転生したら嫌われデブに!? ~性格の悪いブタ男になってしまったので、態度を改め真面目に生きようと思います~

米津

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第2章 風紀委員編

40. オレでなきゃ見逃しちゃうね

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 やっちまった。

 いや、マジでやっちまったよ。

 地下室で放つ魔法じゃなかったわ、あれ。

 危うくテトラを巻き込むところだった。

 てか、先生大丈夫かな?

 いや、大丈夫じゃないか。

 でもあの状況ではああするしかなかったしな。

 うん、俺は悪くない。

 って、先生いないし。

 どこいった?

 まあいいや。

 先生を倒すことが目的じゃないから。

 妹のところに行く。

「……」

 テトラがじーっと俺を見つめてくる。

「大丈夫か?」

 見た感じ、怪我はなさそうだ。

「……」

 あの~、無言で見つめるのやめてくれません?

 困るんだけど……。

「なぜ私を助けにきたのですか?」

 え?

 それ最初に言うこと?

 なんか他にない?

 ありがとう、とか。

 お兄ちゃん大好き、とか。

 いや、お兄ちゃん大好きはないか。

 そんなこと妹に言わせるとか、かなり気持ち悪いだろ。

 別に感謝されたくて助けにきたわけじゃない。

 まあちょっとは感謝されたいけど。

 どっちかっていうと、俺のためだ。

 もしもテトラになんかあったら、俺は自分を許せなくなる。

「なぜ助けに来たのですか?」

 テトラが再び聞いてきた。

 いや、聞こえてるからね?

 念押さなくて大丈夫だからね?

 なぜとか言われても、答えなんて決まってる。

「妹だからだよ」

「血はつながってませんよ」

 え、そうなの?

 マジで?

 それは知らんかったわ。

 いや実は俺、アランの記憶が一部欠落してるんだよね。

 むしろ、一部の記憶しか持ってないというべきか。

 ここ最近の記憶しか残っていない。

 いわゆる記憶喪失ってやつだ。

 前世の記憶はしっかり残ってるんだけどね。

 てか、俺たちって本当の兄妹じゃなかったの?

 じゃあなに?

 ……いま話すべき内容ではないな。

「でも妹であることには変わりないだろ?」

「妹……? つまり家族愛というやつですか?」

「家族愛って……まあ間違ってはないけど。面と向かって言われるとハズいな」

「兄様にそんなものがあるとは思いませんでした」

 家族なんだから大切にするだろ、普通。

 って、昔のアランは家族に対する愛情なんてなかったな。

 それにフォード家は冷たい人が多い。

 やっぱりイアンだけが唯一まともな気がする。

「本で読みました」

「え、なにを?」

 話題が唐突すぎてビビるわ。

「人間には愛情があるものだと。でも私には愛がなんなのかわかりません」

「そんなの俺だってわからんよ」

 愛がなにかって?

 知らんがな。

 そんなの考えるだけでめんどくさい。

 そういう小難しいことはお偉い哲学者たちに任せておけばいい。

「ではなぜ私を助けにきたのですか?」

 これループ式の会話かなにかなの?

 選択肢間違えたら、最初の会話に戻ってきちゃうの?

 いや違うだろうけどさ。

「最初から言ってるだろ。お前が俺の妹だからだ。家族を助けたいと思うのは変なのか?」

 たぶん俺は妹に好かれていない。

 でもだからって、俺が妹を大切にしない理由にはならない。

 血がつながっていなくても、俺の妹なんだ。

 守ってやりたいと思うのも当然だ。

「わかりません。私はそういう気持ちになったことがないので……」

 まあ、そうだろうな。

 テトラって感情がない子だし。

 何にしても妹が無事で良かった。

 それだけで俺は満足だよ。

「わかりません」

 テトラがポツリと呟いた。

 わかりませんって言われてる俺のほうがわからんけどな。

 教えて、グー○ル線先生。

 妹の気持ちがわからずに悩んでいます。どうすればいいですか?

「わからない、わからないって……具体的に何がわからないんだ?」

「怖いとは感じませんでした」

「は?」

 どういうこと?

「誘拐されて襲われて殺されそうになって……それでも恐怖はありませんでした」

 え、そこまで感情がない子だったの?

 びっくりなんだけど。

 俺が同じ状況だったら、多分ちびってる。

「でも、兄様が来てから、よくわからない気持ちになりました」

「よくわからないって、なにが?」

「わかりません。それがわからないから困惑しています」

 いや、俺だってわからんよ。

 わからないが多すぎて、わからないって言葉でゲシュタルト崩壊が起きそう。

「でも初めての気持ちです。今までには感じたことがなかったものです」

「なるほどな」

 適当に頷いてみたけど、全然なるほどじゃない。

「この気持ちは、また味わえるのでしょうか?」

 この気持ちはなんだろう~?

 この気持ちはなんだろう~?

 中学のときに歌った気がする。

 って、呑気に考えてる場合じゃないよな。

「兄様と一緒にいれば、この気持ちの正体がわかるのでしょうか?」

「それがどんな気持ちかはわからん。でもまあ、俺はテトラと仲良くしたいよ」

「……はい。わかりました」

 テトラの口の端がわずかに上がったようにみえた。

 ん?

 気のせいか?

 いや、たしかに俺は見たぞ。

 いま表情動いたよね?

 ほんの一瞬だけだったけど。

 ほんのわずかな動きだったけど。

 でも、ちゃんと動いたよね?

 ピクッと動いて、すぐに元の無表情に戻ったけど。

 おそろしく速い動き……オレでなきゃ見逃しちゃうね。
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