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儀式
しおりを挟む結局、大和は全てを白状した。
照葉の元に招待状を届けるはずだったのは別の隊士だったことも、ご自慢のよく回る口で相手をまるめ込み肝心の物を奪いここまでやって来たのだということも。
しかもあろうことか、帝に謁見する為の着物を一緒に買いに行く為の約束まで取り付けようとしていたらしい。
よくぞそこまで悪知恵が働くものだと関心しながら、それでも素直に話したことに免じて招待状の件は不問にした。
照葉がどうこう言わずとも、どうせ上司から説教されるに決まっているのだ。
勝手に自滅した男に使う労力が惜しい。
「絶対にあなたとなんて出かけないわよ」
「帝に謁見するんだぞ?新しい着物は一着でも二着でも百着でもあったって困るものじゃないだろう」
「あきらかに困るでしょう。どこに置くのよ百着も!それに今から仕立てたところで到底間に合わないし、半端な物は欲しくないの」
「すでに仕立てている物でも良い物はあるだろう?それにドレスという手もある」
「ドレスなんて着物以上に調整が難しいでしょうがっ!!」
一を言えば百で返し、百を言えば千を返す。
照葉のことに関しては一歩も引かない大和にうんざりしていると、自然な形で手をすくい取り顔が至近距離に迫った。
この状況で不埒なことをしでかす気かと激高した照葉は、すぐさま張り手を喰らわそうとする。
だがそれよりも早く、大和の美しい形の唇が動いた。
「協力してほしい」
今まで見たことがないほどの、必死な形相だった。
これまで何度も頼み事をされてきたが、そのどれもがあきらかにあまり本気ではないという表情だったのだ。
願いが叶えば幸運、程度のものだったに違いない。
だけどこんなに真剣に頼んできたということは、『協力』という言葉を使ったということは。
それだけ切迫した理由があるからに他ならないということ。
「内容によるわ」
「ああ。・・・・・・今度の満月の夜、つまり七日後。皇居で儀式があるんだ」
「確か春を言祝ぐ儀式でしょう?高位の貴族たちから選抜された四人の舞姫と、適齢の女宮様がいればお一人選ばれて合わせて五人の舞姫が帝や公卿の方々の前で舞を披露するのよね」
「詳しいな」
「情報通の人から前に聞いたことがあっただけよ」
というのも、その儀式は春先に行われるので大量の花で皇居を飾りつける為にたくさんの花が必要になると聞いたのだ。
舞姫たちも花の精に見立てて美麗な花で飾りつける為に、とにかくありったけの花を購入しなければならない。
春とはいえそんなに大量の花を手に入れるには多くの花屋はもちろんおろし業者や、それでも足りなければ野や山に摘みに行かなければならない。
ゆえに照葉が営んでいる花屋にも当然声がかかる。
たくさんの花が売れる情報だった為に、詳しく情報を聞いていただけなのだった。
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