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第157話 名物に旨い物あり
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「レビグラス・ブローブと申します」
翌日の昼食時に2人の令嬢がクリスパ家を訪れた。
優雅にお辞儀をした後で差し出された子爵令嬢の手を取ってタルバンは軽く口づけした。
「!」
放そうとしたタルバンの手にレビグラスから力を込められる。
「ようやくお会いできましたね」
その瞳には熱がこもっていた。
しかし、そんな熱は次の強風で吹き飛んだ。
「ハルト・ラント・ココットです。ま、た、お会いできてうれしいです」
ハルトは「また」を強めに述べて、チラリと横を見た。
視線を受けたレビグラスの微笑みが凍ったようになる。
ハルトの手の甲に口づけしたタルバンも、部屋中を吹き荒れる冷気を感じた。
「お会いするのは初めてですけど、タルバン様からお手紙は、な、ん、ど、も、頂いておりますの」
レビグラスは「何度も」を強調する。
少し目を見開いたハルトは「そうでしたか」と受け止めつつも、負けてはいない。
「でも“百聞は一見に…”などと申しますし、100通の手紙も一度の面会に比べれば、ねえ、タルバン様」
「あら、そうですの?ハルト様はお手紙は要らないそうですよ。タルバン様」
2人の令嬢は冷たい笑みを交えつつ、案内された食堂の椅子に腰を降ろした。
「新しいクリスパ領の名物をお召し上がりいただこうと思いまして」
ハルトが「もしかして?」と尋ねる。
「ココット商会から頂きました中で、芋と瓜の出来ばえが良かったので」
「ああ!そうでしたの!ココット商会がお役に立てたようで何よりです」
ハルトが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
レビグラスはあえて気づかないふりでやり過ごす。
「いろいろな料理を用意しました。マナーや順番など気にせずに味わってください」
レビグラスとハルト、そしてタルバンの前にいくつもの皿や器が並ぶ。
「そうそう、あまり食べ過ぎると、お腹が張ってしまうので気を付けてくださいね」
「そうなのですね」
「分かりました」
湯気が立つほど温かいもの。
香ばしい匂いのするもの。
鮮やかな黄や緑の色が目立つもの。
それらを持ってきたのはパルマ、そしてワーレンバーグ公爵夫人が扮するアリィ(アラーナ)だ。
タルバンの「さあ、どうぞ」の言葉で、2人は手を伸ばす。
レビグラスはスプーンを取って冷たいスープを口にした。
「…甘い」
控えめな、それでいてしっかりとした甘さがレビグラスの舌を楽しませる。
2口、3口とレビグラスは口に運んだ。
「瓜を使ったスープです」
「とってもおいしいです」
素直な感想を聞いてタルバンの顔がほころび、アリィ(アラーナ)とパルマも微笑みを浮かべた。
「…良い香り」
ハルトは四角く切って油で揚げたと思われる料理をフォークで指して口に持って行く。
「おいしい!」
「ありがとうございます」
「これは芋ですか?それとも瓜?」
「両方ですよ」
「両方?」
「黄色の薄いのが芋で、黄色みが強いのが瓜です」
タルバンの言葉を聞いて、レビグラスも揚げたものを口にする。
「どちらもおいしいですが、薄黄色の方が甘みが強いんですね」
「ええ、芋は収穫後にひと月くらい熟成させるとグッと甘くなるんです」
「そうなんですのね」
2人とも、やめられない止まらないとばかりにフォークの運動が続く。
その後も、薄切りの芋にひき肉を挟んで焼いた料理や、鶏肉とともに芋や瓜を煮込んだシチュー、細切りした芋と瓜を使ってサラダなどの料理に舌鼓を打った。
「お腹いっぱいです」
「ええ、私も」
気楽な雰囲気に満ちた場に、2人の令嬢はいつになく食欲を満たした。
おいしい料理が2人の間に壁となっていたわだかまりも和らげていた。
「デザートでございます」
新たな皿が令嬢に襲い掛かる。
「…おいしそう」
「…本当に」
パルマとアリィ(アラーナ)が並べた皿に、レビグラスとハルトの手が伸びた。
デザートは別腹
2人はこれを実感した。
翌日の昼食時に2人の令嬢がクリスパ家を訪れた。
優雅にお辞儀をした後で差し出された子爵令嬢の手を取ってタルバンは軽く口づけした。
「!」
放そうとしたタルバンの手にレビグラスから力を込められる。
「ようやくお会いできましたね」
その瞳には熱がこもっていた。
しかし、そんな熱は次の強風で吹き飛んだ。
「ハルト・ラント・ココットです。ま、た、お会いできてうれしいです」
ハルトは「また」を強めに述べて、チラリと横を見た。
視線を受けたレビグラスの微笑みが凍ったようになる。
ハルトの手の甲に口づけしたタルバンも、部屋中を吹き荒れる冷気を感じた。
「お会いするのは初めてですけど、タルバン様からお手紙は、な、ん、ど、も、頂いておりますの」
レビグラスは「何度も」を強調する。
少し目を見開いたハルトは「そうでしたか」と受け止めつつも、負けてはいない。
「でも“百聞は一見に…”などと申しますし、100通の手紙も一度の面会に比べれば、ねえ、タルバン様」
「あら、そうですの?ハルト様はお手紙は要らないそうですよ。タルバン様」
2人の令嬢は冷たい笑みを交えつつ、案内された食堂の椅子に腰を降ろした。
「新しいクリスパ領の名物をお召し上がりいただこうと思いまして」
ハルトが「もしかして?」と尋ねる。
「ココット商会から頂きました中で、芋と瓜の出来ばえが良かったので」
「ああ!そうでしたの!ココット商会がお役に立てたようで何よりです」
ハルトが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
レビグラスはあえて気づかないふりでやり過ごす。
「いろいろな料理を用意しました。マナーや順番など気にせずに味わってください」
レビグラスとハルト、そしてタルバンの前にいくつもの皿や器が並ぶ。
「そうそう、あまり食べ過ぎると、お腹が張ってしまうので気を付けてくださいね」
「そうなのですね」
「分かりました」
湯気が立つほど温かいもの。
香ばしい匂いのするもの。
鮮やかな黄や緑の色が目立つもの。
それらを持ってきたのはパルマ、そしてワーレンバーグ公爵夫人が扮するアリィ(アラーナ)だ。
タルバンの「さあ、どうぞ」の言葉で、2人は手を伸ばす。
レビグラスはスプーンを取って冷たいスープを口にした。
「…甘い」
控えめな、それでいてしっかりとした甘さがレビグラスの舌を楽しませる。
2口、3口とレビグラスは口に運んだ。
「瓜を使ったスープです」
「とってもおいしいです」
素直な感想を聞いてタルバンの顔がほころび、アリィ(アラーナ)とパルマも微笑みを浮かべた。
「…良い香り」
ハルトは四角く切って油で揚げたと思われる料理をフォークで指して口に持って行く。
「おいしい!」
「ありがとうございます」
「これは芋ですか?それとも瓜?」
「両方ですよ」
「両方?」
「黄色の薄いのが芋で、黄色みが強いのが瓜です」
タルバンの言葉を聞いて、レビグラスも揚げたものを口にする。
「どちらもおいしいですが、薄黄色の方が甘みが強いんですね」
「ええ、芋は収穫後にひと月くらい熟成させるとグッと甘くなるんです」
「そうなんですのね」
2人とも、やめられない止まらないとばかりにフォークの運動が続く。
その後も、薄切りの芋にひき肉を挟んで焼いた料理や、鶏肉とともに芋や瓜を煮込んだシチュー、細切りした芋と瓜を使ってサラダなどの料理に舌鼓を打った。
「お腹いっぱいです」
「ええ、私も」
気楽な雰囲気に満ちた場に、2人の令嬢はいつになく食欲を満たした。
おいしい料理が2人の間に壁となっていたわだかまりも和らげていた。
「デザートでございます」
新たな皿が令嬢に襲い掛かる。
「…おいしそう」
「…本当に」
パルマとアリィ(アラーナ)が並べた皿に、レビグラスとハルトの手が伸びた。
デザートは別腹
2人はこれを実感した。
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