[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第三章

閑話:過去の世界で5:前編(オズワルド視点)

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僕は公爵家に生まれ、20歳の時に父の後を継ぎ、城の文官となった。

子供頃に決められた許嫁との関係は良好で、結婚の証として、彼女の瞳を同じ、真っ青なネックレスを贈ったんだ。

そうして仕事も順調に進み、軌道にのった22歳の時に式を挙げた。

中々子宝に恵まれなかったのだが、25歳の時ようやく出来た子供は男の子で、シモンと名付け、妻と共に跡継ぎが出来たと喜んだ。

シモンは生まれた時から、大きな魔力を小さな体に纏っていた。
魔力が多いことは良い事だ、貴族として誇らしい。
そんなシモンは魔法が好きなようで、よく僕の魔法を真似していたなぁ。

そんな可愛いシモンが成長し、言葉を覚えると、息子はどんどん魔法を習得していった。
そんな中、最初に異変に気が付いたのは、息子がまだ4歳の頃……息子は庭で一人ポツンと座り込んでいた。
何をしているのかと覗いてみると、シモンは庭に居た鳥を火の魔法で焼いていた。
あまりの衝撃にすぐにシモンを鳥から離し、叱りつけてみるが……息子はちゃんと理解できていない様だった。

それからも度々息子のそういった姿をよく見かけた。
それは鳥であったり、ウサギであったり、動物は様々だ。
苦しみ泣き叫ぶ生き物の姿を……息子はいつも消えゆく命をじっと見つめていたんだ。
どれだけ叱りつけてもそれがなくなることはなかった。

ある時シモンにどうしてそんな事をするのかと問い詰めた事ある。

「シモン、どうして生き物を殺すんだ!可哀そうだろう。それはやってはいけないことだ!」

「うーん、でも父様も鳥を殺して、持って帰って来るじゃないか」

「あれは!!!食べる為に必要だろう!シモンのは違う。理由のない殺生はいけないことだ!」

「どうして?殺すことに意味があれば殺していいの?でも意味がなければ殺しちゃダメなの?ねぇ、どうして?同じことなのに……」

何でもない事のようにそう口にする息子に、僕は初めて恐怖を感じたんだ。
この子は何かが抜け落ちているのだと……。
そこから僕はシモンと一緒に過ごす事が出来なくなっていった。

そうして僕が31歳の時に、娘ステラが生まれた。
ステラは可愛い女の子で、目に入れても痛くないほどに。
僕はこの可愛らしい娘がシモンのようになってしまわないように、息子を遠ざけた。

そんなある日、事件が起きた。
そんなステラは生まれたばかりで、泣くことが仕事だ。
ぐずって泣くステラをメイドがあやしていると、そこにシモンがやってきた。
シモンは無表情のまま、ステラに炎の玉をぶつけようとすると、それを庇ったメイドが大やけどをした。
屋敷は騒然となり、すぐに僕へ連絡が入ると、そこで久方ぶりにシモンと対面した。

「シモン、どうしてこんなことを!!!ステラに何かあったら!!お前はどうするんだ!」

「だって煩かったから」

そう淡々と話すシモンの様子に、もう僕は限界だったんだ。
いつか僕の手ではおえなくなる。
きっと成長すれば、魔力も力も……シモンは私を超えるだろう。

そう確信すると、すぐに妻に相談し、僕たちはある決意をした。
これ以上シモンを育てていくことは危険だ。
しかしシモンは紛れもなく僕たちの子供。
そう思うと自分たちの手では下せない……だから捨てたんだ。

事件があって数週間後、魔法を使える執事に命令し、シモンを迷宮の屋敷の森へ連れて行かせると、そのまま置き去りにさせた。
食料は何も持たせずに、道もわからない様遠回りをさせて……。
迷宮の森は人間では、簡単に抜け出すことが出来ない、不思議な場所。
そこに誤って入り込んだ者は、出てくることが出来ないと噂で聞いていた。
息子はあの森で……猛獣に襲われ食われるか、餓死で命を落とすのか……。
それはわからないが、もうシモンに会う事はないだろう。

それから僕たちは屋敷を移動し、住む場所を変えた。
あの屋敷には、シモンとの思い出が詰まっているから。
そうして僕たちは、最初からシモンは存在しない人だったと言い聞かせ、幼いステラに、自分に兄が居た事を、僕たちは教える事はなかった。
まぁ……最初のうちはどこか暗い雰囲気が漂っていたが……次第にいつもと同じ日常へ戻っていく。

そうして月日が流れると、突然に女性が減っていると街で噂が立ち始めた。
噂を聞き、城中で原因を探ろうとするも、何の成果も上がらない。
そんな混沌とする中、街で新たな勢力が生まれたんだ。
それがイサファミリーだった。

イサファミリーは街の破落戸を束ね、どんどん勢力を伸ばしていく。
女を連れ去り、商品として売り金を作る。
資金を得た彼らは、勢力を拡大してくと、街の治安は悪くなる一方だった。
だが城も、女性が減る原因を突き止めるのに忙しく、中々彼らを潰すことが出来ないでいた。

そんなある日、僕が家に帰ると、部屋が荒らされ……妻がいなくなっていたんだ。
雇っていた騎士は殺され、屋敷の中は悲惨な状態だった。
娘は隠し部屋に隠され無事だったが、メイドから話を聞く限り、妻は自分が囮になり、娘を救ったそうだ。
そんな妻を誇らしく思うよりも、僕は妻が連れ去られてしまった事実に打ちひしがれた。

誰よりも愛していた、愛しい妻。
街中、どこを探しても妻の姿はない。
僕は大事な妻がいなくなり、途方にくれていた。
どうしてこんな……妻は売られてしまったのだろうかと……。
僕はどうにかしても妻を見つけたくて、街のあちこちの娼婦館にも足を運んでみるが……どこにも妻の姿はなかった。
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