5 / 9
一章 格差を広げるもの
④
しおりを挟む
――前回のあらすじ――
健は土手に座り込み、今までの人生を振り返る。そして、今の健に大きな影響を及ぼした『伊藤裕司』という人物について考えていた。
――唱えた瞬間、視界が全部青くなった。
まるで、あの結晶に吸い込まれたかのように……。
――しかし、すぐ視界は取り戻された。
――――俺は広い場所に立っていた。
きれいな大理石の円状の広場にいて、等間隔の柱が天井に向かって伸びていた。びっくりするほど高い天井は、俺のいる丸い広場の上だけ不思議と光っていた。
俺がいるのはそのホールの中心で、服装はさっきまでと同じ。
でも、握っていたネックレスは、首にかかっていて、腕には黄金の腕時計が付いていた。
なんとも輝かしく高級感漂う時計の針は、俺がこの世界に入った時の時間を指しており、秒針がしっかり動いていた。
しかし、最もおかしいのはこの広間じゃない……。
大理石の柱に囲まれたこの円状の広間の周りには、大量の本棚が並んでいた。
すさまじい量の本が置かれていて、らせん階段で何階層にも重なっている。壁は見えないし、らせん階段がどこまであって、何階まであるのかも見えない。
俺は最初に目の前にある最も目立つ机にポツリと置いてあった本を手に取った。
その本の冒頭に書かれていた文章はこうだった………………。
――――『エスカ』太古からそう呼ばれてきたこの星には、高い知能を持つ原始人がいた。やがてその原始人は進化して、三つの人種に分かれた。
――一つは高い知能を持ち、群れる人間。
――一つは高い魔力と支配欲を持つ魔法使い。
――一つは魔法の力で土地を育み、自然と暮らす妖精。
これらは本来同じ祖先をもつものであり、互いに助け合って暮らしていくべきである。
しかし、現状、私たち魔法使いが人間を支配し、妖精を滅ぼそうとしている。
歴史は改変され、間違った価値観がそれぞれの種族に植え付けられたこの現状に私は目に手を当てたくなる。
私たち魔法使いの暴走を止められるのは、人間しかいないと考える。
そして私は、人間の優秀な弟子にこの図書館を授ける。この場所は、血ではなく私の意志のつながりが途絶えないことを願う。
――――――魔歴三十年 イエズ・ギリスト
その文章の後には代々この部屋の管理者に名が刻まれていて、厚いこの本の後半はほとんど白紙だった……。
――魔歴三十年ということは、その時ちょうど八百年だったから、七百七十年も引き継がれてきたことになる……。
俺は驚きに震えていた。
――この部屋の管理者は全員歴史に名を遺した人物だったからだ。
――天才的な科学者、何百万人もの人間と魔法使いを救った医者、貨幣の仕組みを考えた天才社会学者、そして反乱を起こした反逆者まで……。
俺は居ても立ってもいられなくなって、本棚まで走り、本を開いた。
がむしゃらに読み漁った。
まるで、水を得た魚のように。
――初めて書いてあることの意味が分からないということが起こった。
それらの本は、それらひとつひとつが途轍もなく魅力的だった。
こんな考え方をする計算方法があったのかと……。
こんな医療方法があったのかと……。
俺は本にしゃぶりついた。
勉強があんなに面白いと思ったことはなかった――何でもすぐに理解してしまうから。
――何か定義を学んだら、それを使ってこんなことができると予想し、教科書の展開がすぐ読めてしまうから。
しかしそこは違った。
――俺は自分が無知であることを知った。
この図書館の一階は、これだけで世の中をひっくり返すようなことが描かれた本ばかりだったが、上の階に行けば行くほど知識は深まり……、難しくなっていた。
その本の中には既に誰かが発表した研究の内容が書かれていることがあった。
しかし、その内容は実際に発表されているものより応用されていた。
一番上に書かれているのはどんなものなのだろうか……。
――気づいたら、丸二日経っていた。
――――そして、決心した。
『血より意思を』
――――――また視界が青くなった。
健は土手に座り込み、今までの人生を振り返る。そして、今の健に大きな影響を及ぼした『伊藤裕司』という人物について考えていた。
――唱えた瞬間、視界が全部青くなった。
まるで、あの結晶に吸い込まれたかのように……。
――しかし、すぐ視界は取り戻された。
――――俺は広い場所に立っていた。
きれいな大理石の円状の広場にいて、等間隔の柱が天井に向かって伸びていた。びっくりするほど高い天井は、俺のいる丸い広場の上だけ不思議と光っていた。
俺がいるのはそのホールの中心で、服装はさっきまでと同じ。
でも、握っていたネックレスは、首にかかっていて、腕には黄金の腕時計が付いていた。
なんとも輝かしく高級感漂う時計の針は、俺がこの世界に入った時の時間を指しており、秒針がしっかり動いていた。
しかし、最もおかしいのはこの広間じゃない……。
大理石の柱に囲まれたこの円状の広間の周りには、大量の本棚が並んでいた。
すさまじい量の本が置かれていて、らせん階段で何階層にも重なっている。壁は見えないし、らせん階段がどこまであって、何階まであるのかも見えない。
俺は最初に目の前にある最も目立つ机にポツリと置いてあった本を手に取った。
その本の冒頭に書かれていた文章はこうだった………………。
――――『エスカ』太古からそう呼ばれてきたこの星には、高い知能を持つ原始人がいた。やがてその原始人は進化して、三つの人種に分かれた。
――一つは高い知能を持ち、群れる人間。
――一つは高い魔力と支配欲を持つ魔法使い。
――一つは魔法の力で土地を育み、自然と暮らす妖精。
これらは本来同じ祖先をもつものであり、互いに助け合って暮らしていくべきである。
しかし、現状、私たち魔法使いが人間を支配し、妖精を滅ぼそうとしている。
歴史は改変され、間違った価値観がそれぞれの種族に植え付けられたこの現状に私は目に手を当てたくなる。
私たち魔法使いの暴走を止められるのは、人間しかいないと考える。
そして私は、人間の優秀な弟子にこの図書館を授ける。この場所は、血ではなく私の意志のつながりが途絶えないことを願う。
――――――魔歴三十年 イエズ・ギリスト
その文章の後には代々この部屋の管理者に名が刻まれていて、厚いこの本の後半はほとんど白紙だった……。
――魔歴三十年ということは、その時ちょうど八百年だったから、七百七十年も引き継がれてきたことになる……。
俺は驚きに震えていた。
――この部屋の管理者は全員歴史に名を遺した人物だったからだ。
――天才的な科学者、何百万人もの人間と魔法使いを救った医者、貨幣の仕組みを考えた天才社会学者、そして反乱を起こした反逆者まで……。
俺は居ても立ってもいられなくなって、本棚まで走り、本を開いた。
がむしゃらに読み漁った。
まるで、水を得た魚のように。
――初めて書いてあることの意味が分からないということが起こった。
それらの本は、それらひとつひとつが途轍もなく魅力的だった。
こんな考え方をする計算方法があったのかと……。
こんな医療方法があったのかと……。
俺は本にしゃぶりついた。
勉強があんなに面白いと思ったことはなかった――何でもすぐに理解してしまうから。
――何か定義を学んだら、それを使ってこんなことができると予想し、教科書の展開がすぐ読めてしまうから。
しかしそこは違った。
――俺は自分が無知であることを知った。
この図書館の一階は、これだけで世の中をひっくり返すようなことが描かれた本ばかりだったが、上の階に行けば行くほど知識は深まり……、難しくなっていた。
その本の中には既に誰かが発表した研究の内容が書かれていることがあった。
しかし、その内容は実際に発表されているものより応用されていた。
一番上に書かれているのはどんなものなのだろうか……。
――気づいたら、丸二日経っていた。
――――そして、決心した。
『血より意思を』
――――――また視界が青くなった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる