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44.無自覚は罪~愛side
しおりを挟む昔からお母さんは少し抜けていた。
勿論、主婦業や、実家の家業に関しては完璧にこなしていたけど。
自分の私生活に関しては本当に抜けていた。
そして自分が異性から好かれやすい事に無頓着だった。
「愛ちゃん、マジ?」
「マジよ。お母さんは自覚が無い」
「ある意味一番質が悪いんですけどね。私の母はモテると自覚しているからマシですが」
女弁護士をお母さんにもつなっちゃんは自分のお母さんが男性に好かれるのを利用して武器にしている程のしたたかさがある。
都ちゃんのお母さんも同じだ。
カリスマ美容師であるからこそ、フェロモンを出しているらしい。
「男性とはああいう女性がコロッと行くんですよね」
「あー、あるね。献身的に支えてくれる良妻賢母的な?今のご時世では一歩引いて立ててくれる女の人の方が珍しいって言うか」
確かにお母さんは内助の功を持って、あの男を支えて来た。
お母さんの功績を横取りして自分の手柄にしていたのは今にしてもムカつくわ。
でも独り身になったので、お母さんの功績はそのままお母さんのものになるのだけど、人に尽くすのは当たり前になっていたからこそ厄介だ。
「愛ちゃんのお母様はマリア様のようですからね」
「言い過ぎじゃない?」
「そういうけど、サービス残業でコンサルの仕事や売り込みをして、麦屋と丹波屋を救うべく必死になる姿は、もうマリア様よ。聖母様よ」
そう言えば時々店長がお母さんを見る目がそんな感じだった。
「今度のフェスティバルで功績を残せば、おばさんの実績は確かな物になるわね」
「おば様の評価は今の所鰻登りです。そして廃業寸前の店を救ったとなれば商店街では救世主になりますからね」
地元の商店街でも一番古い二つのお店。
成功すれば…
「これまでの実績を考えれば確実に賞を取ります。それに見てください」
「何?」
「先程タブレットを拝借しましたが、これは新ハンバーガーのメニューのようなおですが」
「これ…」
タブレットに載っているメニュー表にはレストラン顔負けの華やかさがあった。
「見やすく解りやすく老眼の方にも見えるようにしてあります。そしてメニュー表にしっかりアレルギー対策もしているようで」
「やるとなったら何処までの追求するもんね」
「ここまでしたのなら行けるはずです」
「そうよね」
もしかしたらフェスティバルで良い評価を得られる。
…そう思ったら。
数日後、とんでもない事が起きたのだった。
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