[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章13:船旅編

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血のような真っ赤なそれを目にした瞬間、一気に血の気が引くと、私は必死にミサンガを引きちぎろうと力を込める。
しかしミサンガは取れる気配がなく、まるで頑丈な鉄で出来ているように固くなっていた。
何なのよこれは……。
只の糸で作らているはずなのにどうなっているのよ……。

「こらこらっ、無駄な事はやめな。そのミサンガはもう取れない。ほら……無理に引きちぎろうとするから、手首が赤くなってしまっている。大丈夫かい?」

赤くなった腕へ手を伸ばす姿に、私はノエルの手を思いっきりに振り払った。
そのまま距離を取るように後退すると、脚が小さく震えていた。

「触らないで……っっ」

どれだけ引きちぎろうと試してみても、魔法で鋭い刃を作り切断しようと試みるも、まったく効果はない。
ミサンガは取れることなく手に巻き付いたままだ。

「ほら、さっさとあきらめた方がいい。そのミサンガで、私は君がどこへ居ても必ず居場所がわかる。君もそれは経験済みだろう。だが居場所がわかっていても……さすがにランギの街まで移動するには無理があった。だからこうやって君が近くに来るのを待っていたんだ。君が船にのって壁の傍へ来るとの情報は手に入れていたからね。でもばれてしまっては困る。だから君が不審がらないようカモフラージュの為に、もう一つ対となるミサンガ作ったんだ。確かそれは……あの獣が持っているようだねぇ」

ノエルはゆっくりと距離を詰めてくる中、ふとニヤリと口角を上げた。
青い瞳が真っすぐに向けられると、不気味な沈黙が流れる。

「何が目的なの……どうして私の事を……?何を企んでいるのよ!!!まさかあなたも壁の向こう側から来たの……?」

「まさか、そんな事……私のような魔導師であっても出来るはずがない。もしできていれば……今頃全ては完成しているはずだからね。それよりも君は本当に壁の外から来たのかな?ははっ、まぁそんなことはどうでもいいんだ。それよりも今重要なのは、君が私の望んでいた力を使いこなせるという事実。アハハハハハッ、嬉しいよ」

突然の高笑いに背筋にまたゾクゾクと悪寒が走ると、私はジリジリと後退してみせる。

「君の魔法は素晴らしい。期待以上……ようやく見つけたんだ。これですべてが完成する」

ノエルは目じりへ皺を寄せながらに嬉しそうに笑うと、私へと手を伸ばす。
恐怖のあまり風魔法でノエルを吹き飛ばそうとしてみるが……彼の防御魔法の前でチリチリになって消えていった。
この男……思っていたよりも……強い……。
もっと大きな魔法を使いたいけれど……これだけ近いと魔法を展開する前に捕まってしまうわ。
反射的に伸ばされた腕から逃れるように後退しながらに避け続けていると、気が付けば……背に壁の冷たさが伝わってきた。
じっと見下ろす青いな瞳に私の姿が映り込むと、その奥はモヤモヤと闇が揺れている。

「止まりなさい!!!……近づかないで!それ以上動近づくと……ッッ」

「ふふっ……どうしたんだい?近づくとどうなるのかな?」

ノエルは詰め寄るようにこちらへ近づいてくる中、その姿に魔力を集めようとするが、なぜか体が動かない。
どうして……なんで体が動かないの。
さっきまで普通だったのに……。
一体何が起こったの!?
動かない体に狼狽する中、男は私の顔を覗き込むと、徐に口を開いた。

「ようやく効いてきたようだね。ほら、そんな危ない手は下ろして……私を優しく抱きしめてくれるかな」

その言葉に先ほどまでピクリとも動かなかった体が勝手に動きはじめると、意思とは反しノエルの元へ自ら近づいていく。
なっ何、どうなってるの!?
止まりなさい、ちょっと、やめて!!!
そう必死に言い聞かせてみるも、自分の体は全くいう事を聞かない。
まるで人形のように彼の言葉に従う中、そのままノエルへ手を伸ばしながらに抱きしめると、彼の胸の中へ静かに顔を埋めた。

「いい子だ、そのまま顔を上げて……私に口づけを」

その指示にまたも体が勝手に動きはじめると、体が勝手に唇へと近づいていく。

「いやっ、なにっ、嫌っ、どうして……ッッ」

そのまま柔らかい唇が触れた瞬間、彼の舌が私の中へ侵入してくる。
湿った舌にゾクゾクと体が震えると、求めるように舌をからめとっていく。
なんでこんなこと……っっ。
抵抗したいのに、嫌なのに……体は思うように動いてはくれない。
まるで自分の体が別の何かになってしまったような……気味の悪い感覚が襲ってくる。
そんな中、翻弄されるままに口づけが深く深くなっていくと、不快感を吹き飛ばすほどの痺れるような刺激が駆け抜けていった。
体は思うように動かないのに……感覚だけはリアルに伝わってくる。

「……んっ……ふぅ……んんんっ、うぅぅん……っっ」

舌が絡めとられ、唇の隙間からクチャクチャと音が響くと、彼の唇がゆっくりと離れていく。
青い瞳に囚われる中、逃げるようと試みるが……私の体は彼の腕の中から逃げ出す様子を見せない。

「……ッッ、何をしたのよ!」

彼の胸の中へ顔を埋めながら力いっぱいに叫ぶと、頭上からクスクスと笑い声が耳に響いた。
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