57 / 214
57
しおりを挟む
陽は高く昇り、人々の喧騒が賑やかになって来た頃に、その家の住人は目を覚ました。
昨日の余韻が残っていて部屋の空気は淀んでいるようで、起きてきた女性が窓を大きく開けて、空気を入れ替える。
陽が高く昇った外は、窓を全開にしても風は暑さを含んでいて、汗が滲んでくるくらいだった。
だが、空は綺麗に晴れているのを見て、大きく伸びをして気合を入れた。
「よっし! さぁ、片付けましょうか」
昨日のうちにまとめておいた食器をかちゃかちゃと洗っていく。
脇に避けていた酒瓶も中を水洗いして陰干しにする。酒瓶はきれいにして酒場に持っていくと小銭と交換してくれるのだ。
分厚いガラスの瓶は、王国にあってはふんだんと言えるほどには作られていない。
そのため、ひび割れなどしていない状態のよい物は洗浄した後、再利用されるのだ。
酒瓶を作る工房では丈夫である物、意匠にこだわっている物が商会、客に人気であり、瓶底に作成者の名前を刻んでいるため、名前も売れるとあって、職人にとって人気の仕事となっている。
しばらくすると、一人の男性があくびをしながらリビングに入ってくる。
「やっぱり、リベルテが一番か。おはよう」
「おはようございます、レッド。……さすがに、大丈夫そうですね」
「次の日まで残るような飲み方はもうしねぇよ」
冒険者、に限らないかもしれないが、大変な仕事をやり遂げた後と言うのは、よい報酬が手に入ったということもあり、つい飲みすぎてしまうことがある。
そのほか、同業者やギルマスなど仕事で関わりがある人たちに気に入られたり、逆につぶそうとしたりして、しこたま飲まされるということもあったりする。
レッドも冒険者になってそう経っていない頃に、初の討伐依頼を達成して、十分な報酬を手に酒場で高いお酒を飲んでいた。それだけならそこで終わったのだが、ギルマスやマークなど他の冒険者たちもやってきて、宴会の様相に変えられ、場の雰囲気もあってとことんまで飲みふけってしまった。
もちろん次の日は最悪で、このまま死ぬんじゃないかと思ったほどだ。
口に出してしまって、その当時から一緒に居たリベルテになじられながら看病してもらったものだった。
そのことを未だに言われてばつが悪い。そろそろ勘弁してくれと思っているのだが、リベルテが楽しそうであるため、何も言えない。
リベルテはそれがわかっていて、未だにこういった時に言うようにしているのだが。
「あの二人は……今日は起きてこないだろうな」
「少し飲ませすぎましたかね? 楽しそうにされていたので、いいかなと思ってたのですが」
「いいんじゃないか、たまには。あいつらは、ずいぶんと気を張り続けてきてるからな」
「……そうですね。想像するしかありませんが、もし自分がと考えたら、辛いものです……」
痛ましそうに胸を押さえるリベルテ。
レッドも外に見える空を見ながらゆっくりと水を飲む。
水を飲み干したレッドが立ち上がり、酒瓶を袋にまとめて持ち上げる。
「それじゃあ、これ置いてった後、ギルドに行って来る。あいつらの看病を頼むわ」
「昨日の今日ですからね。ゆっくりさせてもらいます」
袋を担いでいないほうの手を上げて、レッドは暑い日差しの中、酒場に向かっていく。
「それじゃあ、飲みすぎに効く薬でも用意しますか」
リベルテも外に出る。薬師に向かうその足は軽そうだった。
酒場でいくらかの小銭を得たレッドは、そのまま冒険者ギルドへと向かう。
昨日、ギルマスにハーバランドの様子を聞きたいと捕まっていたためだ。
20日ぶりのギルドは、昼くらいだというのに冒険者で賑わっていた。
全員が全員仕事を探してというわけではなく、ギルド内で談笑している人たちも居るのだが、こういった会話が横のつながりを作り、そして情報交換が進められる。
そう教わり、実行してきたレッドとしては、この王都の冒険者ギルドで見受けられる光景が冒険者らしいと改めて思えた。
「よう、遅かったじゃねぇか」
またしてもギルマスが部屋で大人しくせず、この広場で待ち構えていた。
「だから、強制でもないですし、そもそも急ぐような話もないですから」
