クレアの独白

群青

文字の大きさ
20 / 23

二者択一

しおりを挟む

 

「バカじゃないの!?」


 私は、この言葉とともにスフィアに頬を叩かれました。




     ◇   ◇   ◇

 遡ること1時間


 私は、スフィアと相部屋である寮の部屋にきていました。
 最近、スフィアとギクシャクしていたので私はこの部屋に全く来ていませんでした。
 しかし、今日は来なければならない理由がありました。


 私は、床に腰を下ろしてじっとスフィアを待っていました。
 30分くらいたった頃でしょうか、ドアが勢いよく開かれたのは。
 そこには、肩で息をしているスフィアがいました。


「はぁ、はぁ、クレアここにいたのね。」
「どうしたの?スフィア。
 私に何か用事?」
「クリスから聞いたわよ!!
 あんた、何考えてんの!?
 好きでもないのに婚約者になるだなんて!!
 少しはクリスの気持ち考えたら!!」
「クリスが提案したことだよ?
 その提案に乗って何が悪いの?」
「は!?何ですって!?」


 どうやら、事情をクリスから聞いていたようです。
 でも、少し食い違っているようなのです。
 スフィア、人の話はちゃんと最後まで聞くべきなのです。


「私はクリスに呼び出されて、このまま婚約者のままでいないかって、提案されたの。
 私はそれに乗っただけ。
 それだけだよ。」
「そう、そうなの。
 何でクレアは、その提案に乗ったの?
 クリスのことを好きなわけじゃないんでしょう?」
「この世界は、女が一人で生きていくには余りにも危険すぎる。
 だから、結婚はするべきだと思ったの。
 でも、私はリールとは結婚できない。
 それは、久美の意思であってクレアの意思ではないから。
 でも、クリスは久美もクレアもどちらとも惹かれていた。
 だから、私はクリスと結婚するの。
 それが私にとって、最善だから。」


 私は、言葉に出して初めて自分が思っていたことを認識しました。
 目の前にいるスフィアは、驚いた顔をして私を見つめていました。


「クレアはもう、誰も好きにならないの?
 成人するまでには、まだ時間があるわ。
 それまでに、他の誰かを好きになる可能性はないの?」
「私は、こんな私には誰かを好きになる資格なんてない!!
 どれだけの人を傷つけたと思っているの!!
 こんな私が、私が………」
「バカじゃないの!!」


 スフィアは私の頬を思い切り叩きました。
 そして、私の目をじっと見つめました。


「いい加減、目を覚ましなさい!!
 どうして、そんなに自分を責めるの!!
 しょうがないじゃない、いきなり記憶が戻ったら、混乱するのは当たり前でしょう?」
「でも、でも………」
「あぁ、もう!!
 ウジウジしないの!!
 クレアらしくない!!」


 そう言うと、スフィアは私を抱きしめました。
 その途端、私の目からは大量の涙が溢れ出しました。
 止めようとしても、溢れ出してくる涙に私は困惑しました。
 どうして、涙が出てくるのか、理由がわからないのです。
 スフィアは、私が泣き止むまで、ずっと背中をさすってくれました。


「迷ってるっていうのも一つの答えなんだよ、クレア。
 ね、そう思わない、クリス、リール?
 盗み聞きとは、悪趣味よね?」
「ちょ、そう言うわけじゃないよ、スフィア!!」
「好きな人を心配するのは、当たり前のことでしょう。
 悪趣味だとは、人聞きの悪い。」


 どうやら、ドア越しにクリスとリールが聞き耳を立てていたようです。
 今までの会話、全部聞かれていたのでしょうか?
 そう思うと、顔に熱が集中しました。


「クレア、今思ってることを素直に伝えてみたら?
 二人なら、ちゃんと受け止めてくれるよ?」


 私は決意しました。
 クリスとリールに気持ちを伝える決心を。
 私がハッキリしないのが、一番二人を傷つけていたことに気づいたから。


「クリス、リール。
 私は、正直迷っています。
 クレアとしての私は、クリスが好きです。
 しかし、久美としての私は、リールが好きなのです。
 だから、少し時間をください。
 成人するまでの間、私に考える時間を。
 こんな私の我儘を聞いてくれますか?」
「「もちろん!!」」
「クレアが納得する決断ができるまで、ずっと待ってるよ。」
「やはり、久美とは少し違うのですね。
 でも、そんな貴女も大好きです。
 これから、沢山アプローチさせていただきますね。」


 そうして、私達三人の問題は解決されました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...