こじらせ委員長と省エネ男子

みずしま

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1.こじらせていることは自覚してます

1-4

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 翌日の放課後、俺は担任から職員室に呼ばれた。

 担任の青山は、二十代後半の男性教諭だ。いつも柔和な笑みを浮かべている。真面目な優男に見えるのだが、本性はお調子者だ。生徒をおだてるのが上手い。

 俺は雑用を頼まれることが多く、見事に担任の術中に嵌っているといえる。

「な、頼むよ~~!」

 そう言って、青山が顔の前で両手をすり合わせる。

「いや、あの。俺が、玖堂の目覚まし係って……?」

 職員室の窓側。自分の席に座る青山を見下ろしながら、俺はつぶやいた。

 いつも体よく使われる便利屋だと自覚はしているが「目覚まし係」というのは解せない。まったく意味不明だ。

「宮下は、玖堂の隣に住んでるんだろう?」

「そうですけど」

「朝、起こしてやってくれないか? なんかさ、玖堂は朝が弱いみたいなんだ。それで、そのまま学校に連れて来て欲しいんだよ。一緒に登校して来てくれ。な?」

 いや「な?」とか言われても……。

「……今日は、遅刻してませんでしたけど」

 こんな頼まれごとは、死んでも引き受けたくはない。面倒すぎる。俺はなんとか「目覚まし係」とやらを回避しようと試みる。

「でも、遅刻することのほうが多いだろ? 困ったヤツだよな~~」

 担任がヘラヘラと笑う。

 いや、俺にとって「困ったヤツ」は、今まさに厄介事を押し付けようとしている、担任のアナタなんですが?

 心の中で文句を言う。絶対に引き受けたくない。

「玖堂のヤツ、寝起きは悪いかもだけど。そこはクラス委員長! 頼りになる宮下! なんとか上手くやってくれ~~」

 相変わらず、手をスリスリとすり合わせている。

 いやいや、面倒くせーーー! 寝起きが悪いとかサイアクなんですけど。 

「このままだとさ、俺が学年主任から目を付けられるんだよ~~!」

 出たな、本音。

 学年主任は、生活指導でもある。コワモテの五十代男性教諭だ。

「宮下、お前だけが頼りなんだ……!」

 担任が、悲しげな顔で訴えてくる。この表情は絶対に作っている。青山は演技派だ。たとえ演技ではなかったとしても断る。断固拒否。

 俺の心は完全に決まっているのだが、ふいに「この話を了承したら褒められるな」という考えがよぎってしまった。

 俺の中にある褒められたい願望。それが、むくむくと湧いてくる。

「分かりました! 任せてください!」

 あ、しまった……! 急に我に返ったが、もう遅い。

 担任の表情が、パアッと明るくなる。キラキラと輝いた瞳で見られる。

「さすがは宮下~~! やっぱり、お前は良い生徒だな。うん、頼りになる」

 褒められた。やっぱり、うれしい。ずっと欲しかったものが得られた感覚だ。

 カラカラに渇いた部分に、きれいな水がしみ込んでいくような。

「……ありがとうございます」

 引き受けてしまったものは仕方がない。俺は青山に頭を下げて、職員室を後にした。
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