【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青

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1 どうにもならない現状

1 三人姉妹の中でハズレな存在

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 自分が三姉妹の中でハズレな存在だ、と気づいたのはいつだろうか?
 自分の存在が塵よりも軽いって気づいたのはいつ頃だろうか?

 確かに、年子で、一つ上の姉のアイリーンは幼い頃から、絵本に出てくるお姫様のようにキラキラして美しかった。母譲りの金髪青瞳で、はっきりした目鼻立ちをしていているが、少し垂れ目なのが、おっとりとした性格にあっていて、キツイ印象はない。

 貴族ならではのマナーなどの習得も早く、その所作の美しさも相まって、人を惹きつけた。母はもちろん、屋敷の使用人達もこぞって、姉を飾り立てもてはやした。

 妹が産まれるまでは、きっと年が近いから長子である姉に目線が行くのだろうという気持ちもどこかにあった。でも、自分より六歳下の妹が産まれた時にはっきりと自覚した。

 ああ、自分は美しくないから、愛されないのだ、と。
 自分は母にとって『完璧』から程遠い存在なのだ、と。

 妹のリリアンも産まれてすぐに将来美人になるとわかるくらい、可愛い赤ちゃんだった。姉と同じ金髪に、姉より少し薄い色をした青瞳、釣り目の瞳はぱっちりとしていて、長く伸びるまつ毛に囲まれている。待望の男の子ではなかったけど、久々の赤ちゃんに、姉とは違った可愛らしさを持つリリアンに、母も姉も屋敷の使用人達もみな夢中になり、甘やかした。

 姉のように、完璧にマナーが身に付いているわけでもない妹が無条件に愛されているのを見て、ぐるぐると暗い気持ちが渦巻く。
 
 私の髪や瞳の色がお父様譲りの黒色だからいけないの?
 そもそも、切れ長で、きつそうな目だからいけないの?
 髪の毛も姉のようにさらさらのストレートでもないし、妹のようにくるくるの巻髪でもない、中途半端に癖のある絡まりやすい髪質だからいけないの?
 好きでこの外見に生まれてきたわけではないのに…

 きっと母にとって、マルティナは、『自分の産んだ子どもの中でハズレで、恥ずかしい』存在に違いない。

 マルティナの家は、歴史の古い伯爵家だ。色々な家から茶会の招待があり、また、伯爵家でお茶会が開催されることもある。姉のアイリーンは、幼少の頃から、母に数々のお茶会に連れて行ってもらっていた。マルティナは、『マナーがなっていないから』と言われて、一度も他家のお茶会に行ったことはない。

 姉の優雅で完璧な所作に比べると劣るが、家庭教師からもお墨付きをもらっているし、学園に入学してからも、特に他の令嬢と比べて劣っているということはなかったにもかかわらず。

 さらに、伯爵家主催のお茶会やパーティーの日には、部屋から出ないように言明され、結局、学園入学まで茶会というものを体験せずに終わった。

 そう、マルティナが醜いから、いつもいつもドレスや装飾品――普段着のデイドレスまで、姉のお下がりなのも仕方がないのだ。

 領地もそれなりに繁栄しているし、父が仕事人間で、王宮の財務省に務めているため、お金に困っているわけではないと思う。それなのに、マルティナは自分用にドレスの一つも買ってもらったことがなかった。

 幸いなことに姉と身長はそれほど変わらないが、細かい部分までサイズが同じではない。細かい部分の調整は、はじめは侍女が行ってくれていたが、嫌々している事を態度に表し、面倒くさそうに行っているのにいたたまれなくなり、侍女に繕い方を教えてもらい、自分で直すようになった。

 サイズをなんとか自分用に直しても、姉に似合う色は、マルティナには、まったく似合っていなかった。姉に似合う、桃色や水色などの可愛い色味は、自分が着ると、完全にドレスに負けていて、似合っていないことは自分が一番わかっている。だから、茶会に出席する機会がなくてよかったのだと思う。

 それでも、誕生日のお祝いがないのが、一番堪えたかもしれない。

 マルティナの誕生日が姉の二日後だから仕方がないのかもしれない。
 妹の誕生日は姉の一ヶ月後で、姉と妹に誕生日が挟まれているから仕方がないのかもしれない。

 毎年、姉の誕生日は華やかに招待客を呼んで、盛大なパーティーが行われた。妹の誕生日も姉ほどではないが、幼い頃は招待客を呼んで、盛大に行われた。妹のマナーに心配があるからと、最近は家族だけでだが、きちんとお父様も帰ってきて特別なメニューでお祝いしている。

 姉の誕生日パーティーでは、さすがに、マルティナが欠席するわけにもいかずに、華やかな家族に並ばないといけない日だ。

 お父様は黒髪黒瞳で、目鼻立ちのはっきりした美しい容姿をしており、お母様は、金髪青瞳で、クールな印象の美女だ。おっとりとして華やかで美しい姉と愛嬌があり可愛らしい天使のような妹の間に挟まれているマルティナを招待客は不思議そうな顔で見ている。いつも頃合いを見て、会場の隅に行き、息を殺すようにして、地獄のようなパーティーが終わるのを待っていた。

 そして、姉の誕生日パーティーが終わると、マルティナの誕生日はもともと存在しなかったかのように、過ぎ去っていく。

 そう、マルティナが生まれたことはなかったのと同じ。いてもいなくても同じ。それがマルティナという存在なのだ。
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