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第4章 棋士の立場
第58話 カラスの後手番対策を考えたら(その2)
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「ところで、将棋ソフトはどうなんでしょう?」
ようやく口を開いた佐藤が尋ねると、聞かれた壬生が腕組みして考える。
「最善手、と言うのをどうとらえるか…」
「ああ、そうか。引き分け狙いってのは、ある意味で勝ちに行く将棋とは矛盾しそうですね」
「うん」
1990年に始まった将棋ソフト同士の大会である「コンピュータ将棋オリンピック」。
毎年の恒例行事となっており、もう30回を超えている。
その対戦結果や棋譜は、将棋ソフトの関係者は元より、棋士や将棋ファンにとっても見逃せないニュースだ。
近年注目を集めているのが、先手番を握った将棋ソフトにおける勝率の高さ。
人間同士の対局である棋士の統計でも先手番の勝率が高目だ。
それを越えて、将棋ソフトでは先手番の勝率が明らかに高い。
ただし引き分けとなる千日手や持将棋のルールが異なるため、一概に比較するのは難しい面もある。
「将棋ソフトの対局では、先手の勝率が7割を超えていますね」
「これで、8割、9割を超えるとどうなるか…」
「先後一組で対戦する、なんて案もあるそうですよ」
「そうか…」
壬生が思いだすのは順位戦のA級。
基本10人の棋士がリーグ戦方式で対戦するA級では、1年間に9局指すことになる。
つまり、ある棋士は先手が5局で後手が4局となるのに対して、別の騎士は先手が4局で後手が5局となる。
もちろん、特定の棋士が2年連続して先手が4局とならないよう配慮されているが、完全に公平とは言いがたい。
これまで表だって不平不満を唱える棋士は出てきていないものの、厳密な意味では不公平だろう。
「A級順位戦では先手後手を一組としては?」
そんな意見が出てもおかしくない。
「順位戦も改革しないといけないなあ」
数年前に昇降数の枠を調整した順位戦。
並行して他の棋戦も消費時間や記録方法に関する改革が随時行われている。
将棋界の未来を考えれば、絶え間ない改革は必要だ。
場合によっては、全ての対局をネットなどで公開しても良い。
それに加えて、お礼を用意しつつ将棋ファンから投げ銭のようなものを受ける手もありそうだ。
考えれば考えるほど、いろんなアイデアが湧いてくる。
しかし…
「どうしました?」
壬生が考え込むのを見て佐藤が声をかける。
「うん、いや、難問山積だなあって」
「会長職、ですね」
「ああ」
棋士として第一線で戦いながら、激務の会長職をこなすのは尋常でない苦労だ。
「大岩先生の頑張りが偲ばれるよ」
「そうですね」
日本将棋協会の会長職を務めらながらA級棋士として活躍した大岩十五世名人。
対局する合間に会長としての職務をこなした、なんて逸話も残っている。
辻井八冠が誕生した現代においても、「大岩名人こそ史上最強の棋士だ」と主張する将棋ファンは多い。
「私も考えないといけないかなあ」
「えっ?」
「ああ、いや、何でもない」
壬生は盤面の駒を動かした。
ようやく口を開いた佐藤が尋ねると、聞かれた壬生が腕組みして考える。
「最善手、と言うのをどうとらえるか…」
「ああ、そうか。引き分け狙いってのは、ある意味で勝ちに行く将棋とは矛盾しそうですね」
「うん」
1990年に始まった将棋ソフト同士の大会である「コンピュータ将棋オリンピック」。
毎年の恒例行事となっており、もう30回を超えている。
その対戦結果や棋譜は、将棋ソフトの関係者は元より、棋士や将棋ファンにとっても見逃せないニュースだ。
近年注目を集めているのが、先手番を握った将棋ソフトにおける勝率の高さ。
人間同士の対局である棋士の統計でも先手番の勝率が高目だ。
それを越えて、将棋ソフトでは先手番の勝率が明らかに高い。
ただし引き分けとなる千日手や持将棋のルールが異なるため、一概に比較するのは難しい面もある。
「将棋ソフトの対局では、先手の勝率が7割を超えていますね」
「これで、8割、9割を超えるとどうなるか…」
「先後一組で対戦する、なんて案もあるそうですよ」
「そうか…」
壬生が思いだすのは順位戦のA級。
基本10人の棋士がリーグ戦方式で対戦するA級では、1年間に9局指すことになる。
つまり、ある棋士は先手が5局で後手が4局となるのに対して、別の騎士は先手が4局で後手が5局となる。
もちろん、特定の棋士が2年連続して先手が4局とならないよう配慮されているが、完全に公平とは言いがたい。
これまで表だって不平不満を唱える棋士は出てきていないものの、厳密な意味では不公平だろう。
「A級順位戦では先手後手を一組としては?」
そんな意見が出てもおかしくない。
「順位戦も改革しないといけないなあ」
数年前に昇降数の枠を調整した順位戦。
並行して他の棋戦も消費時間や記録方法に関する改革が随時行われている。
将棋界の未来を考えれば、絶え間ない改革は必要だ。
場合によっては、全ての対局をネットなどで公開しても良い。
それに加えて、お礼を用意しつつ将棋ファンから投げ銭のようなものを受ける手もありそうだ。
考えれば考えるほど、いろんなアイデアが湧いてくる。
しかし…
「どうしました?」
壬生が考え込むのを見て佐藤が声をかける。
「うん、いや、難問山積だなあって」
「会長職、ですね」
「ああ」
棋士として第一線で戦いながら、激務の会長職をこなすのは尋常でない苦労だ。
「大岩先生の頑張りが偲ばれるよ」
「そうですね」
日本将棋協会の会長職を務めらながらA級棋士として活躍した大岩十五世名人。
対局する合間に会長としての職務をこなした、なんて逸話も残っている。
辻井八冠が誕生した現代においても、「大岩名人こそ史上最強の棋士だ」と主張する将棋ファンは多い。
「私も考えないといけないかなあ」
「えっ?」
「ああ、いや、何でもない」
壬生は盤面の駒を動かした。
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