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第14章 突然の宣言(千寿編)
第37話 垂水小町
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千寿が垂水子爵家で奉公を始めて1年余り。
充実した毎日の中で、主である垂水家の3人との深い関わりは続いていた。
「千寿、今晩なのだが…」
「お任せください」
垂水伸太郎子爵には、週に1度か2度あんまを施している。
昼であったり夜であったりといろいろながら、その後に綾香夫人との交わりがあるのも常だった。
「千寿、あんまをして欲しいのだけど」
「かしこまりました」
その綾香夫人にも、週に1度か2度あんま-道具を使った-を施している。
当初3つだった道具は1つ増えており、綾香夫人に「ひとつ千寿もどう?」と聞かれて、千寿が真っ赤になることもあった。
「千寿、今晩のご褒美は?」
「うーん、どうしましょうかねえ」
息子である伸佑へのご褒美も続いている。
こちらの回数は千寿の一存なので、週に1度だけに留まって伸佑が自分で放出させることもあれば、週に5回も施して伸佑が大喜びしたこともある。
ただし千寿の股間を見せるご褒美は、あの1度きり。
股間どころか、ふくらはぎを見せることもめったに無かった。
「千寿、ちょっと手伝ってくれる?」
「はい!」
千寿の手は綾香夫人の体ばかりでなく、夫人の仕事にも伸びていた。
元より、伸太郎が手掛ける織物や衣料品には綾香夫人の目が利いているとの評判で、会社の経理にも綾香夫人の手が行き届いていた。そこに算術が得意だった千寿が加わる。
「千寿がいてくれて、とっても助かるわー」
「私もいろんな勉強になりますので…」
綾香夫人あってこその伸太郎と言う人は多いが、その綾香夫人が口癖のように言っている。
いずれも垂水家3人にとって千寿が大きな支えになっていた。
そんな千寿にも大きな変化があった。
「おや、垂水小町のお出ましだ」
千寿が買い物に出かけた先々で、そう冷やかされることが多い。
奉公に来た当初も「器量の良い田舎娘」として、それなりに話題にはなった。
それから1年余り。
帝都の水になじんだためか、肌がすっきりと白くなった。
黒峰の家風に親しんだことで、立ち居振る舞いに優雅さが備わった。
時折、垂水家でもパーティーが開かれる。
その際には千寿も洋服にエプロンドレスの装いで給仕することが多い。
「おい、あれは誰だ?」
「ここの女中だとさ」
「へえ、そうは見えないなあ」
グラスを乗せたトレーを持って回る姿は、年齢を問わず男達の目を引いてしまう。
「お飲み物をどうぞ」
「あ、こりゃ、どうも…」
微笑んだ千寿からトレーを差し出されれば、なおさらだ。
「ふんだ」
「何よ」
「たかが女中」
派手に着飾った貴族夫人や令嬢は、脇役どころかその他大勢となってしまう。
中には足を引っ掛けようとしたり、ぶつかろうとした貴族令嬢もいた。
しかし、武道のたしなみのある千寿は、何ごともなかったように優雅にかわしていた。
彼女達が千寿を遠巻きにして歯噛みしたのは言うまでもない。
「ぜひ、うちの養女に」
そんな声をかけてくる貴族家もあった。
しかし、垂水伸太郎子爵は笑い飛ばして相手にせず、綾香夫人も微笑んで首を振る。息子の伸佑に至っては、男達が千寿に言い寄ろうとしたのを見ると、拳を振り上げて威嚇するのが常となっていた。
そんな垂水家に朗報があった。
「合格、おめでとうございます!」
伸佑が帝国大学文学部に合格した。
垂水家の家族や親族は大喜びし、奉公人や取引のある業者などから賛辞が寄せられた。
「お坊ちゃま、おめでとうございます」
もちろん千寿からも。
「ねえ、千寿」
「何でしょう?」
「合格のご褒美なんだけど…」
そう言いかけた伸佑だったが、千寿が大きく右手を素振りしたのを見て口を閉じた。
「…いや、何でもない」
「そうですか?ともあれ、おめでとうございます」
「ありがとう。千寿のおかげだな」
「お坊ちゃまが頑張られたからですよ」
