【R18】おのぼりさんが帝都の貴族屋敷で奉公することになりました【完結】

県田 星

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第1章 田舎者(千寿編)

第1話 女中と風呂に

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大きな屋敷が建ち並ぶ一角に、ひときわ目を引く洋館があった。

お目当ての家を見つけた千寿は、「ここかあ」と洋館を見上げる。
千寿は「うん!」と気合を入れて、大きな門の前で思い切り声を張り上げた。

「お頼み申しまーす」

声が届いたのか届かなかったのか、洋館からは何の反応もない。

「お・た・の・み・も・う・し・まあーす」

何度か叫んでいると、門の向こう側に頭髪の薄くなりかけた初老の男が姿をみせた。
手には竹ボウキを持ち、藍の着物を尻の所で挟み上げてすねが見えている。

「おうおう、聞こえたよー」

曲がった腰を伸ばして千寿に顔を向ける。

「うん?可愛らしいお嬢ちゃんか。どなたかな?」
「あたし、いえ、私は鳴海千寿《なるみ ちず》と申します。こちらで奉公するために参りました」
「ああ、あんたか。聞いとるよー」

男はポンと手を叩いた。

「わしは源太郎げんたろうと言って、ここで庭仕事などをしておるのよ。よろしくなあ」
「よろしくお願いします!」

源太郎は門の横にある扉を開けて千寿を招き入れた。

「ほら、こっちだ。付いといで」

千寿は源太郎について立派な洋館に向かう。ただし玄関を横目に裏手へと回る。
グルッと歩いたところで、源太郎が裏口の戸を叩いた。

「おーい、さちさんよー」

すぐに裏口が開いて女が顔を出した。この屋敷で女中頭を務める幸。
肩より少し長いところで切りそろえた黒髪から、笑みをたたえた丸顔が覗く。
洋館に合わせたのか洋服にエプロン姿。

千寿の見たところ年の頃は30半ばに思えた。

「あら、源さん、どうしたんだい?」
「ほらよ、千寿さんだよ。奥様が今日から来るって言ってたろ」

源太郎は後ろにいる千寿を幸の前に押し出すと、「頼んだよー」と言い残して去っていく。

「ああ、奉公のー。待ってたよー」

幸は千寿の手を取ろうとして引っ込める。

「うん?どうしたんだい?何だか随分とほこりっぽいねえ」
「も、申し訳ありません」

千寿は土手から転がり落ちたことを思い出し、あわてて肩や腹を払う。
古びた着物のあちこちからほこりが立った。

「いいわ、ちょうどお湯が沸いているから風呂に入りなさいな。どのみち着替えなくちゃいけないんだし」
「風呂…ですか?」
「うちの奥様はきれい好きだからね。毎日入ることになるから」

幸は千寿の手を引いて湯殿へと連れて行く。

「さ、ここで着物を脱いで、そっちできれいにするんだよ」
「…はあ」

それだけ言って幸はどこかに行ってしまう。

「こっち?」

幸に言われた引き戸を開けると、カラカラと小気味よい音がする。
その向こうにタイル張りの湯殿や湯船があり、温かな湯気が立ち上っていた。

「はあ…立派だなあ」

あちらこちらと湯殿を見回した後、着物を脱ぎ始める。
ほこりが落ちないよう静かに着物や腰巻を脱ぎ、そのまま小さくたたんで片隅に置いた。

「よっ…と」

かんざしを引き抜くと、腰の辺りまでの長さがある真っ黒な髪が流れた。
さらに持参した風呂敷包みから、手ぬぐいを出して体の前を隠す。
そっと湯殿に足を進めると、千寿の足裏にタイルの冷たさが伝わった。

「さすが貴族様のお屋敷だなあ」

千寿の家にも湯船はあった。
しかしこれほど立派ではなく、毎日入るものでもない。
どうしたものかと千寿が戸惑っていると、背後から幸の声がかかる。

「あら、千寿ちゃん、まだ入ってなかったのかい?」
「あ、その…」

千寿が振り向くと、既に裸になった幸がいた。
千寿とは違ってどこも隠しておらず、むっちりとした肉付きの良い体がそこにあった。
そして股間の黒々とした茂みも。

「まあ、シャボンの使い方が分からないだろうしね。ほら、千寿ちゃん、教えてあげるよ」

さっさと湯殿に入った幸は千寿の手を引っ張って、腰かけに座らせた。
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