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第三章 はた迷惑な歓迎舞踏会
願い事は慎重に
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1.歓迎パーティー
2日目、定刻通りに天堂と仁志は軍部に出勤した。高志は相変わらずの淑女教育だ。フェンリルに進化したエイジは、仁志の番犬として軍部へ威圧感を与えるため、大きさは三分の一程度まで身を縮めたが、フェンリルとして同行した。
大きさはともかく、最強の魔物の一角であるフェンリルが仁志の傍らで威嚇していることに、軍部の者たちは度肝を抜かれた。一番腰を抜かしたのは、ソードブレイン臨時軍団長配下の第108軍団の者たちだが。
軍団長執務室は1つ、副軍団長の執務室は共同である。仁志の足元で丸くなっているフェンリルに、アーデル副軍団長とファンパライト副軍団長は警戒しながら仕事をしていた。
仕事と言っても、本来の軍団長が妊活休暇、3人目の副軍団長が抜けたことで、第108軍団は待機状態。上層部は書類の整理と、軍団の鍛錬を配下の団長に命じるぐらいしか仕事が無かった。
いきなり軍団長執務室との続き部屋の扉が開いた。あ、嫌な笑顔だなと臨時軍団長の顔を見て、仁志は顔をしかめた。
「歓迎パーティーだってさ。面倒だけど、こうした舞踏会って、天使時代の私は警備担当が主だったから、歓待される側ってワクワクするね!」
天堂ことソードブレイン臨時軍団長は、声を弾ませた。天使時代って、いまだって天使じゃないか。あえての違いは天使軍を一時休止して、臨時で天上界守護総軍に変わったたけだ。
「それ、欠席したらーー」
「駄目に決まってるでしょ!あんた、主役の一人でしょうが!」
アンデル副軍団長は鬼のような顔で、目を血ばらせて仁志に怒鳴りつける。まあ、そこには当人の思惑も潜んでいたわけで。
「軍集団のみの舞踏会ではあるけど、騎士爵以上は、家族同伴で参加するのが決まりだから。あ、成人した子供以上ってことで、未成年は不可。今回の舞踏会で、社交界デビューする若者も多いかもね」
ファンパライト副軍団長は顎に手を当てる。伴侶候補のターゲットが増えるのは良いことだ。軍閥貴族名簿の再確認が必要かもしれない。
「でも同伴者必須と書かれてあるんですが。僕、フェンリルのエイジ同伴参加で許可されますかね?」
「駄目に決まってるでしょ!ちゃんとダンスが踊れる相手を同伴しないと。噂じゃ、絶世の美女を囲っているそうじゃない。同伴者には困らないでしょ?」
アーデル副軍団長は指摘する。
「いや、あいつ……否、彼女は複雑な事情から僕が預かっている状態で、そもそも僕はダンスが踊れません。なにより彼女は母国に王族の婚約者もいるので、事情がどうであれ、無闇に公衆の前に出して、彼女の母国と波風立てたくないのが本音でして」
仁志は顔を青ざめさせて言う。高志を女性同伴者として連れて行ったら、高志に群がる男たちを追い払うのに苦労するのは目に見えている。いらぬ苦労はしたくない。そして高志には、高圧的に激怒されのも必然だ。
「事情は分からないけど、その婚約者持ちの女性を同伴させるわけにはいかないのね。なら早急に、同伴者を探さないと。私も同伴者ひっ捕まえて、今度こそ伴侶になりそうな恋人ゲットするわよ!」
アーデル副軍団長は闘志を燃やしていた。
聞けば舞踏会などの貴族の催しに家族同伴なのは、来たるべき澱の蓄積による子作りのため、伴侶探しは早目にしておくのが暗黙の了解なのだそうだ。伴侶を見つける期限は魔力量と魔術を使う頻度にもよるが、5000年から一万年で、仮に出会わなかった場合は澱が溜まりきって暴走する危険性があるらしい。今回は第6軍集団だけの小規模なものだが、年に2度の総軍全体で、騎士爵持ち以上の舞踏会、晩餐会は皆が血眼になって伴侶探しに奔走するらしい。
「高志のことがなければ、伴侶探しなんて面倒なことせずに済んだのに」
改めて、余計なことをしてくれた神様を恨みたくなった。中州の魔術師になっていれば、澱が溜まる心配がなく、独身でも呑気に中州で生きられたのだとか。
「2年間の高志殿結婚までの猶予を過ぎたら、除隊して中州の魔術師になることも可能ですよ。それまで頑張ってください」
にこやかに言う天堂だが、天使のくせにコイツは仁志のためなら平気で嘘はつくし、騙したりもするから、安心できない。
「高志問題が片付いたら、また別の厄介事が舞い込みそうな気がするな。まさかおまえ、僕が中州の魔術師になっても、金魚のフンみたいに、ついてくるつもりじゃないだろうな?」
「そうしたいのは山々ですが、これでも天使軍で役職持ちなので、残念ながら中州の仁志様宅の縁台で、ノホホンと茶を飲みながら過ごすことは出来ません。それに中州全体に広がる、薄まっているとはいえライトカオスの光は、中級天使ごときでは耐えられませんから」
天堂は残念そうに言う。どうやらこれは、嘘偽りなく本当のようだ。仁志は中州のことを大まかに学んでいたので、ライトカオスの海と天上界の防波堤となっている中州24世界が、猛毒に等しい光に満ちているため、通常の者はどれだけの能力持ちの貴族でも、滞在時間が1ヶ月が限界だという。
仁志の場合はもともと上級天使の魂を持っているため、中州で暮らす資質はあるそうだ。もっとも最初のうちは光の毒にやられて具合が悪くなり、重いときには寝込むこともあるそうだが。
「そういうものなのか」
「ええ。ですから、高志君問題が終わったら、このまま私の相棒として天使軍へーー」
「行くわけないだろ。それにしても同伴者か。誰でもいい、というわけではないんだろ?」
「いえ、同伴者の身分は問われませんので、成人していたら大丈夫ですよ。屋敷の者の誰かか、高志君の侍女の一人を借りてくるのも手段の1つですね」
「なるほど。同伴者問題のハードルは、意外と簡単なんだな。良かった。知り合いの女性なんて、この世界でまだいいないもんな」
仁志が、高志(アストリッド)の侍女の誰に頼むのか無難か思案していると、アーデル副軍団長とファンパライト副軍団長が乱暴に席を立ち、仁志に駆け寄ってきた。
「ならパートナーは私に!」
「いえ、私よ!あんたは可愛い見た目しているから相手もすぐ見つかるでしょうけれど、男性騎士並みに背の高い私がパートナー見つけるのは大変なのよ!」
確かにファンパライト副軍団長は普通の女性軍人より高身長だ。辛うじて仁志の方が背が高いが、ヒールを履かれたら軽く背を越えられてしまう。
「いや、僕はダンスなんて踊れないから、もっとマシな男性にーー」
「マシな男なんて、真っ先に女性軍人にとっ捕まっているわよ!この話、前向きな未定ってことはありませんよね?」
ファンパライト副軍団長が、天堂ことソードブレイン臨時軍団長に尋ねると、「具体的な日時は決まってないけど、近々開催することは決定しているよ。新幹部歓待舞踏会、女性のドレスや装飾品準備期間も考慮して、まもなく正式発表されるんじゃないかな?」と答えた。ファンパライト副軍団長の予想通り、既に仲間の女性軍人は、まだ正式発表前にも関わらず、第6軍集団の独身長身で性格良しの、ダンスと会話の上手い男を確保していた。既婚者は伴侶と出席する規則なので除外。生憎と、残り物に福はない。それでも出席強制が決まっている幹部連中は、どこかしら問題を抱えた相手をパートナーにしなくてはならない。
ダンスが下手でも、天界人なりたての初心な元人間福軍団長のが、はるかにマシということだ。
「そう、ならやるしかないわね」
「ええ。何で対戦する?」
「もちろん、こういう場面は剣でしょう。正々堂々、魔力無しの実力勝負よ!」
「分かった。じゃ、早速、勝負しましょ。ブライト軍団長、仮に他人から誘われても、お断りしてくださいね。私たちのどちらかと、同伴していただきますから!」
「天堂……いや、臨時軍団長は誘わないの?」
仁志が言うと、2人の女性副軍団長の瞳がギラリと光る。しかし天堂は首を横に振った。
「仁志様が、このお二人のどちらかのエスコートをするなら、私は恐らくアストリッド様と組まなくてはならないでしょう。そろそろあの方も、社交界に慣らしておかないと、困るのはアストリッド様ですし、婚約者の居られる方ですから、天使の私が適任かと」
「アストリッド様って、確かブライト副軍団長が人間だった頃の双子の御兄弟でしたよね。男性に戻りがっているという」
アーデル副軍団長は首をかしげる。
「あれ、その話って僕は皆にしたことあったっけ?」
