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エリザベート嬢はあきらめない
久しぶりの女子寮で
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瘴気の浄化を終えたロリエッタは、久しぶりに学園の女子寮の部屋に戻ってきた。
聖女になってからは1度も、この部屋には戻っていなかった。
「この部屋ってこんなに狭かったのね」
そう呟(つぶや)いて、彼女は生活魔法を使った。すると、部屋の中は清掃の直後のように綺麗になった。
(これでいいわ。これなら何時(いつ)彼がいつ来ても大丈夫ね)
今日はこれから王都学園の生徒会長、アルベール・ロレーヌがこの部屋を訪ねて来る事になっていた。
「ロリエッタ・トリエールさん、お客様がお見えです」
この女子寮を管理している恰幅のいい女性の案内で、時間通りにアルベールがやってきた。
アルベールが部屋に招き入れられるのを確認して、その女性は立ち去って行った。
「アル、お久しぶり」
彼を前にしたロリエッタは余裕の笑みを浮かべた。
「お久しぶりです、ロリエッタ。貴方の活躍は耳にしていますよ」
そう言って彼女に穏やかな笑みを浮かべたアルベールは、彼女の右手をとり軽く膝を折った。そして勧められたソファーに腰を下ろした。
ロリエッタは魔法でお菓子をお皿に乗せ、テーブルに置いた。
「今朝、お城のシェフにお願いして焼いてもらったのよ。アルに食べてもらおうと思って。飲み物は紅茶でいい?」
「ええ、紅茶をお願いします」
紅茶ポットとカップが食器棚から現れて、お湯を注ぎ、カップに自動的に紅茶が注がれる。
「魔法の腕も上がったでしょ?」
ロリエッタはニッコリ笑ってアルベールを見た。
「今日はどうしたの?アル。貴方から私を訪ねてくれるのは初めてよ」
それは本当だった。今年の新入生の入学式に、全校生徒の前で、光属性の聖女として紹介してくれた時から彼は変わった。
彼女に微笑みかけ、時間が許す限り行動を共にするようになった。
けれど、自分からロリエッタに何かを言ってくる事は一度もなかった。
そのアルベールから、今日、寮に戻って来るのなら、訪ねてもいいかと連絡があったのだ。
ロリエッタはピンクブロンドの髪をふわふわさせて、マリンブルーの瞳をキラキラさせながらアルベールにたずねた。
「ロリエッタ嬢。僕からお伝えしたい事があるのです」
「伝えたいこと?」
ロリエッタはアルベールを見た。
「きっと驚かれると思いますよ」
なんだろう?まさかこの状況で愛の告白とか?まって、どうしよう。心の準備が出来てないわ。1人で焦りながらロリエッタは身構えた。
「ロリエッタ嬢。僕は貴方の魅了魔法にはかかっていません」
「え?」
何?彼は今なんて言ったの?
「僕は最初から貴方に魅了されていないと言っているんですよ。ロリエッタ嬢」
「!・・まさか!」
「そう、その、まさかです」
ロリエッタの顔から血の気が引いていく。
この部屋にはアルベールと自分の2人だけ。今から何を言われるのだろう?
「アミルダ王国のレティシア様が、貴方の事を心配されています」
「レティシア様が?」
「貴方の側にいつもいる、あの、怪しげな男。彼が闇魔法の使い手である事を、貴方はご存知ですよね?
彼らがアミルダ王国や近隣諸国に発生している瘴気を呼びだしている事も・・」
ロリエッタは驚いてアルベールを見た。
「そんな輩(やから)と貴方が一緒にいる事を、レティシア様は心配しておられます」
「この国に発生してくる瘴気は、誰が呼び寄せたものでもなく、どこかに出来た異世界に繋がる空間の綻(ほころ)びから、発生してくるらしいです」
「空間のほころび?」
「レティシア様はそう言われていました。光魔法で発生してくる瘴気を浄化して、空間の綻びを修復する事ができるそうです」
「ええ、それは知っているわ。私はその瘴気を全て浄化するつもりよ。必要なら空間の綻びも修復するわ」
そう。それが聖女ロリエッタのやるべき事だもの。まさか、アル様に言われるとは思わなかったけど。
「良かった。貴方はあの男に毒されている訳ではないのですね。この国に発生した瘴気を浄化しに行く時は、いつでもお供致しますよ。そのために僕は貴方のお側にいたんです。ロリエッタ嬢。
魅了魔法なんか使わなくてもいいんですよ。聖女としての自覚を持って、やるべき事をやれば、国民は必ず貴方に微笑みかけます」
ああ、誰かにそう言って欲しかったのかも知れない。魅了魔法なんて使わなくていいと。
「アル、いえ、アル様。ありがとう」
「ロリエッタ嬢は、この国のどこかに瘴気が発生したら、すぐに気がつきますか?」
「いえ、分からないわ」
「そうですか。では、魔法騎士団のベルトン隊長に連絡を取りましょう。彼なら瘴気の発生をすぐに把握できるはずです。
瘴気が発生したらすぐに駆けつけられるように、これからは魔法騎士団と行動を共にする事になりますが、宜しいですか?勿論。私も一緒に行動します」
アルベールは真剣な表情をしていた。
ロリエッタはアルベールが魅了魔法にかかっていないのに、自分を気遣ってくれる事に驚いていた。久しぶりに感じる爽やかな気分だった。
アルベールと魔法騎士団第二部隊の隊長ベルトンは、独自の魔法で連絡を取り合えるようにしていた。
ベルトンは、アルベールからの連絡を受けてすぐにロリエッタの部屋に現れた。
そして、3人できちんと話し合った結果、ベルトンが率いる魔法騎士団第二部隊と、王都学園の生徒会長のアルベールが、ロリエッタの瘴気の浄化に同行することが決まったのだった。
