令嬢は今日も戦い続ける。

あみにあ

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短編

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とある午後の昼さがり、とある魔法学園は大いに盛り上がっていた。
人の歓声が飛び交い、大きな広場の向かって左には女子生徒が多く集まり歓声上げている。
その反対には対立するように、男子生徒が野次を飛ばしていた。
そんな大騒ぎの中央には、ブロンドヘアに、クリッとした澄んだエメラルドの瞳、綺麗と言うよりは・・・可愛いらしい風貌の女性が、黒いローブを背中になびかせて、向かいに立つ男を強く睨みつけていた。

睨みつけられている男は、サラリとしたプラチナヘアに、ブルーの瞳、見る物全てを魅了するような、精悍な顔立ちに余裕の微笑みを浮かべ、彼女を楽しそうにじっと見据えていた。

「覚悟しなさい、今日という今日はぜぇったいに、あなたを負かしてやるわ!」

「そうですか、やれるものならどうぞ。そうそう……負けた場合は、必ず約束を守ってくださいね」

ムカツク、ムカツク、ムカツクッッ!
何なのよ、その余裕の笑みは!

一触即発の空気の中、男と女の間に立った一人の生徒が大きく腕を振り下ろすと、広場に大きな音が響き渡った。


時はさかのぼり、数日前。
魔法学園の校内では……先日行われた中間試験の結果が張り出されていた。

1位 ラファエル  500点
1位 リディアーヌ 500点

あぁもう、悔しい……ッッ。
また同率1位なんて……。
私は成績結果を見上げながら、唇を強く噛んでいた。

「残念ですねリディアーヌ。また同率とは、面白くありません。せっかくあなたの敗北した顔を見れると思ったのですがね」

今一番聞きたくない声に私は強く拳を握りしめると、勢いよく振り返った。

「ふん、次はこそは私が勝つわ、悔しそうな顔をするのはラファエル、あなたの方よ!」

私はそう言い放ちながらに指さすと、彼は小さく肩を震わせながら楽しそうに笑みを浮かべる。
するとその微笑む彼の姿に、講堂へ集まっていた女子生徒達の黄色い声援が飛び交った。

「そうですか、では楽しみにしております」

そう微笑みを強めると、彼は私に背向け歩き始めた。
何なの!?あの余裕そうな微笑みは……ッッ。
彼の爽やかな笑顔を見るたびに、私の眉間の皺が増えていった。
いつか絶対……あの余裕ぶった態度を崩してやるわ……。
今に見てなさい!

去っていく彼の背中を眺めていると、ふと練習場の付近が突然騒がしくなった。
私は騒ぎの中心へと足を向けると、何やら……数人の女子生徒と男子生徒の揉める声が耳に届く。

「魔法の訓練場はあんたたちのものではありませんわ!」

そうよそうよ、と同調する女子達の声が重なった。

「はぁ!?女に戦闘技術は必要ないだろう、ここは男の訓練場だ」

そうだそうだ、と低い声が響き渡る。
男の言葉に女子生徒達は悔し気な表情を見せる中、私はその騒ぎの中心へと割り込んだ。

「「お姉様!!!」」

私は揉めていた女子生徒に話を聞くと、どうも魔法の練習をしようと訓練場に来たものの、男たちが訓練場を占拠しているせいで、自分たちの練習が行えなかったようだ。
今までもこういう小競り合いはあったようだが……今回は揉めた相手が悪い。
女性に強く言い放った男は、女性軽視が目立つ伯爵家のご子息だ。
だがここで引けば……もう訓練場を使えることもなくなるわね……。
それは私としてもとても困るわ。
私は改めて彼女たちへ目を向けてみると、杖をギュッと握りし泣きそうな表情をしている。
そんな生徒たちの様子に、私は深く息を吸い込むと、そのがたいの良い伯爵家の男を見上げ、毅然とした態度を見せた。

「女に戦闘技術が必要ないなんてとんだ偏見だわ。昔はそうだったけれど、今は違う。先生方もそうおっしゃっていたはずよ」

私は彼女たちを庇うように男の前に立つと、じっと厳つい男の顔を見据えた。

「あぁあん、部外者は黙ってろ」

一触即発の中、その威圧的な態度に微かに手が震えるのを必死に抑え込む。
睨みあったまま硬直が続く中、集まっていた人ごみの中から、ラファエルが現れた。

「一体何の騒ぎですか?はぁ……またリディアーヌですか……」

呆れた様子のその声に目を向けると、私はキッと彼を睨みつける。

「ッッ……ラファエル様。いえ、何でもありません。申し訳ございません、あなた様の手を煩わせるほどでは……」

先ほどまで威勢の良かった男はラファエルの姿に態度を変えると、深く頭を下げる

「はぁ……それで何を揉めていたのですか?」

「いえ、その……ッッ」

言いよどむ男の様子に私は彼の前に進み出ると、徐に口を開いた。

「彼らが訓練場を占拠して、女子生徒達が練習できないのよ!」

私はそう言い放つと男を強く睨みつける。
ラファエルはそんな私の様子に、何が面白かったのか……小さく笑ってみせた。

「そうですか。ですがここは戦闘技術を高める場、女性に必要ないのでは?」

「はぁ!?そんな事ないわ、女性にだって学権利はあるのよ!」

私の言葉にラファエルは目を細めながらに微笑むと、真っすぐに私を見据えた。

「では、私とあなたで決闘をしませんか?あなたが私に勝てば……新しい訓練場を作るよう、私から学園長へ話を通しましょう。ですがあなたが負ければ……」

ラファエルはそこで言葉をとめると、そっと私の耳元へ唇を寄せた。

「私の恋人になれ」

重低音で囁かれた言葉に、私は目を丸くし彼を凝視していると、彼はまた面白いものを見つけたように小さく笑った。
はぁ!?こいつ何を言ってるの!?
何なのよ、負ければ……恋人……ッッ。
公爵家の学園長の息子だからって調子にのって、何様のつもりよ!

