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第三章
本音と真実
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私は握りこぶしを作ると、真っすぐに前を向いた。
「そうね、シンディの言う通り、私はずっと逃げていた、揉め事を避け続けてきたわ。だけどもう逃げない。ねぇ、あなた……マーティン王子の事を好きなのよね?」
そう問いかけてみると、シンシア鋭い視線で私を睨みつける。
「なんでそう思うの?ありえない。私は王妃になんてなりたくないと言ったじゃない」
「えぇ聞いたわ。でも……それは本音なの?……シンディは今まで私があげた物を返すことなんてなかった。いつももらえばすぐ興味を失くしていたわ。なのに今回は違う。寧ろ……彼のために動こうとしているわ。さっきの言葉だってそうよね……?マーティン様が私を好きだと知って……だからあんなことを言いにきたのでしょう?」
シンシアは両手で頭を覆うと、苛立つようにかきむしりその場に蹲った。
「うるさい、うるさい、うるさい、違う!!!なんで、なんで、どうして……ッッ、私は……私は……」
「シンディ……ッッ、私は彼の婚約者には戻らな……ッッ」
「同情なんていらない!!!」
今まで聞いたことがない悲痛な声に、私は言葉を飲み込んだ。
「同情なんていらないのよ!なんでこんなときに……ッッ。今までみたいにはいはい、と聞いていればいいのに……。なんで……なんでマーティン様はお姉様を好きなんだろう……。私には……どうやってもマーティン様の笑顔を取り戻すことができなかった。お姉様がいない一月の間、私はずっと彼の傍にいた。お姉様が何とも思っていない事がわかれば、何か変わるんじゃないかってそう思って……ッッ。だけど違った。あの日からマーティン様はマーティン様じゃなくなってしまった。優しくて真っすぐで、はにかむ笑顔が大好きだったのに……。でも私じゃ、その笑顔を取り戻せなかった。だからここへ来たのよ!!!」
激しい感情に圧倒され、無意識に一歩後ずさる。
心の底から逃げだしたいと、婚約を破棄せず、穏便に済ませたいとそんな思いが脳裏によぎった。
だけどここで逃げ出せば、全てが終わってしまう、そんな気がする。
私は必死に脚に力を入れると、何とか踏みとどまった。
「でも私は……マーティン様に恋情を感じていないわ。だから彼を選べないの……」
そう何とか言葉にすると、シンシアは勢いよく立ち上がり、こちらへ近づいてくる。
可愛く結ばれたツインテールはひどく乱れ、目を真っ赤に涙が浮かんでいた。
「知ってる、知ってたよ!そんなこと最初からわかってた!入学してすぐマーティン様に近づいた時、お姉様の笑顔を見てすぐにわかったわ。いつもの作り笑いだって。だけどお姉様がわざわざ王子様と同じ趣味を持とうとしたり、足繁く通っていたから、様子見してただけ。その中でマーティン様を知って……傍に居たいと思っちゃったの……。……必死にお姉様の事を聞いてくる彼の姿を見て惹かれた。何でもできる王子様、だけどお姉様の前だけ素直になれない不器用な彼が……気になって、気になって仕方がなかった。可愛いと思ってしまった。だけど王子様の片思い。そんな彼の目を覚まさせたくて……私が婚約破棄を計画したの。マーティン様にはっきりとわからせたくて……。だってお姉様、好きか聞かれれば好きだと答えるでしょう。だって相手を見ていないもの。だから愛されていないとわからせたかった……。なのになんで思い通りにならないの……」
シンシアはポロポロと涙を零すと、肩を落とし頭を垂れる。
そんなシンシアの深い恋情に、私は言葉を失った。
彼女はそれほどまでマーティン様を好きだった事実。
そんなシンシアを利用して私は……私利私欲のために……ッッ。
話さなければわからない事だった。
私は今までどれぐらい、こういったことを見逃してきたのだろうか……。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私は……貴族社会から逃げ出したくて、あなたと彼を利用していたの……」
「……ッッ、逃げ出したい?どうして……?お姉様は何でも持っているじゃない。王妃になる素質も、頭脳も、剣術だって何でもできちゃう。貴族社会では憧れ存在だし……愛してくれる王子様もいて、一体何が不満だったの?」
彼女の言う通り。
私は恵まれた環境だっただろう。
それに気が付かず逃げようとしていただけ。
だけどその環境に……周りから私はこうだと、そう言われ……その姿を演じて。
あそこにいた私は……人形だった。
シンシアのように、無邪気に笑う事も出来ない、怒ることも出来ない。
問われた質問には何でも答えなければいけなくて、わかっていなければいけない。
婚約者とも上手くいかない、シンシアには嫌われ、全てが面倒になって……だから……。
でも実際は全て違っていたのね……。
「私は……恵まれていた、それに気づかなった……。だから逃げだそうとしたの。王妃からも貴族からも……あなたからも――――」
