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