転生したら嫌われデブに!? ~性格の悪いブタ男になってしまったので、態度を改め真面目に生きようと思います~

米津

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第2章 風紀委員編

34. ファイア・ボール

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「ふむふむ、なるほど。これは発火の魔法陣イグニッションだけど、ちょっと変わった作りをしてるね」

 先生が俺の描いた魔法陣を見ながら呟く。

 魔法陣は一から自分で描いたものであるが、かなり正確に描かれていると思う。

 ただし、魔力の伝搬率が低い紙やインクを使って描いたため、魔力を込めたところで魔法は発動しない。

 万が一発火でもしたら危険だからな。

「この魔方陣を上書きする形で他の術式を作りたいんですけど、できますか?」

「上書き? なんでそんなことを……って、まあいっか。発火イグニッションだから、できないこもないかな」

「え、ほんとですか?」

「うん。発火って、火系統の術式の中でも基礎となる術式でしょ?」

「はい」

発火の魔法陣イグニッションをもとにして、他の魔法陣を構築することもできるってこと。まあ普通の術式と比べたら、ちょっと複雑になるけどね。言ってる意味わかる?」

「なんとくなく……。つまり、発火の魔法陣イグニッションで作り出した火を、他の術式で変化させるってことですよね?」

「だいたいそんな感じ。さっきの雑な説明でよくわかったね」

「僕も同じこと考えてたことなので」

 火系統の魔術には、火を発生させる術式が組み込まれている。

 というのも、火魔術は一般的に、火を作り出してから、それを変化させていく術式構成になっているからだ。

 たとえば火球ファイア・ボールの展開術式は、火を発生させる術式、火を球状に変える術式、物質を加速させる術式などで構成されている。

 先生が言っていたのは、火を発生させる術式を、発火の魔法陣イグニッションで代用しようということだ。

「じゃあ、私が教えることはないね」

「へ? いや待ってください」

「なに?」

「もう少し付き合ってほしいです」

「生徒とそういう関係になるのはちょっと……」

 何言っとんねん、この教師。

 エロゲでもあるまいし……。

 はっ、まさかここはやっぱりエロゲ!?

 ってくだりは、もうそろそろやめよう。

 だって、さすがにエロゲ展開なさすぎるし。

 もしこれがユーザーだったら、「はよ、エロ寄越せ」って怒ってるところだ。

 ここまでエロがないエロゲとか、絶対に需要ないだろうよ。

「ん、わかった」

 先生がちょこんと俺の前に座る。

「で、何がわからないの?」

 おお、意外といい先生やん。

 休日も生徒のために頑張る教師か……。

 え、ブラック企業かな?

 まあ俺が頼んだんだけどね。

発火の魔法陣イグニッションを術式の一部にすることはわかりました。でも、そこから他の術式とどう組み合わせていくかとか、そもそも他の術式にはどんなのがあるかとか……ぶっちゃけ魔法陣の作成に関して、まったくわからないって感じです」

「そりゃあ、そうだよ。魔法陣の作成は一年生の範囲を超えてるんだし。なんなら三年生でもできない人が大半だからね」

 魔法陣は単純に術式が組み合わせればいいわけではない。

 ノイズや熱対策のために配置をしっかり考える必要があるし、安全性にも気を配らなければならない。

 術式が誤作動して大事件を起こした例も少なくない。

 そのため、ちゃんと魔術師として働きたければ、魔術師ライセンスを取得する必要がある。

「そういえば先生はライセンス持ってるんですか?」

「魔術師ライセンスのこと?」

「はい」

「持ってるよ。一応一級をね」

「え? すごっ」

 さらっととんでもないこと言うな、この人。

 魔術師ライセンスは三級からあるが、その三級の取得でさえかなり難しいと言われている。

 学園の生徒も卒業までに三級を取れる人はほとんどいないらしい。

 一級ともなると、国内に100人もいないんじゃないか?

 まあ正確な数なんて知らんけど。

「どう? 見直した?」

「はい。逆にそれだけ凄いのに、なんで詠唱学の先生なんてやってるんですか?」

「え、だって魔術教えるの面倒じゃん。教わる気のない子たちに教えるとか、絶対にイヤ」

 あ~、なるほど。

 それなら納得だ。

 この魔法学園、国内では一、二を争う名門校らしいけど、それでも魔術に対する関心は薄い。

「じゃあ僕に教えてくれるのは、どうしてですか?」

「学びたい生徒を教え導くのが、教師の務めなんじゃない?」

 この人、良い先生やん。

 昔の俺アランがこの人から無視されてたのは、何も学ぼうとしなかったからなんだろうな。

 いまの俺とは、かなり相性が良い気がする。

「それにアランくんって興味深いんだよね。色々と観察のしがいがある」

 ん、どういうこと?

 俺を観察したところで何も出てこないよ?

◇ ◇ ◇

 あの後、先生と一緒に発火の魔法陣を改造し、火球の魔法陣ファイア・ボールを完成させた。

 ついでに色々といじって、火を球以外の形にも変えられるようにしてある。

 まあ、ほとんど先生がやっくれたんだけど。

 でも、魔法陣についての理解がかなり深まって良かった。

 アランの頭が優秀で助かったわ。

 次からは自分一人でもなんとかできるかも……って、それはうぬぼれ過ぎか。

火球の魔法陣ファイア・ボールを作ったはいいけど、このあとどうすればいいんだ?」

 作成した魔法陣を魔法領域に入れる必要がある。

 でも、魔法陣への入れ方なんて知らんよ?

「あっ、いいこと思いついた」

 俺は『ゼロから始める無詠唱魔法』の魔法陣が描かれたページを開く。

「これを使えばいいんだ」

 ここに描かれた魔法陣は2つの術式で構成されている。

 発火の術式と、魔法領域に魔法陣を刻み込む術式だ。

 発火の術式に修正を加え、火球の術式に変えちゃえばいいんだ。

 というわけで、さっそく魔法陣を描き始める。

 本の上に描くのはいけないから、魔力伝導率が高い紙――魔法紙を用意し、インクも伝導率が高いものを使う。

 そして魔法陣を描くこと数時間――。

「よし、できた。これでいけるはず」

 魔法陣に手を添える。

 そして魔力を流してみた。

 直後、魔法陣が赤く光る。

「――――」

 次の瞬間、ぐるんぐるんと目が回るような感覚に襲われる。

 この気持ち悪さは前に経験したものと似ている。

 だが、前のときよりも早く不快感がなくなった。

「でき……たのか?」

 魔法領域に意識を集中させてみる。

「え、できてる」

 頭の中に火球の魔法陣がインプットされていた。

 すげぇ。

 俺、新しい魔法覚えちゃったよ。

 この調子で魔法陣をバンバン頭の中に入れちゃえば、色んな魔法使えるようになるんじゃね?

 あ、でもさすがにメモリ不足になるかもな。

 詠唱魔法も覚えられる数が決まっていると聞くし。

 まあ、なんにしても良かった。

 これで俺は発火イグニッション以外も使えるようになったわけだし。

 さっそく試してみるか……。

◇ ◇ ◇

 それから数時間後。

 火球を使って遊んでたら、誤って公園にあった木を燃やしてしまった。

 オリヴィアに呼び出された俺は、日本の伝統である土下座をした。

 変な目で見られたが、俺の必死さが伝わったのか、なんとか許してもらえた。

 やはり土下座は最高の謝り方である。
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