魔王は魔王でも牛魔王です！

迎え

　そしてあっという間に帝との謁見日えっけんびがやって来た。
驚くことに、家まで迎えに来た馬車にはまるで歴戦れきせんの猛者もさのようにたくましい体つきの文官ぶんかんの制服を着た男性となぜか大和が乗っていたのだ。

　文官はわかる、道中で色々と説明する係が必要だからだ。
しかし、大和がいる必要がまったくない。
ただでさえ誘拐事件で人手が足りない時に、精鋭せいえい中の精鋭である大和が照葉一人の為に時間をさくことをよく上が許したなと思った。

　文官の手前てまえ、聞くのもどうかと思ったがそこはそれ。
大和に対する猛吹雪もうふぶきのような好感度こうかんどの低さによって、遠慮えんりょするだけ馬鹿らしいと思った照葉がはっきりと『なぜお前がここにいる？』と尋たずねる。
すると実に呆あきれた返答が返ってきた。


「誘拐事件を解決する為の手がかりを見つけたんだよ。今日の為に」
「は？」
「・・・・・・この男は、あなたを迎えにいく役目を得る為に何ヶ月も判明しなかった手がかりをたった一日で掴つかんだのですよ。呆れるやら腹立たしいやら感心するやらで」
「その手がかりが皇居に関わることだったからな。今から絶賛ぜっさん関わっていく照葉を守る為に、俺もこうして同行したという訳だ」
「馬鹿じゃないの？」


　照葉は容赦ようしゃなく大和の脛すねを蹴けった。
かなりめり込んでおり、足の力の強さが伺える。
どれだけ体を鍛きたえようとも、その場所だけはどんな強者つわものでも泣いてしまうと言われているところを容赦なく攻撃する女は初めてみた、と。
文官こと、佐保山榊さほやまさかきは心の中で思うのだった。


「もっと早くやる気を出していたら、こんなに時間をかけずに早期解決していたんじゃないの？私のところに嫌がらせに来ている暇と時間があったなら！」
「ぐぉっ、・・・それは違う！手がかりが見つかったのは、隊士たちが今までに集めた情報がやっとまとまって的が絞しぼれたからだ。俺が照葉のところに行っていようといまいと結界は同じだった」
「・・・しかし、その情報をまとめるのには四、五日は必要と聞いていたのがたった一日でまとめあげてしまうのだから。やはりお前はおかしい」
「非常に同意どういします」
「誰一人として照葉への愛の力を信じてくれない！？」
「ハイハイ、スゴイネー」


　適当に言いながら榊さかきの手を取り場所に乗りこむと、当然のように大和が隣に座ってくるのでさすがに榊がそれを止めた。
無理やり自分の隣に座らせ、大和が文句でも言おうものなら何か耳打ちをして黙らせている。

　その手慣れた対処たいしょに照葉は本気で感心した。
いつも大和の対応に頭を悩ませている者として、見習いたいと本気で思ったのだ。
その尊敬そんけいの眼差まなざしをいち早く気づいた大和が声をかけてくるが、照葉はやはり無視。
そんな場の空気を変えようと、榊は帝との謁見に対しての注意事項じこうを説明した。