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乙女ゲームの世界
パートナーとして
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車へ乗り込み街中を進んで行く中、ふと目の前に《帝国ホテル》と大きな掲示板が浮かび上がる。
掲示板の傍には、クリスマス仕様にアレンジされたキラキラと輝くネオンが浮かぶ中、また方向指示器がカチカチを音を立てると、車は帝国ホテルの駐車場へと入って行った。
えぇ、まさか……ここがパーティー会場?
帝国ホテルは世界で数本の指に入る五つ星の超高級ホテル。
政財界、世界の名のある貴族や王族、一流階級の人たちが利用する場所。
以前お兄様と行ったベーストンホテルとは比べられないほどに敷居が高い。
戸惑いを隠せない中、キキィッと車が停車すると、そこには壮大な出迎えが待っていった。
「ようこそお出で下さいました。ささっ、こちらへお進みください」
レッドカーペットのような物が敷かれ、年配の燕尾服の男性がやってくると、車のドアが開き、下りる様に促される。
助手席側にはフォーマルな姿の女性が佇み、私へと深く頭を下げた。
何なのこれ、本当に……彼は一体何者なの?
唖然としながらもなんとか足を動かすと、天斗は私の隣へとやってきた。
スマートに腰へ手を回したかと思うと、そのまま燕尾服の男の後ろをついていく。
ホテルの入口へと進む中、狼狽しながら彼を見上げてみるが、視線が合う事はない。
そのままエレベーターへ乗り込み最上階のボタンが点灯すると、上へ上へと上がっていった。
最上階……この場所を貸切るのに一体いくらかかるの……!?
主催しているのは誰なのかしら?
チンッと音と共に扉が開くと、そこには大きなクリスマスツリーが飾られている。
もうパーティーが始まっているのだろうか……エントランスには人の姿は見たらなかった。
男に案内されるままに足を進めると、通り過ぎる扉の前からはガヤガヤと声が耳にとどく。
通路にも飾られたネオンがピカピカと鮮やかに光り輝く中、控室のような場所へ案内されると、バタンと扉が静かに閉まった。
茫然とする中、腰に回されていた手が離れると、天斗は私と向き合うように前へと進み出る。
「彩華、とりあえずだ、何も説明せずに悪かったな。今から参加するこのパーティーで、俺のパートナーとして隣に立っていてくれ。それが終われば写真は削除してやる」
「パートナーですって!?やっぱり一条家の名を利用するんじゃない!」
私はキッと天斗を睨みつけると、悔しさと不甲斐なさに唇を小さく噛んだ。
「全く違うとは言えないが、一条家に迷惑をかけるつもりはない。何度も言ってるだろう、必要なのは彩華お前だ」
意味がわからないわ。
私の価値は……一条家であることだけ。
「嫌よ、参加しないわ!……ここにいるのは私とあなた二人だけ……なら」
私はぼそりと呟くと、扉の前へ佇むと、拳を上げファイティングポーズをとる。
「……これが最後だ、頼む」
いつものように喧嘩腰で向かってくるとそう思っていたが、彼はギュッと拳を握りしめると、私へ向かって深く頭を下げた。
その姿はいつもの傲慢な態度ではない、必死さが伝わってくる。
私は振り上げた腕をそっと下ろすと、そんな彼へと視線をあわせた。
「なら……証明して。あなたの身分証と、今ここで写真を消して。そうすればあなたのパートナーになってあげてもいいわ」
名前を知れば、もし別の場所へ写真が保存されていても対策は打てるはず。
天斗は徐にポケットから財布を取り出し、免許を取り出す。
そしてスマホも取り出すと、ロックを解除し私へと差し出した。
「俺は 藤 天斗だ。……写真はすぐ削除した。バックアップもとっていない。さすがに一条家を敵に回したくないから。もし俺があんたの兄に捕まった時に、写真があれば潰される。そんなリスク背負うはずないだろう」
彼の言葉に私は画面をタップしアルバムを開いてみると、中にデーターは入っていない。
ほっと息を吐き出す中、免許書へ視線を向けると、その名はどこかで見たことがあった。
藤 天斗、どこで見たんだっけ……えーと、確かお兄様の……ッッ
「あっ!あなたあの藤グループの?」
「あぁ、そうだ。今日のパーティーは俺の家が主催している」
その言葉に大きく目を見開くと、窺うように天斗を見上げる。
「……まさか婚約者として紹介しようとしているの?」
「おぉ?ははっ、婚約者になってくれるのか?」
天斗は楽しそうに笑ったかと思うと、いつもと同じようにニヤリと口角を上げ、私をじっと見下ろした。
「なっ、なるはずないでしょう!」
「だよな。俺のパートナーとして彩華が傍に居ることが重要なんだ。それだけいい。婚約はしない。挨拶が済めばすぐに会場から離れてくれていい。これは俺と……兄貴の勝負なんだ……」
彼から笑みが消え、瞳に怒りの炎が燃えあがると、空気が一気に冷えていく。
勝負?一体何のことなの?
そんな彼の様子に畏怖する中、私は一歩後ずさると、背中に冷たい扉が触れた。
「……ッッ、ちゃんと説明して」
そう何とか言葉を絞り出すと、彼は静かに私へと近づいてくる。
その刹那、トントントン、と背中にノックの音が響くと、私は大きく肩を跳ねさせた。
「天斗様お時間でございます」
「今行く」
天斗は短く返事を返すと、私の腰を抱くように引き寄せた。
「今は時間がねぇ。全てが片付いたら説明するよ。約束だ」
その言葉に私は深く頷くと、彼の腕へ体を預ける様に歩き始めた。
掲示板の傍には、クリスマス仕様にアレンジされたキラキラと輝くネオンが浮かぶ中、また方向指示器がカチカチを音を立てると、車は帝国ホテルの駐車場へと入って行った。
えぇ、まさか……ここがパーティー会場?
帝国ホテルは世界で数本の指に入る五つ星の超高級ホテル。
政財界、世界の名のある貴族や王族、一流階級の人たちが利用する場所。
以前お兄様と行ったベーストンホテルとは比べられないほどに敷居が高い。
戸惑いを隠せない中、キキィッと車が停車すると、そこには壮大な出迎えが待っていった。
「ようこそお出で下さいました。ささっ、こちらへお進みください」
レッドカーペットのような物が敷かれ、年配の燕尾服の男性がやってくると、車のドアが開き、下りる様に促される。
助手席側にはフォーマルな姿の女性が佇み、私へと深く頭を下げた。
何なのこれ、本当に……彼は一体何者なの?
唖然としながらもなんとか足を動かすと、天斗は私の隣へとやってきた。
スマートに腰へ手を回したかと思うと、そのまま燕尾服の男の後ろをついていく。
ホテルの入口へと進む中、狼狽しながら彼を見上げてみるが、視線が合う事はない。
そのままエレベーターへ乗り込み最上階のボタンが点灯すると、上へ上へと上がっていった。
最上階……この場所を貸切るのに一体いくらかかるの……!?
主催しているのは誰なのかしら?
チンッと音と共に扉が開くと、そこには大きなクリスマスツリーが飾られている。
もうパーティーが始まっているのだろうか……エントランスには人の姿は見たらなかった。
男に案内されるままに足を進めると、通り過ぎる扉の前からはガヤガヤと声が耳にとどく。
通路にも飾られたネオンがピカピカと鮮やかに光り輝く中、控室のような場所へ案内されると、バタンと扉が静かに閉まった。
茫然とする中、腰に回されていた手が離れると、天斗は私と向き合うように前へと進み出る。
「彩華、とりあえずだ、何も説明せずに悪かったな。今から参加するこのパーティーで、俺のパートナーとして隣に立っていてくれ。それが終われば写真は削除してやる」
「パートナーですって!?やっぱり一条家の名を利用するんじゃない!」
私はキッと天斗を睨みつけると、悔しさと不甲斐なさに唇を小さく噛んだ。
「全く違うとは言えないが、一条家に迷惑をかけるつもりはない。何度も言ってるだろう、必要なのは彩華お前だ」
意味がわからないわ。
私の価値は……一条家であることだけ。
「嫌よ、参加しないわ!……ここにいるのは私とあなた二人だけ……なら」
私はぼそりと呟くと、扉の前へ佇むと、拳を上げファイティングポーズをとる。
「……これが最後だ、頼む」
いつものように喧嘩腰で向かってくるとそう思っていたが、彼はギュッと拳を握りしめると、私へ向かって深く頭を下げた。
その姿はいつもの傲慢な態度ではない、必死さが伝わってくる。
私は振り上げた腕をそっと下ろすと、そんな彼へと視線をあわせた。
「なら……証明して。あなたの身分証と、今ここで写真を消して。そうすればあなたのパートナーになってあげてもいいわ」
名前を知れば、もし別の場所へ写真が保存されていても対策は打てるはず。
天斗は徐にポケットから財布を取り出し、免許を取り出す。
そしてスマホも取り出すと、ロックを解除し私へと差し出した。
「俺は 藤 天斗だ。……写真はすぐ削除した。バックアップもとっていない。さすがに一条家を敵に回したくないから。もし俺があんたの兄に捕まった時に、写真があれば潰される。そんなリスク背負うはずないだろう」
彼の言葉に私は画面をタップしアルバムを開いてみると、中にデーターは入っていない。
ほっと息を吐き出す中、免許書へ視線を向けると、その名はどこかで見たことがあった。
藤 天斗、どこで見たんだっけ……えーと、確かお兄様の……ッッ
「あっ!あなたあの藤グループの?」
「あぁ、そうだ。今日のパーティーは俺の家が主催している」
その言葉に大きく目を見開くと、窺うように天斗を見上げる。
「……まさか婚約者として紹介しようとしているの?」
「おぉ?ははっ、婚約者になってくれるのか?」
天斗は楽しそうに笑ったかと思うと、いつもと同じようにニヤリと口角を上げ、私をじっと見下ろした。
「なっ、なるはずないでしょう!」
「だよな。俺のパートナーとして彩華が傍に居ることが重要なんだ。それだけいい。婚約はしない。挨拶が済めばすぐに会場から離れてくれていい。これは俺と……兄貴の勝負なんだ……」
彼から笑みが消え、瞳に怒りの炎が燃えあがると、空気が一気に冷えていく。
勝負?一体何のことなの?
そんな彼の様子に畏怖する中、私は一歩後ずさると、背中に冷たい扉が触れた。
「……ッッ、ちゃんと説明して」
そう何とか言葉を絞り出すと、彼は静かに私へと近づいてくる。
その刹那、トントントン、と背中にノックの音が響くと、私は大きく肩を跳ねさせた。
「天斗様お時間でございます」
「今行く」
天斗は短く返事を返すと、私の腰を抱くように引き寄せた。
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