【R18】兄と2人で公爵様に嫁いでみました【完結】

県田 星

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第119話 誓いの言葉

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「カルトメリ・ワーレンバーグ公爵閣下、どうぞこちらにお越しください」

呼ばれたカルトメリが司教の前に出る。

列席者の中から小さく声が漏れた。
辺境の地であるクリスパ領では公爵を目にすることも少ないからだ。

司教の妻が軽やかにピアノを弾き始める。

「アラーナ・クリスパ伯爵令嬢、ご入場ください」

列席者の視線が後方に向いた。

いつの間にか移動していたデュランとパルマが控室から続く扉を開ける。
ピアノに合わせて、力強い足音と細やかな足音が聞こえる。

半歩先に歩くのはタルバンの扮装をしたアラーナ。

革鎧の胸当ては結婚式には珍しい服装ながら、意匠化されたクリスパ家の紋章が目を引く。
さらに赤いマントがタルバン(アラーナ)の存在感を引き立てる。
もちろん顔にはパルマの男化粧。

「かっこいい」
「素敵」
「私を連れて逃げて」

居ならぶ若い女性から、そんなつぶやきも聞かれた。

タルバン(アラーナ)の腕に手をかけつつ、半歩遅れて歩くのがアラーナに扮したタルバンだ。

ワーレンバーグ公爵家で仕立てた真っ白なドレスが内側から光り輝くように映える。
背中から流れる優雅なトレーンはアラーナ(タルバン)の背丈の倍くらいはあった。
ただし、肝心の顔はレースを重ねたベールで大半が隠れており、かろうじてあごの辺りが見える程度。

そんな2人に続いて、列席者の中から選ばれた男の子と女の子が付いてくる。
ともに花びらを山盛りにしたカゴを持ち、振りまきながら歩いて行く。

「頑張って!」

家族から声がかけられると、さらに張り切って花びらをまいた。

ピアノに合わせて歩を進める2人。
2人を追うように列席者の視線が前に向く。

やがてカルトメリと司教が待つ場に2人がたどり着いた。
タルバン(アラーナ)は目で合図すると、アラーナ(タルバン)の手をカルトメリに渡した。
カルトメリはアラーナ(タルバン)の手を取って、自らの横に誘導する。

花びらを巻き終えた子供らは家族の元に戻っていった。

「お疲れ様」
「頑張ったね」

そんな声が聞こえた。

タルバン(アラーナ)も新婦側の席の最前列に立った。

「皆様、ご着席ください」

司教の言葉に列席者が腰を降ろす。
一同が落ち着いたのを見計らって、ピアノの音が静かな曲へと変わった。

ようやく落ち着いたと思われる司教が口を開く。

「神の祝福の元、天の恵み、地の恵み、人の温もりがあふれる中、このめでたき日を迎えたお2人に幸せをお祈りいたします」

カルトメリとアラーナ(タルバン)が向き合った。
司教はカルトメリの方を見る。

「カルトメリ・ワーレンバーグ、あなたはアラーナ・クリスパを生涯愛し続けると誓いますか?」

司教に尋ねられたカルトメリは大きくうなずいた。

「誓います」

続いて司教がアラーナ(タルバン)に問いかける。

「アラーナ・クリスパ、あなたはカルトメリ・ワーレンバーグを生涯愛し続けると誓いますか?」

ベールに包まれた顔がわずかに下に動く。

「誓います」

新婦側の最前列にいるタルバン(アラーナ)も同時に『誓います』と小さく口を動かした。

「それでは誓いの証しをどうぞ」

司教は表現を柔らかくしているが、要するに2人の口づけだ。
カルトメリがアラーナ(タルバン)のベールを上げようとしたところで、どこでも聞くような、しかし教会の場では聞きなれない鳴き声が響いた。

「ニャオーン!」

アラーナ(タルバン)がまとったドレスのトレーンに猫が飛び掛かった。
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