「ふふ、どうします、受けますか?受けませんか?まぁ私に負けるのが怖いというのなら、仕方がありませんが……」

挑発的な言葉にカッと顔を上げると、蔑むように笑う彼をキッと睨み返す。

「私が負けるなんてことあるはずないでしょ!いいわ、受けてやろうじゃない!」


そうして冒頭へ……。

大きく鳴り響いた開始の合図とともに、私は小さく呪文を唱えると、足元に大きな陣が現れる。
陣から高々と水しぶきが上がると、私の回りを透き通る水たちが包み込んだ。
ラファエルは口もとを弧を描いたまま、鞘から抜いた片手剣に手をかざすと、バチバチと剣の周りに磁力が発生する。
雷剣か。
私は杖を片手に風を発生させると、私を包み込んでいた水たちが小さな球体となり、私の周りへと浮かび上がる。
私はどちらかというと後衛よりの戦術だ、接近戦は避けたいわ。

彼の足が地面を強く蹴ったのを合図に、私は球体を彼に向けて投げていく。
風魔法を使い素早く彼に飛んでいく球体を、ラファエルは素早く避けなが、切り崩してていく中、私はまた呪文を唱え続けた。
ジリジリと彼との距離が近づいているが、まだ剣先が届くまでもう少し時間を稼げる。
私は彼の行く手を阻むように水球を投げていると、彼の動きが突然止まった。
とまったその隙をつき、私は呪文を唱えながらありったけの水球をぶつけようと手を振り上げると、私の足元が小さく揺れた。
ッッ……まずい!

私は水球をそのままに風魔法で素早くその場から飛び退くと、先ほど立っていた場所から蔓が伸びてきた。
蔓はそのまま私目掛けて一直線へ襲い来ると、術を途中に私は杖を振りかざし、炎を纏う。
蔓は私の体に届く前に黒い炭へと変わると、背後からバチバチと音が耳に届いた。
まずい後ろにいる……ッッ。
私は振り向かず、自分中心につむじ風を起こすと、一気に放った。
よし、これで吹き飛ばせたはず。

私はゆっくりとあたりを見渡すが、彼の姿はどこにもない。
遠くに飛ばしすぎたかしら……?
まぁ、今のうちに術を完成させましょう。
歓声が騒がしい広場の中、私は先ほど中断した術を再度発動させる。
眩い光の中大きな魔法陣が浮かび上がる中、最後の言葉を詠唱しようとした瞬間、真上からラファエルがふってきた。
なっ、どっどうして!?
私は慌てて風で防御壁を作ろうと動くが……その前にラファエルの剣先が私の首元へかかった。

「私の勝ちですね」

バチバチバチッと音を立てる剣から体を離そうと後退すると、軽々と彼は私を捕らえた。
そっと彼を見上げると、勝ち誇った表情で私を見据えていた。
悔しい……ッッ!
さっき発動させた風に、吹き飛ばされたんじゃないの!?

「ふふ、先ほどあなたの後ろでなっていた磁力の音は、私が意図的に鳴らしたもの。あなたが防御壁も込めているその風魔法を解放する為の布石だったんですよ」

くぅ……ッッ。
でも負けは負けよね……。
私は頭を垂れながら、重い口を開く。

「ま……負けました」

その瞬間広場に集まっていた野次馬共の歓喜の声や罵倒の声が響き渡る中、私は必死に涙をこらえていた。
こんなところで泣くな自分……みっともない……ッッ
私は涙を堪えるよう強く唇を噛みしめていると、ラファエルの手が私の顎へとのばされた。
そのまま顎をクイッと持ち上げられると、いつもとは違う優しい微笑みを浮かべた彼と視線が絡む。

「やっと、君を手に入れることができた」

そうボソッと呟くと、彼は私へと顔を寄せる。
彼の見慣れない表情に呆然とする中、私の唇に彼の唇が重なった。
はぁ!?
突拍子もない口づけに、私はその場で凍り付いていると、彼の唇がゆっくりと離れていく。

「へぇっ!?ちょっと待って……今のは……?」

「リディアーヌは私の恋人になったのですから、普通の事でしょう?」

そう意地悪そうに微笑む彼に、私は顔を真っ赤にして怒ると、彼は嬉しそうに笑った。
悔しい……ッッ。

「もう!いつかその余裕の表情を崩してやるんだから!」

私はそう言い捨てると、真っ赤になった顔を隠すように、その場から逃げ去った。
何なのよ、私の事をからかって!!!
私は走りながらも、鮮明に思い出される彼の唇の感触に奇声をあげていた。



その後二人は幸せな結婚することになりますが……それはまた別のお話。
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