【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】

阿佐夜つ希

文字の大きさ
66 / 102
第四章

66 ベルトランの旧友のアドバイス

しおりを挟む
「うへへへっ、ほっ、本物のダリオ様だあ……! ちょ、超可愛い……至高のかわゆさで私が浄化されるっ……!」

 などと喚きながら一瞬目を細めたマノンが、すぐに両目を見開いてダリオを凝視する。
 ダリオはそんな無遠慮な見られ方に別段不快感を表すこともなく、少し顎を上げ、下目でマノンを見た。

「ヒナリに一番似合うドレスを用意できたら、君のその態度は許容しなくもない」
「うはあっ! ありがたき幸せっ……! 必ずや、聖女ヒナリ様に最高の一着をご用意してみせます……!」


 そう宣言するなり踵を返し、また早足でヒナリたちの元に戻ってきた。

「やべっ、超天使だった……! 天使がめっちゃ冷たい目で私のこと見てくれたあっ……!」

 今にも涎を垂らしそうな勢いで呼吸を繰り返すマノンが、ベルトランの腕をつかんで項垂れた。

「緊張したあ……! なあベルトラン、ダリオ様とちゃんとお話しできた私を褒め称えてっ……!」
「はいはい、よくできました」

 そう言って苦笑したベルトランが、ヒナリに肩をすくめてみせる。

「ごめんねヒナリ、マノンは本当に年下の男の子が大好きだから」
「ううん、気にしてないよ」

 マノンの全く飾らない自分を剥き出しにした態度には、好感が持てたのだった。


    ◇◇◆◇◇


 衝立の向こうから、四人の賢者の談笑が聞こえてくる。
 ヒナリはマノンやマノンの数名の付き人の手で、次々と着替えさせられていた。着付けられている間にも、付き人の女性たちがヒナリを輝く目で見つめて『こんなにスタイルが良い方は初めて見ました』だの『お肌が美しすぎます』だのと口々に褒め称えてくる。マノンに至っては、ぎょっとした顔でヒナリの全身を見渡したあと『腰、細っ……!』と呟いたりしていた。

 着替える度に賢者たちの前に立ち、くるりと一周回ってドレス姿を披露する。
 皆口々に『似合う』と言ってくれたものの、具体的に意見を言ってきたのはベルトランだけだった。デコルテの開き具合だとかスカートの広がり具合だとか、ヒナリが気にしていなかった部分についての意見を次から次へと挙げていく。


 また別の一着に着替えていると、鏡越しにマノンが微笑んだ。

「ヒナリ様。ベルトランを元気にしてくださってありがとうございます。あいつ、とんでもないハイスペ野郎なせいで女にモテすぎてストレスを抱え込んでたんで、ずっと心配してたんです」

 とんだ言い草だなと思うも、仲の良さが窺える気がした。

「私は何も……。私こそ、ベルトランに支えられてばかりで、早く恩返しをせねばとは思っているのですが」
「あら。でしたら……」

 耳元に近付いてきたマノンが、ひそひそ話をする。

「――!?」

 とんでもない助言をされて、ヒナリは一瞬にして顔が赤くなった。
 鏡の中でマノンがにやりとする。

「こうすれば、ベルトランはヒナリ様にメロメロになること請け合いですよ!」

 マノンのアドバイスは、儀式よりかはずっと軽い触れ合いだった。

(それ以上のことをとっくにしてるんだけどね……)

