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第五章
新章7:捕らえられた先に
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彼女を探し始める中、世間で私はなぜか戦死した事になっていた。
なぜだかわからない、だが生きている、私はここにいる、そう主張しても変わらなかった。
だから私は表舞台から去り、裏の世界へと身を寄せた。
そうして遣い魔を駆使し、資金を稼ぎ、動きやすいようにギルドというものを創り上げた。
そしてギルドを渡り歩き、あちらこちらへと赴く毎日。
そうしていくうちに、私はいつの間にか、裏社会のボスと呼ばれるようになっていった。
しかし西の国、南の国と全てを探してみたが、彼女の魔力は見つけられなかった。
後は壁の向こう……だがそれは出来ない。
だから私は壁の向こうへ自分の魔力を飛ばす術を見つけ出すと、彼女の魔力を探した。
だが……どこにもない。
彼女が死んだ……いや、そんなはずはない。
彼女はあの壁を作り、戦争を終わらせたんだ。
死んでいるはずなんてない。
そう言い聞かせながら数十年を過ごしたある日、私はあることに気が付いた。
もうすぐ齢50歳となるのに、自分自身の見た目が変わっていなかったんだ。
普通なら年を取るごとに体力が落ちたり、皺が増えたりするだろう。
それがないんだ、まるで16歳のまま時間が止まってしまったのように、私はそのままだった。
そう気が付いて、私は今一度彼女の暮らしていた小屋へ戻った。
そこも数十年前と同じ状態で、時間がとまっていた。
腐食した様子もなくてね、だから何か手掛かりが残っていないかと探してみると、私はそこで一冊の本を見つけたんだ。
その本に書かれている文字は西の国の言葉ではなく、まるで暗号のようなものだった。
でもその字は間違いなく彼女の筆跡だ。
だから私は文字の解読を始めた。
歳をとらないんだ、時間は有限にある。
一つ一つの文字解析し、気が付けば目覚めた日から100年は過ぎ去っていた。
それでも本の解読は半分も終わっていなくてね……このままだと埒が明かない、そう思い新たな情報を仕入れる為に、資金が必要になった。
そこで私は作り上げたギルドを活用し、破落戸や表社会から外れた優秀な人材を集めると、裏の組織を新たに創り上げた。
そうして情報機関と実働部隊を立ち上げ、あちらこちらのギルドや騎士たちに紛れ込ませた。
そうやって命令一つで情報と金が私のところへ入ってくるようにしたんだ。
そこからも長かった。
さらに100年ほどしてようやく解読に成功すると、そこに書かれていたのは彼女が造りだしたのだろう魔法の数々だった。
そこから書かれた魔法を使いこなす練習を始めた。
これで何かわかるのかと思ったが、手掛かりすら掴めずにいた。
だが全ての魔法を使いこなせるようになったあの日、最後の頁にある魔法陣が浮かび上がったんだ。
それがこの魔法だった。
だがその頃、放置していたからだろう、もしくは優秀な者を私の代役としてボスに指名していたからか……裏の社会は表社会へ影響が出るほどに大きく育っていてね、とうとう王宮が動き出した。
目障りな蠅共が潰そうと、私を捕らえに来るんだ。
もちろん私は魔法使い、捕まる事はない。
だが如何せん数が多い、どれだけ倒そうとも妨害しようとも減ることはない。
次第に魔法陣の解読が思うように進まなくなり、鬱陶しさに苛立ちが募っていった。
そこで私は獣人の国である南を利用し、小競り合い程度の戦争を起こした。
数百年前ほど大きな戦争ではないが、これで私を追っている場合じゃなくなるだろう。
だが戦争が終わればまた追いかけられる。
やっと最後の魔法陣を見つけたんだ、これ以上邪魔をされる訳にはいかなかった。
だから私は直接王女へ会いに行き、慌ただしく騎士達も少ない王宮を占領すると、脅しにかかった。
すると王女はあっさりと、裏の世界に干渉しないと折れてくれたんだ
条約を取り付けて、私はすぐにその小競り合いを終わらせた。
このまま放置しておいても良かったのだが、それだと戦争が激しくなるだろう。
激しくなれば私も穏やかな研究は出来なくなる。
私が主導権を握っていた戦争だ、終わらせることは簡単だった。
そうして煩わしい思いに悩まされることなく研究を続けていると、数十年で魔法陣の解読に成功した。
だがこれを使うには壮大な魔力が必要になる。
私一人の力では到底成し遂げられない。
どうすればいいのか、毎日毎日考えたよ。
西の国にも魔法使いは存在する、だが彼らは私達とは違うだろう。
流れる魔力を全て出せるわけじゃない、偽物の魔法使いは無意味なんだ。
そこで私は魔法使いを育成しようと考えた。
その者が持つ魔力も感じ取れるし、魔法の知識はそれなりにあるからね。
魔力の保有量が多い子供を見つけては近づいて、魔力の使いかたを教えた。
最初は遣い魔使いにさせ、そこから魔力の扱い方を学ばせる。
だが誰一人として、魔力を外へ出すことが出来なかった。
諦めかけていたその時、私はそこにいるカミールと出会った。
彼は相当な魔力を持ち、血も申し分ない。
山奥で隠れて暮らしていた彼らに近づき、母親を洗脳した。
そこから彼を立派な遣い魔に育て上げたんだ。
覚えも早くてね、今まで育ててきた子供の中でも飛びぬけていた。
だが……どれだけ教えても魔力を放出することは叶わなかった。
最後の手段に、彼の目の前で母親を殺し、怒りと憎しみの力で力が解放されるか試したみたんだけど、失敗だったなぁ。
まぁその話は置いといて、私は魔法使いを育てることを諦めると、手っ取り早く子供たちを集めることにしたんだ。
子供は汚れた大人たちと違って純粋だからね。
扱いやすい……いや操りやすいんだ。
私の計算によると、子供を1000人ほど集め血をささげれば、この魔法陣が動く。
だから組織を使って子どもを国中から集めさせ始めた。
だけどそんな時に君が現れた。
どうやって壁を渡ってきたのかは知らないが、これは誰かが私に与えた贈り物だそう思った。
私と同じ完成された魔法使い。
君を見つけた事で、この広い収容所に集めていた子供たちを解放し、そして君を捕らえる策を練った。
あぁ、もちろん魔法で子供たちの記憶を奪って解放してあるから、足はつかないよ。
ランギの街に居た彼を使ってね、君にそのミサンガを着けさせた。
位置さえ把握できれば、いつでも捕らえられるからね。
だけど本当に私の求める魔法使いなのか、噂だけでは不安だった。
だからこの目で魔法使いという事を確認したくて、あの日船にまで乗り込み君へ会いに行った。
出会った君は私の理想そのままだった。
魔法の力は申し分ない、後は私の魔力を君に渡すだけ。
こうしておけば魔力を奪いやすくなるんだ。
私の魔力が体の中で反応してね、君の魔力を引き出しやすくなる。
「まぁ、そういう理由で君は今ここにいる。話を聞いてくれてありがとう。はぁ……ここまで本当に長い時間だった。だがようやく彼女に会える。愛しい愛しい……エレナに」
エレナ……エレナってまさか……ッッ
その名に私は大きく目を見開く中、彼はゆっくりと立ち上がると、手を高く上げ、指先に魔力が浮かび上がった。
なぜだかわからない、だが生きている、私はここにいる、そう主張しても変わらなかった。
だから私は表舞台から去り、裏の世界へと身を寄せた。
そうして遣い魔を駆使し、資金を稼ぎ、動きやすいようにギルドというものを創り上げた。
そしてギルドを渡り歩き、あちらこちらへと赴く毎日。
そうしていくうちに、私はいつの間にか、裏社会のボスと呼ばれるようになっていった。
しかし西の国、南の国と全てを探してみたが、彼女の魔力は見つけられなかった。
後は壁の向こう……だがそれは出来ない。
だから私は壁の向こうへ自分の魔力を飛ばす術を見つけ出すと、彼女の魔力を探した。
だが……どこにもない。
彼女が死んだ……いや、そんなはずはない。
彼女はあの壁を作り、戦争を終わらせたんだ。
死んでいるはずなんてない。
そう言い聞かせながら数十年を過ごしたある日、私はあることに気が付いた。
もうすぐ齢50歳となるのに、自分自身の見た目が変わっていなかったんだ。
普通なら年を取るごとに体力が落ちたり、皺が増えたりするだろう。
それがないんだ、まるで16歳のまま時間が止まってしまったのように、私はそのままだった。
そう気が付いて、私は今一度彼女の暮らしていた小屋へ戻った。
そこも数十年前と同じ状態で、時間がとまっていた。
腐食した様子もなくてね、だから何か手掛かりが残っていないかと探してみると、私はそこで一冊の本を見つけたんだ。
その本に書かれている文字は西の国の言葉ではなく、まるで暗号のようなものだった。
でもその字は間違いなく彼女の筆跡だ。
だから私は文字の解読を始めた。
歳をとらないんだ、時間は有限にある。
一つ一つの文字解析し、気が付けば目覚めた日から100年は過ぎ去っていた。
それでも本の解読は半分も終わっていなくてね……このままだと埒が明かない、そう思い新たな情報を仕入れる為に、資金が必要になった。
そこで私は作り上げたギルドを活用し、破落戸や表社会から外れた優秀な人材を集めると、裏の組織を新たに創り上げた。
そうして情報機関と実働部隊を立ち上げ、あちらこちらのギルドや騎士たちに紛れ込ませた。
