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第一章婚約破棄と国外追放

プロローグ

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マリンフェスタ帝国。
大自然に囲まれ海の国と呼ばれるこの国には伝説があった。


かつて姫巫女と呼ばれた少女は神獣を従え、国を破滅から救ったという伝説。

姫巫女とは巫女を従える長。
神殿を統べる神の代弁者とも呼ばれる教皇と互角の存在とされ、皇族と同格の扱いを受けていた。



「さぁ、こちらへ」

一人の美しい青年が少女に手を差し伸べる。

少女は黒髪をなびかせ不安げな表情でおぼつかない足取りで歩く。


――何故、こうなった?


少女は今の現状が全く理解できないでいた。

「これより陛下に謁見していただきます」

「はっ…はい」


世間では氷の騎士と呼ばれ恐れられている彼に優しく手を引かれエスコートをされていた。


ゆっくりと階段を降り、今の現状が理解できないでいた。


(私はこのままどうなるのだろうか)


敵国の伯爵令嬢に過ぎないエリーゼは、不安を抱きながら顔を俯かせていると…


「クゥーン」

側にはぴったりとくっつき、エリーゼを守るように歩く大きなモフモフ達。


まるでエリーゼを安心させるように傍から離れない彼等に笑みを浮かべる。


「アルフ…」

「ワン!」

不安そうに名前を呼ぶと嬉しそうに尻尾を振りながらすり寄って来る。


『ご主人、大丈夫だ!俺達がついている』

『そうだぞご主人!アンタはモフモフの姫巫女なんだからな!』


モフモフ姫巫女。


それがこの国でのエリーゼの役職だった。


何故こうなったのか。



(そう、すべての始まりは…)


遠い目をしながら思いだだすのはこの国に来ることになった理由。


(私はユーフェミアの身代わりだっのだけど)



そもそもの原因は――


あの日がすべての始まりだった。








祖国の王太子でありエリーゼの婚約者、トビアス・レスティアにより告げられた理不尽な告白によりすべてが始まった。



「エリーゼ、俺は真実の愛を見つけたんだ」


幼少の頃から王太子妃となるべく厳しく教育をされてきたエリーゼは常に息が詰まるような生活を強いられて来た。


両親は妹を溺愛し、姉のエリーゼに一切の愛情を与えなかった。
物心つく前から二人は差別され、両親はエリーゼをいないものとして扱い虐待まがいなことをしていた。

何か成果を上げてもできて当然、できなければ蔑まれていた。

特に酷かったのは妹のユーフェミアの恥になると言われて来た。

両親にとって伯爵家の娘はユーフェミアだけでエリーゼは邪魔な存在でしかなかったが、エリーゼは王太子の婚約者に望まれていた。


王太子の婚約者と言う立場がエリーゼの立場を唯一守る手段だった。


その立場もトビアスの言葉によって消えようとしていた。
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