141 / 358
第三章
閑話:過去の世界で5:前編(オズワルド視点)
しおりを挟む
僕は公爵家に生まれ、20歳の時に父の後を継ぎ、城の文官となった。
子供頃に決められた許嫁との関係は良好で、結婚の証として、彼女の瞳を同じ、真っ青なネックレスを贈ったんだ。
そうして仕事も順調に進み、軌道にのった22歳の時に式を挙げた。
中々子宝に恵まれなかったのだが、25歳の時ようやく出来た子供は男の子で、シモンと名付け、妻と共に跡継ぎが出来たと喜んだ。
シモンは生まれた時から、大きな魔力を小さな体に纏っていた。
魔力が多いことは良い事だ、貴族として誇らしい。
そんなシモンは魔法が好きなようで、よく僕の魔法を真似していたなぁ。
そんな可愛いシモンが成長し、言葉を覚えると、息子はどんどん魔法を習得していった。
そんな中、最初に異変に気が付いたのは、息子がまだ4歳の頃……息子は庭で一人ポツンと座り込んでいた。
何をしているのかと覗いてみると、シモンは庭に居た鳥を火の魔法で焼いていた。
あまりの衝撃にすぐにシモンを鳥から離し、叱りつけてみるが……息子はちゃんと理解できていない様だった。
それからも度々息子のそういった姿をよく見かけた。
それは鳥であったり、ウサギであったり、動物は様々だ。
苦しみ泣き叫ぶ生き物の姿を……息子はいつも消えゆく命をじっと見つめていたんだ。
どれだけ叱りつけてもそれがなくなることはなかった。
ある時シモンにどうしてそんな事をするのかと問い詰めた事ある。
「シモン、どうして生き物を殺すんだ!可哀そうだろう。それはやってはいけないことだ!」
「うーん、でも父様も鳥を殺して、持って帰って来るじゃないか」
「あれは!!!食べる為に必要だろう!シモンのは違う。理由のない殺生はいけないことだ!」
「どうして?殺すことに意味があれば殺していいの?でも意味がなければ殺しちゃダメなの?ねぇ、どうして?同じことなのに……」
何でもない事のようにそう口にする息子に、僕は初めて恐怖を感じたんだ。
この子は何かが抜け落ちているのだと……。
そこから僕はシモンと一緒に過ごす事が出来なくなっていった。
そうして僕が31歳の時に、娘ステラが生まれた。
ステラは可愛い女の子で、目に入れても痛くないほどに。
僕はこの可愛らしい娘がシモンのようになってしまわないように、息子を遠ざけた。
そんなある日、事件が起きた。
そんなステラは生まれたばかりで、泣くことが仕事だ。
ぐずって泣くステラをメイドがあやしていると、そこにシモンがやってきた。
シモンは無表情のまま、ステラに炎の玉をぶつけようとすると、それを庇ったメイドが大やけどをした。
屋敷は騒然となり、すぐに僕へ連絡が入ると、そこで久方ぶりにシモンと対面した。
「シモン、どうしてこんなことを!!!ステラに何かあったら!!お前はどうするんだ!」
「だって煩かったから」
そう淡々と話すシモンの様子に、もう僕は限界だったんだ。
いつか僕の手ではおえなくなる。
きっと成長すれば、魔力も力も……シモンは私を超えるだろう。
そう確信すると、すぐに妻に相談し、僕たちはある決意をした。
これ以上シモンを育てていくことは危険だ。
しかしシモンは紛れもなく僕たちの子供。
そう思うと自分たちの手では下せない……だから捨てたんだ。
事件があって数週間後、魔法を使える執事に命令し、シモンを迷宮の屋敷の森へ連れて行かせると、そのまま置き去りにさせた。
食料は何も持たせずに、道もわからない様遠回りをさせて……。
迷宮の森は人間では、簡単に抜け出すことが出来ない、不思議な場所。
そこに誤って入り込んだ者は、出てくることが出来ないと噂で聞いていた。
息子はあの森で……猛獣に襲われ食われるか、餓死で命を落とすのか……。
それはわからないが、もうシモンに会う事はないだろう。
それから僕たちは屋敷を移動し、住む場所を変えた。
あの屋敷には、シモンとの思い出が詰まっているから。
そうして僕たちは、最初からシモンは存在しない人だったと言い聞かせ、幼いステラに、自分に兄が居た事を、僕たちは教える事はなかった。
まぁ……最初のうちはどこか暗い雰囲気が漂っていたが……次第にいつもと同じ日常へ戻っていく。
そうして月日が流れると、突然に女性が減っていると街で噂が立ち始めた。
噂を聞き、城中で原因を探ろうとするも、何の成果も上がらない。
そんな混沌とする中、街で新たな勢力が生まれたんだ。
それがイサファミリーだった。
イサファミリーは街の破落戸を束ね、どんどん勢力を伸ばしていく。
女を連れ去り、商品として売り金を作る。
資金を得た彼らは、勢力を拡大してくと、街の治安は悪くなる一方だった。
だが城も、女性が減る原因を突き止めるのに忙しく、中々彼らを潰すことが出来ないでいた。
そんなある日、僕が家に帰ると、部屋が荒らされ……妻がいなくなっていたんだ。
雇っていた騎士は殺され、屋敷の中は悲惨な状態だった。
娘は隠し部屋に隠され無事だったが、メイドから話を聞く限り、妻は自分が囮になり、娘を救ったそうだ。
そんな妻を誇らしく思うよりも、僕は妻が連れ去られてしまった事実に打ちひしがれた。
誰よりも愛していた、愛しい妻。
街中、どこを探しても妻の姿はない。
僕は大事な妻がいなくなり、途方にくれていた。
どうしてこんな……妻は売られてしまったのだろうかと……。
僕はどうにかしても妻を見つけたくて、街のあちこちの娼婦館にも足を運んでみるが……どこにも妻の姿はなかった。
子供頃に決められた許嫁との関係は良好で、結婚の証として、彼女の瞳を同じ、真っ青なネックレスを贈ったんだ。
そうして仕事も順調に進み、軌道にのった22歳の時に式を挙げた。
中々子宝に恵まれなかったのだが、25歳の時ようやく出来た子供は男の子で、シモンと名付け、妻と共に跡継ぎが出来たと喜んだ。
シモンは生まれた時から、大きな魔力を小さな体に纏っていた。
魔力が多いことは良い事だ、貴族として誇らしい。
そんなシモンは魔法が好きなようで、よく僕の魔法を真似していたなぁ。
そんな可愛いシモンが成長し、言葉を覚えると、息子はどんどん魔法を習得していった。
そんな中、最初に異変に気が付いたのは、息子がまだ4歳の頃……息子は庭で一人ポツンと座り込んでいた。
何をしているのかと覗いてみると、シモンは庭に居た鳥を火の魔法で焼いていた。
あまりの衝撃にすぐにシモンを鳥から離し、叱りつけてみるが……息子はちゃんと理解できていない様だった。
それからも度々息子のそういった姿をよく見かけた。
それは鳥であったり、ウサギであったり、動物は様々だ。
苦しみ泣き叫ぶ生き物の姿を……息子はいつも消えゆく命をじっと見つめていたんだ。
どれだけ叱りつけてもそれがなくなることはなかった。
ある時シモンにどうしてそんな事をするのかと問い詰めた事ある。
「シモン、どうして生き物を殺すんだ!可哀そうだろう。それはやってはいけないことだ!」
「うーん、でも父様も鳥を殺して、持って帰って来るじゃないか」
「あれは!!!食べる為に必要だろう!シモンのは違う。理由のない殺生はいけないことだ!」
「どうして?殺すことに意味があれば殺していいの?でも意味がなければ殺しちゃダメなの?ねぇ、どうして?同じことなのに……」
何でもない事のようにそう口にする息子に、僕は初めて恐怖を感じたんだ。
この子は何かが抜け落ちているのだと……。
そこから僕はシモンと一緒に過ごす事が出来なくなっていった。
そうして僕が31歳の時に、娘ステラが生まれた。
ステラは可愛い女の子で、目に入れても痛くないほどに。
僕はこの可愛らしい娘がシモンのようになってしまわないように、息子を遠ざけた。
そんなある日、事件が起きた。
そんなステラは生まれたばかりで、泣くことが仕事だ。
ぐずって泣くステラをメイドがあやしていると、そこにシモンがやってきた。
シモンは無表情のまま、ステラに炎の玉をぶつけようとすると、それを庇ったメイドが大やけどをした。
屋敷は騒然となり、すぐに僕へ連絡が入ると、そこで久方ぶりにシモンと対面した。
「シモン、どうしてこんなことを!!!ステラに何かあったら!!お前はどうするんだ!」
「だって煩かったから」
そう淡々と話すシモンの様子に、もう僕は限界だったんだ。
いつか僕の手ではおえなくなる。
きっと成長すれば、魔力も力も……シモンは私を超えるだろう。
そう確信すると、すぐに妻に相談し、僕たちはある決意をした。
これ以上シモンを育てていくことは危険だ。
しかしシモンは紛れもなく僕たちの子供。
そう思うと自分たちの手では下せない……だから捨てたんだ。
事件があって数週間後、魔法を使える執事に命令し、シモンを迷宮の屋敷の森へ連れて行かせると、そのまま置き去りにさせた。
食料は何も持たせずに、道もわからない様遠回りをさせて……。
迷宮の森は人間では、簡単に抜け出すことが出来ない、不思議な場所。
そこに誤って入り込んだ者は、出てくることが出来ないと噂で聞いていた。
息子はあの森で……猛獣に襲われ食われるか、餓死で命を落とすのか……。
それはわからないが、もうシモンに会う事はないだろう。
それから僕たちは屋敷を移動し、住む場所を変えた。
あの屋敷には、シモンとの思い出が詰まっているから。
そうして僕たちは、最初からシモンは存在しない人だったと言い聞かせ、幼いステラに、自分に兄が居た事を、僕たちは教える事はなかった。
まぁ……最初のうちはどこか暗い雰囲気が漂っていたが……次第にいつもと同じ日常へ戻っていく。
そうして月日が流れると、突然に女性が減っていると街で噂が立ち始めた。
噂を聞き、城中で原因を探ろうとするも、何の成果も上がらない。
そんな混沌とする中、街で新たな勢力が生まれたんだ。
それがイサファミリーだった。
イサファミリーは街の破落戸を束ね、どんどん勢力を伸ばしていく。
女を連れ去り、商品として売り金を作る。
資金を得た彼らは、勢力を拡大してくと、街の治安は悪くなる一方だった。
だが城も、女性が減る原因を突き止めるのに忙しく、中々彼らを潰すことが出来ないでいた。
そんなある日、僕が家に帰ると、部屋が荒らされ……妻がいなくなっていたんだ。
雇っていた騎士は殺され、屋敷の中は悲惨な状態だった。
娘は隠し部屋に隠され無事だったが、メイドから話を聞く限り、妻は自分が囮になり、娘を救ったそうだ。
そんな妻を誇らしく思うよりも、僕は妻が連れ去られてしまった事実に打ちひしがれた。
誰よりも愛していた、愛しい妻。
街中、どこを探しても妻の姿はない。
僕は大事な妻がいなくなり、途方にくれていた。
どうしてこんな……妻は売られてしまったのだろうかと……。
僕はどうにかしても妻を見つけたくて、街のあちこちの娼婦館にも足を運んでみるが……どこにも妻の姿はなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる