悪役令嬢エリザベート物語

kirara

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エリザベート嬢はあきらめない

大切な存在になった攻略対象者達

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 汚職事件が解決したあと、「食堂のランチが驚くほど美味しくなった」と生徒たちは喜んだ。

 それからしばらくして選挙があり、新しい生徒会長が決まった。  

 アルベール会長は卒業して、エリザ達は3年生になった。

 信頼できるお昼仲間達のおかげで、エリザは学園生活を充分に楽しめている。

 ウィリ様が、真実の愛の相手(聖女ロリエッタ)と本当に恋に落ちれば、アントワーズとの婚約発表もなくなるけれど、

 今のウィリ様がアントワーズ以外の女性に、心を奪われるなど想像も出来ない。

 現状は少しずつ、少しずつ、変わってきている。
 
 エドもウィリ様も、エリザにとって、今の学園生活には欠かせない大切な存在になっている。

 そんな関係も、ヒロインが現れると変わってしまうのだろうか?そんなはずはないと信じたい。

 アルベール会長にしてもそうだ。

「食堂の料理は私の口には合いません」

 生意気な一年生の私の言葉を、真摯(しんし)に受け止めて、解決して下さったのだ。

「また、王都学園で会えるのを楽しみにしているよ」

 卒業式の日、ご挨拶に行った私にそう言ったアルベール会長も、ゲームの中の彼とは違っていた。

 私が覚えているゲームの中のアルベール・ロレーヌは、孤独な人だった。

 天才ゆえの孤独。

 彼は幼い頃からずっと1人だった。
 彼はそれが寂しいとも思わなかった。

 けれど、ドリミア学園に入ってリアム・ノイズの存在を知って彼は変わる。

 自分を理解できる人がいる。
 父や母や乳母やまわりの人々。
 誰にも分からない彼の孤独を、理解できるであろう唯一の人物。
 それが生徒会長のリアム・ノイズだった。

 アルベールはリアムに、いつの間にか閉ざしてしまっていた自分の心を開いていく。

 そして、彼を信頼し尊敬して、彼の考えに影響されるようになっていく。

 けれど、ゲームの中のリアムは闇に堕ちていた。アルベールの孤独な心もその闇に感化されていくのだ。

 悲しすぎる!
 お兄様もアルベール会長も!

 でも今のお兄様は違う。

 私に話しかけて下さるコバルトブルーの瞳には、愛が満ち溢れている。
 今のお兄様なら、アルベール会長の良き先輩となって下さるだろう。

 お兄様もアルベール会長と同じく、幼い頃から何でも出来たと聞いている。

 風の精霊パールの宿るフェナンシル家の指輪を握りしめて、アイラと2人でノイズ家に現れる。その時、お兄様はわずか2歳だった。

 本当に天才すぎます。

 その天才すぎる悩みを、今もかかえていらっしゃるのだろうか?そしてそれを癒すのは誰なの?

 ゲームの中ではロリエッタだったけれど。

 お兄様、私がいます。エリザベートがここにいます。もしまた闇が追いかけてきた時は、私の小さな光魔法でも、やっつける事は出来ますわ!

 だから・・・聖女様の虜にはならないで!お願いだから!

 私は祈らずにはいられない。お兄様も攻略対象者なのだから。

 ・・・・・


 3年生になって変わった事があった。
 私はウィリ様と一緒に登園するのをやめたのだ。

 ウィリ様の本当の恋人はアントワーズ。

 私とウィリ様が一緒に登園する事を、アッサリと認めて許してしまう彼女の器の大きさには、感心してしまうけれど。

 婚約者でもない男女が、毎日一緒に登園するのには限界がある。そろそろ正さなければならない。

 アントワーズが王妃様になった時に、国民が誤解をするような事はしたくないから。

 私には人の恋路の邪魔をする趣味はない。

 2年間も一緒に登園したのだから、カモフラージュとしての役割りは十分に果たせているはず。

 私達はもう5歳児ではないのだから。

 今までは私たちの時間の邪魔をしてはいけないとの配慮から、学園に着いてから合流していたエドが、城までウィリ様を迎えに行って一緒に登園する事になった。

 私は我が家の馬車で、ゆっくりと、のんびりと、通うつもりでいる。

 今ではエドとアメリアも、アントワーズとウィリ様の関係に気が付いている。
 私がカモフラージュの婚約者候補だということも。

 エドはアントワーズとウィリ様のデートの護衛までしていると言っていた。

 アメリアは正式に婚約者候補を辞退している。これは辞退のタイミングを見ていただけのようだけれど。

 あと2人の攻略対象者が存在するはずなのだけれど。名前も思い出せない。

 けれど、少しずつ環境は変わってきた。あの日、私を糾弾した攻略対象者達が、大切な存在になってきている。

 このまま、彼らとの関係が壊れなければいいのに。そう祈るエリザベートだった。
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