ギルマスであるギルザークに気に掛けてもらえているのはうれしくはあるのだが、良いように使われる(弄られる)のは好きではないため、あしらうように返してしまう。
「ほう……」
ギルザークの目が獲物を狙うような目つきになる。遊び道具を見つけたような目といった方が正しいかもしれない。
「それじゃ早く報告させてもらいます。あ、話は部屋ですか?」
直感にくるものがあったため、話を振って移動を促す。
弄るタイミングを逃したギルマスは舌打ちをして、部屋に戻っていく。
「二日酔いで寝てた方がよかったかもしれん……」
一つため息をついてから、ギルザークの後を付いて行く。その足取りは重そうだった。
「それで? あっちの何を聞きたいんですか?」
ギルマスの部屋に備えられている、なかなか質の良いソファに座ったレッドが、正面に座るギルマスを見る。
「問題児と戦ったんだってな? あいつをどう見た? それとハーバランドは持ちそうか?」
真面目な表情でレッドを見るギルザーク。その姿は、王都の冒険者を管理するギルマスの姿だった。
「腕はものすごく立つ。悪いが、全盛期のギルマスより上だと思う。ギルマスが戦ったグリズリーと状態は違ってはいるが、それでもグリズリーだ。それをあっさりと斬り捨てるほどだった。それに死角を突いたはずだったのに、見向きもしないで防がれた。あれを止めるのは難しいと思う。殺す気で多くの犠牲者をだしてなんとかなる、と思いたい」
「そりゃまぁずいぶんと……。とんでもねぇ危険物じゃねぇか」
「人となりは……良いとは言えない。サバランから聞いてると思うんだが、他者を見下してる。あの腕だから仕方ないとも言えなくはないんだが……。俺らを含めて人を人と見ていないんじゃないか。そこいらにいるモンスターと同様に見てるような気がした……。あいつと戦うきっかけがそれだからな。こっちの仲間をあっさりと斬ろうとしやがった」
目つきが険しくなっていくギルマス。
王都に来たときのことを考えているのである。そしてそれは思わしくないものだったのだろう。眉間に皺がよっていく。
「それで、ハーバランドが持つかってのは……質問が難しいんだが。今はまだ大丈夫だろう。伯爵が領主として動ければ問題はないと思う。ただそうなった場合、王都に移ってくるかもしれないな。いや、あいつらだと何も無くても、王都に来そうだな」
「野心を持ってるからか?」
「それはあるだろうな。それよりも取り巻きがな。あいつの強さに媚びてる冒険者で、そいつら自身に腕はない。だが、あいつに媚びることで自身の欲望を叶えてもらっているんだと思う。王都での暮らしに憧れを持ってると思う」
「そいつはここまでの話で一番ありがたくない話だな」
言ってしまえば、向こうに居続けてくれれば、王都としては問題はないのである。
強さに託けて幅を利かせていても、王都の暮らしに影響は無い。
だが、彼らが王都に来てしまえば、今時点で頭を悩ませているサバランの問題が、そのまま王都の問題になるのだ。
その可能性が高いと言われれば、うれしいと思うものはどこにも居ない。
「強いってのは頼もしいもんだが、こっちまで斬れる剣ってのはどっか遠くに仕舞うか、捨てたいもんなんだがなぁ……。他所にも連絡くらいはしておくが、あとはこっちにきてから考えるしかないか。わかった、ありがとよ」
「いや、こっちも聞いてもらって助かった。知っててもらえば、何かしらの対応も考えてくれるだろうからな」
「いまのを聞いた限りじゃ、どこまで押さえられるかわからんがな」
お互いにニヤッと笑う。
「んじゃ、明日からも頼むぜ」
「そりゃこっちも生活してるからな」
外に出れば日が沈み始めており、思いのほか話し込んでいたらしい。
帰りに仕舞い始めている青果店で果実をいくつか買っていく。
まだ具合が悪いかもしれないし、昨日の今日ではレッドでもそこまで食欲が戻ってきていなかった。そういう時は、瑞々しく甘い果実が良いのだ。
「ただいま」
家に戻るとスープの匂いが漂ってくる。
