150 / 169
乙女ゲームの世界
言えない言葉(華僑視点)
しおりを挟む
とある日の夕刻、授業が終わり生徒たちが下校していく中、僕は一人教室に残ったまま、夕日が差し込む校庭を眺めていた。
秋も深まり並ぶ銀杏の木が黄色に染まる様に、夕日の光と重なるとキラキラと美しく輝いている。
色なき風が木の葉を巻き上げる様をぼうっと眺めていると、渡り廊下に見知った姿が目に映った。
長い黒髪がゆるりと揺れ、他の学生とは明らかに違う洗礼された美しい佇み。
手には参考書だろうか……数冊の本を片手に職員室の方へ歩いていく。
その姿に魅入る中、すれ違う生徒達も彼女の姿に振り返る様子が目に映った。
彼女の姿を久しぶりに見た気がする。
文化祭が終わってから、中間テストが始まったりと忙しく、一条さんと話す機会がなかった。
それになぜか最近の彼女はどこかソワソワしいて、授業が終わるとすぐに帰ってしまう。
クラスも別で一緒に行動する事もない。
入学当初僕たちのせいで彼女に迷惑をかけてしまった事もあり、学園では気軽に会うことは出来ない。
家に帰ってしまえば、歩さんという鉄壁の壁が存在する。
テストも終わり落ち着いた今……出来るだけ早くあの日の言葉を訂正しないと。
僕が二条君を好きだと……。
そんなはずがない。
僕が好きなのは……一条さん、あなたです。
だけどこの気持ちは封印したはずだった。
だって友人の好きな相手なんだ、後からきた僕が二人の間に入る余地はない。
そうわかっているから。
二条君は僕とは違って何でも出来て、僕みたいな奴にも優しくしてくれて。
家とかそういったのも関係なく、友人として傍に居てくれる良い人なんだ。
二人の笑いあう姿を見ると、お似合いだなぁ、といつも思っています。
なのに……なのに……ッッ
なかなかはっきりしない彼女の姿に、つい本音が出てしまった。
胸の奥深くに閉じ込めていた想い。
言葉にする気なんてなかった。
時がたてばこの想いも風化していくと……。
だけど僕はあの時……もう少しで言ってしまうところでした。
歩さんが来てくれて本当に良かった。
危うく間違った事を口にするところだった。
僕が好きなのはあなたですと、これを言葉にして良いことなんて一つもない。
それはあの日……中等部の卒業式の日に思ったんだ。
中等部頃、まだ僕は一条さんへ対する気持ちにまだ気づいていなかった。
一条さんに二条君と過ごす日々が楽しくて、二人に恥じない自分になるために、必死だった。
この穏やかで幸せな関係がずっと続けばいい、そう純粋に思っていたんです。
だけどあの日の卒業式で、知らない女子生徒たちに囲まれて……告白されたりネクタイやボタンを奪われて……。
でもなぜか第二ボタンだけは死守していたんです。
二条君がそうしていたから……いえあれは無意識だった。
群がる彼女たちに奪われないように、引きちぎった第二ボタンをポケットの中で握りしめて。
それをどうするかなんて何も考えてなかった。
只第二ボタンを彼女たちに奪われたくない、その思ったんです。
なら誰になら奪われてもいいのだろうか……そう考えた時に、頭の中に浮かんだのは一条さんの笑った姿だった。
引っ込み思案な僕を見つけてくれて、眩しい世界を見せてくれた彼女。
彼女に声を掛けられて、その日から見る物全てが輝いて見えるようになった。
僕に自信を与えてくれて、新しい世界へ連れてきてくれた。
だけど二条君が彼女の事を好きだという事は、最初から気が付いていました。
だから二人が婚約者になることを、ずっと望んでいたはずだった。
なのにいつからだろう……それを望めなくなった自分がいた。
なぜか二人の姿にモヤモヤしたり、どす黒い感情が渦巻いたり。
だけどその理由はずっとわからなかった。
でもあの日、二条君が一条さんにボタンを渡す姿を見て、僕も第二ボタンを彼女に受け取ってもらいたい、その想いが胸にストンッと落ちてきたんです。
そこで初めて僕は彼女が好きなのだと自覚した。
でも僕は第二ボタンを渡さなかった。
だって彼女は二条君がずっと思い続けていた人。
二条君と一条さん、僕はどっちも大事だから。
二条君から奪ってまで、彼女を欲しいとは思わない。
いえ……僕なんかが……二条君に勝てるはずありませんね。
でももしこの気持ちを言葉にしたら、二条君は僕に気を使うようになるかもしれない。
いつも真っすぐに彼女を見ていた二条君が……そんな彼を望んでいない。
それに一条さんも優しすぎるから……言葉にしても困らせてしまうだけ。
そう自分に言い聞かせたはずだった。
この気持ちは一生僕の中で閉じ込めるんだと……。
いつかこの苦い気持ちが消えると信じて……。
僕はズキッと痛んだ胸を握りしめ顔を上げると、彼女の姿は渡り廊下から消えていた。
大丈夫、いつの日か必ずその時はやってくるんです。
二人の寄り添う姿に笑って祝う事が出来るように……想いを奥底へ蓋をする。
けれども僕が二条君をそういった意味で好きだと思われるのは、色々と困りますね。
どうやって訂正しましょうか。
好きな人はいないと訂正するべきか……もしくは二条君ではない別の人を好きなのだと誤魔化すか……。
ですが話の流れ的に……難しい気もします……。
どうするべきか頭を抱える中、僕はそっと窓から離れると、机に置いていたカバンを持ち上げた。
