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第5章 会長の思惑
第98話 カラスが永世七冠と対局したら(その6)
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「これは決まりですね」
大盤の駒に触れつつ解説役の佐藤巧叡王が判断する。
「やっぱり駒の数でしょうか?」
聞き手の町田麻里代女流三段が尋ねると、佐藤が「ええ」とうなずいた。
「壬生先生は31点は間違いありません。一方でクロさんは24点に届かない」
盤面を見ると、先手のクロも後手の壬生善元九段の玉も相手陣に侵入しており、もはや詰めることは困難な情勢。
そこで盤面の中央に残るクロの駒をめぐる戦いになっていた。
パチッ
壬生が竜をひとつ引く。
これでクロの駒が両取りとなった。
両方の駒を逃げたり助けたりすることはできない。
反対に壬生の駒をクロが取ることも非常に難しい。
「1分経過しました」
読み上げを務める神奈川千佳女流二段が時間の経過を知らせた。
「クワア」
クロがひと鳴きしたが、心なしか力が弱い。
飼い主である鈴香がクロを見る目も心配そうだ。
コトリ
「これも危険な手ですね」
クロの馬が寄った手を見た佐藤が危険性を察知する。
「そうなんですか?」
「はい、町田さんならどっちを取りますか?」
佐藤は盤上で両取りになっている桂馬と歩に交互に触れた。
「えーっと、確率50%ですよね。桂馬、ですか?」
佐藤が首を振った。
「桂馬を取ると、こうなります」
大盤の駒をパタパタと動かす。
「あ、竜が…」
桂馬を取った竜の逃げ道がなくなってしまった。
「ですので、ここは歩を取る手が正解です。まあ、壬生先生なら間違えないでしょう」
壬生は盤上を見つめる。
「1分経過しました」
壬生は小さくうなずいた後、盤上の歩を取って駒台に置く。
小さく震えた手で竜を持ち上げると、空いたマス目に打ちつけた。
ピシッ
「クワア」
クロは鈴香と壬生を交互に見る。
鈴香は何か言いたそうにするが、口をしっかり閉じてクロに任せる。
コトリ
パシッ
コトッ
クロが取られなかった桂馬を成り込んだ。
そこで壬生が軽く右手を上げる。
「宣言します」
解説室の側で待機していたスタッフが佐藤に合図する。
「では、行ってきますね」
「佐藤先生頑張ってください」
町田が発した励ましの言葉に佐藤は苦笑した。
「…よりによって、最初の立ち合いでこうなるとはなあ」
佐藤は恨めしそうにそうつぶやいた。
通常の番勝負における立会人はベテランの棋士が務めることがほとんど。
しかし、この七番勝負においては解説役と兼務していることもあり、タイトルホルダーである佐藤にお鉢が回って来た。
「まあ、得てしてそんなものか…」
佐藤がため息をついた。
佐藤が対局場に入ると、壬生と鈴香とクロは言うまでもなく、読み上げの神奈川やスタッフの視線が佐藤に集まった。
盤上の駒と双方の持ち駒を佐藤が確認する。
「壬生善元九段が31点、角野クロさんが23点、よろしいですね」
壬生と鈴香が「はい」とうなずく。
クロも小さく「クワッ」と鳴いた。
「以上により、後手の壬生九段の勝ちとなります」
立会人である佐藤が判定した。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「カアカア」
壬生と鈴香、そしてクロがあいさつした。
大盤の駒に触れつつ解説役の佐藤巧叡王が判断する。
「やっぱり駒の数でしょうか?」
聞き手の町田麻里代女流三段が尋ねると、佐藤が「ええ」とうなずいた。
「壬生先生は31点は間違いありません。一方でクロさんは24点に届かない」
盤面を見ると、先手のクロも後手の壬生善元九段の玉も相手陣に侵入しており、もはや詰めることは困難な情勢。
そこで盤面の中央に残るクロの駒をめぐる戦いになっていた。
パチッ
壬生が竜をひとつ引く。
これでクロの駒が両取りとなった。
両方の駒を逃げたり助けたりすることはできない。
反対に壬生の駒をクロが取ることも非常に難しい。
「1分経過しました」
読み上げを務める神奈川千佳女流二段が時間の経過を知らせた。
「クワア」
クロがひと鳴きしたが、心なしか力が弱い。
飼い主である鈴香がクロを見る目も心配そうだ。
コトリ
「これも危険な手ですね」
クロの馬が寄った手を見た佐藤が危険性を察知する。
「そうなんですか?」
「はい、町田さんならどっちを取りますか?」
佐藤は盤上で両取りになっている桂馬と歩に交互に触れた。
「えーっと、確率50%ですよね。桂馬、ですか?」
佐藤が首を振った。
「桂馬を取ると、こうなります」
大盤の駒をパタパタと動かす。
「あ、竜が…」
桂馬を取った竜の逃げ道がなくなってしまった。
「ですので、ここは歩を取る手が正解です。まあ、壬生先生なら間違えないでしょう」
壬生は盤上を見つめる。
「1分経過しました」
壬生は小さくうなずいた後、盤上の歩を取って駒台に置く。
小さく震えた手で竜を持ち上げると、空いたマス目に打ちつけた。
ピシッ
「クワア」
クロは鈴香と壬生を交互に見る。
鈴香は何か言いたそうにするが、口をしっかり閉じてクロに任せる。
コトリ
パシッ
コトッ
クロが取られなかった桂馬を成り込んだ。
そこで壬生が軽く右手を上げる。
「宣言します」
解説室の側で待機していたスタッフが佐藤に合図する。
「では、行ってきますね」
「佐藤先生頑張ってください」
町田が発した励ましの言葉に佐藤は苦笑した。
「…よりによって、最初の立ち合いでこうなるとはなあ」
佐藤は恨めしそうにそうつぶやいた。
通常の番勝負における立会人はベテランの棋士が務めることがほとんど。
しかし、この七番勝負においては解説役と兼務していることもあり、タイトルホルダーである佐藤にお鉢が回って来た。
「まあ、得てしてそんなものか…」
佐藤がため息をついた。
佐藤が対局場に入ると、壬生と鈴香とクロは言うまでもなく、読み上げの神奈川やスタッフの視線が佐藤に集まった。
盤上の駒と双方の持ち駒を佐藤が確認する。
「壬生善元九段が31点、角野クロさんが23点、よろしいですね」
壬生と鈴香が「はい」とうなずく。
クロも小さく「クワッ」と鳴いた。
「以上により、後手の壬生九段の勝ちとなります」
立会人である佐藤が判定した。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「カアカア」
壬生と鈴香、そしてクロがあいさつした。
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