「昨日の対決で、ブライト副軍団長のことは瞬く間に広まりました。本来、中州の魔術師を希望なさるほど平和主義者で、他者に干渉するのも面倒くさがるブライト副軍団長が、どうして嫌々ながら軍人となったのか。少なくとも108軍団内では全員が知ってますよ」
「あー」
仁志は天を仰いだ。これがバレたら、また高志からキーキー声で怒鳴られそうだ。
「ともかく、ブライト副軍団長のパートナーを賭けて勝負よ!」
「望むところよ!」
そしてアーデル副軍団長と、ファンパライト副軍団長は、鍛錬場へ行く。「え?ここはじゃんけんで決めるんじゃないの?」と仁志は慌てるが、第6軍集団でも血の気の多い2人の副軍団長は、何かにつけて決闘でカタをつけたがるらしい。
副軍団長2人の対決の話は瞬く間に広がって、鍛錬場の観客席にやじ馬が殺到した。
「僕、血の気の多い女人とは相性悪いと思うんだけど」
貴賓席に天童とフェンリルのエイジに挟まれて座る仁志は嘆く。仁志は人間時代から実物女性には興味はなかったが、ゲーム世界での女の子に、お気入りは何人かいた。いずれも愛らしい見た目と性格をした、ちょっとドジっ子だけど、いかにも女の子といった感じの2次元少女だ。従って、いま決闘している副軍団長たちや、正統派美人の高志など論外。高志に至っては、近寄られるだけでも、最近は総毛立つほど苦手としている。
「パートナーになったとしても、必ず恋人に発展するわけではありませんから。正直、仁志様はゲームの世界の仮想少女ばかりでなく、もう少し本物の女性に興味を示された方がよろしいかと思います」
天堂は、指摘する。人間界に馴染むまいと徹底しすぎて、それが性格として固定されてしまったことに懸念を覚えずにはいられなかった。
「仮に普通の女性とお付き合いするきしても、軍関係者は論外。もっと普通の、例えばパン屋やカフェの看板娘みたいな子がいい」
「本当にゲームに毒されていますよね。確かに日本のゲームクオリティーは、現実を凌駕するほどよく出来ていますから」
天堂はため息をつく。確かにいまの状況で、恋愛対象を探せと言っても、適任者はいない。しかし天堂は、仁志の今後を考えると、恋人はいずれ必要になると考えていた。少なくとも自分が天使世界へ戻る前に。でないと、本当に中州世界の縁側で、犬のエイジと日なったボッコで満足する長い余生を送りかねない。
鍛錬場では、剣術による決闘が始まった。どちらも魔術は今回使用しないらしい。
仁志は、2人の副軍団長の剣さばきに見惚れた。軍人となって活躍するため、渋々武術全般の基礎を学んできた仁志は、人間だった頃に『武は舞に通じる』という言葉を思い出した。激しく火花を散らしながらも、まるで2人で舞を踊っているかのような美しさだ。身長差のある2人だが、小柄なアーデル副軍団長はジャンプ力と瞬時さで翻弄する。ファンパライト副軍団長は、剣の扱いの美しさが際立った。ちなみにこの決闘、刃をつぶした剣を使っているが、一歩間違えばケガをしかねない。それだけ2人の決闘は本気だったということもある。最後はアーデル副軍団長の背後に回り込んだファンパライト副軍団長が、相手の首に剣の鞘の先端を叩き込んで倒した。
華麗なる決闘に、皆が称賛の拍手を送る。
「まさかクララに背後を取られるとはな。私も油断した」
アーデル副軍団長は、ファンパライト副軍団長に手を掴まれて立ち上がった。
「いや、マーキヌの俊足についていくのは大変だった。私が勝てたのは、たぶん昨日の聖水のせいだと思う。当初はダルかったが、一番寝て起きたら、驚くほど体が軽くなっていたからな」
「へえ、さすが元上級天使の魂の持ち主。まさか、あんな強力な聖水を作り出すとはね。おかげで競技場はいま、聖水が取り除かれても眩く光って暫く使えない状態だ」
2人の副軍団長は、さっきまでの決闘とはうって変わって穏やかに話している。まあ、これで仁志の舞踏会パートナーは、ファンパライト副軍団長に決まったというわけだ。
軍務が終わって屋敷に戻ると、ラナンキュラス侯爵家から派遣された侍女たちがバタバタしていた。第6軍集団主催の舞踏会の招待状が届き、そろそろ社交界デビューを視野に入れていた侍女頭が参加を決めたらしい。
(なるほど、公式発表とは招待状の到着によるものか)
確かに軍団には、舞踏会に参加資格のない一般兵士のが多いから、個別に参加者へ招待状を出す方が穏やかな解決法だ。
「おい、俺がドレス着て着飾って、公衆の面前に晒されるって本当か?」
高志は予想よりも冷静に尋ねた。
「すまん。成人した騎士爵以上の家族は基本的に全員参加なんだ。仮病でも何でも使って、高志を人前に出して恥をかかせたくないと考えいるんだが」
「まあドレス姿で人前に出るのに抵抗はあるが、俺も軍内部には興味があったんだ。願わくば、軍務に何らかの形でつきたいけど、ラナンキュラス侯爵家の侍女たちが許さなくてな。舞踏会には参加するが、その場合、パートナーはお前になるわけが?」
「いや。元双子とはいえ、異性が婚約者のいるパートナーを連れて行くのはおかしいということで、天堂に任せることになった。それよりも僕、ダンスなんて踊ったこと無いんだけど。パートナー連れていけば、それでミッションコンプリートになるのかな」
「そりゃ無理だろ。最初の一曲ぐらいは踊らないと、相手に恥をかかせる」
「ふふふ、ご心配なく。仁志様のダンス稽古は本日から、私が講師を務めましょう」
天堂が口を出していくる。中性的で、実際のところ本当に性別が無いが、仁志とほぼ同じ身長の天堂が講師って、ならば女性パートを彼が務めるということか?
「おまえと踊るって、気味悪いんだが」
仁志は露骨に嫌な顔をする。
「ダンスをしたことのない初心者を、他の者に相手をさせる方が酷でしょうに。まず靴や正装に慣れ親しんで動けるようにならなければならないし、女性をリードするまで仕上げるのは無理でも、少なくとも相手の足を踏まない程度に上達して、3曲ばかりは踊れるようにしておかないと」
「3曲も?最初の一曲でフェードアウトしちゃダメなのか?」
仁志の顔は青ざめる。お世辞にもリズム感なんて、人間時代から持ち合わせていない。
「一曲覚えれば、あとは似たような動きですから、仁志様なら何とかなりますよ。相手をリード出来なくても、ファンパライト副軍団長なら、即座に対応も出来るでしょうから。他の方々にも、それとなく仁志様がダンス慣れしていないことは伝えておいて、フォロー出来る方にお相手していただけるよう手を回しておきますから」
「一曲だけ踊って終わりじゃ、本当に駄目なのか?」
まだファンパライト副軍団長とは面識があるから、一曲ぐらいたら踊っても構わないが、見ず知らずの相手とダンスするなんて、拷問でしかない。
「今回の主役は、仁志様ですよ。私は神様の計らいで、臨時軍団長として潜り込んだだけなので、主役の仁志様が壁の花になるわけにはいかないでしょう。それとも休憩室で、気の利いた雑談を皆様と出来ますか?」
天堂の言葉に、ますます仁志は消沈していく。歓迎舞踏会を発案した奴をぶん殴りたい衝動に駆られる。歓迎会といったら、酒のんで腹踊りする無礼講が本来の姿だろうに。いや、それは日本ならではの風習か。
ともかく舞踏会が開催されるまで、夕食後は天堂とダンス教室をやる羽目になった。そこに高志も参加してダンスを踊る。何だかんだ言いながら、すっかり女性パートを完璧にマスターしていたから凄い。まあラナンキュラス侯爵家の敏腕侍女一団による地獄の特訓にかかれば。これぐらいできて当然なのがしれない。
ある程度、拙いながらも踊れるようになると、侍女か仁志の相手を務めた。ダメ出しの連続で心が折れる。その一方で、天堂と高志が華麗なダンスを披露する。本当に、天堂が天使でなかったら、似合いすぎるほどのカップルになれたかもしれない。いや、それは無理が。完璧なダンスを踊りながら、2人は互いに悪態をつきまくっていたからだ。典型的な犬猿の仲だが、主に天堂が高志を嫌っているのが見え見えだ。
「それにしても、僕は社交界なんて知らないけど、婚約者がいる場合は、婚約者と出席するのが筋なんじゃないか?」
仁志の言葉に、ラナンキュラス侯爵家の侍女一団の顔色が途端に悪くなる。重い口を開いたのは侍女頭だった。