「おかえりなさい、レッド。皆食欲がそんなにないだろうから、軽めのスープだけ用意しました。足りなければなにか、パンとかつまんでください」
「いくつか果実を買ってきた。足りなきゃこいつをつつけばいい」
「気が利きますねぇ。体験からですか?」
「その成果がこれだな」
お互いに気楽に話をしながら、テーブルに用意していく。
テーブルにはすでに二人が座っていたが、マイは頭痛そうに抑えていて、タカヒロは突っ伏していた。
「そんなに遅くまで飲んでなかったはずなんだが、この時間まで響くか」
二人の様子に呆れてみたものの、この辛さは人によって違いがあることをレッドは知っている。
しこたま飲んだ翌日にケロッとしているギルマスに背中を叩かれて吐きかけたこともあるし、ちょっとした飲み比べの翌日でも、朝早くから動けるリベルテもいた。
そして、それに負けて寝込んだりしたのがレッドであったので、早く戻るといいなとしか言いようがなかった。
「昼過ぎに薬も飲んでもらいましたから、明日には大丈夫だと思いますよ」
「まだ、あたまいたい……」
搾り出すような声を出すマイに、思わずレッドが言葉をもらしてしまう。
「辛いのはわかるが、ここまで引くとはな……。お前の力で治せたりはしないのか?」
「あ!」
そういえばと思ったマイが力を使おうとする。
それを見たリベルテがレッドの頭を叩く。力を簡単に使わないようにさせてきていたのに、自分から使わせてどうする、と。
かなり勢いをつけて叩かれたレッドは苦悶の声を上げるが、自分が迂闊だったのはわかっていたので、痛みが引くまで我慢するしかない。
そして痛みが落ち着いてきて顔を上げた先には、変わらず頭痛に苦しんでいるマイが居た。
「治らない……」
「はぁ……。だいたいそういうのは、そういった力に頼らずに自然に治したほうがいいですよ。はい、スープだけでもお腹に入れて、寝てください」
「……は~い」
自分自身には使えなかったのか、それとも今のような状態では使えないのか。
未だに具合が悪そうに、ゆっくりとスープをすすっているマイの姿に詫びながら、助かったと思うレッドであった。
昨日の余韻が残っていて部屋の空気は淀んでいるようで、起きてきた女性が窓を大きく開けて、空気を入れ替える。
陽が高く昇った外は、窓を全開にしても風は暑さを含んでいて、汗が滲んでくるくらいだった。
だが、空は綺麗に晴れているのを見て、大きく伸びをして気合を入れた。
「よっし! さぁ、片付けましょうか」
昨日のうちにまとめておいた食器をかちゃかちゃと洗っていく。
脇に避けていた酒瓶も中を水洗いして陰干しにする。酒瓶はきれいにして酒場に持っていくと小銭と交換してくれるのだ。
分厚いガラスの瓶は、王国にあってはふんだんと言えるほどには作られていない。
そのため、ひび割れなどしていない状態のよい物は洗浄した後、再利用されるのだ。
酒瓶を作る工房では丈夫である物、意匠にこだわっている物が商会、客に人気であり、瓶底に作成者の名前を刻んでいるため、名前も売れるとあって、職人にとって人気の仕事となっている。
しばらくすると、一人の男性があくびをしながらリビングに入ってくる。
「やっぱり、リベルテが一番か。おはよう」
「おはようございます、レッド。……さすがに、大丈夫そうですね」
「次の日まで残るような飲み方はもうしねぇよ」
冒険者、に限らないかもしれないが、大変な仕事をやり遂げた後と言うのは、よい報酬が手に入ったということもあり、つい飲みすぎてしまうことがある。
そのほか、同業者やギルマスなど仕事で関わりがある人たちに気に入られたり、逆につぶそうとしたりして、しこたま飲まされるということもあったりする。
レッドも冒険者になってそう経っていない頃に、初の討伐依頼を達成して、十分な報酬を手に酒場で高いお酒を飲んでいた。それだけならそこで終わったのだが、ギルマスやマークなど他の冒険者たちもやってきて、宴会の様相に変えられ、場の雰囲気もあってとことんまで飲みふけってしまった。
もちろん次の日は最悪で、このまま死ぬんじゃないかと思ったほどだ。
口に出してしまって、その当時から一緒に居たリベルテになじられながら看病してもらったものだった。