秋も深まり並ぶ銀杏の木が黄色に染まる様に、夕日の光と重なるとキラキラと美しく輝いている。
色なき風が木の葉を巻き上げる様をぼうっと眺めていると、渡り廊下に見知った姿が目に映った。
長い黒髪がゆるりと揺れ、他の学生とは明らかに違う洗礼された美しい佇み。
手には参考書だろうか……数冊の本を片手に職員室の方へ歩いていく。
その姿に魅入る中、すれ違う生徒達も彼女の姿に振り返る様子が目に映った。
彼女の姿を久しぶりに見た気がする。
文化祭が終わってから、中間テストが始まったりと忙しく、一条さんと話す機会がなかった。
それになぜか最近の彼女はどこかソワソワしいて、授業が終わるとすぐに帰ってしまう。
クラスも別で一緒に行動する事もない。
入学当初僕たちのせいで彼女に迷惑をかけてしまった事もあり、学園では気軽に会うことは出来ない。
家に帰ってしまえば、歩さんという鉄壁の壁が存在する。
テストも終わり落ち着いた今……出来るだけ早くあの日の言葉を訂正しないと。
僕が二条君を好きだと……。
そんなはずがない。
僕が好きなのは……一条さん、あなたです。
だけどこの気持ちは封印したはずだった。
だって友人の好きな相手なんだ、後からきた僕が二人の間に入る余地はない。
そうわかっているから。
二条君は僕とは違って何でも出来て、僕みたいな奴にも優しくしてくれて。
家とかそういったのも関係なく、友人として傍に居てくれる良い人なんだ。
二人の笑いあう姿を見ると、お似合いだなぁ、といつも思っています。
なのに……なのに……ッッ
なかなかはっきりしない彼女の姿に、つい本音が出てしまった。
胸の奥深くに閉じ込めていた想い。
言葉にする気なんてなかった。
時がたてばこの想いも風化していくと……。
だけど僕はあの時……もう少しで言ってしまうところでした。
歩さんが来てくれて本当に良かった。
危うく間違った事を口にするところだった。
僕が好きなのはあなたですと、これを言葉にして良いことなんて一つもない。
それはあの日……中等部の卒業式の日に思ったんだ。
中等部頃、まだ僕は一条さんへ対する気持ちにまだ気づいていなかった。
一条さんに二条君と過ごす日々が楽しくて、二人に恥じない自分になるために、必死だった。
この穏やかで幸せな関係がずっと続けばいい、そう純粋に思っていたんです。
だけどあの日の卒業式で、知らない女子生徒たちに囲まれて……告白されたりネクタイやボタンを奪われて……。
でもなぜか第二ボタンだけは死守していたんです。
二条君がそうしていたから……いえあれは無意識だった。
群がる彼女たちに奪われないように、引きちぎった第二ボタンをポケットの中で握りしめて。
それをどうするかなんて何も考えてなかった。
只第二ボタンを彼女たちに奪われたくない、その思ったんです。
なら誰になら奪われてもいいのだろうか……そう考えた時に、頭の中に浮かんだのは一条さんの笑った姿だった。
引っ込み思案な僕を見つけてくれて、眩しい世界を見せてくれた彼女。
彼女に声を掛けられて、その日から見る物全てが輝いて見えるようになった。
僕に自信を与えてくれて、新しい世界へ連れてきてくれた。
だけど二条君が彼女の事を好きだという事は、最初から気が付いていました。
だから二人が婚約者になることを、ずっと望んでいたはずだった。
なのにいつからだろう……それを望めなくなった自分がいた。
なぜか二人の姿にモヤモヤしたり、どす黒い感情が渦巻いたり。
だけどその理由はずっとわからなかった。
でもあの日、二条君が一条さんにボタンを渡す姿を見て、僕も第二ボタンを彼女に受け取ってもらいたい、その想いが胸にストンッと落ちてきたんです。
そこで初めて僕は彼女が好きなのだと自覚した。
でも僕は第二ボタンを渡さなかった。
だって彼女は二条君がずっと思い続けていた人。
二条君と一条さん、僕はどっちも大事だから。
二条君から奪ってまで、彼女を欲しいとは思わない。
いえ……僕なんかが……二条君に勝てるはずありませんね。
でももしこの気持ちを言葉にしたら、二条君は僕に気を使うようになるかもしれない。
いつも真っすぐに彼女を見ていた二条君が……そんな彼を望んでいない。
それに一条さんも優しすぎるから……言葉にしても困らせてしまうだけ。
そう自分に言い聞かせたはずだった。
この気持ちは一生僕の中で閉じ込めるんだと……。
いつかこの苦い気持ちが消えると信じて……。
僕はズキッと痛んだ胸を握りしめ顔を上げると、彼女の姿は渡り廊下から消えていた。
大丈夫、いつの日か必ずその時はやってくるんです。
二人の寄り添う姿に笑って祝う事が出来るように……想いを奥底へ蓋をする。
けれども僕が二条君をそういった意味で好きだと思われるのは、色々と困りますね。
どうやって訂正しましょうか。
好きな人はいないと訂正するべきか……もしくは二条君ではない別の人を好きなのだと誤魔化すか……。
ですが話の流れ的に……難しい気もします……。
どうするべきか頭を抱える中、僕はそっと窓から離れると、机に置いていたカバンを持ち上げた。
0
あなたにおすすめの小説
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる