【R18】おのぼりさんが帝都の貴族屋敷で奉公することになりました【完結】

県田 星

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第9章 旦那様(善吉編)

第25話 秘伝の術(H描写あり)

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「秘伝だと!」

善吉は健太郎の口を押える。

「旦那様、どうかお静かに願います。まさに秘伝でございますので」
「う、うむ」

善吉が居住いずまいを正すと、健太郎も襟を整えて耳を傾けた。

「旦那様も実感されているでしょうが、男において陰茎が役に立たないことは一大事でございます」
「確かに」

馬立流ばりつりゅうの整体における秘伝のひとつとして、陰茎を役に立たなくさせたり、逆に役に立たせるようにする術がございます。もっとも、効き目の程は人によるのですが…」
「ほほぉ、しかし、なにゆえ秘伝なのだ?」

善吉は厳しい顔をする。

「考えてみてください。まらが役に立たず後継ぎができないのは、お家にとっても一大事でしょう」
「それはそうだが…、であれば、逆に役に立たせるのはよろこばれるのではないか?」

善吉はさらに厳しい顔で首を振る。

「旦那様、“ぎたるはなおおよばざるがごとし”の言葉をご存じでしょう」
「うむ」
「立ちっぱなしとなった陰茎は、主人の意に従わぬものです。そのあげく、精を吐き出し続ければ…」

健太郎はつばを飲み込む。

「遠からず死に至ります」
「うーむ、そうか。確かになあ」
「ゆえに秘伝なのです」

沈黙が部屋を覆う。
少し置いて、再び善吉が口を開く。

「そんな秘伝ではございますが、大恩ある旦那様には、この善吉が慎重を期して施したいと思います。いかがでしょうか?」

健太郎は腕を組んで考えていたが、「よし」を善吉を見た。

「やってくれるか!」
「はい!」

善吉が敷いた布団の上に、健太郎はふんどしひとつの姿でうつ伏せになる。

「では腰を中心に秘伝を施していきますので」
「全て任せる」

善吉は尾てい骨の辺りに手の平を当てると、ゆっくり押していく。ここでも痛みを感じる寸前で手を止めた。それを尻全体に施していく。

「うーむ、全身に響くな」
「はい」

やがて健太郎の背中に汗が浮かんだ。
善吉が施術を何度も繰り返していくと、背中ばかりでなく、肩や腕、太ももやふくらはぎにも汗の玉が浮いてくる。

「ふぅ」

それらの汗を手ぬぐいで吸い取った善吉は健太郎に声をかける。

「旦那様、仰向けになってください」
「ああ」

仰向けになった健太郎の腰にも、善吉が手の平を当てていく。
腰の横から当てた手が次第に肉棒に近づいていくと…

「おうっ!?」

健太郎が両足に力を入れる。
善吉はうなずきつつ両手を放した。

「こ、これは…」

健太郎のふんどしの前が膨らんでいる。
明らかに肉棒がそそり立っている証拠だ。

「ぜ、ぜ、ぜ、善吉っ!」
「ははっ、ここに!」

善吉は片膝をついて頭を垂れている。

「奥だ!奥を呼んでくれ!」
「ははっ、ただちに!」

善吉は頭を下げたまま部屋を出る。
静かに障子を閉めると、足早に駆け出して行った。

布団に立ち上がった健太郎はふんどしを外す。

「おおっ!」

およそ3年ぶりに起立した肉棒は、障子を透かした陽の光を浴びて輝いているようにもみえた。


「奥様っ!」

自室で書きものをしていた春代夫人は文机から顔を上げた。
障子の向こうから聞こえたのはいつもの善吉の声。しかし何か切羽詰まった風にも感じられた。

「どうしたの?」

春代夫人は障子を開けて、善吉を迎え入れる。

「旦那様がお呼びです」
「ああ、そう」

一応は聞くだけ聞いて、春代夫人はまた文机の前に座り、再び筆を手にして書きものを始める。
春代夫人が取り組んでいるのは、とある出版社から依頼された酒に関する随筆。何人もの知識人や文化人らの連作になると聞いている。

「あと少しでキリが良くなるからって伝えてくれる?」
「いえ、お急ぎで…」

しかし春代夫人は手を止めない。

「もうちょっとなのよ。少しだけ、待っててーねー」
「申し訳ありませんっ!」
「えっ!」

善吉は春代夫人の手から筆を取って机に置くと、座っている春代夫人を軽々と抱き上げる。

「ちょ、ちょっと!善吉!」
「旦那様が一大事ですので、失礼いたしますっ!」
「一大事って…」

春代夫人を抱えた善吉は小走りで健太郎の部屋へと向かった。


「旦那様ぁ、お待たせしましたっ!」
「おう!待ったぞ!」

春代夫人を抱えたままで善吉は健太郎の部屋の障子を開ける。
健太郎は一糸まとわぬ姿となって、布団の上であぐらをかいていた。

春代夫人は「あっ!」と叫びかけて口をふさぐ。
夫である健太郎の肉棒が両足の真ん中で雄々しく起立していたからだ。

善吉は部屋に入ると、春代夫人を優しく降ろす。

「奥様をお連れしました!」
「うむ、大儀である。褒美を取らす」

健太郎が金平糖の入った器を差し出すと、善吉はうやうやしく受け取った。

「旦那様、これはいったい…どう言う…」
「うむ、この前お前から聞いていただろう。善吉が整体をしてくれてなあ」

春代夫人は“整体”と聞いて頬を赤らめる。
“整体”という名の、別の行為を思い浮かべたのは言うまでもない。

「何でもひで…」

健太郎は言いかけた言葉を止める。善吉が厳しい顔で、人差し指を口に当てていたのを見たからだ。

「まあ、それで血のめぐりが良くなったようでな」
「そうですか…。それはようございました」
「おい、春代、何を言っとるんだ?」
「えっ!」
「お前をよろこばせてこそのいちもつだろう」
「あの、それはもしや…」

健太郎は腰を浮かせて春代夫人の手を引っ張る。あっけなく春代夫人は健太郎の胸に収まった。

「まだ随分と明るいですし…」
「明るいうちにまぐわってはいかんなどと、岳父殿や御母堂殿は言っておられたのか?」
「いえ、まさか、そんな…」

健太郎に抱かれた春代夫人は腰の座りが悪くてもぞもぞと動く。硬くそそり立った肉棒があったからだ。

「まだ何かあるのか?」
「善吉が見ていますし…」

善吉は金平糖の入った器を両手に捧げ持ったまま、部屋の隅に正座していた。

「おお!善吉!忠義、ご苦労。しかし不寝番は無用だ。下がってよいぞ」
「かしこまりましたっ!」

善吉は金平糖の入った器を頭より高く掲げつつ部屋から出ると、静かに障子を閉めた。

「いいな」
「でも、その…」
「いいな!」
「…はい」

健太郎は春代夫人の唇に吸い付いて、舌を強く差し込む。
それに応じた春代夫人も舌を絡めすと、あっという間に2人の口が唾液まみれとなった。

「3年だったか。待たせたな」
「本当に寂しゅうございました」

部屋から出た善吉は少し離れたところで、健太郎と春代夫人のやり取りに耳を傾ける。
すぐに春代夫人の喘ぎ声が聞こえてきたため、足音を立てずにその場を去った。

「ふぅ」

台所に来た善吉は水道の水を何杯も飲んだ。健太郎への整体でかなりの汗をかいていたこともあり、体の隅々まで染み込んでいくように感じた。

さらに健太郎から拝領した金平糖をひと粒口にする。

「…甘い」

普段は縁の無い甘みが全身の疲れをじんわりと癒していく。

「しっかし、まさか本当に効くとはなあ」

善吉の脳裏に健太郎のそそり立った肉棒が思い浮かぶ。

「秘伝ねえ」

もっともらしく説明した「馬立流《ばりつりゅう》の秘伝」は全くの嘘っぱちであり、でたらめであり、絵空事えそらごとだ。

善吉が健太郎に施したのは、血流が良くなる整体に過ぎない。それによって肉棒が硬くなる可能性はあったが、ある種の賭けであり、“秘伝”などではない。あえて言ってしまえば暗示だろう。