そのことを未だに言われてばつが悪い。そろそろ勘弁してくれと思っているのだが、リベルテが楽しそうであるため、何も言えない。
リベルテはそれがわかっていて、未だにこういった時に言うようにしているのだが。
「あの二人は……今日は起きてこないだろうな」
「少し飲ませすぎましたかね? 楽しそうにされていたので、いいかなと思ってたのですが」
「いいんじゃないか、たまには。あいつらは、ずいぶんと気を張り続けてきてるからな」
「……そうですね。想像するしかありませんが、もし自分がと考えたら、辛いものです……」
痛ましそうに胸を押さえるリベルテ。
レッドも外に見える空を見ながらゆっくりと水を飲む。
水を飲み干したレッドが立ち上がり、酒瓶を袋にまとめて持ち上げる。
「それじゃあ、これ置いてった後、ギルドに行って来る。あいつらの看病を頼むわ」
「昨日の今日ですからね。ゆっくりさせてもらいます」
袋を担いでいないほうの手を上げて、レッドは暑い日差しの中、酒場に向かっていく。
「それじゃあ、飲みすぎに効く薬でも用意しますか」
リベルテも外に出る。薬師に向かうその足は軽そうだった。
酒場でいくらかの小銭を得たレッドは、そのまま冒険者ギルドへと向かう。
昨日、ギルマスにハーバランドの様子を聞きたいと捕まっていたためだ。
20日ぶりのギルドは、昼くらいだというのに冒険者で賑わっていた。
全員が全員仕事を探してというわけではなく、ギルド内で談笑している人たちも居るのだが、こういった会話が横のつながりを作り、そして情報交換が進められる。
そう教わり、実行してきたレッドとしては、この王都の冒険者ギルドで見受けられる光景が冒険者らしいと改めて思えた。
「よう、遅かったじゃねぇか」
またしてもギルマスが部屋で大人しくせず、この広場で待ち構えていた。
「だから、強制でもないですし、そもそも急ぐような話もないですから」
ギルマスであるギルザークに気に掛けてもらえているのはうれしくはあるのだが、良いように使われる(弄られる)のは好きではないため、あしらうように返してしまう。
「ほう……」
ギルザークの目が獲物を狙うような目つきになる。遊び道具を見つけたような目といった方が正しいかもしれない。
「それじゃ早く報告させてもらいます。あ、話は部屋ですか?」
直感にくるものがあったため、話を振って移動を促す。
弄るタイミングを逃したギルマスは舌打ちをして、部屋に戻っていく。
「二日酔いで寝てた方がよかったかもしれん……」
一つため息をついてから、ギルザークの後を付いて行く。その足取りは重そうだった。
「それで? あっちの何を聞きたいんですか?」
ギルマスの部屋に備えられている、なかなか質の良いソファに座ったレッドが、正面に座るギルマスを見る。
「問題児と戦ったんだってな? あいつをどう見た? それとハーバランドは持ちそうか?」
真面目な表情でレッドを見るギルザーク。その姿は、王都の冒険者を管理するギルマスの姿だった。
「腕はものすごく立つ。悪いが、全盛期のギルマスより上だと思う。ギルマスが戦ったグリズリーと状態は違ってはいるが、それでもグリズリーだ。それをあっさりと斬り捨てるほどだった。それに死角を突いたはずだったのに、見向きもしないで防がれた。あれを止めるのは難しいと思う。殺す気で多くの犠牲者をだしてなんとかなる、と思いたい」
「そりゃまぁずいぶんと……。とんでもねぇ危険物じゃねぇか」
「人となりは……良いとは言えない。サバランから聞いてると思うんだが、他者を見下してる。あの腕だから仕方ないとも言えなくはないんだが……。俺らを含めて人を人と見ていないんじゃないか。そこいらにいるモンスターと同様に見てるような気がした……。あいつと戦うきっかけがそれだからな。こっちの仲間をあっさりと斬ろうとしやがった」
目つきが険しくなっていくギルマス。
王都に来たときのことを考えているのである。そしてそれは思わしくないものだったのだろう。眉間に皺がよっていく。
