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嫌がらせ
しおりを挟む結局のところ、食事どころかオヤツまで食べてすっかり満腹になった桜姫を鶏一郎が背中に背負い近くの交番に送り届けることになった。
始めに見せたアレコレが嘘のように、深々と頭を下げて丁寧に礼を言って去っていったので。
黄美子も雛斗も大きく手を振って、お姫様が帰っていくのを見送った。
やっと嵐が去った・・・・・・と安心していたら、そう簡単にはいかないらしい。
無事に店に帰ってきた鶏一郎を見届けてから自分の店へと帰ると、そこには今もっとも会いたくない人物が待っていた。
「おかえり」
「今あなたと会話するどころか顔も見たくないの。さっさと消えて」
「悪いが今回ばかりは願いを叶えてやれそうにない」
「あなたが私の願いを叶えたことなんて一度だってないでしょう?」
「なるべく照葉の意思に沿って行動していたんだが・・・通じていなかったのは悲しいな」
「御託はいい。さっさと要件を言って消えて」
せっかくの憩いの時間を、間接的にではあるが大和のせいで台無しにされた恨みは深い。
それもこれも、無駄な美貌を女性たちに見せびらかし被害を増やしているからだ。
生まれもってきたものをどうこう言うことは本来はしない照葉だったが、これからの自分の人生がかかっているとしたら話は別になってくる。
なにしろ相手は皇族なのだ。
下手をすれば、商売が出来なくなるだけの話じゃない。
「三日後、照葉を皇居に招くと帝は仰せになった。これは正式な招待状だ」
「・・・・・・・・・は?」
「この度の桜姫の無礼を詫びる意味での招待らしい。庶民が皇居に、しかも帝直々に招かれるなど名誉以外のなにものでもないからな。それだけでも謝罪に値するとお考えのようで・・・」
「馬鹿なの!?」
それは詫びではない、嫌がらせというのだ。
大きな功績を上げた商人ならわかる、皇族に献上する品を作った職人というのもわかる。
実の妹の恋敵を呼びつけるなんて、嫌がらせ以外のなにものでもない。
それに、そもそもの疑問があった。
「桜姫が一人で出かけられるはずがないと思っていたけれど、影でコッソリ付けている人がいたのね。まあ当然でしょうけれど。でなければ、招待状がこんなに早く届けられるはずがないし」
「誘拐事件が解決していない中で、姫まで拐われてしまっては守呉隊の面目は丸つぶれだからな」
桜姫の警護についていたのは大和以外の守呉隊だったらしいが、情報はつぶさに上に届けられていたので即座に決断した帝がすぐに招待状を届けさせることが出来たという訳だった。
しかし、腑に落ちないことがひとつ。
「・・・あなたが招待状を持ってくる必要はなかったわよね?むしろ、一番持ってきてはいけなかったのではないの?」
「・・・・・・」
沈黙は肯定を意味する。
苦悩するように眉を寄せてはいても、照葉の極寒の眼差しからは逃げられはしないのだから。
さっさと全てを白状しろ、とのたまった照葉に対して全てを告白する大和だった。
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