「アストリッド様が男性に戻る可能性がゼロではないため、フロリア天上界世界の皇帝陛下もラナンキュラス侯爵閣下同様に、アストリッド様の容姿を隠すよう、仲介役の天使界の神々と魔術契約を交わしておられます。ところが事情を熟知していない浅はかなラナンキュラス第1侯爵夫人が、侯爵閣下の許可なく、アストリッド様の婚約者であるアルバート様に、ポートレートを贈ってしまいました。アルバート様はアストリッド様のポートレートに一目で夢中になられてしまい、いまでは毎日、アストリッド様を第6軍集団から引き上げさせて、フロリア天上界世界へ戻すようにと、軍への要請が煩わしいほど酷いようです。職務妨害にキレた軍部が、ボチボチ制裁加えようとしているという噂も出ています。そもそもフロリア天上界世界の皇帝陛下と、天使世界を統べる神々との誓約で、アストリッド様は2年間、第6軍集団のブライト伯爵家で暮らすこと、アルバート様とアストリッド様は婚儀の日取りが決定するまでお会いすることが禁じられております。それでもアルバート様の情熱は日々燃え上がるばかりで、この先、フロリア天上界世界に悪影響が出なければよいのですが」
勇み足を踏んだラナンキュラス第1侯爵夫人の心情としては、正嫡のジョージ王子の王太子妃を当家から出せないのであれば、庶子として登録されたアストリッドを、同じく国王の庶子であるアルバート・ワイナルナルト公爵と結婚させた方がいいと思い込んだからだ。
いまフロリア天上界世界の高位貴族の正妻は妊娠ラッシュである。ラナンキュラス第1侯爵夫人も妊活を頑張って身籠ったが、胎内の子は男子だった。高位貴族は3人の正妻を持つことが出来、ラナンキュラス侯爵も3人の正妻を迎えていたが、1人は澱を体外から排出するため『後継嫡子』を生んで、まだ30年ほどしか経過していないため、直ちに次の子供を身ごもらせるわけにはいかない。そしてもう1人の正妻である第2侯爵夫人か、先日美しい女児を出産したばかりだった。ジョージ王子の王太子妃候補として、ラナンキュラス侯爵家が王太子妃レースに出すのは、この子と決まった。
第一正妻のプライドを持つラナンキュラス侯爵夫人は、ならば庶子だが国王に溺愛されているアルバートの正室として、アストリッドを正式に自らの養女にして嫁がせようと目論んだのだ。
唯一、高志が首の皮一枚でアルバート・ワイナルナルト公爵の正室にすぐさまならなかったのは、皇帝と天使界の神々との条約のお陰である。
「ほう、そこまで惚れ込まれるとは女性冥利に尽きるというもの。アストリッド様(高志)、もう腹をくくって、公爵夫人になられてはいかがですか?」
天堂は本気で進言した。天堂は、人間時代に仁志を卑下していた高志が目障りでたまらなかったのだ。だがこちらも、天使界の神々からの命令上、2年間はアストリッド(高志)の貞操を守る義務がある。
「まったく、忌々しい」
つい本音を連呼する天堂だった。
2.舞踏会
招待客男性が軍人の要職についている場合、正装軍服で参加することが原則的に決まっている。まああくまで原則なので、フロックコートや燕尾服で参加しても構わない。仁志は正装軍服にした。燕尾服の方がさり気ないアクセサリーなどに気を遣うというので、面倒だったというのが本音だ。
天堂と高志(アストリッド)も同じ馬車に同乗させ、今夜の仁志のパートナーであるファンパライト副軍団長を迎えに行った。
クララ・ファンパライト副軍団長、いや今日は女伯爵という言い方のが相応しいかもしれない。
オレンジの髪を結い上げ、ビリジアングリーンの瞳の色よりも淡い緑のローブデコルテはシルク特有の光沢と、緑から金色に変わるグラデーションの美しいドレスだった。個性的なドレスなので、アクセサリーは真珠で抑えめにしてある。
アストリッド(高志)は、ファンパライト副軍団長の美しさに息を呑むと同時に、自分のドレスが平凡なのが、心は女性でないにも関わらず、内心悔しくてたまらなかった。銀糸を織り込んだ白のローブデコルテ。アクセサリーはイヤリング、指輪、チョーカーとも、プラチナ台に桜に似た花模様の凝ったデザインの明るいビンクダイヤを使って、清楚さを演出していた。屋敷で鏡の中で映る自分に、アストリッドもこの時は満足していた。しかしいまは、それが無性に子供っぽくて恥ずかしいと、すべて外してしまいたい衝動を抑えるのに必死だった。
会場に入る際、名前と爵位をフルネームで、大声で読み上げられる方が、仁志には数倍恥ずかしいと思えたが。
懸念していたダンスは、想像以上に軽やかに踊れていた。リズム感は足りずとも反射神経は良かったのと、ファンパライト副軍団長のフォローが絶妙だったからだ。
ダンスは婚約者や正妻でない限り3曲以上同じ人と同時に踊ってはいけないというマナーのお陰で、ファンパライト副軍団長とはすぐ別のダンス相手が見つかり、「やれやれ」と冷や汗をかきながら、これで使命は果たしたと、仁志は飲食休憩場でシャンパンを一気飲みしてから、ビュッフェで軽食を楽しんだ。本日の主役ということもあって、挨拶来る客も多かったが、すぐ立ち去ってくれたので助かった。
舞踏会会場では、天堂ことブライト臨時軍団長も、アストリッド(高志)も楽しげに踊っている。輪に入りたいとは思わないが、ダンスも上手下手があるものだなと、興味深く観察していた。
「舞踏会は楽しんでいるか?」
いつの間にか、隣には黒髪の青年が座っていた。正装軍服ではなくフロックコートだったが、名前は忘れたものの、軍のトップの一人であることは覚えている。
「改めて、俺はケイン・ドラム。観察分析長官なんて、らしくない肩書きを持っているが、ようはここのスパイの親玉さ」
髪は漆黒だが、瞳がアストリッド(高志)がつけているような桜色の瞳をしている。この世界の者は、本当に髪も瞳も、賑やかな色をしているものだ。
「そう緊張しないでいい。仕事の話だ。近いウチ、君の軍団を派遣する。そこには俺も同行するが、他の幹部も来る予定だ。だが幹部派遣が決定しているのは、今のところ俺だけだ。臨時軍団長より格上になるが、まあそんな堅苦しく捉えなくていい」
「任務内容を、こんな場所で話して大丈夫なのですか?」
仁志は顔を強張らせて尋ねる。それ、トップシークレットに値する問題じゃないのか?
「別に、秘密にするような任務じゃない。秘密を暴きに行く仕事だからな」
「スパイ活動、ということですか?」
「俺の部下は顔を知られすぎてしまってるからな。代わりに君達の隊を使おうと思った次第だが、奴が変えたあの世界が、人間だった君の目にどう映るか興味もある」
スパイの親玉というと、強面のイメージがあるが、ドラム観察分析長官は、むしろ童顔の可愛らしいタイプだった。だがこの顔が本物のドラム観察分析長官の顔かどうかは定かでない。彼はその場その場で、周囲に適応した顔ばかりか、性別や年齢さえも擬態する、凄腕のスパイだ。本物のドラム観察分析長官の顔を知るのは、ほんの僅かしかいないだろう。
「もしかして、お知り合いの方が敵なのですか?」
仁志は驚きを顕にするが、ドラム観察分析長官は表情を変えずにフライドチキンを齧った。
「同じ人間界のパトロールをする、第7軍集団の幹部だった奴だ。まあ、珍しいことでもない。人間界では、天使と悪魔の戦いが常識だが、天上界に悪魔はいない。役職として悪魔は実在するが、実際の悪魔は人間に試練を与えるための試験官さ。コッチの世界での本当の『悪魔』は、反逆者、堕天と呼ばれているな。革命家なんて囃し立てる馬鹿もいるが、えげつないやり方で人間界を壊す輩のどこが革命家と呼べるのやら。その点で言うと、今回の奴らの方策は穏便とも言えるか。人間界パトロールを長くやってると、人間に感情移入し過ぎて、掟を破る奴らが後を絶たないんだ。今回の事例もその類」
ドラム観察分析長官は、ジョッキでビールをあおる。フライドチキンとフライドポテト、ビールは三種の神器に値するベストトリオだが、彼の表情は苦々しい。
「真面目な奴ほど陥る沼だな。人間界は天上界に進化しきれなかったカオスを秘めた世界で、人間もまた天上界人になりきれなかった混沌を抱えた魂だ。我ら生粋の天上界人は、痛々しい試練を与えられて潰れかけた人間を助けることは出来ない。天上界人が介入すれば、魂の修行の妨げになり、結果的に天上界へ昇天しても、不完全な魂として、再度人間界へ送られ、修行のし直しだ。そのぐらいのこと、奴らは自覚していると思っていたが、同じ観察分析長官なんてやってて、人間に近づきすぎた結果、相手に同情してしまったのだろうな。あんなに冷静で頭の良かった奴だったのに」
「つまりは、第7軍集団の観察分析長官一派が、堕天してしまったということですか?」
「そういうこと。奴らはXX1225人間界を閉鎖して、独自の世界に変えてしまったんだ。恐らくあの稚拙なやり方は、専門的という言い方も妙だが、世界改造を生業とするマッドサイエンティストが仲間にいるとは思えない。人間界が天上界世界へ進化する事例なんて、指の数ほどない稀有な奇跡だと分かっていたはずなのに」
ドラム観察分析長官の言葉に、仁志はギョッとする。しかも頭文字はX。
人間界の中でも割り振り番号のアルファベットが3文字羅列であれ、4文字羅列であれ、D、G、М、Q、S、W、X、Y、Zの9つの頭文字を持つ場所は、仁志の言うところのファンタジーが入り混じった世界。つまり妖精だの魔物だのと人間が同居する、世界的には天上界寄りとも言える。もっともそこは人間界、魔物や妖精を自由に操れるなど、一部の人間魔術師ぐらいなものだ。大抵は魔術など、明かりを灯す程度しか人間は持ち合わせていないし、人間の使う魔力は寿命を消費するデメリットもある。その寿命をどれだけ延ばすかが、その世界それぞれの独自のやり方があるようだ。薬草などを使う、妖精と契約する、あるいは他人から寿命を奪うなど。
「人間界が、天上界世界へ進化することなんて、本当にあり得るんですか?」
答えがアリなのは、仁志も天上界の基礎講義で知っている。だがそれは誰かが意図して変えられるようなものではなく、そもそも天上界へ進化できるぐらいのライトカオスを秘めた人間界が、何らかのキッカケを得て独自進化する稀な事象だ。その際、天上界世界へ進化した人間界にいた生きとし生けるもの、人間や動物や虫や植物など万物が、天上界のものへと進化する。
「あり得るも何も、第6軍集団と第7軍集団の世界は、人間界から進化した天上界世界だ。俺は天上界世界に生まれ変わってからの第6軍集団世界の両親から生まれだが、将軍、副将軍、参謀長は、人間としての死を体感せずに元人間から天上界人になった非常に稀な人達だ。だからこの世界と第7軍集団世界は、天上界守護総軍に加えられた。人間から天上界人に進化した者の魔力は強く、人間をやっていた経験上、少しの変化にも気づけるメリットがある。だがその反面、人間から天上界人に変わった瞬間を経験した者は反逆者、堕天集団になりやすい性質なのも否めない。特に進化型天上界人を親に持つ2代目、3代目世代は変な使命感を抱えた厄介なのが多い。今回のターゲットのマイケル・ウェンズデー元観察分析長官も、進化経験組だ。なにがキッカケで、あのマイケルが堕天集団の頭領になったのやら。たぶん、恋愛問題だと推測するが。いまXX1225は完全に天上界とのパイプが遮断され、強固なバリアを張られて、あの世界の者はそこから出ることも出来ないし、コチラから新たな生命を送ることも叶わない」
ダラン観察分析長官はため息をつく。彼は先輩から役職を継いだ2代目長官で、第7軍集団世界のウェンズデー観察分析長官とは情報交流の点からも親しかった。それだけに堕天した事実の衝撃は大きかった。
「論理上、人間界を天上界世界を変える方法はあるらしいですね。でも中州の魔術師でさえ、論理が成功した事例はなし、というのを教養読本で流し読みしました。完全に孤立状態ということは、ロスト・ワールド扱いとなっているのでしょうか?」
「その通りだ。しかも早急に解決しないと、XX1225の住人の魂の変質が進んでしまい、中州の治癒魔術師でさえ手に負えない状況になる可能性が高い。つまりXX1225ごと、消滅させる切り札を使わざるおえない事態となる。それがなにを意味するか、新人の君でも分かるだろう」
「転生の不可。人間界丸ごと。寿命で人間界が尽きる場合は、その前に天上界から派遣された救護船で全生物を救出できるけど、ロスト・ワールドを消滅させるとなったら、誰一人として助けられない。もちろん堕天軍団も天上界裁判で罪を裁かれることなく、消滅させられる」
天上界を含めた全世界にとって、消滅ほど恐ろしい刑罰はない。魂や世界の核そのものが破壊されるのだ。記憶を失うこととは次元が違う、記憶抹消は前世を忘れても魂の本質が変わることがないので、性格や趣味趣向は転生後も、そのまま受け継がれる。
仁志は人間をやっていた経験上、勝手な魔改造で天上界へ昇天出来ないXX1225ロスト・ワールドで暮らす生き物全てに同情し、第7観察分析長官の後先考えないやり方に憤りを憶えた。
「閣下、正式に派遣命令が出されたら、身を粉にしてても働きますので、何なりとご命令ください」
仁志はドラム観察分析長官の前に片膝をついて、忠誠を示した。
「ありがとう。本当は、もっと軽い任務から始めさせる予定だったが、今回の件で一番の適任者は君かと思ってね」
ドラム観察分析長官は立ち上がり、仁志の肩を軽く叩くと、舞踏会会場をあとにした。
入れ替わるようにして、天堂とアストリッド(高志)がやってくる。
「面倒事を命じられたのですか?」
天堂は仁志を気遣いつつ、ドラム観察分析長官への憤りを隠せなかった。
「まあ、近い内に辞令が出るだろうな。高志も、暫く留守番となってしまうが、許してくれ」
と言うか、よくアストリッド(高志)がこの場にやってこれたものだ。彼の背後にはズラリとダンスを申し込もうとする賓客が列をなしている。
「俺は構わないが、おまえ、危険な真似はするなよ。そりゃ俺だって早く元の性別に戻りたいが、ド素人軍人が空回りしたところで何の成果も得られないだろうし、おまえが倒れたら、それこそ俺は今後の人生を積む羽目になるのだから。あ、喉が渇いたのと少々小腹が減ったから、何か見繕ってきてくれよ。慣れないダンスを、粘着質な知らない男に手を握られて腰に手を回されて、寒気がしてならない。おまえ、俺を守るために舞踏会終了まで傍にいろよ」
アストリッド(高志)は本気で震え上がっていた。腕には鳥肌が立っている。まあ、いくらダンスレッスンを積んできたとはいえ、彼女の美貌にのぼせ上がったダンス相手が、ここぞとばかりにスキンシップやアプローチしてくるのは分かりきったことだ。
「努力はするよ。天堂、僕が席を外す間、高志を守ってやってくれ」
「大変不本意ですが、仁志様のご命令とあらば仕方ありませんね。ついでに私の食べ物と飲み物もお願いしてもよろしいですか?」
ちゃっかりと、天堂は飲食物をビュッフェから持ってくるくるのをお願いした。
その後は休憩場で食べて飲んだ後、ラナンキュラス侯爵家の侍女頭に「もっと踊ってきてください」と命じられても、アストリッド(高志)は頑として言うことを聞かなかったし、仁志もまた援護射撃する。
「いきなり無理をさせたら、ダンスアレルギー発症しかねないよ。侍女として随行したなら、あの寒イボにも気づいているだろうし、僕らが守りの結界を張っていても、ここにいる連中ならそんなの引き裂いて、どこぞの寝室に連れ込もうとするの否めないだろ?」
仁志の言葉に、侍女頭は引き下がった。仁志のもとにもダンスを申し込みたさそうな女性が数人モジモジしていたが、仁志はそれを無視した。容姿端麗には程遠い自分をダンス相手にしようとするのは、家の者から命じられてきたのだろうことは見え見えだ。一応、軍閥貴族の伯爵で、副軍団長。将来的には軍団長に正式昇格して、侯爵に叙爵されると目されているとなれば、先物買いに走ろうとする貴族一家がいてもおかしくない。
「顔見せの大義名分は果たしたのだし、食べたら帰るか」
仁志の言葉に、アストリッド(高志)も力強く頷く。そして本当に軽食を食べ終えたら、仁志とアストリッド(高志)と天堂は、舞踏会会場を出ると、馬車に乗って帰宅してしまった。
「しかし、ラストまで居なくても良かっですかね。ラストダンスを踊るのは、一応は婚約者と踊るか、カップル成立した2人となっておりますが、それ以外は同伴者が踊るのが暗黙の了解となっているので、ファンパライト副軍団長から後で嫌味を言われかねませんよ?」
天堂はそう言いながらも面白がっている。
「別にファンパライト副軍団長なら、他にもダンス相手には事欠かないだろう。それより、屋敷に戻って着替えたら、少し調べものをしたいんだ。天堂も協力してくれ」
「もちろんですとも。観察分析長官自らが接触してくるとは、よっぽど面倒な仕事を押し付けられたのは目に見えていますから」
天堂は顔を強張らせる。ドラム観察分析長官も言っていた通り、軍務経験のない仁志には、まず軽めの任務から始めてもらうことになっていた。だが、どうやらいきなり重たい任務がのしかかってきたようだ。
「まったく、未だ魔術コントロールも完璧ではない仁志様に、重責を命じるとは」
天堂は馬車の中で延々と、ドラム観察分析長官に向けた悪態をついた。お陰で仁志は、悪い意味でドラム観察分析長官の経歴や性格、任務遂行のためなら姑息な手段も躊躇わない鬼畜ぶりを知ることが出来た。
2日目、定刻通りに天堂と仁志は軍部に出勤した。高志は相変わらずの淑女教育だ。フェンリルに進化したエイジは、仁志の番犬として軍部へ威圧感を与えるため、大きさは三分の一程度まで身を縮めたが、フェンリルとして同行した。
大きさはともかく、最強の魔物の一角であるフェンリルが仁志の傍らで威嚇していることに、軍部の者たちは度肝を抜かれた。一番腰を抜かしたのは、ソードブレイン臨時軍団長配下の第108軍団の者たちだが。
軍団長執務室は1つ、副軍団長の執務室は共同である。仁志の足元で丸くなっているフェンリルに、アーデル副軍団長とファンパライト副軍団長は警戒しながら仕事をしていた。
仕事と言っても、本来の軍団長が妊活休暇、3人目の副軍団長が抜けたことで、第108軍団は待機状態。上層部は書類の整理と、軍団の鍛錬を配下の団長に命じるぐらいしか仕事が無かった。
いきなり軍団長執務室との続き部屋の扉が開いた。あ、嫌な笑顔だなと臨時軍団長の顔を見て、仁志は顔をしかめた。
「歓迎パーティーだってさ。面倒だけど、こうした舞踏会って、天使時代の私は警備担当が主だったから、歓待される側ってワクワクするね!」
天堂ことソードブレイン臨時軍団長は、声を弾ませた。天使時代って、いまだって天使じゃないか。あえての違いは天使軍を一時休止して、臨時で天上界守護総軍に変わったたけだ。
「それ、欠席したらーー」
「駄目に決まってるでしょ!あんた、主役の一人でしょうが!」
アンデル副軍団長は鬼のような顔で、目を血ばらせて仁志に怒鳴りつける。まあ、そこには当人の思惑も潜んでいたわけで。
「軍集団のみの舞踏会ではあるけど、騎士爵以上は、家族同伴で参加するのが決まりだから。あ、成人した子供以上ってことで、未成年は不可。今回の舞踏会で、社交界デビューする若者も多いかもね」
ファンパライト副軍団長は顎に手を当てる。伴侶候補のターゲットが増えるのは良いことだ。軍閥貴族名簿の再確認が必要かもしれない。
「でも同伴者必須と書かれてあるんですが。僕、フェンリルのエイジ同伴参加で許可されますかね?」
「駄目に決まってるでしょ!ちゃんとダンスが踊れる相手を同伴しないと。噂じゃ、絶世の美女を囲っているそうじゃない。同伴者には困らないでしょ?」
アーデル副軍団長は指摘する。
「いや、あいつ……否、彼女は複雑な事情から僕が預かっている状態で、そもそも僕はダンスが踊れません。なにより彼女は母国に王族の婚約者もいるので、事情がどうであれ、無闇に公衆の前に出して、彼女の母国と波風立てたくないのが本音でして」
仁志は顔を青ざめさせて言う。高志を女性同伴者として連れて行ったら、高志に群がる男たちを追い払うのに苦労するのは目に見えている。いらぬ苦労はしたくない。そして高志には、高圧的に激怒されのも必然だ。
「事情は分からないけど、その婚約者持ちの女性を同伴させるわけにはいかないのね。なら早急に、同伴者を探さないと。私も同伴者ひっ捕まえて、今度こそ伴侶になりそうな恋人ゲットするわよ!」
アーデル副軍団長は闘志を燃やしていた。
聞けば舞踏会などの貴族の催しに家族同伴なのは、来たるべき澱の蓄積による子作りのため、伴侶探しは早目にしておくのが暗黙の了解なのだそうだ。伴侶を見つける期限は魔力量と魔術を使う頻度にもよるが、5000年から一万年で、仮に出会わなかった場合は澱が溜まりきって暴走する危険性があるらしい。今回は第6軍集団だけの小規模なものだが、年に2度の総軍全体で、騎士爵持ち以上の舞踏会、晩餐会は皆が血眼になって伴侶探しに奔走するらしい。
「高志のことがなければ、伴侶探しなんて面倒なことせずに済んだのに」
改めて、余計なことをしてくれた神様を恨みたくなった。中州の魔術師になっていれば、澱が溜まる心配がなく、独身でも呑気に中州で生きられたのだとか。
「2年間の高志殿結婚までの猶予を過ぎたら、除隊して中州の魔術師になることも可能ですよ。それまで頑張ってください」
にこやかに言う天堂だが、天使のくせにコイツは仁志のためなら平気で嘘はつくし、騙したりもするから、安心できない。
「高志問題が片付いたら、また別の厄介事が舞い込みそうな気がするな。まさかおまえ、僕が中州の魔術師になっても、金魚のフンみたいに、ついてくるつもりじゃないだろうな?」
「そうしたいのは山々ですが、これでも天使軍で役職持ちなので、残念ながら中州の仁志様宅の縁台で、ノホホンと茶を飲みながら過ごすことは出来ません。それに中州全体に広がる、薄まっているとはいえライトカオスの光は、中級天使ごときでは耐えられませんから」
天堂は残念そうに言う。どうやらこれは、嘘偽りなく本当のようだ。仁志は中州のことを大まかに学んでいたので、ライトカオスの海と天上界の防波堤となっている中州24世界が、猛毒に等しい光に満ちているため、通常の者はどれだけの能力持ちの貴族でも、滞在時間が1ヶ月が限界だという。
仁志の場合はもともと上級天使の魂を持っているため、中州で暮らす資質はあるそうだ。もっとも最初のうちは光の毒にやられて具合が悪くなり、重いときには寝込むこともあるそうだが。
「そういうものなのか」
「ええ。ですから、高志君問題が終わったら、このまま私の相棒として天使軍へーー」
「行くわけないだろ。それにしても同伴者か。誰でもいい、というわけではないんだろ?」
「いえ、同伴者の身分は問われませんので、成人していたら大丈夫ですよ。屋敷の者の誰かか、高志君の侍女の一人を借りてくるのも手段の1つですね」
「なるほど。同伴者問題のハードルは、意外と簡単なんだな。良かった。知り合いの女性なんて、この世界でまだいいないもんな」
仁志が、高志(アストリッド)の侍女の誰に頼むのか無難か思案していると、アーデル副軍団長とファンパライト副軍団長が乱暴に席を立ち、仁志に駆け寄ってきた。
「ならパートナーは私に!」
「いえ、私よ!あんたは可愛い見た目しているから相手もすぐ見つかるでしょうけれど、男性騎士並みに背の高い私がパートナー見つけるのは大変なのよ!」
確かにファンパライト副軍団長は普通の女性軍人より高身長だ。辛うじて仁志の方が背が高いが、ヒールを履かれたら軽く背を越えられてしまう。
「いや、僕はダンスなんて踊れないから、もっとマシな男性にーー」
「マシな男なんて、真っ先に女性軍人にとっ捕まっているわよ!この話、前向きな未定ってことはありませんよね?」
ファンパライト副軍団長が、天堂ことソードブレイン臨時軍団長に尋ねると、「具体的な日時は決まってないけど、近々開催することは決定しているよ。新幹部歓待舞踏会、女性のドレスや装飾品準備期間も考慮して、まもなく正式発表されるんじゃないかな?」と答えた。ファンパライト副軍団長の予想通り、既に仲間の女性軍人は、まだ正式発表前にも関わらず、第6軍集団の独身長身で性格良しの、ダンスと会話の上手い男を確保していた。既婚者は伴侶と出席する規則なので除外。生憎と、残り物に福はない。それでも出席強制が決まっている幹部連中は、どこかしら問題を抱えた相手をパートナーにしなくてはならない。
ダンスが下手でも、天界人なりたての初心な元人間福軍団長のが、はるかにマシということだ。
「そう、ならやるしかないわね」
「ええ。何で対戦する?」
「もちろん、こういう場面は剣でしょう。正々堂々、魔力無しの実力勝負よ!」
「分かった。じゃ、早速、勝負しましょ。ブライト軍団長、仮に他人から誘われても、お断りしてくださいね。私たちのどちらかと、同伴していただきますから!」
「天堂……いや、臨時軍団長は誘わないの?」
仁志が言うと、2人の女性副軍団長の瞳がギラリと光る。しかし天堂は首を横に振った。
「仁志様が、このお二人のどちらかのエスコートをするなら、私は恐らくアストリッド様と組まなくてはならないでしょう。そろそろあの方も、社交界に慣らしておかないと、困るのはアストリッド様ですし、婚約者の居られる方ですから、天使の私が適任かと」
「アストリッド様って、確かブライト副軍団長が人間だった頃の双子の御兄弟でしたよね。男性に戻りがっているという」
アーデル副軍団長は首をかしげる。
「あれ、その話って僕は皆にしたことあったっけ?」
「昨日の対決で、ブライト副軍団長のことは瞬く間に広まりました。本来、中州の魔術師を希望なさるほど平和主義者で、他者に干渉するのも面倒くさがるブライト副軍団長が、どうして嫌々ながら軍人となったのか。少なくとも108軍団内では全員が知ってますよ」
「あー」
仁志は天を仰いだ。これがバレたら、また高志からキーキー声で怒鳴られそうだ。
「ともかく、ブライト副軍団長のパートナーを賭けて勝負よ!」
「望むところよ!」
そしてアーデル副軍団長と、ファンパライト副軍団長は、鍛錬場へ行く。「え?ここはじゃんけんで決めるんじゃないの?」と仁志は慌てるが、第6軍集団でも血の気の多い2人の副軍団長は、何かにつけて決闘でカタをつけたがるらしい。
副軍団長2人の対決の話は瞬く間に広がって、鍛錬場の観客席にやじ馬が殺到した。
「僕、血の気の多い女人とは相性悪いと思うんだけど」
貴賓席に天童とフェンリルのエイジに挟まれて座る仁志は嘆く。仁志は人間時代から実物女性には興味はなかったが、ゲーム世界での女の子に、お気入りは何人かいた。いずれも愛らしい見た目と性格をした、ちょっとドジっ子だけど、いかにも女の子といった感じの2次元少女だ。従って、いま決闘している副軍団長たちや、正統派美人の高志など論外。高志に至っては、近寄られるだけでも、最近は総毛立つほど苦手としている。
「パートナーになったとしても、必ず恋人に発展するわけではありませんから。正直、仁志様はゲームの世界の仮想少女ばかりでなく、もう少し本物の女性に興味を示された方がよろしいかと思います」
天堂は、指摘する。人間界に馴染むまいと徹底しすぎて、それが性格として固定されてしまったことに懸念を覚えずにはいられなかった。
「仮に普通の女性とお付き合いするきしても、軍関係者は論外。もっと普通の、例えばパン屋やカフェの看板娘みたいな子がいい」
「本当にゲームに毒されていますよね。確かに日本のゲームクオリティーは、現実を凌駕するほどよく出来ていますから」
天堂はため息をつく。確かにいまの状況で、恋愛対象を探せと言っても、適任者はいない。しかし天堂は、仁志の今後を考えると、恋人はいずれ必要になると考えていた。少なくとも自分が天使世界へ戻る前に。でないと、本当に中州世界の縁側で、犬のエイジと日なったボッコで満足する長い余生を送りかねない。
鍛錬場では、剣術による決闘が始まった。どちらも魔術は今回使用しないらしい。
仁志は、2人の副軍団長の剣さばきに見惚れた。軍人となって活躍するため、渋々武術全般の基礎を学んできた仁志は、人間だった頃に『武は舞に通じる』という言葉を思い出した。激しく火花を散らしながらも、まるで2人で舞を踊っているかのような美しさだ。身長差のある2人だが、小柄なアーデル副軍団長はジャンプ力と瞬時さで翻弄する。ファンパライト副軍団長は、剣の扱いの美しさが際立った。ちなみにこの決闘、刃をつぶした剣を使っているが、一歩間違えばケガをしかねない。それだけ2人の決闘は本気だったということもある。最後はアーデル副軍団長の背後に回り込んだファンパライト副軍団長が、相手の首に剣の鞘の先端を叩き込んで倒した。
華麗なる決闘に、皆が称賛の拍手を送る。
「まさかクララに背後を取られるとはな。私も油断した」
アーデル副軍団長は、ファンパライト副軍団長に手を掴まれて立ち上がった。
「いや、マーキヌの俊足についていくのは大変だった。私が勝てたのは、たぶん昨日の聖水のせいだと思う。当初はダルかったが、一番寝て起きたら、驚くほど体が軽くなっていたからな」
「へえ、さすが元上級天使の魂の持ち主。まさか、あんな強力な聖水を作り出すとはね。おかげで競技場はいま、聖水が取り除かれても眩く光って暫く使えない状態だ」
2人の副軍団長は、さっきまでの決闘とはうって変わって穏やかに話している。まあ、これで仁志の舞踏会パートナーは、ファンパライト副軍団長に決まったというわけだ。
軍務が終わって屋敷に戻ると、ラナンキュラス侯爵家から派遣された侍女たちがバタバタしていた。第6軍集団主催の舞踏会の招待状が届き、そろそろ社交界デビューを視野に入れていた侍女頭が参加を決めたらしい。
(なるほど、公式発表とは招待状の到着によるものか)
確かに軍団には、舞踏会に参加資格のない一般兵士のが多いから、個別に参加者へ招待状を出す方が穏やかな解決法だ。
「おい、俺がドレス着て着飾って、公衆の面前に晒されるって本当か?」
高志は予想よりも冷静に尋ねた。
「すまん。成人した騎士爵以上の家族は基本的に全員参加なんだ。仮病でも何でも使って、高志を人前に出して恥をかかせたくないと考えいるんだが」
「まあドレス姿で人前に出るのに抵抗はあるが、俺も軍内部には興味があったんだ。願わくば、軍務に何らかの形でつきたいけど、ラナンキュラス侯爵家の侍女たちが許さなくてな。舞踏会には参加するが、その場合、パートナーはお前になるわけが?」
「いや。元双子とはいえ、異性が婚約者のいるパートナーを連れて行くのはおかしいということで、天堂に任せることになった。それよりも僕、ダンスなんて踊ったこと無いんだけど。パートナー連れていけば、それでミッションコンプリートになるのかな」
「そりゃ無理だろ。最初の一曲ぐらいは踊らないと、相手に恥をかかせる」
「ふふふ、ご心配なく。仁志様のダンス稽古は本日から、私が講師を務めましょう」
天堂が口を出していくる。中性的で、実際のところ本当に性別が無いが、仁志とほぼ同じ身長の天堂が講師って、ならば女性パートを彼が務めるということか?
「おまえと踊るって、気味悪いんだが」
仁志は露骨に嫌な顔をする。
「ダンスをしたことのない初心者を、他の者に相手をさせる方が酷でしょうに。まず靴や正装に慣れ親しんで動けるようにならなければならないし、女性をリードするまで仕上げるのは無理でも、少なくとも相手の足を踏まない程度に上達して、3曲ばかりは踊れるようにしておかないと」
「3曲も?最初の一曲でフェードアウトしちゃダメなのか?」
仁志の顔は青ざめる。お世辞にもリズム感なんて、人間時代から持ち合わせていない。
「一曲覚えれば、あとは似たような動きですから、仁志様なら何とかなりますよ。相手をリード出来なくても、ファンパライト副軍団長なら、即座に対応も出来るでしょうから。他の方々にも、それとなく仁志様がダンス慣れしていないことは伝えておいて、フォロー出来る方にお相手していただけるよう手を回しておきますから」
「一曲だけ踊って終わりじゃ、本当に駄目なのか?」
まだファンパライト副軍団長とは面識があるから、一曲ぐらいたら踊っても構わないが、見ず知らずの相手とダンスするなんて、拷問でしかない。
「今回の主役は、仁志様ですよ。私は神様の計らいで、臨時軍団長として潜り込んだだけなので、主役の仁志様が壁の花になるわけにはいかないでしょう。それとも休憩室で、気の利いた雑談を皆様と出来ますか?」
天堂の言葉に、ますます仁志は消沈していく。歓迎舞踏会を発案した奴をぶん殴りたい衝動に駆られる。歓迎会といったら、酒のんで腹踊りする無礼講が本来の姿だろうに。いや、それは日本ならではの風習か。
ともかく舞踏会が開催されるまで、夕食後は天堂とダンス教室をやる羽目になった。そこに高志も参加してダンスを踊る。何だかんだ言いながら、すっかり女性パートを完璧にマスターしていたから凄い。まあラナンキュラス侯爵家の敏腕侍女一団による地獄の特訓にかかれば。これぐらいできて当然なのがしれない。
ある程度、拙いながらも踊れるようになると、侍女か仁志の相手を務めた。ダメ出しの連続で心が折れる。その一方で、天堂と高志が華麗なダンスを披露する。本当に、天堂が天使でなかったら、似合いすぎるほどのカップルになれたかもしれない。いや、それは無理が。完璧なダンスを踊りながら、2人は互いに悪態をつきまくっていたからだ。典型的な犬猿の仲だが、主に天堂が高志を嫌っているのが見え見えだ。
「それにしても、僕は社交界なんて知らないけど、婚約者がいる場合は、婚約者と出席するのが筋なんじゃないか?」
仁志の言葉に、ラナンキュラス侯爵家の侍女一団の顔色が途端に悪くなる。重い口を開いたのは侍女頭だった。
「アストリッド様が男性に戻る可能性がゼロではないため、フロリア天上界世界の皇帝陛下もラナンキュラス侯爵閣下同様に、アストリッド様の容姿を隠すよう、仲介役の天使界の神々と魔術契約を交わしておられます。ところが事情を熟知していない浅はかなラナンキュラス第1侯爵夫人が、侯爵閣下の許可なく、アストリッド様の婚約者であるアルバート様に、ポートレートを贈ってしまいました。アルバート様はアストリッド様のポートレートに一目で夢中になられてしまい、いまでは毎日、アストリッド様を第6軍集団から引き上げさせて、フロリア天上界世界へ戻すようにと、軍への要請が煩わしいほど酷いようです。職務妨害にキレた軍部が、ボチボチ制裁加えようとしているという噂も出ています。そもそもフロリア天上界世界の皇帝陛下と、天使世界を統べる神々との誓約で、アストリッド様は2年間、第6軍集団のブライト伯爵家で暮らすこと、アルバート様とアストリッド様は婚儀の日取りが決定するまでお会いすることが禁じられております。それでもアルバート様の情熱は日々燃え上がるばかりで、この先、フロリア天上界世界に悪影響が出なければよいのですが」
勇み足を踏んだラナンキュラス第1侯爵夫人の心情としては、正嫡のジョージ王子の王太子妃を当家から出せないのであれば、庶子として登録されたアストリッドを、同じく国王の庶子であるアルバート・ワイナルナルト公爵と結婚させた方がいいと思い込んだからだ。
いまフロリア天上界世界の高位貴族の正妻は妊娠ラッシュである。ラナンキュラス第1侯爵夫人も妊活を頑張って身籠ったが、胎内の子は男子だった。高位貴族は3人の正妻を持つことが出来、ラナンキュラス侯爵も3人の正妻を迎えていたが、1人は澱を体外から排出するため『後継嫡子』を生んで、まだ30年ほどしか経過していないため、直ちに次の子供を身ごもらせるわけにはいかない。そしてもう1人の正妻である第2侯爵夫人か、先日美しい女児を出産したばかりだった。ジョージ王子の王太子妃候補として、ラナンキュラス侯爵家が王太子妃レースに出すのは、この子と決まった。
第一正妻のプライドを持つラナンキュラス侯爵夫人は、ならば庶子だが国王に溺愛されているアルバートの正室として、アストリッドを正式に自らの養女にして嫁がせようと目論んだのだ。
唯一、高志が首の皮一枚でアルバート・ワイナルナルト公爵の正室にすぐさまならなかったのは、皇帝と天使界の神々との条約のお陰である。
「ほう、そこまで惚れ込まれるとは女性冥利に尽きるというもの。アストリッド様(高志)、もう腹をくくって、公爵夫人になられてはいかがですか?」
天堂は本気で進言した。天堂は、人間時代に仁志を卑下していた高志が目障りでたまらなかったのだ。だがこちらも、天使界の神々からの命令上、2年間はアストリッド(高志)の貞操を守る義務がある。
「まったく、忌々しい」
つい本音を連呼する天堂だった。
2.舞踏会
招待客男性が軍人の要職についている場合、正装軍服で参加することが原則的に決まっている。まああくまで原則なので、フロックコートや燕尾服で参加しても構わない。仁志は正装軍服にした。燕尾服の方がさり気ないアクセサリーなどに気を遣うというので、面倒だったというのが本音だ。
天堂と高志(アストリッド)も同じ馬車に同乗させ、今夜の仁志のパートナーであるファンパライト副軍団長を迎えに行った。
クララ・ファンパライト副軍団長、いや今日は女伯爵という言い方のが相応しいかもしれない。
オレンジの髪を結い上げ、ビリジアングリーンの瞳の色よりも淡い緑のローブデコルテはシルク特有の光沢と、緑から金色に変わるグラデーションの美しいドレスだった。個性的なドレスなので、アクセサリーは真珠で抑えめにしてある。
アストリッド(高志)は、ファンパライト副軍団長の美しさに息を呑むと同時に、自分のドレスが平凡なのが、心は女性でないにも関わらず、内心悔しくてたまらなかった。銀糸を織り込んだ白のローブデコルテ。アクセサリーはイヤリング、指輪、チョーカーとも、プラチナ台に桜に似た花模様の凝ったデザインの明るいビンクダイヤを使って、清楚さを演出していた。屋敷で鏡の中で映る自分に、アストリッドもこの時は満足していた。しかしいまは、それが無性に子供っぽくて恥ずかしいと、すべて外してしまいたい衝動を抑えるのに必死だった。
会場に入る際、名前と爵位をフルネームで、大声で読み上げられる方が、仁志には数倍恥ずかしいと思えたが。
懸念していたダンスは、想像以上に軽やかに踊れていた。リズム感は足りずとも反射神経は良かったのと、ファンパライト副軍団長のフォローが絶妙だったからだ。
ダンスは婚約者や正妻でない限り3曲以上同じ人と同時に踊ってはいけないというマナーのお陰で、ファンパライト副軍団長とはすぐ別のダンス相手が見つかり、「やれやれ」と冷や汗をかきながら、これで使命は果たしたと、仁志は飲食休憩場でシャンパンを一気飲みしてから、ビュッフェで軽食を楽しんだ。本日の主役ということもあって、挨拶来る客も多かったが、すぐ立ち去ってくれたので助かった。
舞踏会会場では、天堂ことブライト臨時軍団長も、アストリッド(高志)も楽しげに踊っている。輪に入りたいとは思わないが、ダンスも上手下手があるものだなと、興味深く観察していた。
「舞踏会は楽しんでいるか?」
いつの間にか、隣には黒髪の青年が座っていた。正装軍服ではなくフロックコートだったが、名前は忘れたものの、軍のトップの一人であることは覚えている。
「改めて、俺はケイン・ドラム。観察分析長官なんて、らしくない肩書きを持っているが、ようはここのスパイの親玉さ」
髪は漆黒だが、瞳がアストリッド(高志)がつけているような桜色の瞳をしている。この世界の者は、本当に髪も瞳も、賑やかな色をしているものだ。
「そう緊張しないでいい。仕事の話だ。近いウチ、君の軍団を派遣する。そこには俺も同行するが、他の幹部も来る予定だ。だが幹部派遣が決定しているのは、今のところ俺だけだ。臨時軍団長より格上になるが、まあそんな堅苦しく捉えなくていい」
「任務内容を、こんな場所で話して大丈夫なのですか?」
仁志は顔を強張らせて尋ねる。それ、トップシークレットに値する問題じゃないのか?
「別に、秘密にするような任務じゃない。秘密を暴きに行く仕事だからな」
「スパイ活動、ということですか?」
「俺の部下は顔を知られすぎてしまってるからな。代わりに君達の隊を使おうと思った次第だが、奴が変えたあの世界が、人間だった君の目にどう映るか興味もある」
スパイの親玉というと、強面のイメージがあるが、ドラム観察分析長官は、むしろ童顔の可愛らしいタイプだった。だがこの顔が本物のドラム観察分析長官の顔かどうかは定かでない。彼はその場その場で、周囲に適応した顔ばかりか、性別や年齢さえも擬態する、凄腕のスパイだ。本物のドラム観察分析長官の顔を知るのは、ほんの僅かしかいないだろう。
「もしかして、お知り合いの方が敵なのですか?」
仁志は驚きを顕にするが、ドラム観察分析長官は表情を変えずにフライドチキンを齧った。
「同じ人間界のパトロールをする、第7軍集団の幹部だった奴だ。まあ、珍しいことでもない。人間界では、天使と悪魔の戦いが常識だが、天上界に悪魔はいない。役職として悪魔は実在するが、実際の悪魔は人間に試練を与えるための試験官さ。コッチの世界での本当の『悪魔』は、反逆者、堕天と呼ばれているな。革命家なんて囃し立てる馬鹿もいるが、えげつないやり方で人間界を壊す輩のどこが革命家と呼べるのやら。その点で言うと、今回の奴らの方策は穏便とも言えるか。人間界パトロールを長くやってると、人間に感情移入し過ぎて、掟を破る奴らが後を絶たないんだ。今回の事例もその類」
ドラム観察分析長官は、ジョッキでビールをあおる。フライドチキンとフライドポテト、ビールは三種の神器に値するベストトリオだが、彼の表情は苦々しい。
「真面目な奴ほど陥る沼だな。人間界は天上界に進化しきれなかったカオスを秘めた世界で、人間もまた天上界人になりきれなかった混沌を抱えた魂だ。我ら生粋の天上界人は、痛々しい試練を与えられて潰れかけた人間を助けることは出来ない。天上界人が介入すれば、魂の修行の妨げになり、結果的に天上界へ昇天しても、不完全な魂として、再度人間界へ送られ、修行のし直しだ。そのぐらいのこと、奴らは自覚していると思っていたが、同じ観察分析長官なんてやってて、人間に近づきすぎた結果、相手に同情してしまったのだろうな。あんなに冷静で頭の良かった奴だったのに」
「つまりは、第7軍集団の観察分析長官一派が、堕天してしまったということですか?」
「そういうこと。奴らはXX1225人間界を閉鎖して、独自の世界に変えてしまったんだ。恐らくあの稚拙なやり方は、専門的という言い方も妙だが、世界改造を生業とするマッドサイエンティストが仲間にいるとは思えない。人間界が天上界世界へ進化する事例なんて、指の数ほどない稀有な奇跡だと分かっていたはずなのに」
ドラム観察分析長官の言葉に、仁志はギョッとする。しかも頭文字はX。
人間界の中でも割り振り番号のアルファベットが3文字羅列であれ、4文字羅列であれ、D、G、М、Q、S、W、X、Y、Zの9つの頭文字を持つ場所は、仁志の言うところのファンタジーが入り混じった世界。つまり妖精だの魔物だのと人間が同居する、世界的には天上界寄りとも言える。もっともそこは人間界、魔物や妖精を自由に操れるなど、一部の人間魔術師ぐらいなものだ。大抵は魔術など、明かりを灯す程度しか人間は持ち合わせていないし、人間の使う魔力は寿命を消費するデメリットもある。その寿命をどれだけ延ばすかが、その世界それぞれの独自のやり方があるようだ。薬草などを使う、妖精と契約する、あるいは他人から寿命を奪うなど。
「人間界が、天上界世界へ進化することなんて、本当にあり得るんですか?」
答えがアリなのは、仁志も天上界の基礎講義で知っている。だがそれは誰かが意図して変えられるようなものではなく、そもそも天上界へ進化できるぐらいのライトカオスを秘めた人間界が、何らかのキッカケを得て独自進化する稀な事象だ。その際、天上界世界へ進化した人間界にいた生きとし生けるもの、人間や動物や虫や植物など万物が、天上界のものへと進化する。
「あり得るも何も、第6軍集団と第7軍集団の世界は、人間界から進化した天上界世界だ。俺は天上界世界に生まれ変わってからの第6軍集団世界の両親から生まれだが、将軍、副将軍、参謀長は、人間としての死を体感せずに元人間から天上界人になった非常に稀な人達だ。だからこの世界と第7軍集団世界は、天上界守護総軍に加えられた。人間から天上界人に進化した者の魔力は強く、人間をやっていた経験上、少しの変化にも気づけるメリットがある。だがその反面、人間から天上界人に変わった瞬間を経験した者は反逆者、堕天集団になりやすい性質なのも否めない。特に進化型天上界人を親に持つ2代目、3代目世代は変な使命感を抱えた厄介なのが多い。今回のターゲットのマイケル・ウェンズデー元観察分析長官も、進化経験組だ。なにがキッカケで、あのマイケルが堕天集団の頭領になったのやら。たぶん、恋愛問題だと推測するが。いまXX1225は完全に天上界とのパイプが遮断され、強固なバリアを張られて、あの世界の者はそこから出ることも出来ないし、コチラから新たな生命を送ることも叶わない」
ダラン観察分析長官はため息をつく。彼は先輩から役職を継いだ2代目長官で、第7軍集団世界のウェンズデー観察分析長官とは情報交流の点からも親しかった。それだけに堕天した事実の衝撃は大きかった。
「論理上、人間界を天上界世界を変える方法はあるらしいですね。でも中州の魔術師でさえ、論理が成功した事例はなし、というのを教養読本で流し読みしました。完全に孤立状態ということは、ロスト・ワールド扱いとなっているのでしょうか?」
「その通りだ。しかも早急に解決しないと、XX1225の住人の魂の変質が進んでしまい、中州の治癒魔術師でさえ手に負えない状況になる可能性が高い。つまりXX1225ごと、消滅させる切り札を使わざるおえない事態となる。それがなにを意味するか、新人の君でも分かるだろう」
「転生の不可。人間界丸ごと。寿命で人間界が尽きる場合は、その前に天上界から派遣された救護船で全生物を救出できるけど、ロスト・ワールドを消滅させるとなったら、誰一人として助けられない。もちろん堕天軍団も天上界裁判で罪を裁かれることなく、消滅させられる」
天上界を含めた全世界にとって、消滅ほど恐ろしい刑罰はない。魂や世界の核そのものが破壊されるのだ。記憶を失うこととは次元が違う、記憶抹消は前世を忘れても魂の本質が変わることがないので、性格や趣味趣向は転生後も、そのまま受け継がれる。
仁志は人間をやっていた経験上、勝手な魔改造で天上界へ昇天出来ないXX1225ロスト・ワールドで暮らす生き物全てに同情し、第7観察分析長官の後先考えないやり方に憤りを憶えた。
「閣下、正式に派遣命令が出されたら、身を粉にしてても働きますので、何なりとご命令ください」
仁志はドラム観察分析長官の前に片膝をついて、忠誠を示した。
「ありがとう。本当は、もっと軽い任務から始めさせる予定だったが、今回の件で一番の適任者は君かと思ってね」
ドラム観察分析長官は立ち上がり、仁志の肩を軽く叩くと、舞踏会会場をあとにした。
入れ替わるようにして、天堂とアストリッド(高志)がやってくる。
「面倒事を命じられたのですか?」
天堂は仁志を気遣いつつ、ドラム観察分析長官への憤りを隠せなかった。
「まあ、近い内に辞令が出るだろうな。高志も、暫く留守番となってしまうが、許してくれ」
と言うか、よくアストリッド(高志)がこの場にやってこれたものだ。彼の背後にはズラリとダンスを申し込もうとする賓客が列をなしている。
「俺は構わないが、おまえ、危険な真似はするなよ。そりゃ俺だって早く元の性別に戻りたいが、ド素人軍人が空回りしたところで何の成果も得られないだろうし、おまえが倒れたら、それこそ俺は今後の人生を積む羽目になるのだから。あ、喉が渇いたのと少々小腹が減ったから、何か見繕ってきてくれよ。慣れないダンスを、粘着質な知らない男に手を握られて腰に手を回されて、寒気がしてならない。おまえ、俺を守るために舞踏会終了まで傍にいろよ」
アストリッド(高志)は本気で震え上がっていた。腕には鳥肌が立っている。まあ、いくらダンスレッスンを積んできたとはいえ、彼女の美貌にのぼせ上がったダンス相手が、ここぞとばかりにスキンシップやアプローチしてくるのは分かりきったことだ。
「努力はするよ。天堂、僕が席を外す間、高志を守ってやってくれ」
「大変不本意ですが、仁志様のご命令とあらば仕方ありませんね。ついでに私の食べ物と飲み物もお願いしてもよろしいですか?」
ちゃっかりと、天堂は飲食物をビュッフェから持ってくるくるのをお願いした。
その後は休憩場で食べて飲んだ後、ラナンキュラス侯爵家の侍女頭に「もっと踊ってきてください」と命じられても、アストリッド(高志)は頑として言うことを聞かなかったし、仁志もまた援護射撃する。
「いきなり無理をさせたら、ダンスアレルギー発症しかねないよ。侍女として随行したなら、あの寒イボにも気づいているだろうし、僕らが守りの結界を張っていても、ここにいる連中ならそんなの引き裂いて、どこぞの寝室に連れ込もうとするの否めないだろ?」
仁志の言葉に、侍女頭は引き下がった。仁志のもとにもダンスを申し込みたさそうな女性が数人モジモジしていたが、仁志はそれを無視した。容姿端麗には程遠い自分をダンス相手にしようとするのは、家の者から命じられてきたのだろうことは見え見えだ。一応、軍閥貴族の伯爵で、副軍団長。将来的には軍団長に正式昇格して、侯爵に叙爵されると目されているとなれば、先物買いに走ろうとする貴族一家がいてもおかしくない。
「顔見せの大義名分は果たしたのだし、食べたら帰るか」
仁志の言葉に、アストリッド(高志)も力強く頷く。そして本当に軽食を食べ終えたら、仁志とアストリッド(高志)と天堂は、舞踏会会場を出ると、馬車に乗って帰宅してしまった。
「しかし、ラストまで居なくても良かっですかね。ラストダンスを踊るのは、一応は婚約者と踊るか、カップル成立した2人となっておりますが、それ以外は同伴者が踊るのが暗黙の了解となっているので、ファンパライト副軍団長から後で嫌味を言われかねませんよ?」
天堂はそう言いながらも面白がっている。
「別にファンパライト副軍団長なら、他にもダンス相手には事欠かないだろう。それより、屋敷に戻って着替えたら、少し調べものをしたいんだ。天堂も協力してくれ」
「もちろんですとも。観察分析長官自らが接触してくるとは、よっぽど面倒な仕事を押し付けられたのは目に見えていますから」
天堂は顔を強張らせる。ドラム観察分析長官も言っていた通り、軍務経験のない仁志には、まず軽めの任務から始めてもらうことになっていた。だが、どうやらいきなり重たい任務がのしかかってきたようだ。
「まったく、未だ魔術コントロールも完璧ではない仁志様に、重責を命じるとは」
天堂は馬車の中で延々と、ドラム観察分析長官に向けた悪態をついた。お陰で仁志は、悪い意味でドラム観察分析長官の経歴や性格、任務遂行のためなら姑息な手段も躊躇わない鬼畜ぶりを知ることが出来た。
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