聖女になってからは1度も、この部屋には戻っていなかった。
「この部屋ってこんなに狭かったのね」
そう呟(つぶや)いて、彼女は生活魔法を使った。すると、部屋の中は清掃の直後のように綺麗になった。
(これでいいわ。これなら何時(いつ)彼がいつ来ても大丈夫ね)
今日はこれから王都学園の生徒会長、アルベール・ロレーヌがこの部屋を訪ねて来る事になっていた。
「ロリエッタ・トリエールさん、お客様がお見えです」
この女子寮を管理している恰幅のいい女性の案内で、時間通りにアルベールがやってきた。
アルベールが部屋に招き入れられるのを確認して、その女性は立ち去って行った。
「アル、お久しぶり」
彼を前にしたロリエッタは余裕の笑みを浮かべた。
「お久しぶりです、ロリエッタ。貴方の活躍は耳にしていますよ」
そう言って彼女に穏やかな笑みを浮かべたアルベールは、彼女の右手をとり軽く膝を折った。そして勧められたソファーに腰を下ろした。
ロリエッタは魔法でお菓子をお皿に乗せ、テーブルに置いた。
「今朝、お城のシェフにお願いして焼いてもらったのよ。アルに食べてもらおうと思って。飲み物は紅茶でいい?」
「ええ、紅茶をお願いします」
紅茶ポットとカップが食器棚から現れて、お湯を注ぎ、カップに自動的に紅茶が注がれる。
「魔法の腕も上がったでしょ?」
ロリエッタはニッコリ笑ってアルベールを見た。
「今日はどうしたの?アル。貴方から私を訪ねてくれるのは初めてよ」
それは本当だった。今年の新入生の入学式に、全校生徒の前で、光属性の聖女として紹介してくれた時から彼は変わった。
彼女に微笑みかけ、時間が許す限り行動を共にするようになった。
けれど、自分からロリエッタに何かを言ってくる事は一度もなかった。
そのアルベールから、今日、寮に戻って来るのなら、訪ねてもいいかと連絡があったのだ。
ロリエッタはピンクブロンドの髪をふわふわさせて、マリンブルーの瞳をキラキラさせながらアルベールにたずねた。
「ロリエッタ嬢。僕からお伝えしたい事があるのです」
「伝えたいこと?」
ロリエッタはアルベールを見た。
「きっと驚かれると思いますよ」
なんだろう?まさかこの状況で愛の告白とか?まって、どうしよう。心の準備が出来てないわ。1人で焦りながらロリエッタは身構えた。
「ロリエッタ嬢。僕は貴方の魅了魔法にはかかっていません」
「え?」
何?彼は今なんて言ったの?
「僕は最初から貴方に魅了されていないと言っているんですよ。ロリエッタ嬢」
「!・・まさか!」
「そう、その、まさかです」
ロリエッタの顔から血の気が引いていく。
この部屋にはアルベールと自分の2人だけ。今から何を言われるのだろう?
「アミルダ王国のレティシア様が、貴方の事を心配されています」
「レティシア様が?」
「貴方の側にいつもいる、あの、怪しげな男。彼が闇魔法の使い手である事を、貴方はご存知ですよね?
彼らがアミルダ王国や近隣諸国に発生している瘴気を呼びだしている事も・・」
ロリエッタは驚いてアルベールを見た。
「そんな輩(やから)と貴方が一緒にいる事を、レティシア様は心配しておられます」
「この国に発生してくる瘴気は、誰が呼び寄せたものでもなく、どこかに出来た異世界に繋がる空間の綻(ほころ)びから、発生してくるらしいです」
「空間のほころび?」
「レティシア様はそう言われていました。光魔法で発生してくる瘴気を浄化して、空間の綻びを修復する事ができるそうです」
「ええ、それは知っているわ。私はその瘴気を全て浄化するつもりよ。必要なら空間の綻びも修復するわ」
そう。それが聖女ロリエッタのやるべき事だもの。まさか、アル様に言われるとは思わなかったけど。
「良かった。貴方はあの男に毒されている訳ではないのですね。この国に発生した瘴気を浄化しに行く時は、いつでもお供致しますよ。そのために僕は貴方のお側にいたんです。ロリエッタ嬢。
魅了魔法なんか使わなくてもいいんですよ。聖女としての自覚を持って、やるべき事をやれば、国民は必ず貴方に微笑みかけます」
ああ、誰かにそう言って欲しかったのかも知れない。魅了魔法なんて使わなくていいと。
「アル、いえ、アル様。ありがとう」
「ロリエッタ嬢は、この国のどこかに瘴気が発生したら、すぐに気がつきますか?」
「いえ、分からないわ」
「そうですか。では、魔法騎士団のベルトン隊長に連絡を取りましょう。彼なら瘴気の発生をすぐに把握できるはずです。
瘴気が発生したらすぐに駆けつけられるように、これからは魔法騎士団と行動を共にする事になりますが、宜しいですか?勿論。私も一緒に行動します」
アルベールは真剣な表情をしていた。
ロリエッタはアルベールが魅了魔法にかかっていないのに、自分を気遣ってくれる事に驚いていた。久しぶりに感じる爽やかな気分だった。
アルベールと魔法騎士団第二部隊の隊長ベルトンは、独自の魔法で連絡を取り合えるようにしていた。
ベルトンは、アルベールからの連絡を受けてすぐにロリエッタの部屋に現れた。
そして、3人できちんと話し合った結果、ベルトンが率いる魔法騎士団第二部隊と、王都学園の生徒会長のアルベールが、ロリエッタの瘴気の浄化に同行することが決まったのだった。
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∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
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