【本編完結】婚約者には愛する人がいるのでツギハギ令嬢は身を引きます!

ユウ

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第二章

23.伯爵夫人の事情②


耐え切れずこちらから接触しようとした時だった。


ビリっ!

ドレスの裾が破れる音が聞こえた。


なんて事でしょう。
今日の為に特注した特別の生地で作ったドレスの裾が破れてしまいました。

(こんな時に!)


幸いにも裾だけで良かったと安心しましたが、今日のドレスは裾にレースを使っています。
急いで仕立てなくてはなりませんが、傍にメイドはおりません。

「アンディー、大丈夫か?」

「旦那様、これでは…」

急いで裾を掴み隠しましたが、ここでドレスの裾が破れた事がバレたら笑い者です。
そうでなくとも私の身分の所為で社交界では一部の方から冷たい視線で見られているのですから弱みを見せればどうなるか。


なんとかしなくては。

「どうかなさいましてミュゼ伯爵、夫人」

「皇女殿下…」

「お静かに。ドレスの裾が破れたのですね?」

「申し訳ございません」


ああ、なんという失態。
皇女殿下にこのような姿を晒してしまうとは皇族御用達の仕立て屋としての名が泣きますわ。

「失礼いたします」

「えっ…」

「大丈夫ですわ、アンディー。彼女は私の優秀な侍女ですのよ」


天使様が私のスカートにショールを巻いてくださいました。

「とにかく今は破れた裾を縫い直します。申し訳ありませんが伯爵様、見えないように壁になっていただけますか?」

「はっ…はい」


控えめ声掛けをしながら、旦那様が壁になった瞬間、天使様はまるで魔法を使う様に糸と針で破れた裾を縫い直してくださいました。


その手は魔法でした。
手から黄金色に輝き、私のドレスの生地がまるでは天女伝説に出てくる羽衣のようでした。


「応急処置にすぎませんが…」

「そんな…素晴らしいですわ」

破れた裾に薔薇を飾りつけ、華やかさがアップした。
真珠と薔薇を合わせることでここまで美しくなるなんて気づきませんでしたが、天使様はなんて素晴らしいセンスをお持ちなのでしょうか。



「天使様!」

「はい?」

「ご無礼をお許しくださいませ。社交界では格下の身分の者から声をかけるのは無礼と存じておりますが、名乗らせていただくご無礼をどうかお許しくださいませ」


「いえ…そのような」

なんてお優し方なのでしょう。
私の想像が正しければ、天使様は高位貴族に違いありません。


「アンドレット・ミュゼと申します」

「夫のサウザーです。この度は誠にありがとうございました」


社交界には頻繁に顔を出している私が知らないなんてことはありませんわ。
高位貴族のご令嬢なら顔を見れば解るのですが…。


「皇女殿下の侍女をさせていただいております。アドリア―ナ・セレンティアと申します」

「「えっ…」」


この時私は天使様の正体を知り、絶句しました。
夫に至っては失神寸前だったのは言うまでもありませんでした。


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