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第1章
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しおりを挟むザッザ……。
一行は森の中を進む。
森とは言っても、街と街の通り道になっていて道のようになっているので歩くのにはそれほど苦労しない。
今のところ魔獣や魔物が出る様子もない。
「ふー。そろそろ休憩にしましょうよ」
「そうだね。もう結構歩いたし、ペース的にもいい感じだしね。この分なら、3日くらいで着きそうだ」
ちょうど休むのによさげな開けた空間がある。
エルザは疲れたわーと、横倒しになった木に腰を落とし、キースも同意しその隣に座る。
結局、私たちはキースを旅の護衛として雇った。
あれほど素晴らしい無効化魔法が使えてBランクの報酬でいいというのに何もこちらの不利益になるようなことが見つからなかったからだ。
逆に白すぎるのも怪しいといえば怪しいが、お得感に目がくらんでしまったので仕方がない。
キースの人当たりの良さそうな態度にも、大分騙された感じはするが……
とにかく、何事もなく街につければいいだけの話だ。
短い間とはいえ共に旅をするのだからあまり不信感ばかりを持っていてもいけないだろう。
私も近くの切り株に腰掛ける。
「街から街への移動くらい俺に任せれば歩きなんかではなくて馬車を使わせてやるというのに」
ぶつくさと文句を言いながら、私達3人の向かいとなるように2人の男も座る。
……結局雇わなかったはずのウィルたち2人もなぜか一緒に旅をすることとなった。
彼らの言い分では、たまたま向かう先が同じでたまたま出発のタイミングが同じになっただけだということだ。
決してついて来たということではないらしい。
たまたまね……
まあ、旅の仲間(?)は多いに越したことはないからついてきても問題はないんだけどね。
エルザがウィルのアタックに耐えなきゃいけなくなるだけのことで。
ふと、今まで気になっていたことを思い出した。
そういえば、ウィルと一緒にいる男の人って誰なんだろう。
一緒に行動してるけど直接話す機会はなかったし。
そう思って視線を向けていると、彼はそれに気づいたのかうっかり目が合ってしまい、にっこりという表現がふさわしい笑顔で返された。
「すみません、すっかり自己紹介をするのを忘れてしまっていましたね。私はジェラールといいます。ウィルとは昔は主、従者の関係だったんですが、いろいろありまして今は旅仲間といったところでしょうか。これからどうぞよろしくお願いしますね」
そう言って、立ち上がりきれいな動作でお辞儀をした。
なるほど。
従者だったというのには納得がいく。
ウィルの逸脱した行動にも特に口を挟むことなく気づかぬところで見守っている。
今は従者ではないようだが昔の癖といったものが出ているのかもしれない。
それに彼の丁寧な身のこなしや機転が利くところから、優秀な従者だったのではないかと思える。
「こちらこそよろしくね」
「ところでおふたりは、次の街に何か用事があるんですか?」
「ハーブュランタは薬草を生産してるじゃない?一応私たち薬売りとしても暮らしてるからその材料の調達に行こうと思ってるの」
私達が向かって次の街、ハーブュランタはエルザの言った通り薬草を栽培している数少ない街だ。
治癒魔法が発達したからというもの薬草による治療はあまり行われなくなっているので珍しい。
それに加え、街の近くの森に薬の材料となる魔獣や魔物が生息している場所もあるという。
「キースさんも何かご用事が?」
ジェラールはキースにまでも問いかけた。
あれ程までに疑ってかかっていた相手に友好的な態度で接しているとはさすがもと従者だ。
「俺は生き別れの弟を探すために色んな街をまわって旅をしているんだ。一刻も早く見つけたくて君達に強引に雇わせちゃった。ごめんね。そのかわり、どんな事があっても君達を守るからね」
「そうだったのね。私達は全然気にしてないわよ。それならそうと言ってくれれば良かったのに。弟さん、見つかるといいわね」
エルザが優しくキースに言いかける。
そんな理由があったのか。
私もエルザと同じ気持ちで見つかることを祈り、静かに頷いた。
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