「それで、ハーバランドが持つかってのは……質問が難しいんだが。今はまだ大丈夫だろう。伯爵が領主として動ければ問題はないと思う。ただそうなった場合、王都に移ってくるかもしれないな。いや、あいつらだと何も無くても、王都に来そうだな」
「野心を持ってるからか?」
「それはあるだろうな。それよりも取り巻きがな。あいつの強さに媚びてる冒険者で、そいつら自身に腕はない。だが、あいつに媚びることで自身の欲望を叶えてもらっているんだと思う。王都での暮らしに憧れを持ってると思う」
「そいつはここまでの話で一番ありがたくない話だな」
言ってしまえば、向こうに居続けてくれれば、王都としては問題はないのである。
強さに託けて幅を利かせていても、王都の暮らしに影響は無い。
だが、彼らが王都に来てしまえば、今時点で頭を悩ませているサバランの問題が、そのまま王都の問題になるのだ。
その可能性が高いと言われれば、うれしいと思うものはどこにも居ない。
「強いってのは頼もしいもんだが、こっちまで斬れる剣ってのはどっか遠くに仕舞うか、捨てたいもんなんだがなぁ……。他所にも連絡くらいはしておくが、あとはこっちにきてから考えるしかないか。わかった、ありがとよ」
「いや、こっちも聞いてもらって助かった。知っててもらえば、何かしらの対応も考えてくれるだろうからな」
「いまのを聞いた限りじゃ、どこまで押さえられるかわからんがな」
お互いにニヤッと笑う。
「んじゃ、明日からも頼むぜ」
「そりゃこっちも生活してるからな」
外に出れば日が沈み始めており、思いのほか話し込んでいたらしい。
帰りに仕舞い始めている青果店で果実をいくつか買っていく。
まだ具合が悪いかもしれないし、昨日の今日ではレッドでもそこまで食欲が戻ってきていなかった。そういう時は、瑞々しく甘い果実が良いのだ。
「ただいま」
家に戻るとスープの匂いが漂ってくる。
「おかえりなさい、レッド。皆食欲がそんなにないだろうから、軽めのスープだけ用意しました。足りなければなにか、パンとかつまんでください」
「いくつか果実を買ってきた。足りなきゃこいつをつつけばいい」
「気が利きますねぇ。体験からですか?」
「その成果がこれだな」
お互いに気楽に話をしながら、テーブルに用意していく。
テーブルにはすでに二人が座っていたが、マイは頭痛そうに抑えていて、タカヒロは突っ伏していた。
「そんなに遅くまで飲んでなかったはずなんだが、この時間まで響くか」
二人の様子に呆れてみたものの、この辛さは人によって違いがあることをレッドは知っている。
しこたま飲んだ翌日にケロッとしているギルマスに背中を叩かれて吐きかけたこともあるし、ちょっとした飲み比べの翌日でも、朝早くから動けるリベルテもいた。
そして、それに負けて寝込んだりしたのがレッドであったので、早く戻るといいなとしか言いようがなかった。
「昼過ぎに薬も飲んでもらいましたから、明日には大丈夫だと思いますよ」
「まだ、あたまいたい……」
搾り出すような声を出すマイに、思わずレッドが言葉をもらしてしまう。
「辛いのはわかるが、ここまで引くとはな……。お前の力で治せたりはしないのか?」
「あ!」
そういえばと思ったマイが力を使おうとする。
それを見たリベルテがレッドの頭を叩く。力を簡単に使わないようにさせてきていたのに、自分から使わせてどうする、と。
かなり勢いをつけて叩かれたレッドは苦悶の声を上げるが、自分が迂闊だったのはわかっていたので、痛みが引くまで我慢するしかない。
そして痛みが落ち着いてきて顔を上げた先には、変わらず頭痛に苦しんでいるマイが居た。
「治らない……」
「はぁ……。だいたいそういうのは、そういった力に頼らずに自然に治したほうがいいですよ。はい、スープだけでもお腹に入れて、寝てください」
「……は~い」
自分自身には使えなかったのか、それとも今のような状態では使えないのか。
未だに具合が悪そうに、ゆっくりとスープをすすっているマイの姿に詫びながら、助かったと思うレッドであった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる