聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます

あみにあ

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33.閑話:彼女との出会い (リック視点)

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問いただしてみようと考えていたある日、彼女が仕事を見つけてきたそういった。
しかも酒場で仕事をするなんて許せなかった。
男ばかりの場所で、美しいリサがそんな奴らの目に映らせるなんて。

頑固な彼女にわからせるため、彼女の細い腕を掴んで襲った。
彼女の吐息が届く距離に近づき、赤い唇に触れそうになった。
そこで彼女の腕の震えが伝わり、ハッと我に返った。
サッと手を離すと、彼女は出て行くのだとそういった。
それはダメだ、それだけは……。

彼女が酒場で働くようになって数日。
僕はどうやって辞めさせようかと考えていた。
そんなある日、騎士の稽古場で騒ぐ騎士たちの言葉が耳にとどいた。

「なぁなぁ知っているか?街はずれにあるラムって酒場にめちゃめちゃ可愛い女の子がいるんだぜ」

「あっ、知ってる。そこビールが上手いと有名だよな。それに最近新しい酒も出来たってきいたぜ。確か……ハイボールって名前だったかな」

「リサちゃんだろう、綺麗だよな。俺最近通ってるだよな。ハイボールも美味いし。おっ、そうだ今日訓練の後、みんなで行くか?」

「おう、もちろんお前の驕りでだよな?」

「おい、って仕方がねぇなぁ」

騎士達の話に思わず立ち止まった。
やはりそういう目で見られているではないですか……早々に手を打たなければ。
エリザベスの頃もそうでしたが、彼女は魅力的な令嬢だ。
人形のように整った顔立ち、きりっとした目に、真っ赤な唇、豊富な胸。
王子の婚約者でなければ、婚約の申し込みが殺到していただろう。

考え込んでいると、騎士の一人と目が合った。
最近入隊した若い騎士だ。

「あっ、リチャード殿、よかったら一緒に飲みに行きませんか?」

「おい、何言ってんだよ、貴族様の行くとこじゃねだろう。すみません、こいつまだ新人で……」

同じ隊の騎士が慌てた様子で新人騎士の頭を叩くと、後ろへと下がらせた。
僕は表情を作ると、騎士達の方へと近づいて行く。

「もしよければご一緒させてください」

「……本当にいいんですか?お貴族様が行くような場所じゃないですが」

僕は大丈夫だと返すと、訓練後彼らと酒場に向かった。

純粋な好奇心だった。
彼女の働く姿を一度も見ていない。
僕が店いけば、彼女はどんな反応をするのだろうか。

店に入ると、そこは狭く人が溢れていた。
活気のある店内で動き回る彼女の姿。

「いらっしゃい……ませ」

僕に気が付いた彼女は一瞬狼狽すると、慌てて笑顔を作る。

「リサちゃんーこっちにハイボール頼むよ」

「はぁーい」

元気よく挨拶する彼女は生き生きとしていた。

「ご注文は?」

「おれはハイボール」

その声に続くようにハイボールとの声が重なる。

「リチャード殿、どうされますか?」

「僕も同じので……」

彼女はニッコリ笑みを浮かべると、カウンターでジョッキを4つ手に取った。
手慣れた動作で酒を注ぐと、トレイに乗せこちらへ戻ってくる。

「はい、どうぞ。これ私が考えたお酒なのよ。楽しんでね」

僕と視線が合うと彼女は小さくウィンクを見せ、嬉しそうに笑って見せた。

その笑顔は戻ってきて初めてみた笑顔だった。
生き生きした姿で仕事に精を出す彼女を見て、僕は考えを改めた。
あんな姿を見てしまっては、やめさせることなんて出来ない。
寧ろ彼女の笑顔を守るために、ここで働く必要があるのだと理解したんだ。

酒場で働く彼女を応援すると決め、暫くしたある日。
酒場は今日休みだと彼女が言った。
いい機会だと、僕は彼女を外へ連れ出して聖女の丘へとやってきた。

ここは昔クリスと僕とエリザベスで訪れた場所。
彼女は覚えていてくれているのだろうか?

彼女がどうしてエリザベスだと知られたくないのか。
里咲だからリサではないとだから知られたくないそう考えていた。
だけど彼女を見ていると、エリザベスであることを受け入れているとしか思えなかった。
エリザベスを否定していない、寧ろ里咲という存在を過去の事のように話すのだ。

そうなってくると、なぜエリザベスであることを隠すのか疑問が浮かぶ。
ある日の夜、僕はリサを連れて聖女の丘へとやってきた。
そこで問いかけてみたんだ。
すると彼女はクリスの為だとそういった。

その言葉を聞いた瞬間、目の前が暗闇に染まった。
彼女の中でクリスは大切な存在で、彼のためにここまでしていた事実に。
そしてクリスも彼女の事を待ち続けている。
何てお似合いな二人だと、だが過ごしてきたこの時間が認めることを許さない。

クリスもあなたを待っている、そう伝えれば全てが終わる。
けれどどうやってもそれを言葉にすることは出来なかったんだ。
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