2 / 40
1 どうにもならない現状
1 三人姉妹の中でハズレな存在
しおりを挟む
自分が三姉妹の中でハズレな存在だ、と気づいたのはいつだろうか?
自分の存在が塵よりも軽いって気づいたのはいつ頃だろうか?
確かに、年子で、一つ上の姉のアイリーンは幼い頃から、絵本に出てくるお姫様のようにキラキラして美しかった。母譲りの金髪青瞳で、はっきりした目鼻立ちをしていているが、少し垂れ目なのが、おっとりとした性格にあっていて、キツイ印象はない。
貴族ならではのマナーなどの習得も早く、その所作の美しさも相まって、人を惹きつけた。母はもちろん、屋敷の使用人達もこぞって、姉を飾り立てもてはやした。
妹が産まれるまでは、きっと年が近いから長子である姉に目線が行くのだろうという気持ちもどこかにあった。でも、自分より六歳下の妹が産まれた時にはっきりと自覚した。
ああ、自分は美しくないから、愛されないのだ、と。
自分は母にとって『完璧』から程遠い存在なのだ、と。
妹のリリアンも産まれてすぐに将来美人になるとわかるくらい、可愛い赤ちゃんだった。姉と同じ金髪に、姉より少し薄い色をした青瞳、釣り目の瞳はぱっちりとしていて、長く伸びるまつ毛に囲まれている。待望の男の子ではなかったけど、久々の赤ちゃんに、姉とは違った可愛らしさを持つリリアンに、母も姉も屋敷の使用人達もみな夢中になり、甘やかした。
姉のように、完璧にマナーが身に付いているわけでもない妹が無条件に愛されているのを見て、ぐるぐると暗い気持ちが渦巻く。
私の髪や瞳の色がお父様譲りの黒色だからいけないの?
そもそも、切れ長で、きつそうな目だからいけないの?
髪の毛も姉のようにさらさらのストレートでもないし、妹のようにくるくるの巻髪でもない、中途半端に癖のある絡まりやすい髪質だからいけないの?
好きでこの外見に生まれてきたわけではないのに…
きっと母にとって、マルティナは、『自分の産んだ子どもの中でハズレで、恥ずかしい』存在に違いない。
マルティナの家は、歴史の古い伯爵家だ。色々な家から茶会の招待があり、また、伯爵家でお茶会が開催されることもある。姉のアイリーンは、幼少の頃から、母に数々のお茶会に連れて行ってもらっていた。マルティナは、『マナーがなっていないから』と言われて、一度も他家のお茶会に行ったことはない。
姉の優雅で完璧な所作に比べると劣るが、家庭教師からもお墨付きをもらっているし、学園に入学してからも、特に他の令嬢と比べて劣っているということはなかったにもかかわらず。
さらに、伯爵家主催のお茶会やパーティーの日には、部屋から出ないように言明され、結局、学園入学まで茶会というものを体験せずに終わった。
そう、マルティナが醜いから、いつもいつもドレスや装飾品――普段着のデイドレスまで、姉のお下がりなのも仕方がないのだ。
領地もそれなりに繁栄しているし、父が仕事人間で、王宮の財務省に務めているため、お金に困っているわけではないと思う。それなのに、マルティナは自分用にドレスの一つも買ってもらったことがなかった。
幸いなことに姉と身長はそれほど変わらないが、細かい部分までサイズが同じではない。細かい部分の調整は、はじめは侍女が行ってくれていたが、嫌々している事を態度に表し、面倒くさそうに行っているのにいたたまれなくなり、侍女に繕い方を教えてもらい、自分で直すようになった。
サイズをなんとか自分用に直しても、姉に似合う色は、マルティナには、まったく似合っていなかった。姉に似合う、桃色や水色などの可愛い色味は、自分が着ると、完全にドレスに負けていて、似合っていないことは自分が一番わかっている。だから、茶会に出席する機会がなくてよかったのだと思う。
それでも、誕生日のお祝いがないのが、一番堪えたかもしれない。
マルティナの誕生日が姉の二日後だから仕方がないのかもしれない。
妹の誕生日は姉の一ヶ月後で、姉と妹に誕生日が挟まれているから仕方がないのかもしれない。
毎年、姉の誕生日は華やかに招待客を呼んで、盛大なパーティーが行われた。妹の誕生日も姉ほどではないが、幼い頃は招待客を呼んで、盛大に行われた。妹のマナーに心配があるからと、最近は家族だけでだが、きちんとお父様も帰ってきて特別なメニューでお祝いしている。
姉の誕生日パーティーでは、さすがに、マルティナが欠席するわけにもいかずに、華やかな家族に並ばないといけない日だ。
お父様は黒髪黒瞳で、目鼻立ちのはっきりした美しい容姿をしており、お母様は、金髪青瞳で、クールな印象の美女だ。おっとりとして華やかで美しい姉と愛嬌があり可愛らしい天使のような妹の間に挟まれているマルティナを招待客は不思議そうな顔で見ている。いつも頃合いを見て、会場の隅に行き、息を殺すようにして、地獄のようなパーティーが終わるのを待っていた。
そして、姉の誕生日パーティーが終わると、マルティナの誕生日はもともと存在しなかったかのように、過ぎ去っていく。
そう、マルティナが生まれたことはなかったのと同じ。いてもいなくても同じ。それがマルティナという存在なのだ。
自分の存在が塵よりも軽いって気づいたのはいつ頃だろうか?
確かに、年子で、一つ上の姉のアイリーンは幼い頃から、絵本に出てくるお姫様のようにキラキラして美しかった。母譲りの金髪青瞳で、はっきりした目鼻立ちをしていているが、少し垂れ目なのが、おっとりとした性格にあっていて、キツイ印象はない。
貴族ならではのマナーなどの習得も早く、その所作の美しさも相まって、人を惹きつけた。母はもちろん、屋敷の使用人達もこぞって、姉を飾り立てもてはやした。
妹が産まれるまでは、きっと年が近いから長子である姉に目線が行くのだろうという気持ちもどこかにあった。でも、自分より六歳下の妹が産まれた時にはっきりと自覚した。
ああ、自分は美しくないから、愛されないのだ、と。
自分は母にとって『完璧』から程遠い存在なのだ、と。
妹のリリアンも産まれてすぐに将来美人になるとわかるくらい、可愛い赤ちゃんだった。姉と同じ金髪に、姉より少し薄い色をした青瞳、釣り目の瞳はぱっちりとしていて、長く伸びるまつ毛に囲まれている。待望の男の子ではなかったけど、久々の赤ちゃんに、姉とは違った可愛らしさを持つリリアンに、母も姉も屋敷の使用人達もみな夢中になり、甘やかした。
姉のように、完璧にマナーが身に付いているわけでもない妹が無条件に愛されているのを見て、ぐるぐると暗い気持ちが渦巻く。
私の髪や瞳の色がお父様譲りの黒色だからいけないの?
そもそも、切れ長で、きつそうな目だからいけないの?
髪の毛も姉のようにさらさらのストレートでもないし、妹のようにくるくるの巻髪でもない、中途半端に癖のある絡まりやすい髪質だからいけないの?
好きでこの外見に生まれてきたわけではないのに…
きっと母にとって、マルティナは、『自分の産んだ子どもの中でハズレで、恥ずかしい』存在に違いない。
マルティナの家は、歴史の古い伯爵家だ。色々な家から茶会の招待があり、また、伯爵家でお茶会が開催されることもある。姉のアイリーンは、幼少の頃から、母に数々のお茶会に連れて行ってもらっていた。マルティナは、『マナーがなっていないから』と言われて、一度も他家のお茶会に行ったことはない。
姉の優雅で完璧な所作に比べると劣るが、家庭教師からもお墨付きをもらっているし、学園に入学してからも、特に他の令嬢と比べて劣っているということはなかったにもかかわらず。
さらに、伯爵家主催のお茶会やパーティーの日には、部屋から出ないように言明され、結局、学園入学まで茶会というものを体験せずに終わった。
そう、マルティナが醜いから、いつもいつもドレスや装飾品――普段着のデイドレスまで、姉のお下がりなのも仕方がないのだ。
領地もそれなりに繁栄しているし、父が仕事人間で、王宮の財務省に務めているため、お金に困っているわけではないと思う。それなのに、マルティナは自分用にドレスの一つも買ってもらったことがなかった。
幸いなことに姉と身長はそれほど変わらないが、細かい部分までサイズが同じではない。細かい部分の調整は、はじめは侍女が行ってくれていたが、嫌々している事を態度に表し、面倒くさそうに行っているのにいたたまれなくなり、侍女に繕い方を教えてもらい、自分で直すようになった。
サイズをなんとか自分用に直しても、姉に似合う色は、マルティナには、まったく似合っていなかった。姉に似合う、桃色や水色などの可愛い色味は、自分が着ると、完全にドレスに負けていて、似合っていないことは自分が一番わかっている。だから、茶会に出席する機会がなくてよかったのだと思う。
それでも、誕生日のお祝いがないのが、一番堪えたかもしれない。
マルティナの誕生日が姉の二日後だから仕方がないのかもしれない。
妹の誕生日は姉の一ヶ月後で、姉と妹に誕生日が挟まれているから仕方がないのかもしれない。
毎年、姉の誕生日は華やかに招待客を呼んで、盛大なパーティーが行われた。妹の誕生日も姉ほどではないが、幼い頃は招待客を呼んで、盛大に行われた。妹のマナーに心配があるからと、最近は家族だけでだが、きちんとお父様も帰ってきて特別なメニューでお祝いしている。
姉の誕生日パーティーでは、さすがに、マルティナが欠席するわけにもいかずに、華やかな家族に並ばないといけない日だ。
お父様は黒髪黒瞳で、目鼻立ちのはっきりした美しい容姿をしており、お母様は、金髪青瞳で、クールな印象の美女だ。おっとりとして華やかで美しい姉と愛嬌があり可愛らしい天使のような妹の間に挟まれているマルティナを招待客は不思議そうな顔で見ている。いつも頃合いを見て、会場の隅に行き、息を殺すようにして、地獄のようなパーティーが終わるのを待っていた。
そして、姉の誕生日パーティーが終わると、マルティナの誕生日はもともと存在しなかったかのように、過ぎ去っていく。
そう、マルティナが生まれたことはなかったのと同じ。いてもいなくても同じ。それがマルティナという存在なのだ。
561
あなたにおすすめの小説
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる