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第108.3話 ミュルガリルの選択
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「あなたが良いな」
カルトメリの右手はミュルガリルのドレスを引っ張っていた。
ミュルガリルはカルトメリの手を振りほどこうとはしないものの、「ご冗談を…」と返す。
客の男達の中から失笑が聞こえた。
声にこそ出さなかったものの、女達も笑みを見せている。
「冗談は嫌いではないが、これは違う」
ミュルガリルは「そうですの?」と腰を降ろした。
「あなたがダメだと言うのなら構わない。ただし、あなたの代わりを選んでくれ」
「ああ、そうですねえ」
店内は静まり返っている。
先ほどまではカルトメリの選択に皆の注目が集まっていた。
今度はミュルガリルの返答に皆が耳を傾けている。
ミュルガリル・レンタニナがこの世界に入ったのは17歳の時。
亡くなった父親が残した借金を肩代わり、しかも病気がちの母親はあてにならない。
この手の女達には珍しくもない理由だった。
数年後に母親も亡くなり、借金を返す途中だったミュルガリルは、この先の人生を考える。
結果、巧みな駆け引きを行って格の高い店へと移り、少しづつ自分の価値も上げて行く。
20代半ばで借金を返し終わると、王都でも屈指の店に移り、さらに5年ほど働く。
30歳過ぎで「甘い口づけ」を開き、主人としての務めにまい進する。
10年ほどした現在、「王都でも一番」と言われるほどに店を大きし格を上げてきた。
ただし自分の店を開いて以降、ベッドに他人を入れたことはない。
ミュルガリルは自分の眼鏡に適った女達を見回していく。
「誰を選ぶと思う?」
カルトメリ・ワーレンバーグの最初の相手であっても、ミュルガリルが承諾するとは誰も思っていない。
それならそれで、どの女を代わりとして選ぶのかに興味が集まっていた。
自然と女達の背筋が伸びる。
主人であるミュルガリルに選ばれて、カルトメリ・ワーレンバーグの相手をする。
これは名を上げるまたとない機会だ。
ミュルガリルはグラスに残っていた酒を飲み干すと、「ふぅ」とひと息入れる。
「先ほどの言葉、覚えています?」
「うん?何だったかな?」
「お忘れですか?『カルトメリ様なら皆お断りしない』ですよ」
「ああ、そうだったな」
カルトメリがドレスに触れていた手をミュルガリルが握る。
「それでは行きましょう」
「……ああ」
ミュルガリルは席を立つと、そのままカルトメリも引っ張り上げる。
カルトメリの腕に自分の腕を絡ませた。
「行っちまうぞ」
「本当に行くのか」
「聞いたことないな」
客の男達からざわめきが起こる。
「ミュルガリル様が」
「初めよね」
「信じられない」
「甘い口づけ」の従業員や女達からも驚きの視線が集まる。
そんな中を2人はゆったりと店の奥へ歩いて行った。
カルトメリの右手はミュルガリルのドレスを引っ張っていた。
ミュルガリルはカルトメリの手を振りほどこうとはしないものの、「ご冗談を…」と返す。
客の男達の中から失笑が聞こえた。
声にこそ出さなかったものの、女達も笑みを見せている。
「冗談は嫌いではないが、これは違う」
ミュルガリルは「そうですの?」と腰を降ろした。
「あなたがダメだと言うのなら構わない。ただし、あなたの代わりを選んでくれ」
「ああ、そうですねえ」
店内は静まり返っている。
先ほどまではカルトメリの選択に皆の注目が集まっていた。
今度はミュルガリルの返答に皆が耳を傾けている。
ミュルガリル・レンタニナがこの世界に入ったのは17歳の時。
亡くなった父親が残した借金を肩代わり、しかも病気がちの母親はあてにならない。
この手の女達には珍しくもない理由だった。
数年後に母親も亡くなり、借金を返す途中だったミュルガリルは、この先の人生を考える。
結果、巧みな駆け引きを行って格の高い店へと移り、少しづつ自分の価値も上げて行く。
20代半ばで借金を返し終わると、王都でも屈指の店に移り、さらに5年ほど働く。
30歳過ぎで「甘い口づけ」を開き、主人としての務めにまい進する。
10年ほどした現在、「王都でも一番」と言われるほどに店を大きし格を上げてきた。
ただし自分の店を開いて以降、ベッドに他人を入れたことはない。
ミュルガリルは自分の眼鏡に適った女達を見回していく。
「誰を選ぶと思う?」
カルトメリ・ワーレンバーグの最初の相手であっても、ミュルガリルが承諾するとは誰も思っていない。
それならそれで、どの女を代わりとして選ぶのかに興味が集まっていた。
自然と女達の背筋が伸びる。
主人であるミュルガリルに選ばれて、カルトメリ・ワーレンバーグの相手をする。
これは名を上げるまたとない機会だ。
ミュルガリルはグラスに残っていた酒を飲み干すと、「ふぅ」とひと息入れる。
「先ほどの言葉、覚えています?」
「うん?何だったかな?」
「お忘れですか?『カルトメリ様なら皆お断りしない』ですよ」
「ああ、そうだったな」
カルトメリがドレスに触れていた手をミュルガリルが握る。
「それでは行きましょう」
「……ああ」
ミュルガリルは席を立つと、そのままカルトメリも引っ張り上げる。
カルトメリの腕に自分の腕を絡ませた。
「行っちまうぞ」
「本当に行くのか」
「聞いたことないな」
客の男達からざわめきが起こる。
「ミュルガリル様が」
「初めよね」
「信じられない」
「甘い口づけ」の従業員や女達からも驚きの視線が集まる。
そんな中を2人はゆったりと店の奥へ歩いて行った。
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