グッバイ、親愛なる愚か者。

鳴尾

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と、ここまで書き殴ってみたけれど、君がもうこの世にいないなら俺はいったい誰に当ててこんな馬鹿みたいに長い手紙を書いているんだろうね。
俺は二つ返事で君の頼みを引き受けておきながら、君には生きていて欲しいと思っているのかもしれない。気の迷いで思い留まって帰ってくるか、あるいは君の友人に止められて生き残ったか。そんな今も生きている君に期待して、俺はこんな長々と手紙を書いている。
これじゃまるで未練があるのは俺のほうだ。笑えない。これを読んでいるのが本当に死に損なった君かそれとも別の誰かか、なんてもうこの世にいない俺には確かめる術がないのに。

ねえ、もしも君が生きているならもう一度屋上から飛び降りる前にひとつ実験をしてみてよ。
君の友人に、おはようって声をかけるんだ。いつも一緒にいるあいつだよ。彼が君に話しかける前に言うんだ。きっと彼、すごく面白い反応を見せてくれるよ。
君が人と関わりたがらないのは知ってる。他人が嫌いなのも。けど、どうせ生き残ったのならさ、少しらしくないことをしてみない?
分からないのは俺だって同じだ。この学校へ来て友だちと呼べる人はたくさんできたけど完全に理解できた人はひとりだっていない。病院にいた頃の仲間たちだって毎日一緒にいたのに真意はひとつも分からなかった。
けどそれは普通で、当たり前のことだ。何も怖いことなんかじゃない。だって分からないのが当たり前なんだから。それに分からないなら分かるまで聞けばいい。理解できるまで調べればいい。君はそういうのなら苦手じゃないだろ?
もう間に合わないかもしれないけれど、もしも君がまだ生きていてこの手紙を読んだなら、試してほしい。
おはよう。相手の目を見て、きちんと聞こえる声で言うんだよ。それから、相手の名前を呼ぶこと。いつも一緒にいる友人の名前くらい覚えてるだろ?
相手の心が理解できないなら、どうしてそう思ったか聞いてみろ。俺みたいなめんどくさいやつと二年も同じ部屋で過ごせたんだ。君ならきっと誰の心でも理解できるようになるよ。俺が保証する。なんせ俺より矛盾してるやつなんてそうそういないからね。

それからさ、もしもうまくできたら、俺のところまで報告しに来てよ。君は俺の名前なんて覚えていないだろうけど、俺の名前を呼んで、できたよって自慢しにきてよ。俺の名前、ここに書いとくからさ。
約束だよ。

生きているかも分からない不器用なルームメイトへ、最大の敬意を込めて。
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