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始まりの章
第3話 衝撃
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第3話 衝撃
「今…なんて…?」
俺は耳を疑った。言われた時の衝撃が凄かったのだ
間髪入れずに会長の父親が口を開く
「もう一度言うよ閃光くん。WDMCに出たくはないかい?」
聞き間違いなんかじゃなかった。はっきりと俺にWDMC参加の勧誘を社長直々にしてきたのだ
「マジかよ…一体どうして…」
「だっ…ダメだ!!」
俺が戸惑っていると、隣に座っていた親父が口を開いた
「親父…?」
「えっと…ちっ父親として、まだ高校生のお前を格闘技の世界へ行かせるなんて危なくて承諾出来ないよ」
親父の様子がどこかおかしい。煮え切らないというか、いつもの落ち着いた穏やかな雰囲気が感じられないのだ
「先輩。もう限界が来てるんじゃないですか?」
「限界…?」
「やめてくれよきみ君。限界とかなんとか…何言ってるのかよく分からないなぁ」
俺には分かる。親父は嘘がつけない人間なのだ。誤魔化すのも下手だ。絶対なにか隠している
「親父。俺になにか隠してるのか?だとしたら言ってくれ。親子で隠し事だけは絶対にあっちゃダメだ。今後生活していく上でも、俺には知る権利があるはずだ」
「閃光…」
「先輩。言ってあげてください。私も閃光くんを誘ったのはちゃんと理由があってのことなので」
社長が親父にそう諭すと、親父は1回ため息をつき口を開いた
「すまない閃光…僕は…記憶喪失なんかじゃないんだ」
またも衝撃の事実である。本当に親父が記憶喪失ではなかったことに安心すべきなのか驚くべきなのか、もうリアクションが分からない
「まさか、格闘家だった頃の記憶も全部覚えてるのか…?」
「近々話そうとは思っていた。だが考えれば考えるほどお前には言い出せなかった。だからこのまま何も知らない方がいいと思って…」
「親父…」
話を聞くと、どうやら親父はあの負けた試合の前に格闘家を引退する予定だったようだ。当時の社長にもその話をつけており、次の試合を引退試合とする予定だった。しかし運悪くその試合の相手は姑息な手で親父を攻め立て、最後に相手のハイキックが親父のこめかみに直撃し、親父はそのまま病院に運ばれた
「引退試合が良くない終わり方だった。これが一生僕のファンや僕自身の重荷となる。ならばいっその事格闘家としての人生を無くして、僕は普通の人間として過ごすよ」
そう言い残した親父は、記憶喪失として選手を引退したのだ
「そんな経緯が…」
「私は1週間前に君の父上、天先輩と偶然再会してね。その時選手復帰の話を持ちかけたんだ。でも先輩は首を縦に振らなかった。あの時のトラウマがまだ蘇るみたいでね。それに君の夢がWDMCの選手とくれば尚更のこと。本当は辞めさせたかったが、君の憧れが自分だと知るとなんとも言えない気持ちになったみたいなんだ」
「親父…」
「すまない閃光…僕はダメな父親だ…お前の中の理想を守る事ばかり考えて…」
「顔をあげてくれよ親父。そもそも俺は怒っちゃいないし、親父の気持ちも十分に理解はしてるからさ。親父が無事だったならそれで良いんだ。それに俺の憧れは何があっても親父1人だよ」
「ありがとう…閃光…」
初めて見る親父の涙。俺は初めて、親父の弱さを知った気がした
「すまないねきみ君」
「いえ、落ち着いたなら何よりです」
「そういえば、社長はどうして親父の事を先輩って呼んでるんですか?」
ずっと気になっていた。2人は知り合いとはいえ、年齢的にはそう離れていない感じもする
「ああそれはね。僕ときみ君は昔同じ高校で同じキックボクシング部の先輩後輩だったんだよ」
「ああ…なるほど…はは…」
もうリアクションするのも疲れてきた。ここに来て驚くことばかり続いている。これがホラー映画であれば名作間違いなしだろう。それくらい驚くことばかりなのだ
「話を元に戻しましょう。事は一刻を争うかもしれないのです」
社長が口を開いた。相当急ぎのようだ
「それで、閃光をWDMCに参加させるとのことだったよね。なぜいきなり」
「先輩。まずはこれを見てください。閃光くんも」
社長はそういうと、部屋を暗くしモニターで映像を出した。社長ともなるとこれくらいは普通なのだろうか、もうリアクションする元気は俺にはない
そう考えていると、モニターに映像が映し出された
「これは…WDMCの試合だね」
「これ確か…2年前の神ー1グランプリ第3試合だぜ」
WDMCは年に1回、冬に神ー1グランプリというランキングTOP10入りした選手が集まり、その年のナンバー1を決める試合をやるのだ
この試合はよく覚えている。出場したアメリカ代表「マイケル・ブラード」という選手が対戦相手をフルボッコにし病院送りにした。その後の会見で「相手が弱すぎるのが悪い」と発言した事でSNSでも炎上し、対戦相手はその後格闘家を引退したのだ
「この試合がどうかしたの?」
「この人を見てください。見覚えありませんか?」
会見の映像でブラードの隣に座っている男を社長が指さすと親父がなにかに気づいた
「こいつは…エミル・フォックス…!!」
「エミル・フォックスって…親父を病院送りにした…」
「そうです。当時姑息な戦い方でダーティーフォックスと呼ばれ、先輩の引退試合をめちゃくちゃにしたエミル・フォックスです」
「しかし、なぜ今更この映像を?」
「問題はこの後のエミルの一言です」
社長は字幕をオンにする
記者がエミルに質問した
「マスターエミルは昔WDMCの出場選手でしたよね。弟子であるブラード選手に気持ちの面などで教えている事はありますか?」
その答えはとても元選手とは思えない発言だった
「教えている事?そうですね。相手の心も体も粉々に壊してこい。私は彼に試合前にそう声掛けしているんですよ。私自身が現役時代に大切にしていた事です。引退試合であろうと、記念すべきイベントだろうと関係ない。相手を殺すことが出来ないのならば、リングの上で相手を壊してしまえばいい。そうすれば自分に逆らおうとする愚か者は居なくなりますからな」
その言葉を聞いた時、俺の中で何かが目覚めた
そして俺は社長と親父に伝えた
「俺、WDMCに出ます」
「今…なんて…?」
俺は耳を疑った。言われた時の衝撃が凄かったのだ
間髪入れずに会長の父親が口を開く
「もう一度言うよ閃光くん。WDMCに出たくはないかい?」
聞き間違いなんかじゃなかった。はっきりと俺にWDMC参加の勧誘を社長直々にしてきたのだ
「マジかよ…一体どうして…」
「だっ…ダメだ!!」
俺が戸惑っていると、隣に座っていた親父が口を開いた
「親父…?」
「えっと…ちっ父親として、まだ高校生のお前を格闘技の世界へ行かせるなんて危なくて承諾出来ないよ」
親父の様子がどこかおかしい。煮え切らないというか、いつもの落ち着いた穏やかな雰囲気が感じられないのだ
「先輩。もう限界が来てるんじゃないですか?」
「限界…?」
「やめてくれよきみ君。限界とかなんとか…何言ってるのかよく分からないなぁ」
俺には分かる。親父は嘘がつけない人間なのだ。誤魔化すのも下手だ。絶対なにか隠している
「親父。俺になにか隠してるのか?だとしたら言ってくれ。親子で隠し事だけは絶対にあっちゃダメだ。今後生活していく上でも、俺には知る権利があるはずだ」
「閃光…」
「先輩。言ってあげてください。私も閃光くんを誘ったのはちゃんと理由があってのことなので」
社長が親父にそう諭すと、親父は1回ため息をつき口を開いた
「すまない閃光…僕は…記憶喪失なんかじゃないんだ」
またも衝撃の事実である。本当に親父が記憶喪失ではなかったことに安心すべきなのか驚くべきなのか、もうリアクションが分からない
「まさか、格闘家だった頃の記憶も全部覚えてるのか…?」
「近々話そうとは思っていた。だが考えれば考えるほどお前には言い出せなかった。だからこのまま何も知らない方がいいと思って…」
「親父…」
話を聞くと、どうやら親父はあの負けた試合の前に格闘家を引退する予定だったようだ。当時の社長にもその話をつけており、次の試合を引退試合とする予定だった。しかし運悪くその試合の相手は姑息な手で親父を攻め立て、最後に相手のハイキックが親父のこめかみに直撃し、親父はそのまま病院に運ばれた
「引退試合が良くない終わり方だった。これが一生僕のファンや僕自身の重荷となる。ならばいっその事格闘家としての人生を無くして、僕は普通の人間として過ごすよ」
そう言い残した親父は、記憶喪失として選手を引退したのだ
「そんな経緯が…」
「私は1週間前に君の父上、天先輩と偶然再会してね。その時選手復帰の話を持ちかけたんだ。でも先輩は首を縦に振らなかった。あの時のトラウマがまだ蘇るみたいでね。それに君の夢がWDMCの選手とくれば尚更のこと。本当は辞めさせたかったが、君の憧れが自分だと知るとなんとも言えない気持ちになったみたいなんだ」
「親父…」
「すまない閃光…僕はダメな父親だ…お前の中の理想を守る事ばかり考えて…」
「顔をあげてくれよ親父。そもそも俺は怒っちゃいないし、親父の気持ちも十分に理解はしてるからさ。親父が無事だったならそれで良いんだ。それに俺の憧れは何があっても親父1人だよ」
「ありがとう…閃光…」
初めて見る親父の涙。俺は初めて、親父の弱さを知った気がした
「すまないねきみ君」
「いえ、落ち着いたなら何よりです」
「そういえば、社長はどうして親父の事を先輩って呼んでるんですか?」
ずっと気になっていた。2人は知り合いとはいえ、年齢的にはそう離れていない感じもする
「ああそれはね。僕ときみ君は昔同じ高校で同じキックボクシング部の先輩後輩だったんだよ」
「ああ…なるほど…はは…」
もうリアクションするのも疲れてきた。ここに来て驚くことばかり続いている。これがホラー映画であれば名作間違いなしだろう。それくらい驚くことばかりなのだ
「話を元に戻しましょう。事は一刻を争うかもしれないのです」
社長が口を開いた。相当急ぎのようだ
「それで、閃光をWDMCに参加させるとのことだったよね。なぜいきなり」
「先輩。まずはこれを見てください。閃光くんも」
社長はそういうと、部屋を暗くしモニターで映像を出した。社長ともなるとこれくらいは普通なのだろうか、もうリアクションする元気は俺にはない
そう考えていると、モニターに映像が映し出された
「これは…WDMCの試合だね」
「これ確か…2年前の神ー1グランプリ第3試合だぜ」
WDMCは年に1回、冬に神ー1グランプリというランキングTOP10入りした選手が集まり、その年のナンバー1を決める試合をやるのだ
この試合はよく覚えている。出場したアメリカ代表「マイケル・ブラード」という選手が対戦相手をフルボッコにし病院送りにした。その後の会見で「相手が弱すぎるのが悪い」と発言した事でSNSでも炎上し、対戦相手はその後格闘家を引退したのだ
「この試合がどうかしたの?」
「この人を見てください。見覚えありませんか?」
会見の映像でブラードの隣に座っている男を社長が指さすと親父がなにかに気づいた
「こいつは…エミル・フォックス…!!」
「エミル・フォックスって…親父を病院送りにした…」
「そうです。当時姑息な戦い方でダーティーフォックスと呼ばれ、先輩の引退試合をめちゃくちゃにしたエミル・フォックスです」
「しかし、なぜ今更この映像を?」
「問題はこの後のエミルの一言です」
社長は字幕をオンにする
記者がエミルに質問した
「マスターエミルは昔WDMCの出場選手でしたよね。弟子であるブラード選手に気持ちの面などで教えている事はありますか?」
その答えはとても元選手とは思えない発言だった
「教えている事?そうですね。相手の心も体も粉々に壊してこい。私は彼に試合前にそう声掛けしているんですよ。私自身が現役時代に大切にしていた事です。引退試合であろうと、記念すべきイベントだろうと関係ない。相手を殺すことが出来ないのならば、リングの上で相手を壊してしまえばいい。そうすれば自分に逆らおうとする愚か者は居なくなりますからな」
その言葉を聞いた時、俺の中で何かが目覚めた
そして俺は社長と親父に伝えた
「俺、WDMCに出ます」
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