グッバイ、親愛なる愚か者。

鳴尾

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この体は病院を出たって人並みの健康は得られない。運動はできないし薬を飲んでも熱は出る。
けど授業を休んで前みたいに腫れ物扱いをされるのは嫌だった。せっかく普通の友だちができたのに、俺の体のことを知られたら今まで築き上げてきたものが全て消えて無くなってしまう気がして怖くなった。
君が初めて授業を休んだあの日、俺は本当にびっくりしたんだ。どう見たって普通の顔色をしているし、足取りも、なんならいつもより元気そうに見えた。というかたとえ本当に具合が悪かったとしても俺に声をかけてくるとは思わなかった。君に不調があったとしても、俺がそれを知るのは先生が教壇で話すときだろうと思ってたから。
だから気を遣われたんだと思った。不愉快だった。どうせ後から恩着せがましく何かを言ってきたり、そうでなければ心配性になって俺を気遣うようになるんだろ。人助けしたつもりで自分に酔ってるだけなんだろって。そう思ってた。
けどそうでもなかった。というか先生に報告して戻ってきた君は本当に顔面蒼白で具合が悪そうに見えた。本当にどこか具合が悪いんじゃないかって心配した。仮病だったけど。
医務室の先生にさえ君は本当のことを言わなかった。誰がどう見たって元気なのは君で具合が悪いのは俺なのに。だいたい君は途中から薬さえ飲んでいなかったじゃないか。仮病を隠す気なんてさらさらないくせに俺の欠席理由は看病のためだって報告して。
しかもあんなに関わっておいて、そうでないときは何を話しかけても完全無視。
正直、何考えてるか全く分からなかった。
君の言動は、最初から最後まで矛盾してる。

君のことは、実は最初から先生に聞いていた。
人と関わるのが嫌い。頭はいいけどどこか残念。試験の点数はいつも満点の天才児。けれど、いや天才だからというべきか、君は他の人と比べて大きな差がある。他人を理解できず、拒絶している。
つまり俺たち一般人は馬鹿だから何考えてるか分からない、だから関わらないって発想だ。最初に聞いたときは何様だよって思ったよ。
けど実際に一緒にいたらなんとなく分かった。
君は間違いなく天才だよ。寮室ではいつ見ても寝てるのに、国で一、二を争うこの名門校で成績はいつもいちばん。俺とは別の次元で生きてる。君の学力をたかだか学校の試験で測るなんて烏滸おこがましい。畏怖の念さえ覚えてしまうほどの天才。君が保健室へ行く以外で授業中にときどきいなくなる理由が君の才能を見抜いた偉い人たちからの頼まれごとを解決するためだって知ったときは人間じゃないって思った。
けど、俺がそう思うってことはさ、君から見た俺たちは同じなんだろうなって思った。俺が君を人間じゃないって思うのと同じで、君は俺たちを人間じゃないって思う。だから理解できない。で、拒絶してしまう。きっともっと頭のいい人たちとなら、君はうまくやっていけるんだと思った。

そんな君が俺のために仮病を使っていた理由が、どうしても俺には分からない。君はきっと俺の名前さえ覚えていないだろ?病弱の肩書きなんて、持ってたってなんの特にもならないし。
どうして君は、俺を助けたの?
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