「いや、まあ、ありがとう」
しかし帝国大学に合格したことで、伸佑に新たな悩みが到来してしまった。
充実した毎日の中で、主である垂水家の3人との深い関わりは続いていた。
「千寿、今晩なのだが…」
「お任せください」
垂水伸太郎子爵には、週に1度か2度あんまを施している。
昼であったり夜であったりといろいろながら、その後に綾香夫人との交わりがあるのも常だった。
「千寿、あんまをして欲しいのだけど」
「かしこまりました」
その綾香夫人にも、週に1度か2度あんま-道具を使った-を施している。
当初3つだった道具は1つ増えており、綾香夫人に「ひとつ千寿もどう?」と聞かれて、千寿が真っ赤になることもあった。
「千寿、今晩のご褒美は?」
「うーん、どうしましょうかねえ」
息子である伸佑へのご褒美も続いている。
こちらの回数は千寿の一存なので、週に1度だけに留まって伸佑が自分で放出させることもあれば、週に5回も施して伸佑が大喜びしたこともある。
ただし千寿の股間を見せるご褒美は、あの1度きり。
股間どころか、ふくらはぎを見せることもめったに無かった。
「千寿、ちょっと手伝ってくれる?」
「はい!」
千寿の手は綾香夫人の体ばかりでなく、夫人の仕事にも伸びていた。
元より、伸太郎が手掛ける織物や衣料品には綾香夫人の目が利いているとの評判で、会社の経理にも綾香夫人の手が行き届いていた。そこに算術が得意だった千寿が加わる。
「千寿がいてくれて、とっても助かるわー」
「私もいろんな勉強になりますので…」
綾香夫人あってこその伸太郎と言う人は多いが、その綾香夫人が口癖のように言っている。
いずれも垂水家3人にとって千寿が大きな支えになっていた。
そんな千寿にも大きな変化があった。
「おや、垂水小町のお出ましだ」
千寿が買い物に出かけた先々で、そう冷やかされることが多い。
奉公に来た当初も「器量の良い田舎娘」として、それなりに話題にはなった。
それから1年余り。
帝都の水になじんだためか、肌がすっきりと白くなった。
黒峰の家風に親しんだことで、立ち居振る舞いに優雅さが備わった。
時折、垂水家でもパーティーが開かれる。
その際には千寿も洋服にエプロンドレスの装いで給仕することが多い。
「おい、あれは誰だ?」
「ここの女中だとさ」
「へえ、そうは見えないなあ」
グラスを乗せたトレーを持って回る姿は、年齢を問わず男達の目を引いてしまう。
「お飲み物をどうぞ」
「あ、こりゃ、どうも…」
微笑んだ千寿からトレーを差し出されれば、なおさらだ。
「ふんだ」
「何よ」
「たかが女中」
派手に着飾った貴族夫人や令嬢は、脇役どころかその他大勢となってしまう。
中には足を引っ掛けようとしたり、ぶつかろうとした貴族令嬢もいた。
しかし、武道のたしなみのある千寿は、何ごともなかったように優雅にかわしていた。
彼女達が千寿を遠巻きにして歯噛みしたのは言うまでもない。
「ぜひ、うちの養女に」
そんな声をかけてくる貴族家もあった。
しかし、垂水伸太郎子爵は笑い飛ばして相手にせず、綾香夫人も微笑んで首を振る。息子の伸佑に至っては、男達が千寿に言い寄ろうとしたのを見ると、拳を振り上げて威嚇するのが常となっていた。
そんな垂水家に朗報があった。
「合格、おめでとうございます!」
伸佑が帝国大学文学部に合格した。
垂水家の家族や親族は大喜びし、奉公人や取引のある業者などから賛辞が寄せられた。
「お坊ちゃま、おめでとうございます」
もちろん千寿からも。
「ねえ、千寿」
「何でしょう?」
「合格のご褒美なんだけど…」
そう言いかけた伸佑だったが、千寿が大きく右手を素振りしたのを見て口を閉じた。
「…いや、何でもない」
「そうですか?ともあれ、おめでとうございます」
「ありがとう。千寿のおかげだな」
「お坊ちゃまが頑張られたからですよ」
「いや、まあ、ありがとう」
しかし帝国大学に合格したことで、伸佑に新たな悩みが到来してしまった。
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