[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第二章

魔法の習得:中編2

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次の日、また次の日……私は毎日魔法の訓練に明け暮れていた。
しかし一向に私の手に光は浮かび上がらない。
エヴァンが様々なアドバイスをしてくれるが……全く進歩しない現状に私は気落ちしていった。
それでもエヴァンは、こんな私へ根気よく魔法を教えてくれる。
そんな彼に何とか答えようと必死だったが……成果は上がらないまま、気がつけば3週間ほど経過していた。

今日も私はエヴァンに連れられドームへやって来ると、見慣れた芝生を踏みしめる。
ドームの中央に立ち、私は深く息を吸い込むと、またゆっくりと血液の流れを感じながら手を胸の前で開く。
ゆっくりとオールと唱えてみるも……やはり光は現れない。
見慣れたその光景に大きなため息をつくと、徐にエヴァンへ振り返った。

「あの……今更なんだけど、その魔力の流れって言うをもう一度教えてくれないかしら?」

私は申し訳なさそうに彼を見上げると、エヴァンは私の隣へ佇んだ。

「焦らなくても大丈夫ですよ。魔力の流れですか……難しい質問ですね……この世界に生まれついた者は常に魔力の流れを体で感る事ができます。それは呼吸と同じ自然な事ですので……そうですね……異世界の姫にイメージしやすい様に血と言いましたが……目を閉じている間、何か感じませんでしたか?こう体の周りを、流れるような何かを」

何かを感じる……?
いや何も感じないかな……。
私は再度瞳を閉じてみると、体に廻っているのだろう魔力を探してみる。
どんな感じなんだろう……、流れるって何だろう……。
今こうやって瞳を閉じていても思い浮かべるのは血が流れているであろう道筋。
いやいや、血液の流れなんて感じた事ないし……うーん……。

うんうんと頭を悩ませる中、ふと小さな羽音が耳に届く。
私は徐に瞳を持ち上げてみると、そこには小さな金色の蝶が羽ばたいていた。
その蝶はエヴァンの肩へとまると、小さく光を放つ。
エヴァンはその蝶に視線を向けると、嫌そうに顔を歪めた。
彼は深いため息を吐きながら徐に蝶へ触れると、蝶はキラキラと光を放ち消え去った。

「すみません、急用が入ってしまったので、今日はここまでにしましょうか?」

「えっ、あの……出来れば……もう少し練習していたいのだけど……」

エヴァンは徐に手を広げると、彼の手の平には、彼の瞳と同じエメラルドの色をした蝶が現れる。
蝶はヒラヒラと口元へ近づいていくと、彼はボソボソと蝶へ向かって何かを呟いた。

「わかりました、では私は少し席を外しますね……。私が居ない間、この部屋には誰も入れない様に魔法をかけてありますので、安心してください。後……私が戻ってくるまで、ここから出ないように……それだけは、約束してください」

私は深く頷くと、エヴァンへニッコリ笑みを浮かべる。

「無理を言ってすみません。ありがとうございます!」

エヴァンは私の姿に驚いた様子を見せたかと思うと、笑みを深めながら、すぐ戻りますと静かに部屋を後にしていった。


一人になった空間で、私はまたゆっくりと目を閉じた。
暗闇の中、エヴァンの言っている(何か)を探してみる。
魔力の流れか……うーん……。
何かつかめそうでつかめない感覚に苛立つ中、ふとタクミの姿が瞼の裏に蘇った。
彼もこうやって魔力を感じていたのだろうか……。
静かなドームの中、笑みを浮かべるタクミの姿を思い返していると、タクミの言葉が頭をよぎった。

「ねぇ、君はどうして目に見えない物を信用しないんだい?」

「えっ、だって目に見えない物なんて存在しないのと同じでしょう?」

「君らしい答えだね。でもそれだと新しい発見は出来ないよ」

「私はそれでいいの!神様なんて信じないし、お化けも信じないわ。ちゃんと科学的な根拠がなくちゃ!」

「ははっ、でもほら、よく見て……君の周りにはね、温かい真っ白な光が君の周りを包んでいる」

あの時は聞き流していたけれど……もしかしたらその白い光が私の魔力だったのかな。
私はふっと体から力を抜くと、彼の見ていたを頭の中でイメージする。
すると体の奥底から小さな熱を感じた。
初めて感じた……これが温かい光……?
私は恐る恐る唇を動かすと、徐に手を広げる。

「オール」

その瞬間、まばゆい光があたり一面を照らした。
あまりの眩しさに目が眩む中、私の体から熱がドンドン増していく。
出来た!!!けど……これどうやってとめるのよ!!!
手の平から溢れ出る光に、私は咄嗟にエヴァンから貰った石を当ててみるが……石は光の中へ溶け、光は益々大きくなっていく。
ひぇっ……!!!!
あまりの光の量に狼狽する中、先ほどまで感じていた熱が徐々におちついてくる。

すると突然脚の力が抜け、私はその場にへたり込んだ。
何……ちょっと何なのよ!!
あぁ……どうして魔法の止め方を教えてもらわなかったんだろう……いや言っていたのかもしれない。
私が聞き流していたのかも……。

必死に脚を動かそうとするも、なぜか脚は鉛の様に重い。
手の光が消えることはないまま、徐々に体にだるさを感じると、私はそのまま地面へ倒れ込んでいく。
うぅ……どうすれば止まるのよ……。
次第に体を動かすことが困難になると、私は手の平の光をそのままに、瞼が重くなっていった。
荒く息を繰り返す中、視界が霞んでいくと、私は眠るように芝生の上に横たわった。
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