 と言えるはずもなく、質問をぶつけてみる。

「そういうことを、ベルトランにされたことがあるのですか?」
「いやいやまさか! でも長年の付き合いだから分かるんです、ベルトランが欲してることは」



 会話が一段落したところで、衝立の向こうからベルトランが声を掛けてきた。

「マノン? ヒナリに変なこと吹き込まないでね?」
「さ~て、どうでしょうねえ」

 と言って歯を見せて笑う。
 悪戯を仕掛けている最中の子供じみた笑顔に、ヒナリも釣られて微笑んだ。


 結局ドレスはヒナリ自身ではいまいち決めきれず、ベルトランとマノンとで相談してもらい『一番似合うのはこれ』と決定してもらったのだった。


    ◇◇◆◇◇


 ドレスを選び終えた日の夜。ヒナリはあるひとつの目的をもってベルトランの部屋を訪ねた。
 扉をノックすれば、すぐに『どうぞ』と返ってくる。
 ヒナリが部屋に入ると、ベルトランは書斎机でペンを走らせていた。
 普段と違って眼鏡を掛けていて、初めて見るその知的な雰囲気に胸がときめく。さらには時折顔に掛かる金髪を耳に掛けていて、その仕草の色っぽさにますます心臓が高鳴った。
 真剣な眼差しで書類に目を落としているベルトランの伏し目にすらドキドキしてしまい、胸を押さえつつ話し掛ける。

「何してるの?」
「今はワインの発注をまとめてるんだ」

 ベルトランが、ペンを走らせながら口元を微笑ませる。

「個人的な好みとしては、オークレール領産のワインがいいんだけど。発注先を片寄らせると、他のワインの産地から『聖女様にうちのワインをお飲みいただく機会を賢者が奪っている』と抗議されかねないから、なるべく均等に発注するようにしているんだ。それでも僕が許せる味に限定してはいるけれど」
「そういうのって、どなたか召し使いの方が担当するものではないの?」
「本来はね。少し仕事を分けてもらってるんだ。僕はアルトゥールやクレイグのような立派な職は持っていないからさ。何かしら皆の役に立ちたいっていう、単なる僕のわがまま」
「なるほど……」

(そんなことまで考えてるんだ。すごいな、ベルトランって)

 かつては遊び人だったと自称する賢者の真面目さに、ヒナリは尊敬の念を抱かずにはいられなかった。


 ソファーに座るように促されたヒナリは、腰を落ち着けるとまたベルトランに問い掛けた。

「お仕事が終わるまで、ここで待っててもいい?」
「もちろん。急いで片付けるよ」

 顔を上げずに即答したベルトランが、卓上の呼び鈴を鳴らす。
 しばらくすると、執事のライズボローが茶を持ってきた。
 ヒナリは香り豊かな紅茶を口にしつつ、ベルトランの仕事姿をこっそり眺め続けたのだった。



「……ふう」

 ペンをペン立てに差したベルトランが、息を吐き出しながら顔を上げる。

「お待たせ、ヒナリ」

 その言葉を聞くなりヒナリはソファーから立ち上がると、緊張感を抱きつつ書斎机に向けて歩き出した。
 眼鏡を外したベルトランが、それを眼鏡ケースにしまいつつ問い掛けてくる。

「ねえヒナリ。昼間、マノンになんて言われたの?」

 ヒナリはそれには答えなかった。ベルトランの、手元を見ている伏し目の色気に胸を高鳴らせつつ、書斎机を回り込む。
 目の前に立てば、顔を上げたベルトランがエメラルドグリーンの瞳で『どうしたの?』と問い掛けてくる。
 ヒナリは一度深呼吸して腹を括ると、ベルトランの頭をぎゅっと胸に抱き込んだ。

「!?」

 途端にベルトランがびくっと肩を跳ねさせる。
 その反応に嬉しくなりつつ、胸の谷間に顔を埋めさせて、柔らかな金髪をやんわりと撫でる。
 それを繰り返すうちに、ベルトランの耳が赤く染まっていった。

「……こうしろって言われたの?」
「うん」
「なるほど……。彼女は年下の男の子たちがこうすると喜ぶからって、ヒナリにアドバイスしたんだろうね」

 衣服越しに吐息が伝わってきて、その熱さにどきどきさせられる。

「ベルトランは、こうされるのは好きじゃない?」
「君にしてもらえることなら何だって嬉しいよ」

 そう言ってベルトランはヒナリの腰に手を回すと、自らヒナリの胸に顔を埋めて頬擦りしてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...