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4章
7
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第11回BL小説大賞 投票期間終わりました。
投票くださった方有難うございました。
物語は佳境に入って来た?のかな?作者自身も不安に思いながらも
ハッピーエンドに向けて突き進みますので、これからもよろしくお願いします。
angel
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鳶尾の演説は続く。
「冬眠もしないアルゼが同族だと言えるか!?」
村一番の大きな体の鳶尾が言うことにだんだんと人々が聞き入る。
--------そうだ。同族じゃない。
「近づくだけで足を縫い留めるほどの恐怖を与えてくるものが魔の者でないはずがない!」
--------そうだ、恐ろしいアルゼは魔の者だ
「魔の者であるからこそ、己の眷属であるゲルゼルを呼び出し村を襲わせ、それを倒して英雄にでもなろうと浅はかな考えに及んだのだ!」
--------なんということだ、我々はいつの間にか魔の者を同族として--------
人々の心が鳶尾の演説により1つの結論にたどり着こうとした時、村の集会所の扉が大きく開かれた。
「アイツは魔の者なんかじゃない!」
叫ぶ千早に大勢の年上の村人達の視線が一身に集まる。
突然現れた千早に鳶尾の眉がゆがむ。
「成人もしていない小童の出る幕ではない!!!」
怒りを含んだ唸り声に千早の脚が震える。
千早は10ドウ以上も年長の鳶尾が苦手だった。
正妻の子であり、未来の族長として教育され鍛え敬われる存在に、妾腹の末弟が盾突くことなどありえない話だった。
だけど
ここで自分が言わないと--------
誰も知らない、アイツのことを--------
「アルゼが魔の者なんかじゃないという根拠は?」
助け舟を出したのは族長の隣に座っていた村の役の一人だ。
促すように聞いてくれたその言葉に勇気を奮い起こし千早は言葉をつづけた。
「俺はずっと見ていた。アイツがゲルゼルと戦い、世界の切れ目へと落とした後力尽きたように倒れ、そのあと死の淵を何度もさまよっていたのを。」
拳をギュッの握り全員の目を一人一人見つめながら続けようとすると
「そのまま死ねばよいものを!」と鳶尾の野次が飛ぶが無視して続ける。
「ゲルゼルとの死闘で負った傷は深くて薬師も匙を投げた」
会場の隅にいた薬師の肩がピクリと震え、人々の視線が集まると下を向いた。
「俺も正直助からないと思った。苦しそうな呼吸を聞いていると早く楽にしてやりたかった」
「すればよかろう、それこそがお前が役に立てるただ1つの…」
「けど!!ルセが諦めないんだ!!!!!!!」
鳶尾の言葉を叫ぶように遮る千早に会場は静まり返る。
年長の者の言葉を遮るなど礼に反すること。
それをしてまでも告げたい言葉が千早にはあるのだと誰もが察した。
「もう無理だって。何度言ってもききやしないんだ」
村人たちが愛らしいルセを思い浮かべる時その胸中には温かいものが広がる。
可愛らしい無邪気なルセ。
真っ白な尻尾を揺らし、楽しそうに笑うその合間にふと寂し気な表情をこぼすことがある。
アルゼに攫われてきた可哀そうな何者かもわからない獣人。
村全体で保護しその哀れな境遇を慰めようとしていたのに。
当の本人は山頂のアルゼの所に帰りたいと泣いた。
「…駄目だって言うのにアイツの傷をなめるのをやめないんだ」
苦し気に顔をゆがめる年少の千早の言葉に村中の男が聞きいる。
唾液には殺菌成分があり、傷を舐めるのはリウアン族の誰もが母親にしてもらったこと。
「あそこまでの大やけどには舐めても無理だって何度も言ったのに…。」
けどどれでルセの気がすむならしたらいいと俺は手伝いに徹することにした。
ルセの食事を運び眠る間ちゃんとアルゼの面倒を見ることを約束した。
「魘されるアルゼを俺も一緒に押さえつけた。瀕死の重傷なのに魘されてるんだ。『アルゼ逃げろ』って」
--------『村のみんなを--------』
--------『アルゼを連れて遠くへ』
ゲルゼルの恐怖は去ったのに未だに悪夢の中で戦い続けるアルゼ
「そんなアルゼもルセが舐めると少しの間安らぐんだ。本当にこのまま空へ旅立つかのように」
それまで静かに聞いていた村人の一人が声を上げる
「何が言いたいのだお前は。それではまるでアルゼが我らと変わらぬもののようではないか」
その村人と目を合わせると千早はうなずき弁を続ける。
「そう、あいつは化け物でも魔の者でもアルゼでもない。ただの獣人だ」
「ただの獣人が存在するだけで人々に恐怖を与えるものか!」
差しはさまれる鳶尾の言葉に眉をしかめる村人。
「あいつのうわごとは後悔ばかりだった」
--------『生まれてきてすみません』
--------『俺さえいなければ父母は』
--------『なぜこんな体に生まれたのか』
スゥと一呼吸置き千早は叫んだ。
「魔の者が後悔なんかしますか!?命を懸けて村を守りますか!?皆さんに問いたい!アイツに何か悪いことをされましたか!???」
投票くださった方有難うございました。
物語は佳境に入って来た?のかな?作者自身も不安に思いながらも
ハッピーエンドに向けて突き進みますので、これからもよろしくお願いします。
angel
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鳶尾の演説は続く。
「冬眠もしないアルゼが同族だと言えるか!?」
村一番の大きな体の鳶尾が言うことにだんだんと人々が聞き入る。
--------そうだ。同族じゃない。
「近づくだけで足を縫い留めるほどの恐怖を与えてくるものが魔の者でないはずがない!」
--------そうだ、恐ろしいアルゼは魔の者だ
「魔の者であるからこそ、己の眷属であるゲルゼルを呼び出し村を襲わせ、それを倒して英雄にでもなろうと浅はかな考えに及んだのだ!」
--------なんということだ、我々はいつの間にか魔の者を同族として--------
人々の心が鳶尾の演説により1つの結論にたどり着こうとした時、村の集会所の扉が大きく開かれた。
「アイツは魔の者なんかじゃない!」
叫ぶ千早に大勢の年上の村人達の視線が一身に集まる。
突然現れた千早に鳶尾の眉がゆがむ。
「成人もしていない小童の出る幕ではない!!!」
怒りを含んだ唸り声に千早の脚が震える。
千早は10ドウ以上も年長の鳶尾が苦手だった。
正妻の子であり、未来の族長として教育され鍛え敬われる存在に、妾腹の末弟が盾突くことなどありえない話だった。
だけど
ここで自分が言わないと--------
誰も知らない、アイツのことを--------
「アルゼが魔の者なんかじゃないという根拠は?」
助け舟を出したのは族長の隣に座っていた村の役の一人だ。
促すように聞いてくれたその言葉に勇気を奮い起こし千早は言葉をつづけた。
「俺はずっと見ていた。アイツがゲルゼルと戦い、世界の切れ目へと落とした後力尽きたように倒れ、そのあと死の淵を何度もさまよっていたのを。」
拳をギュッの握り全員の目を一人一人見つめながら続けようとすると
「そのまま死ねばよいものを!」と鳶尾の野次が飛ぶが無視して続ける。
「ゲルゼルとの死闘で負った傷は深くて薬師も匙を投げた」
会場の隅にいた薬師の肩がピクリと震え、人々の視線が集まると下を向いた。
「俺も正直助からないと思った。苦しそうな呼吸を聞いていると早く楽にしてやりたかった」
「すればよかろう、それこそがお前が役に立てるただ1つの…」
「けど!!ルセが諦めないんだ!!!!!!!」
鳶尾の言葉を叫ぶように遮る千早に会場は静まり返る。
年長の者の言葉を遮るなど礼に反すること。
それをしてまでも告げたい言葉が千早にはあるのだと誰もが察した。
「もう無理だって。何度言ってもききやしないんだ」
村人たちが愛らしいルセを思い浮かべる時その胸中には温かいものが広がる。
可愛らしい無邪気なルセ。
真っ白な尻尾を揺らし、楽しそうに笑うその合間にふと寂し気な表情をこぼすことがある。
アルゼに攫われてきた可哀そうな何者かもわからない獣人。
村全体で保護しその哀れな境遇を慰めようとしていたのに。
当の本人は山頂のアルゼの所に帰りたいと泣いた。
「…駄目だって言うのにアイツの傷をなめるのをやめないんだ」
苦し気に顔をゆがめる年少の千早の言葉に村中の男が聞きいる。
唾液には殺菌成分があり、傷を舐めるのはリウアン族の誰もが母親にしてもらったこと。
「あそこまでの大やけどには舐めても無理だって何度も言ったのに…。」
けどどれでルセの気がすむならしたらいいと俺は手伝いに徹することにした。
ルセの食事を運び眠る間ちゃんとアルゼの面倒を見ることを約束した。
「魘されるアルゼを俺も一緒に押さえつけた。瀕死の重傷なのに魘されてるんだ。『アルゼ逃げろ』って」
--------『村のみんなを--------』
--------『アルゼを連れて遠くへ』
ゲルゼルの恐怖は去ったのに未だに悪夢の中で戦い続けるアルゼ
「そんなアルゼもルセが舐めると少しの間安らぐんだ。本当にこのまま空へ旅立つかのように」
それまで静かに聞いていた村人の一人が声を上げる
「何が言いたいのだお前は。それではまるでアルゼが我らと変わらぬもののようではないか」
その村人と目を合わせると千早はうなずき弁を続ける。
「そう、あいつは化け物でも魔の者でもアルゼでもない。ただの獣人だ」
「ただの獣人が存在するだけで人々に恐怖を与えるものか!」
差しはさまれる鳶尾の言葉に眉をしかめる村人。
「あいつのうわごとは後悔ばかりだった」
--------『生まれてきてすみません』
--------『俺さえいなければ父母は』
--------『なぜこんな体に生まれたのか』
スゥと一呼吸置き千早は叫んだ。
「魔の者が後悔なんかしますか!?命を懸けて村を守りますか!?皆さんに問いたい!アイツに何か悪いことをされましたか!???」
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