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1.こじらせていることは自覚してます
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俺は部屋に入って、玄関の扉を閉めた。コンビニで買った炭酸飲料のキャップを開ける。ぐびぐびと飲みながら、隣室の様子をうかがった。
耳を澄ましたが、声はもちろん物音ひとつしない。
隣に住む玖堂とは、そう頻繁ではないもののアパートで顔を合わせることがある。同じクラスなので、もちろん学校でも毎日会う。
俺は良い子の委員長なので、その度に「おはよう」とか「良い天気だな」と挨拶している。もちろん笑顔で。
玖堂は、それに対して小声で「……す」と返してくるだけだ。朝に会っても、昼に会っても、夜に会っても「……す」で済まされる。
怒り心頭だ。なんだそれ。ちゃんと挨拶しろよ。
内心イラついているのだが、俺は外面が良いのでもちろん表情には出さない。
俺は勉強机に腰を下ろし、途中だった宿題に取り掛かる。集中しなければいけないのだが、ちらちらと玖堂のことが頭に浮かぶ。
あんなに無気力そうなのに、女子にモテている。羨ましい。顔が良いというのは強い。
よれよれのTシャツを着ていても、挨拶が「……す」の塩対応でも、スタイルの良い美男子というだけで女子が群がってくるのだ。そんなのは納得できない。
女子も女子だ。外見が良いからって、それが何だ。そんなにイケメンが良いのか。だから女子は嫌なんだ。
最近は怒りの矛先が、玖堂よりも女子のほうに向いている。
長く孤独な非モテの人生のせいで、俺の性根は歪んだ。そして、こじらせた。同性である玖堂よりも、異性に対して怒りの感情が向くようになってしまった。
玖堂の元に、次から次へとやって来る女子たち。まれに彼女たちを目撃することがあるのだが、いつも顔ぶれが違っている。こんなにも世の中に奔放な女子が溢れていたなんて、俺は知りたくなかった。
俺は玖堂のように制服を着崩すことなく、きちんとした格好で登校している。私服だってだらしなさは皆無だ。同じアパートの住人に、丁寧に挨拶をする社会性だって身につけている。
それなのに、俺は童貞なのだ(小声)!!!
思えば、昔からそうだった。真面目な奴よりも不良がモテていたし、大人しくて優しい奴よりも荒くれ者のほうが先に非童貞になっていた。なぜだ。解せない。たぶん、いや、絶対に女子が悪い。
こんな風に、こじらせた感情を俺が抱えるに至ったのは、例のクソ兄貴のせいでもある。
兄は浮気性だ。そもそも本命を作らない主義らしく、あっちこっちに手を出している。そのせいで、女性たちがマンションに押しかけてきて取っ組み合いのケンカになったり、メンヘラ化したりするのだ。
泣く、暴れる、喚く。たまに、自傷を仄めかす事態にもなる。
俺のことを指さしながら、「男の子とも浮気してたのね!」と勘違いする迷惑な女子もいた。洸と俺は、見た目が似ていない。そのせいで兄弟だと識別されなかったのだろう。
キッと吊り上がった目で睨まれるのは恐怖だった。たとえ相手が自分よりも小柄な女子だったとしても、怖いものは怖い。
そういう修羅場を目撃……たまに巻き込まれる事案も発生したことで、俺の女子に対する感情はちょっと複雑だ。
……顔が良いだけのヤツは、やめておいたほうが無難だな。
それが俺の結論だった。高校一年生にしては、少し達観しているかもしれないが仕方がない。
「よしっ」
あれこれと思考を巡らせていたが、無事に宿題は終わった。ノートを閉じて、椅子の背もたれに体を預ける。
だらんと全身の力を抜きながら、玖堂のことを考える。ちゃんと宿題を終わらせただろうか。明日は遅刻せずに登校して来るだろうか。
「ま、他人のことだし。俺には関係ないか……」
そうつぶやきながら、俺は椅子から立ち上がった。
耳を澄ましたが、声はもちろん物音ひとつしない。
隣に住む玖堂とは、そう頻繁ではないもののアパートで顔を合わせることがある。同じクラスなので、もちろん学校でも毎日会う。
俺は良い子の委員長なので、その度に「おはよう」とか「良い天気だな」と挨拶している。もちろん笑顔で。
玖堂は、それに対して小声で「……す」と返してくるだけだ。朝に会っても、昼に会っても、夜に会っても「……す」で済まされる。
怒り心頭だ。なんだそれ。ちゃんと挨拶しろよ。
内心イラついているのだが、俺は外面が良いのでもちろん表情には出さない。
俺は勉強机に腰を下ろし、途中だった宿題に取り掛かる。集中しなければいけないのだが、ちらちらと玖堂のことが頭に浮かぶ。
あんなに無気力そうなのに、女子にモテている。羨ましい。顔が良いというのは強い。
よれよれのTシャツを着ていても、挨拶が「……す」の塩対応でも、スタイルの良い美男子というだけで女子が群がってくるのだ。そんなのは納得できない。
女子も女子だ。外見が良いからって、それが何だ。そんなにイケメンが良いのか。だから女子は嫌なんだ。
最近は怒りの矛先が、玖堂よりも女子のほうに向いている。
長く孤独な非モテの人生のせいで、俺の性根は歪んだ。そして、こじらせた。同性である玖堂よりも、異性に対して怒りの感情が向くようになってしまった。
玖堂の元に、次から次へとやって来る女子たち。まれに彼女たちを目撃することがあるのだが、いつも顔ぶれが違っている。こんなにも世の中に奔放な女子が溢れていたなんて、俺は知りたくなかった。
俺は玖堂のように制服を着崩すことなく、きちんとした格好で登校している。私服だってだらしなさは皆無だ。同じアパートの住人に、丁寧に挨拶をする社会性だって身につけている。
それなのに、俺は童貞なのだ(小声)!!!
思えば、昔からそうだった。真面目な奴よりも不良がモテていたし、大人しくて優しい奴よりも荒くれ者のほうが先に非童貞になっていた。なぜだ。解せない。たぶん、いや、絶対に女子が悪い。
こんな風に、こじらせた感情を俺が抱えるに至ったのは、例のクソ兄貴のせいでもある。
兄は浮気性だ。そもそも本命を作らない主義らしく、あっちこっちに手を出している。そのせいで、女性たちがマンションに押しかけてきて取っ組み合いのケンカになったり、メンヘラ化したりするのだ。
泣く、暴れる、喚く。たまに、自傷を仄めかす事態にもなる。
俺のことを指さしながら、「男の子とも浮気してたのね!」と勘違いする迷惑な女子もいた。洸と俺は、見た目が似ていない。そのせいで兄弟だと識別されなかったのだろう。
キッと吊り上がった目で睨まれるのは恐怖だった。たとえ相手が自分よりも小柄な女子だったとしても、怖いものは怖い。
そういう修羅場を目撃……たまに巻き込まれる事案も発生したことで、俺の女子に対する感情はちょっと複雑だ。
……顔が良いだけのヤツは、やめておいたほうが無難だな。
それが俺の結論だった。高校一年生にしては、少し達観しているかもしれないが仕方がない。
「よしっ」
あれこれと思考を巡らせていたが、無事に宿題は終わった。ノートを閉じて、椅子の背もたれに体を預ける。
だらんと全身の力を抜きながら、玖堂のことを考える。ちゃんと宿題を終わらせただろうか。明日は遅刻せずに登校して来るだろうか。
「ま、他人のことだし。俺には関係ないか……」
そうつぶやきながら、俺は椅子から立ち上がった。
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