そこで言葉を切ると、私は瞳を閉じ心を落ち着かせるよう、大きく息を吸い込んだ。
「そうね、シンディの言う通り、私はずっと逃げていた、揉め事を避け続けてきたわ。だけどもう逃げない。ねぇ、あなた……マーティン王子の事を好きなのよね?」
そう問いかけてみると、シンシア鋭い視線で私を睨みつける。
「なんでそう思うの?ありえない。私は王妃になんてなりたくないと言ったじゃない」
「えぇ聞いたわ。でも……それは本音なの?……シンディは今まで私があげた物を返すことなんてなかった。いつももらえばすぐ興味を失くしていたわ。なのに今回は違う。寧ろ……彼のために動こうとしているわ。さっきの言葉だってそうよね……?マーティン様が私を好きだと知って……だからあんなことを言いにきたのでしょう?」
シンシアは両手で頭を覆うと、苛立つようにかきむしりその場に蹲った。
「うるさい、うるさい、うるさい、違う!!!なんで、なんで、どうして……ッッ、私は……私は……」
「シンディ……ッッ、私は彼の婚約者には戻らな……ッッ」
「同情なんていらない!!!」
今まで聞いたことがない悲痛な声に、私は言葉を飲み込んだ。
「同情なんていらないのよ!なんでこんなときに……ッッ。今までみたいにはいはい、と聞いていればいいのに……。なんで……なんでマーティン様はお姉様を好きなんだろう……。私には……どうやってもマーティン様の笑顔を取り戻すことができなかった。お姉様がいない一月の間、私はずっと彼の傍にいた。お姉様が何とも思っていない事がわかれば、何か変わるんじゃないかってそう思って……ッッ。だけど違った。あの日からマーティン様はマーティン様じゃなくなってしまった。優しくて真っすぐで、はにかむ笑顔が大好きだったのに……。でも私じゃ、その笑顔を取り戻せなかった。だからここへ来たのよ!!!」
激しい感情に圧倒され、無意識に一歩後ずさる。
心の底から逃げだしたいと、婚約を破棄せず、穏便に済ませたいとそんな思いが脳裏によぎった。
だけどここで逃げ出せば、全てが終わってしまう、そんな気がする。
私は必死に脚に力を入れると、何とか踏みとどまった。
「でも私は……マーティン様に恋情を感じていないわ。だから彼を選べないの……」
そう何とか言葉にすると、シンシアは勢いよく立ち上がり、こちらへ近づいてくる。
可愛く結ばれたツインテールはひどく乱れ、目を真っ赤に涙が浮かんでいた。
「知ってる、知ってたよ!そんなこと最初からわかってた!入学してすぐマーティン様に近づいた時、お姉様の笑顔を見てすぐにわかったわ。いつもの作り笑いだって。だけどお姉様がわざわざ王子様と同じ趣味を持とうとしたり、足繁く通っていたから、様子見してただけ。その中でマーティン様を知って……傍に居たいと思っちゃったの……。……必死にお姉様の事を聞いてくる彼の姿を見て惹かれた。何でもできる王子様、だけどお姉様の前だけ素直になれない不器用な彼が……気になって、気になって仕方がなかった。可愛いと思ってしまった。だけど王子様の片思い。そんな彼の目を覚まさせたくて……私が婚約破棄を計画したの。マーティン様にはっきりとわからせたくて……。だってお姉様、好きか聞かれれば好きだと答えるでしょう。だって相手を見ていないもの。だから愛されていないとわからせたかった……。なのになんで思い通りにならないの……」
シンシアはポロポロと涙を零すと、肩を落とし頭を垂れる。
そんなシンシアの深い恋情に、私は言葉を失った。
彼女はそれほどまでマーティン様を好きだった事実。
そんなシンシアを利用して私は……私利私欲のために……ッッ。
話さなければわからない事だった。
私は今までどれぐらい、こういったことを見逃してきたのだろうか……。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私は……貴族社会から逃げ出したくて、あなたと彼を利用していたの……」
「……ッッ、逃げ出したい?どうして……?お姉様は何でも持っているじゃない。王妃になる素質も、頭脳も、剣術だって何でもできちゃう。貴族社会では憧れ存在だし……愛してくれる王子様もいて、一体何が不満だったの?」
彼女の言う通り。
私は恵まれた環境だっただろう。
それに気が付かず逃げようとしていただけ。
だけどその環境に……周りから私はこうだと、そう言われ……その姿を演じて。
あそこにいた私は……人形だった。
シンシアのように、無邪気に笑う事も出来ない、怒ることも出来ない。
問われた質問には何でも答えなければいけなくて、わかっていなければいけない。
婚約者とも上手くいかない、シンシアには嫌われ、全てが面倒になって……だから……。
でも実際は全て違っていたのね……。
「私は……恵まれていた、それに気づかなった……。だから逃げだそうとしたの。王妃からも貴族からも……あなたからも――――」
そこで言葉を切ると、私は瞳を閉じ心を落ち着かせるよう、大きく息を吸い込んだ。
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