「まあ、結果良ければ全て良し、か」

そうして善吉がくつろいでいると、賑やかな女達の声が聞こえてきた。
通いの女中達が入ってくる。

「おや、善吉さん、良さそうなものをお持ちね」
「旦那様からご褒美にいただきました。皆さんも、どうぞ」
「あら、いいのー?」

5本の手が器に伸びる。
それぞれが口に放り込んで甘みを実感する。

「ああ、おいしい」
「ずっと舐めていたいわあ」
「あたしの子供の頃はもっと高価だったのよね」

甘みは場を盛り上げる。

「そう言えば、善吉さん」
「はい?」
「ちょっと前に賑やかだったけど…」
「ああ、旦那様が奥様に急用だとかで」
「ふーん」

善吉はとっさにごまかす。どうやら女中達は何も気づいていないらしい。

その後も小一時間、噂話に花を咲かせたところで、かすかに「ぜんきちー」と呼ぶ声に気づいた。

「行ってきます」
「うん、私達もおいとまするわ」

すっかり時間が過ぎていることに気づいた女中達も帰り支度をする。
残っていた金平糖は適当に分けて女中達に渡した。

「ありがと」
「お疲れ様」
「じゃあねー」

女中達を見送った善吉は健太郎の部屋に急ぐ。

「善吉です」
「おお!開けろ!」

善吉が障子を開けると、扇子で仰ぐ健太郎がいた。
春代夫人は健太郎の背後で、善吉の方には背を向けている。
全身にかけた着物が上下に動いているところから、激しい息づかいが続いているのが伺えた。

「汗をかいてしまってな。風呂の用意を頼む」
「かしこまりました」

障子を閉めた善吉は湯殿に急ぐ。ガスに火をつけて蛇口を開けると、しばらくして熱い湯が流れ込んでくる。

ひと通り湯殿を見回して、くずや汚れが無いことを確かめると、湯船に溜まりかけた湯を手桶に組んで、ザッと湯殿に撒いていく。熱気で湯殿全体がしっかり温まったころには、湯船にも十分な湯が溜まっていた。

「よしっ」

手桶や腰かけを整えた善吉は健太郎の部屋へと取って返す。
しかし部屋に近づいたところで足が止まった。

「ああっ、旦那様ぁ」
「ここか?ここがいいのか?」
「いきますっ」
「それっ、それえっ」

部屋の中から健太郎と春代夫人が交わる声が聞こえて来たからだ。

『参ったなあ』

2回戦が始まったらしく、足を止めた善吉は2人の声を聞きながら、ことが収まるのを待った。

「おおっ、締まるぞっ」
「まらが…、まらがあっ…」
「そろそろいくぞおっ」
「きてええええっ」

一段と激しいあえぎ声が起きたかと思うと、2人が布団に倒れ込んだようなことがした。
その後は、荒々しい息づかいだけが聞こてくる。

『そろそろ良いか…』

善吉はふんどしの中がふくらむのを感じながら、障子越しに声をかけた。

「旦那様、湯殿の支度ができました」
「そうか、そうか」

障子が開いて長襦袢ながじゅばんのみを羽織った健太郎と春代夫人が出てきた。

「いやあ、ご苦労」

健太郎は手で顔を仰ぎながら出てくる。
春代夫人は善吉から顔を隠すようにして湯殿に足を進めた。

「ちょっと部屋を片付けておいてくれ」
「はい」

善吉はふすまや障子を全て開けたものの、こもった熱気と匂いはなかなか消えない。
大きく染みのついた敷布を大団扇おおうちわのようにあおいで、ようやく空気が入れ替わっていく。

敷布を新しいものに差し替えて布団を畳むと、碁盤や碁石、土瓶や茶わんなどを整えてて部屋を出る。
敷布を洗濯場に置いたところで、健太郎と春代夫人がいるであろう湯殿が気になった。

「湯加減は大丈夫だろうか」

あえて口に出した善吉だったが、これが言い訳に過ぎないのは、善吉自身が一番理解していた。
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