そうやって命令一つで情報と金が私のところへ入ってくるようにしたんだ。
そこからも長かった。
さらに100年ほどしてようやく解読に成功すると、そこに書かれていたのは彼女が造りだしたのだろう魔法の数々だった。
そこから書かれた魔法を使いこなす練習を始めた。
これで何かわかるのかと思ったが、手掛かりすら掴めずにいた。
だが全ての魔法を使いこなせるようになったあの日、最後の頁にある魔法陣が浮かび上がったんだ。
それがこの魔法だった。
だがその頃、放置していたからだろう、もしくは優秀な者を私の代役としてボスに指名していたからか……裏の社会は表社会へ影響が出るほどに大きく育っていてね、とうとう王宮が動き出した。
目障りな蠅共が潰そうと、私を捕らえに来るんだ。
もちろん私は魔法使い、捕まる事はない。
だが如何せん数が多い、どれだけ倒そうとも妨害しようとも減ることはない。
次第に魔法陣の解読が思うように進まなくなり、鬱陶しさに苛立ちが募っていった。
そこで私は獣人の国である南を利用し、小競り合い程度の戦争を起こした。
数百年前ほど大きな戦争ではないが、これで私を追っている場合じゃなくなるだろう。
だが戦争が終わればまた追いかけられる。
やっと最後の魔法陣を見つけたんだ、これ以上邪魔をされる訳にはいかなかった。
だから私は直接王女へ会いに行き、慌ただしく騎士達も少ない王宮を占領すると、脅しにかかった。
すると王女はあっさりと、裏の世界に干渉しないと折れてくれたんだ
条約を取り付けて、私はすぐにその小競り合いを終わらせた。
このまま放置しておいても良かったのだが、それだと戦争が激しくなるだろう。
激しくなれば私も穏やかな研究は出来なくなる。
私が主導権を握っていた戦争だ、終わらせることは簡単だった。
そうして煩わしい思いに悩まされることなく研究を続けていると、数十年で魔法陣の解読に成功した。
だがこれを使うには壮大な魔力が必要になる。
私一人の力では到底成し遂げられない。
どうすればいいのか、毎日毎日考えたよ。
西の国にも魔法使いは存在する、だが彼らは私達とは違うだろう。
流れる魔力を全て出せるわけじゃない、偽物の魔法使いは無意味なんだ。
そこで私は魔法使いを育成しようと考えた。
その者が持つ魔力も感じ取れるし、魔法の知識はそれなりにあるからね。
魔力の保有量が多い子供を見つけては近づいて、魔力の使いかたを教えた。
最初は遣い魔使いにさせ、そこから魔力の扱い方を学ばせる。
だが誰一人として、魔力を外へ出すことが出来なかった。
諦めかけていたその時、私はそこにいるカミールと出会った。
彼は相当な魔力を持ち、血も申し分ない。
山奥で隠れて暮らしていた彼らに近づき、母親を洗脳した。
そこから彼を立派な遣い魔に育て上げたんだ。
覚えも早くてね、今まで育ててきた子供の中でも飛びぬけていた。
だが……どれだけ教えても魔力を放出することは叶わなかった。
最後の手段に、彼の目の前で母親を殺し、怒りと憎しみの力で力が解放されるか試したみたんだけど、失敗だったなぁ。
まぁその話は置いといて、私は魔法使いを育てることを諦めると、手っ取り早く子供たちを集めることにしたんだ。
子供は汚れた大人たちと違って純粋だからね。
扱いやすい……いや操りやすいんだ。
私の計算によると、子供を1000人ほど集め血をささげれば、この魔法陣が動く。
だから組織を使って子どもを国中から集めさせ始めた。
だけどそんな時に君が現れた。
どうやって壁を渡ってきたのかは知らないが、これは誰かが私に与えた贈り物だそう思った。
私と同じ完成された魔法使い。
君を見つけた事で、この広い収容所に集めていた子供たちを解放し、そして君を捕らえる策を練った。
あぁ、もちろん魔法で子供たちの記憶を奪って解放してあるから、足はつかないよ。
ランギの街に居た彼を使ってね、君にそのミサンガを着けさせた。
位置さえ把握できれば、いつでも捕らえられるからね。
だけど本当に私の求める魔法使いなのか、噂だけでは不安だった。
だからこの目で魔法使いという事を確認したくて、あの日船にまで乗り込み君へ会いに行った。
出会った君は私の理想そのままだった。
魔法の力は申し分ない、後は私の魔力を君に渡すだけ。
こうしておけば魔力を奪いやすくなるんだ。
私の魔力が体の中で反応してね、君の魔力を引き出しやすくなる。
「まぁ、そういう理由で君は今ここにいる。話を聞いてくれてありがとう。はぁ……ここまで本当に長い時間だった。だがようやく彼女に会える。愛しい愛しい……エレナに」
エレナ……エレナってまさか……ッッ
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